第2回地震火山こどもサマースクール実行委員会(宇井忠英北大大学院理学研究科教授、岡田弘北大大学院理学研究科教授、桑原央治東京都立大島高校教諭、数越達也兵庫県立芦屋高校教諭、高橋正樹茨城大理学部教授、宮嶋衛次北海道立理科教育センター研究員、三松三朗三松正夫記念館館長)
同サポータースタッフ(相原延光神奈川県立小田原城内高校教諭、岡本義雄大阪教育大附属高学天王寺校舎教諭、小山真人静岡大学教育学部助教授、佐藤明子平塚市立神田中学校教諭、中川和之時事通信社神戸総局次長、本間宏樹北海道大学大学院理学研究科修士課程、伊藤晋北海道大学理学部学生)
1.概要
2000年8月26〜27日の2日間、北海道の有珠山のふもとの壮瞥町、虻田町、洞爺村などを舞台に、地元を中心に一般から募集した児童・生徒を対象とした地震火山こどもサマースクール「有珠山ウオッチング」(主催:日本火山学会・日本地震学会、助成:土屋生涯福祉基金)を企画・実施したので報告する。昨年8月20-21日に第1回のサマースクール「丹那断層のひみつ」(昨年の日本災害情報学会予稿集参照)を、静岡県の丹那断層で実施したのに引き続き、第2回目の開催。今回は、有珠山の火山活動を単に恐れるだけでなく、火山に関する知識や、そのもたらす恵み、普段の備えなどについて、子供たちに伝えるために、地元関係機関の協力も得て、26日は40人、27日は19人の子供が参加して行った。実験や講義、野外見学などを通じ、今回のサマースクールに参加した子供たちが、有珠山とつきあうすべをつかむきっかけを作ることができたのではないかと総括している。案内文書、準備資料、配付資料、実施状況、現地写真などの詳細な情報については、usuzan/CSS/program.htmlを参照してほしい。
2.経緯
2.1.臨時火山情報半日前の実行委員会
昨年、第1回のサマースクールを実施した後、両学会ともこの種の行事の意義と、継続開催を了承。初回が地震をメインに取り上げたため、今回は火山とすることとし、有珠山をテーマに取り上げることとした。火山学会の事業委員会と、地震学会の学校教育委員会のメンバーや、地元の学会会員、前年の実行委員を中心に、今回の委員を両学会で選定した。
3月27日午後に、北大有珠火山観測所で第1回の実行委員会を開催した。火山学会側の出席者は岡田弘実行委員(北大教授)、宇井忠英実行委員長=当時=(北大教授)、三松三朗実行委員(三松正夫記念館館長)、田鍋敏也実行委員(壮瞥町企画調整課長)らが、地震学会からは宮嶋衛次実行委員(北海道立理科教育センター)、桑原央治実行委員(都立大島高校教諭・日本地震学会学校教育委員会委員長)が参加し、プログラムなどの検討を行った。
その場では、7月31日-8月1日の1泊2日の日程で、有珠山の外輪山や昭和新山に登ったり、過去の噴火での被害観察や、夜の交流プログラムなどを盛り込んだプログラム案を決めたが、実行委員会開催の夜から有珠山噴火の前兆現象が出始め、翌未明には臨時火山情報が出され、31日に噴火するに至った。
実行委員長となっていた宇井氏、岡田委員の2人は、連日、観測や予知連の会議、マスコミレクなどと忙しい一方で、宮嶋委員は理科教育センターのプログラムとして避難所にサイエンスカーを持ち込んで、子供たちへの学習支援などを実施するなど、一時は開催地の変更や中止も考えざるを得なかった。
2.2.地元への勉強会兼ね、実施へ
その中で、噴火によって最大の不安下におかれている現地住民の方々に対して、火山についての研究者からの直接の情報発信の一環として、地元のこどもたちを主な対象とした勉強会を開くことができないかと検討。岡田、宇井両教授の通常の観測時間などの合間を縫って、1時間程度の野外見学時の講習なら可能となり、当初日程を大幅に変更し、昼食代、バス代、保険料などの参加費無料として、両学会からの被災地支援の意味も込めることにした。ただし、火山活動に異変があった際には中止することとした。なお、サマースクールとは、直接の関係はないものの、岡田、宇井の2人は、5月6日と6月1日に、壮瞥町と虻田町で住民説明会を開催し、有珠山の活動状況についての解説を行っている。
その後、幸いにも有珠山の噴火活動は小康状態が続き、具体的なプログラムの打ち合わせなどは、昨年同様にメーリングリストやホームページを活用しながら検討を進め、6月に東京で行われた地球惑星科学関連学会合同大会で実行委員会を開催し、実行委員長を高橋正樹火山学会事業委員長(茨城大教授)に交代。その後は、それぞれに観測などで有珠山周辺を訪れた際に下見するなどして、準備を進行。その間、地元の宮嶋実行委員が駆け回り、大学研究者4,学校教育関係者6,社会教育関係者2の実行委員・スタッフが、全員そろっての打ち合わせは実施前日となった。当日は、札幌で開催された地震学会学校教育委員会の夏のミーティングに参加していた各地の学校教員らの手伝いも得ることができた。また、北海道社会福祉協議会に、このサマースクールの趣旨に賛同していただき、土屋生涯福祉基金からの助成を受けることができた。
3.企画の特徴
3.1.「もぐらカード」、課題投げかけ形式は継承
今年の企画の特徴は、とにかく目の前にまだ噴煙を上げている有珠山があることが最も大きい。昨年は、「なまずカード」を使ったり、クイズ形式で行ったりして、子供たちの好奇心を刺激して、次々に質問をしやすい雰囲気を作ったが、今年は被災地とあって、どこまで演出をするかが準備段階で議論となった。
しかし、「専門家が答えを説明するのではなく、子供が考えて核心に迫って行くスタイル」は踏襲しようということになり、そのためのツールとして「もぐらカード」や、講師側から課題や質問を投げかけて考えさせる方式を採用した。
3.2.目玉は「岡田先生」
また、岡田、宇井両委員のレクチャーなどが、連日のようにテレビで報道されたため、「あの岡田先生、宇井先生が、君たちの質問に何でも答えてくれる」ということだけでも、十分にインパクトがあると考え、午前中の実験と講義は、午後からの現地見学と岡田、宇井両委員のレクチャーへのイントロとなるように、火山の一般的な講義や実験、北海道内の火山全般などを盛り込んだ。また、最後に渡す「マグマ観察博士認定証」に、噴煙を背景に岡田、宇井両委員と一緒に一人一人が写った写真を刷り込むことにした。
3.3.チーム分けとチームの旗など
参加した小学5年〜高校3年の子供たちを、初日は7、2日目は5のチームに、学年をばらつかせて分け、中高生をリーダーとした。チーム名は、「チーム・こまがたけ」、「チーム・らうす」、「チーム・たるまえ」、「チーム・ようてい」など、道内の近隣の火山名を用い、チームごとに各火山の写真を印刷した旗を用意し、チームごとに行動するときの目印にした。課題への回答や、もぐらカード集めなどは、すべてチーム単位で行った。また、スタッフ以外で参加した地震学会の学校教育委員会メンバーの教員が、各チーム1人ずつ指導的立場としてではなく「大きな子供」として加わった。
3.4.おみやげは自作プレパラートと火山灰、軽石
実験は、前年同様、「みせる実験」ではなく、全員が参加できる実験とし、チーム内で協力しあいながら、一人に一つずつ実験キットを準備して行った。火山灰の観察実験では、自分でプレパラートを作り、実験に使った10万年前の火砕流堆積物と、1663年の噴火の際の軽石、今回の噴火による火山灰とともに、持ち帰ることができるようにした。
3.5.申し込み時に、疑問・質問を集約
参加希望者が、往復はがきで申し込みをする際に、有珠山や火山についての疑問を書くようにしてもらった。この内容を実施前に講師サイドが共有し、疑問が多い点を念頭に置いて解説するようにした。(表 )
3.6.地域の学校教員、市民グループの見学
北海道理科教育センターを通じて、道内を中心とした小中高の学校教員や、地元の自治体を通じての「洞爺湖の自然を観る会」メンバーが見学し、サマースクールの目的や、内容、手法について、現場での視察を可能とした。見学者は、壮瞥会場で8人、虻田会場で36人に上った。
4.内容
4.1.スケジュール
初日は壮瞥町公民館、2日目は虻田小学校を会場としたが、2日間ともほぼスケジュールは同じ内容で実施した。初日は、朝からかなりの雨で洞爺湖畔の道路が泥流の恐れがあるとして通行止めとなったが、移動の前に解除となり、サイロ展望台からの見学も予定通り実施できた。
9:00 受付開始
9:30 開講式
オリエンテーション、チーム分け
9:45 自分でやってみよう
「火山ってどうやってできるの?」かいせつと実験1
10:45 自分でやってみよう
「噴火にもいろんな種類があるんだ!」かいせつと実験2
11:45 バスに乗車、出発
お話1「昭和新山と三松正夫」
12:15 サイロ展望台で昼食
12:25 サイロ展望台
野外見学1 有珠山と洞爺湖のできかた1
13:00 バスに乗車、出発
お話2 有珠山と洞爺湖のできかた2
13:15 珍小島到着
野外見学2 有珠山2000年噴火
14:15 記念写真撮影
14:30 バスに乗車、出発
お話3 火山の恵みと災害
15:10 会場到着
班毎の発表
15:45 閉講式
まぐま観察博士認定証授与
16:00 アンケート配布・記入・解散
4.2.各プログラム
4.2.1.受付、開講式、オリエンテーション、チーム分け
両会場共に、チームに分かれて実験や講義をやる場所と、オリエンテーションを行う場所が同じだったため、空きスペースで輪になって開講式などを行った。高橋実行委員長からのあいさつの後、全体の司会進行を担当した中川が、A4版19枚、A3版1枚の配付資料を確認。子供たち同士の自己紹介を兼ねて、挨拶をかわしてサインをもらうという自己紹介ゲームをし、順次、チームごとに席に付いてもらった。集めたサインの数に応じて、「もぐらカード」を渡しながら、チームごとにもぐらカードを集めていく方法を説明。最後のパネルディスカッションでチームごとに発表する課題用紙も渡した。
4.2.2.「火山ってどうやってできるの?」かいせつと実験1
高橋実行委員長が、羊蹄山、有珠山、昭和新山、北海道駒ヶ岳、樽前山などの火山の写真を見せた上で、氷が溶けて水になるように、地下の深いところで岩石の一部が千百度で溶けたものがマグマであること、マグマはまわりの岩石よりも軽いので浮き上がってくること、水アメみたいにサラサラしたマグマと、おもちみたいにネバネバしたものがあること、それによって火山の形にも違いがあることなどを説明。ここでは、「マグマはなぜ浮き上がるか」などの問いをOHPで示して、子供たちにどんどん答えてもらってやりとりしながら進めた。ここでは、もぐらカードが答えを引き出す小道具に使われた。さらに、資料にある北海道東部の地図をみて、火山がいくつあるか、チームごとに発表してもらった。その上で、もう一度、羊蹄山と昭和新山の写真を見せ、形の違いがネバネバとサラサラの違いから来ることを話した上で、自分でネバネバとサラサラの火山を作ってみる実験につなげた。
実験1は、火山の形とマグマの粘りけの関係を調べる目的で宮嶋委員が実施。少量の水を加えた小麦粉をマグマとし、ビニール袋に入れて、砂の下から小麦粉を押し上げてどう現れるかを、噴火の様態に見立てて観察した。使ったものは、丸い穴を開けた発泡スチロールの板とフイルムケース、ビニール袋、小麦粉と乾燥した粉状の粘土、板を乗せる三脚、水と墨汁。チームごとに2人一組となり、加える水の量を変えてサラサラな玄武岩質溶岩(墨汁2,3滴を添加)と、ネバネバな流紋岩質溶岩を表す2種類の小麦粉を、ビニール袋の中に入れ、フイルムケースでスチロールの板に固定。ビニール袋に力を加えると、平らにならした土に最初はひび割れができ、次にネバネバの方は溶岩ドーム状のように固まって現れ、サラサラの方は周囲に流れ出る様子を観察した。ムニュムニュとした手触りが、子供たちには好評だった。2日目には、三松委員が昭和新山に似たドームが出来たチームに、三松賞としてもぐらカードを渡した。
4.2.3.「噴火にもいろんな種類があるんだ!」かいせつと実験2
サポートスタッフの小山真人(静岡大助教授)が、溶岩に続いて火山からでてくる噴煙の話を行った。噴煙には上昇するものと横に流れることもあること、上昇する高さの違いで噴石の飛ぶ範囲が違うこと、横に流れる噴煙が火砕流となって怖いことや、地層を調べると昔のことが分かることなど、火山灰などの観察するにあたってのポイントの説明を行った。
続いてサポートスタッフの相原延光(神奈川県立小田原城内高校教諭)と、岡本義雄(大阪教育大附属高校天王寺校舎教諭)の2人が、いろいろな火山噴出物の観察実験を行った。そこでは、まず、今年の有珠山噴火の火山灰と、1663年の噴火時の軽石、10万年前の火砕流の手触りや色の違いを虫眼鏡も使って確かめ、さらに今年の火山灰を水で洗って、泥と細かい粒に分かれていることを確認した。その上で、今年の火山灰と10万年前の火砕流を顕微鏡で観察するためのプレパラートを作って顕微鏡で見比べ、中にいろんな色の石(鉱物)が含まれていることを観察してもらった。
その上で、小山が、マグマ水蒸気爆発だった今年の火山灰は火口の上の土を吹き飛ばしているから黒くてきたないこと、1663年の噴火は頂上からの非常に高い噴火でマグマそのものが砕け散っているので白い軽石となり近くほど大きく遠くほど小さいように噴石の大きさが揃うこと、10万年前は火砕流なので噴石の大きさがばらばらになることなど、火山灰や軽石などの火山噴出物から火山様式が分かることをまとめて、実験と講義を終えた。
4.2.4.お話1「昭和新山と三松正夫」
会場から、バスで洞爺湖畔のサイロ展望台まで移動する途中で、三松委員が、戦争中で噴火自体が隠されていた1944年から45年の噴火で昭和新山が出来た際に、壮瞥郵便局長をしていた三松正夫氏が何をしたかなどについて、車窓からの景色の解説も含めて解説した。三松正夫氏が、山が成長する経過を独自の方法でスケッチして作成したミマツダイヤグラムが世界的な評価を受けた話や、自然保護のためだけでなく畑が山になってしまって困っている住民のためにも私財をはたいた2万8千円で昭和新山の一帯を購入したことなどの話が紹介された。
4.2.5. 野外見学1 有珠山と洞爺湖のできかた1、お話2 有珠山と洞爺湖のできかた2
洞爺湖と有珠山を一望できるサイロ展望台の食堂で、カレーライスとオレンジジュースの昼食を食べた後、建設省やNHKの監視カメラが設置してある屋上に上がらせてもらい、チームごとに目の前の景色の中にある溶岩ドームや、隠れた溶岩ドームがあるかを数え出す課題に取り組んだ。
数個や多くても十数個との答えに対し、岡田委員が「専門家でもあんまりよく分からないが、30から35ぐらいあるのでは」と回答を伝えた上で、ドームの場所を一つ一つ解説した。その後、宇井委員が洞爺湖カルデラが出来た約10万年前の大きな噴火で火砕流が日本海まで到達したこと、4万年前にカルデラ湖に中島ができ、有珠山が2万年前から富士山のような形となったこと、約7000年前に山体が崩壊した後は1663年までは活動していなかったことを説明した。
さらに、岡田委員が、マグマの粘りけが高いことは、火砕流などを起こす怖さがあるが、噴火の前にマグマが地面の中で頑張るのでたくさん地震が起き、地表に割れ目も起こるので予知できることがあることや、90年前の噴火で室蘭の警察署長が避難を呼びかけて2日後に噴火したが誰も亡くならなかった予知成功の前例もあることなど、2人が交互に子供たちに質問をして回答にもぐらカードを渡しながら解説。地元の子供たちには見慣れた風景の中にある火山活動の歴史的経過を伝えた。
子供たちからの質問を受けながらの話はなかなかつきず、バスの中で車窓から見える羊蹄山と有珠山がほぼ同じぐらいの歴史を持つ火山であることなどの話が続いた。
4.2.6.野外見学2 有珠山2000年噴火
西山火口が間近に見え、大勢の子供たちが安心して見学できる珍小島で、宇井委員が今回の噴火で新しい火口が次々に60ぐらいできたことや、マグマがあまりでなかったことなどの特徴を説明。岡田委員から、最初は雪の上にでた割れ目が山頂にあったため、頂上からのかなり大きな噴火を予測して幸いはずれたが、あとで調べたら山頂付近はマグマの上昇で隆起してずたずたに割れ目を作っており危なかったこと、西側にマグマが上がり、火口ができて80メートルも隆起したことなどを解説。
最も気になる今後の見通しなどについて、子供たちからの質問が相次ぎ、マグマの活動は治まっているがしばらくは熱があるので水蒸気の噴煙を上げて時々噴石を飛ばすこと、火口の近くは危険だがホテルのあるあたりは大丈夫で、道路の一部に泥流の危険があること、徐々に噴煙が治まり観光スポットとなりうること、新たな温泉が見つかる可能性もあること、マグマが上がってきて今の山を壊すような噴火をしたり、温泉街のところで噴火が起きるのが最も怖いこと、次は溶岩ドームのすき間や外側、2列にドームが並んでいる延長線やその近くで起きるのではないかということ、ただし三宅島のように火山が予測をはずれた違うことをする恐れもあることなどを、岡田、宇井両委員が交互に説明しながら、子供たちとのやりとりを続けた。
また、火口からの噴煙をバックに、参加した子供たち一人一人が岡田、宇井両委員と一緒に「マグマ観察博士認定証」用の写真をデジカメで撮影。その間、高橋、小山、三松の各委員らが、子供たちの質問に応じた。
4.2.7.お話3 火山の恵みと災害
珍小島から会場に戻るバスの中でも、岡田(2日目)、宇井(両日)、三松(両日)各委員らによる解説が続いた。車窓の風景の解説で、前回の噴火の経験で造られた泥流溝によって、今回は被害が軽減されたこと、過去の噴火で火山灰に覆われたところも緑になっており今回火山灰に覆われたところもいずれは緑が戻ること、昭和新山などいい景色が作られていなければ観光客もこれほどは来なかったであろうこと、火山灰が土壌を改善したことなど、火山は噴火で災害を起こすだけでなく、恵みもあることが説明された。
4.2.8.チームごとにまとめ発表
プログラムの最後は、チーム単位で発表をするパネルディスカッションで、「いまから30年後,あなたがもう大人になって幸せにくらしていた時,突然うす山がふん火しました」との前提で、5つの課題に基づいてOHPシートにまとめを書いて発表を行い、委員がそれにコメントする形式とした。チームごとに、1〜3の課題のうちの一つと、4、5の課題は共通とした。
子供たちの発表内容は、別表の通り。
Q1 山を見上げるとふん煙が見えました.あなたは,ふん煙の何をどう観察しますか? ふん火の性質を見わけるポイントは何ですか?
地震と断層を観察する。噴煙の色で見分ける。
色、灰色なら危ない。向き、横なら熱が高い場合は危ない(温度が分からなくても、とりあえず避難を考える)。
マグマの性質(サラサラ、どろどろ)、飛んでくる石の距離や大きさ
噴煙の色、風向き、高さ、横への広がりかた、噴石や灰
火山灰、軽石、岩石などが、ものが何であるかを見極め、色、大きさ、含まれる物質を調べる。物質から、釣り鐘型や三角錐(円錐形)などを見極める。マグマのちがいで被害が広がるか、あまり広がらないかが分かる。
高さと色、方向、形などを観察する
噴煙の色、高さ、風向き、煙が向かっている町を観察する
ポイント・溶岩ドームを作っているか、それとも水蒸気爆発しているか、溶岩が出ていたら流れる速さは早いか遅いか、それでどろどろかサラサラか見分ける。
Q2 やがて,「ふん火で出てきたものはこれです」と言って,あなたに届けられたものがあります.何をどう観察しますか? ふん火の性質を見わけるポイントは何ですか?
軽石の形や大きさ、噴煙の高さ、マグマが出るかでないか
粒の大きさ、小さかったら遠くから、大きかったら近くから飛んできた可能性がある。
色で判断する。黒い噴煙は危険、白い噴煙は水蒸気が出ている。
飛んできたものの色や大きさを見る。黒…ふるい溶岩が飛ばされた。白…マグマの中の軽石が飛ばされた。
Q3 ふん火がしばらく続いた後,あなたはふん火でできた新しい山に気づきました.その山の何をどう観察しますか? ふん火の性質を見わけるポイントは何ですか?
地震と断層がおきる。噴煙の色と高さ
山のかたちのタイプ。釣り鐘型とか円錐形。ポイントは山の形、マグマの質、噴煙の形
噴火によって出てきた石や火山灰などの見た目、色、形などを見る。また、その山そのものをよくみる。山の高さや形などを毎日観察を続ける。実勢に新しくできた山に登って、有珠山や羊蹄山と何が違うのか、そして何が似ているのかと言うことを重点的に観察する。
Q4 うす山の次のふん火をむかえる時のために,あなたは今から何をしたらいいと思いますか?
避難の準備をする、引っ越しをする。
地震や断層で噴火予知をしたらいいと思う
避難する場所、大事なものをメモする
正しい知識を身につける。ヘルメット(身を守るもの)、教科書はいらない、あらかじめペットをどうするか家族で考える
避難路を覚える
自分の好きなものを用意する
食料や水などは、すぐ手に入ったり、寄付されるけど、自分の好きなものや、大切なものは手に入らないので、日ごろ、自分の回りに自分の大切な物を置いておく(指輪の絵)
大事なものを書いたメモを作る。長持ちする自分の好きな食べ物を用意する。
避難をする用意。自衛隊をよんでおく。キャンピングカーを買っておく。岡田先生と仲良くする。
もちろん有珠山を愛する。愛した上で災害に備えていく。食べ物はさっき話があった通り心配ないようなので、日ごろからどんなものを噴火に備えて運んだりしたらいいか、どこに避難するかを家族や仲間で話し合って決めておくべきだと思った。
大事なもの。状況がよく分かるようなもの(ラジオなど)。助けてくれる人が用意できないもの。動物が移動できるようにする。保存が利く食べ物。
「災害の怖さ」を下級生(子供)にも伝えていく。時間がたつと「危険」というのは忘れ去られやすい。
一度避難してから再び家に戻らなくても言いように、必要なものをまとめておく。
Q5 うす山は,いつも災害だけをもたらしているわけではありません.うす山が地元に与えている恵みは何だと思いますか?
温泉、灰が畑の栄養になる
温泉を出して観光客を呼んでいることだと思う
温泉と観光、火山の勉強
人間の汚した空気をきれいにする。温泉が出て、観光地になる(金もうけ)、学習の場になる、修学旅行地になる
灰が畑の養分になる。観光の活性化。
温泉や山の美しい風景。火山のことを知ることができる。
有珠山の噴火で、降り積もった灰は肥料の代わりになる。噴火により、温泉がわき出て観光地になったりします。
温泉がわき出た。きれいな景色を見にお客さんが来てくれた。
温泉、自然、景色
観光客を呼ぶ
温泉がわいてくる。暖かい。お客さんが来てもうかる。にぎわう。
きれいな景色(観光地)。これと「災害」はいつも隣り合わせである。
温泉がわき出たこと。
観光客がたくさん毎年訪れること。
4.2.9.閉講式とまぐま観察博士認定証授与
閉講式では、チームごとのもぐらカード獲得枚数の発表、三松委員からの全体講評の後、桑原副実行委員長が、珍小島で撮ったばかりの写真を取り込んだ「まぐま観察博士認定証」を全員に授与した。残念ながら初日は、パソコンに取り込む際の失敗し、半数の子供たちには後日の郵送となってしまった。認定証には以下のように記した。
「あなたは、2000年8月26日、有珠山周辺で開催された地震火山こどもサマースクール「有珠山ウォッチング」において、火山がなぜ噴火するのか、有珠山がどんな火山なのか、美しい洞爺湖付近の景色がどのようにして作られたのか、そのふしぎとすごさと恵みなどについて、みんなで楽しく学んだことをここに証します。これからも、まぐま観察博士の称号に恥じぬよう、自然の怖さと暖かさの両方をよく考え,災害に強い地域社会や文化を作っていく努力を重ねられんことを期待いたします。」
最後に、アンケートに記入をお願いしてプログラムの終わりとした。昨年との比較を加えたアンケート結果をグラフで示す。
5.反省と課題
5.1.プログラムの内容
1回目は、山の上から断層全体や周辺の風景を把握して大状況をつかみ、その断層が地表に現れた場所を見てから断層を作る実験などを行い、最後にまとめの講義を行うという流れを作って行った。今回は、主役の岡田、宇井両委員の日程もあって、最初に講義と実験をもってきたが、有珠山の概観は噴火報道で伝えられていたこともあって、この段階から子供たちが積極的に発言し、メインイベントの野外見学の時は次々に手が上がった。
アンケート結果を見ると、1回目同様に実験の人気が高く、もぐらカードもそれに並んでいた。一見、子供だましのような仕掛けだが、チーム対抗とすることで高校生も「ラッキー」と声を上げるなど、今回も好奇心を表現する助けになっていた。
岡田、宇井両委員が、主役となった野外見学は、昨年に比べて大きく支持を伸ばした。やはり、2人の人気に負うところが大きいのであろう。特に、会場に岡田委員が現れた際に、サイン帳を持って駆け寄る子供や、持ってきたカメラを向ける子供もおり、まとめ発表の中で次に備えるために「岡田先生と仲良くする」との答えや、アンケートの感想に「岡田さんと写真が撮れてうれしかった」という書き込みもあったほど。地元に住む岡田委員が、いかに地域に親しまれ、頼られているかが分かった。
また、ぎゅうぎゅうに詰め込まれたプログラムの最後に行ったパネルディスカッション形式のまとめ発表も、難しいテーマだったのにも関わらず、3分の1以上の子供たちが「良かった」と答えており、意欲の高さには驚かされる結果だった。これは、説明の難易度に対する答えでも分かる。
5.2.被災地での実施
70年前に地震を起こした活断層を取り上げた「丹那断層のひみつ」と、眼前で噴火を続け、以前避難支持地域がある現場で行った「有珠山ウオッチング」で、子供たちの反応が異なるのではと懸念したが、それに反して子供たちは積極的にこちらの仕掛けに乗ってくれた。
終了後のインタビューに対し、虻田町の小中学生は、「有珠山はよく分からなかったけど、そういうものだなと思った」(小5)、「いままで、ただの山だと思っていた山が、火山が噴火したことを詳しく聞き、こういうことだったんだなと思った」(小6)、「いろんなことが分かって楽しかった。溶岩ドームの実験が一番おもしろかった。溶岩が上がってくる前に断層ができることが分かった。有珠山に対する気持ちが変わった。災害を起こすだけでなく、観光とかにも恵みをくれることが分かった」(中1)などと話しており、狙いを受け止めてくれたと考えられる。その中で、小麦粉での火山の再現実験で、周辺から来た子供たちが素直に面白がっていたのに対し、地元の子供が楽しみながらも「本当だったらいやだな」とのコメントを漏らしていたことは印象に残った。
これからも、同様に地震や噴火があった後の機会に、実施候補地とすることは可能だろう。
5.3.学校教育委員会のサポートや見学の教員の参加
1回目は、実行委員と大学生、地元の函南町教委のスタッフで実施したが、今年はサマースクール前に開催されていた日本地震学会学校教育委員会の夏のミーティングに引き続いて各地の教員が前日からサポートしてくれた。どこまで子供たちをサポートするか、十分な意思統一をしないままではあったが、「大きな子供」という言い方だけで、子供たちに交じってプログラムが押せ押せの中でスムーズな進行を支えてくれた。
また、北海道理科教育センターからの呼びかけで、虻田会場に道内の学校教員が多数参加した。また、スタッフサイドではあるが、昭和新山を舞台に子どもを対象に18年間、火山の勉強会を実施してきた三松委員が「参加して、これまで少し大人が一方的に押し売りしてきたなと反省した。この次は子どもたち自身にもう少し、考えさせ、子どもと対話しながらやろうと考えている」とのコメントを述べていたが、この日の成果を地域で活かしてもらうことに少しでもつながったのではないかと思われる。
5.4.参加者募集
各学校を通じて案内し、伊達市にある政府の現地災害対策本部の記者クラブにも広報し、虻田町の災害対策FMでも放送してもらった。参加者の6割以上が学校を通じた案内で知ったという。壮瞥会場は、壮瞥町、伊達市を中心にほぼ定員までの参加があった。一方、虻田会場では最も被災した虻田町からの参加が5人にとどまった。夏休みが終わって学校が始まった直後という時期で、中学校行事の関係もあったようだが、残念だった。虻田町の子供たち対象のさまざまな支援のイベントなどが行われており、注目されなかったのかもしれない。
6.まとめに代えて
岡田委員が、スタッフによるインタビューに答えたコメントを、まとめに代えたい。
このような企画によって、日本の国はどういうものだろうか、毎日見ている火山や、洞爺湖や中島がどういうもので、どうやって造られ、その後ろに何が隠れているのか、どういう歴史やお話があるのか、そういうことを子どもたちに知ってもらい、そういう知識を使って、ひょっとすると次に起きるかも知れない噴火の災害に備えるとともに、温泉や美しい風景を楽しんでいく、そういう子どもたちが育ってもらいたい。そういう子どもたちが育つことが、次にくるかもしれない災害の一番大きな備えになるのではないか。
国際的にも、1985年のネバドデルルイス火山の噴火で住民が対応できずに大きな被害をもたらしてしまったことを教訓に、国際火山学会が災害に備えるために研究者だけで閉じこもらず、子どもたちや次の世代に伝えていくと努力を大事にするという方針を持っている。今回の有珠山の試みが非常に大きな力になるのではと思っている。
各地で子どもたちが、こういう地球の仕組みを知って、もたらす恵みを楽しんで、かつ災害にも備えられる。そのようなことがきちんと育っていくことが大事ではないかと考える。我々、観測研究にたずさわるものとしても、支援ができるよう勉強していきたい。各地の地震学や火山学にたずさわっている方にも御協力をいただきたい。また各地でこのような企画の交流を図ることが重要ではないかと思っている。