1994年7月11日

「同和対策事業を早期に終結させ、憲法の保障する暮らし・福祉・教育などの充実について」

                    全国部落解放運動連合会中央委員会

一 、 は じ め に

1、「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部改正法」(略称・新「地域改善財特法」)の期限は、1997年(平成9年)3月末です。全解連は各地で、法の期限切れを受動的に待つのではなく、不公正な同和行政の是正、同和対策事業の完了と移行措置の具体化などのたたかいを進めています。 

 これまで全解連は、同和行政の節目ふしめに「見解」を示し、理論的政策的に議論をリードし、部落問題の解決を促進してきました。今回、法の期限まで3年という時点にあたり、全解連の綱領的文書『21世紀をめざす部落解放の基本方向』(略称『基本方向』)実現の長期的展望にたち、当面する現行法後の行政のあり方について「見解」をとりまとめました。

 この「見解」の基本は、同和対策事業を早期に終結させ、特別対策だけでは解決しえない格差や課題の解決のために、憲法の保障する暮らし・福祉・教育などの充実を部落内外住民の共通の要求にもとづく共同の運動で前進させ、これを通じて旧身分を理由にした垣根をとりはらい、自由な交わりと融合を実現していくことです。なお、憲法の保障する暮らし・福祉・教育などの行政水準の充実・引き上げが、同和対策終結の前提条件ではありません。

2、1987年に採択した『基本方向』は、同一民族内の問題である部落問題が解決された状態を、@部落が生活環境や労働、教育などで周辺地域との格差が是正されること、A部落問題にたいする非科学的認識や偏見にもとづく言動がその地域社会でうけ入れられない状況がつくりだされること、 B部落差別にかかわって部落住民の生活態度・習慣にみられる歴史的後進性が克服されること、C地域社会で自由な社会的交流が進展し、連帯・融合が実現すること、と4つの指標で具体的に示しました。

3、そもそも全解連は、部落解放運動の正常化と公正・民主的な同和行政の確立をめざして1970年に結成された部落解放同盟正常化全国連絡会議(「正常化連」)を、1976年に発展的に改組して成立した組織です。

 「正常化連」結成以来24年にわたり全解連は、窓口一本化の打破、行政の主体性の確立、不公正・乱脈な同和行政の是正、利権あさりの排除など公正・民主・公開・住民合意の同和行政の確立や、「確認・糾弾」行為の社会的排除など、新たな差別主義とのたたかいをすすめてきました。また、一般行政水準の引き上げ、住民の自立・自治・連帯をすすめる諸政策を提起し、同和地区内外での運動と世論の高まりのなかで大きな成果をあげるとともに、政府や「地対協」の見解にも大きな影響を与えてきました。

4、1981年の地対協「意見具申」は、それまでの同和予算獲得型の見解に加え、不公正・乱脈な同和行政の点検・見直しや行政の主体性の確立などを強調するとともに、「解同」の「部落解放基本法」などにみられる恒久法的考えを否定し、住民合意形成による行政推進を強く指摘しました。1986年の「基本問題検討部会報告書」や「意見具申」では、行政の役割について、「同和関係者の自主的な努力を支援し、その自立を促進すること」と述べています。また、「確認・糾弾」を「違法な行為であり、私的制裁以外の何物でもない」と断じ、さらに差別の法規制についても「政策論、法律論として問題がある」と否定しました。そして、新たな課題として「自由な意見交換のできる環境づくり」を指摘し、同和対策についても「永続的に講じられるべき性格のものではなく」、「可及的速やかに一般対策へ全面的に移行されるべき性格」のものとの認識を示しています。また雇用・産業振興対策についても「雇用促進、中小企業振興のための一般対策へ移行する」として、事業の見直し基準や適正化項目を具体的に列挙しました。

5、1991年の「今後の地域改善対策に関する大綱」でも、1986年「意見具申」と同様に、全解連の主張を反映して「今後の地域改善対策を適正に推進するための方策」が示されています。「地域改善対策に係わる行政の主体性の確立、同和関係者の自立、向上精神のかん養、えせ同和行為の排除及び同和問題についての自由な意見交換のできる環境づくりの四つの課題」、また「これまでの行政運営において生じてきた問題点を是正し、適正化対策を積極的に推進するため」に、「 1行政職員の研修の充実、 2個人給付的事業の資格審査の徹底、 3住宅新築資金等の返還金の償還率の向上、 4著しく均衡を失した低家賃の是正、 5国税の適正な課税の執行、 6地方税の減免措置の一層の適正化、 7民間運動団体に対する地方公共団体の補助金等の支出の一層の適正化、 8公的施設の管理運営の適正化、 9教育の中立性の確保、10行政の監察・監査、会計検査等の機能の一層の活用等を行う」と、国民世論の批判の高まりを反映した課題を列挙していますが、本格的な見直しに至っていないのが現状であり、現行法後に課題を残しかねず、その早急な是正が求められています。

6、全解連は、旧「地域改善財特法」の期限切れの際には、「全国的に生活環境や労働、教育などでの部落内外の格差の是正が大きく前進した到達点を踏まえ、なお一部の地域・年齢・階層に存在する問題を解決するための経過措置をとりながらも、部落問題の解決をめざす立場から自立・自治・融合を促進していくために、『同和』という特別措置から脱却し、一般行政への移行を基本的に実現してゆく」と、これまでのような法律を求めない立場で『要求と見解』を明らかにし、その実現をめざして運動を展開しました。しかし、「地対協」と政府は、部分的・限定的に残されている格差や、一般対策で対応しなければならない諸問題までをも、特別措置継続の根拠とし、一般行政への円滑な移行という現実課題から目をそらして先送りさせ、一部事業の削減または見直しのうえ五年の時限法として新「地域改善財特法」を1992年に制定したものです。私たちは、この「見解」を「地対協」の議論に反映させる取り組みとともに、全国各地で自治体関係者や各界各層の広範な人々との学習や対話・懇談を深め、社会的世論を形成し、自治体段階からも同和対策事業の早期終結と憲法の保障する暮らし・福祉・教育などの充実を実現してゆくものです。

二 、 法 後 に つ い て の 基 本 的 な 考 え

1、1969年に「同和対策事業特別措置法」が制定されて以来、約12兆円近い事業費が国及び自治体で投下され、同和対策事業の進展や地区内外住民の努力などにより、今日では、部落問題が解決された4つの状態の実現にむけて大きく近づいてきています。

 住環境や就労、教育などでの格差は、平均的にみればおおむね是正されています。多少の格差や問題が同和地区によってはみられますが、それは、同和地区をとりまく社会的・経済的諸条件をはじめ、住民の主体的な自立の力量、生活困難層や高年齢者の実態、同和行政や部落解放運動のあり方などが影響しているものです。しかも、なお多少の格差が残されているとはいえ、それは以前のようにすべての同和地区にほぼ共通して見られる現象ではなく、特定の同和地区や階層にみられる部分的・限定的な問題になってきています。したがって、残存している格差のすべてを短絡的に部落差別と結び付け、部落差別の結果であるとはいえなくなっていることを示しています。

 また、同和地区に生起するすべての問題を部落差別の結果とみなすことは、部落問題と今日の社会矛盾とを混同した非科学的な見方であり、解決の方向を誤ることになります。

2、同和地区にみられる問題の基本的な性格と解決の方法は、むしろ今日では同和地区内外に共通してきており、社会保障や教育・雇用・産業対策などの一般行政水準を大幅に引き上げることでしか解決できない段階に至っています。同時に、同和行政による条件整備を生かしきる同和地区住民の主体的力量の成長・発揮が求められています。

 「21世紀に部落差別を持ち越さない」決意を現実のものにするためにも、同和地区と同和地区住民だけを対象とする特別対策を終結して、憲法の保障する暮らし・福祉・教育などの充実をはかることが必要です。

3、同和行政の終結とは、同和対策事業の進捗にともない、地区実態調査などをふまえ、部落問題解決の到達段階を確認し、住民の主体的な取り組みを前進させ、自治体との合意のもとに「特別対策」を終わらせ、自立・自治・連帯を前進させていくことです。しかし、同和行政の終結は、一般行政水準の引き上げを前提条件とするものではありません。憲法の保障する暮らし・福祉・教育などの充実は、同和地区内外住民の共通の要求や課題にもとづく協力・共同のたたかいのなかで実現させていくべき性格の内容です。

三 、 同 和 行 政 の 目 的 と 性 格

1、同和行政は、同和地区の現実や国民の意識のなかに残存している旧身分を理由にした差別の残りものを早急に取り除くために、一般対策を補完してとられている行政上の特別措置であり、そのような特別措置を必要としない状態を一日も早く実現するための経過的・特例的な措置です。したがって、事業の進捗にともない課題が達成されれば、事業内容と施策対象の限定化、段階的解消、終結が必然化してくるものです。

2、一般に社会問題の解決にあたって行政がなしうることは、問題解決のための条件整備であって、行政的措置だけで問題の解決をはかることはできません。

 同和行政も例外ではなく、同和対策事業という行政上の特別措置によって住宅・生活環境の改善や、教育と職業の機会均等など生活の安定・向上のための条件整備を行うことはできても、それを生かしきる同和地区住民自身の主体的な力量の成長なしには、部落問題の解決を展望することはできません。

 したがって、部落差別がある限り同和行政は必要であり、その責任は行政にあるとする「同和行政万能論」や「行政無限責任論」は、同和行政本来の目的や性格からみて基本的に誤っています。

3、格差是正が基本的に達成されているにもかかわらず、特別措置である同和対策事業を継続ないしは一部であれ強化することは、同和地区住民の自立・自治・連帯を妨げるとともに、国民のあいだに生みだされれている「逆差別」意識を強め、部落問題の解決を遅らせることになります。労働省の一部の事業や、一部の自治体における高齢者保健福祉10ヶ年計画(通称「ゴールドプラン」)や障害者対策など一般行政のなかに、新たに「同和」の特別枠を設けるような動きもみられますが、これも「同和の特殊化・別格化」を継続することであり、部落問題の解決にはつながりません。

4、同和行政は、特別措置の対象を確定するために特定の地域を「同和地区」と指定し、その地域に事業や施策を重点的に実施する特別対策であるところから、部落を周辺地域から隔離する分離主義的な「別枠行政」におちいりやすい性格を本来的にもっています。そして、個人給付的事業の受給資格として「属地」ではなく、「属人」主義にもとづいて旧身分を問題にし、部落住民を国民から隔離・分離し、その認定にあたっては運動団体の推薦を認め、不公正拡大の口実を与えることにもなってきました。同和地区内外の分け隔てを、個人給付的事業などにかかわって今後もなお何らかの措置として継続することは、同和地区内外の隔離・分離をさらに強めることになり、融合を阻害し、同和行政本来の目的である部落問題解決の促進に反する事態を生みだします。

5、1965年の「同対審答申」が、「同和問題は・・・もっとも深刻にして重大な社会問題である」とし、「部落差別が現存するかぎりこの行政は積極的に推進しなければならない」と述べていることを引用して、同和行政をさらに継続実施する根拠とされていることがしばしばあります。「答申」は、当時の同和地区の劣悪で低位な実態を目の前にして、一部で進められていた同和行政を全国的な流れに本格化させる必要から、「未解決に放置することは断じて許されない」との立場で「国の責務」を明確にし、「国民的課題」にすることを具体的にした点で積極的意義をもっていますが、上記の引用文は、そうした歴史的条件のもとで述べられたものです。しかしその後、同和地区の実態は、社会の変化や同和対策事業の取り組み、同和地区住民の努力もあって、今日では「答申」がだされた当時においては想像もできなかったほど著しく改善されています。一方では、「解同」による差別糾弾闘争などにより自由な意見交換が阻害され「新たな差別」や不公正が生じています。同和行政は部落問題解決の条件整備であり、「差別が現存」している実態も大幅に変化した今日では、差別的言動が受け入れられない状況を実現した地域社会も生まれてきており、部落差別は同和地区内外住民の連帯で克服できる段階に達しております。

 今日「答申」から基本的に受け継ぐべきことは、部落問題を早期に解決することであり、今日の実態に即した行政展開を行うことです。したがって、1986年の「基本問題検討部会報告書」のなかでも、「(同対審)答申を現在においても絶対視して、その一言一句にこだわる硬直的な傾向がみられる」が、「同和問題の現状や同和地区の実態は、同対審答申の当時とは、かなり異なったものとなっており、この答申については、改めて20年余という時の光に照らしてその意義を認識していく必要があ」り、「答申の具体的な内容については、同和問題や同和地区の現実の動きに即して、その妥当性を見直し、現実の動きに即した行政を展開することこそが真に同対審答申を尊重するということである。」と述べられています。

6、「未指定地区」とか「事業未実施部落」といわれていることについては、1935年(昭和10年)の中央融和事業協会が調査し把握した5367地区に対し、現在対象地区として指定されているのは4603地区で、すべてではないことが、同和対策事業継続の根拠とされています。しかし、「地区指定」されなかった要因は、部落をとりまく諸条件によってすでに部落が解体していたり、部落の実態からみて特別措置が必要でなかったり、「寝た子を起こすな」の意識が地元に強く、地元関係者の利害ともからんで同和対策事業の実施を拒否するなど、一様ではありません。また、「未指定地区」の多くは、一部を除いて小数点在部落です。

 したがって「未指定地区」が残っているからといって、改めて「地区指定」をして新規に同和対策事業を実施することは、同和行政の本来の目的・性格とその功罪からいっても、また、地元の実状ともかかわって現実的ではなく、実態的に改善が必要であるなら一般対策で実施すべきです。

7、「解同」は、「差別の法規制」導入や「新部落解放総合計画」の策定を狙い「第三期・部落解放基本法制定要求運動」と称して、特に自治体に「基本法」制定につながる「宣言」や「条例」を採択させる策動を強めています。

 他方、国に対しては、「日本の人権政策についての提言」や「差別撤廃に関する基本政策大綱(案)」などを提起し、依然として「基本的な法律の制定」を求め、人権問題を特定の差別問題に限定するとともに、部落差別の別格化をしつようにたくらんでいます。

 しかし「基本法」は、同和行政の本来の目的や性格に反し、排他的分離的な施策を恒久化し、部落と差別を半永久的に固定化するもので、政府もこれまで繰り返し否定してきたものです。また、憲法が示す人権条項を一部の差別問題に矮小化するものです。

障害者や高齢者・女性などの人権侵害・人権保障にかかわる問題や、人種や民族などにかかわる人権問題と封建的身分制に起因する部落問題とは、その歴史的・社会的性格も解決の方法も違うものです。したがって、これらの差異を無視して、部落差別の「法規制」をも含む「基本法」を要求することは、基本的に誤っています。

四 、 部 落 問 題 解 決 の 到 達 点

 同和地区の生活環境や就労・教育の実態は著しく改善され、周辺地域との間にみられた格差も急速に縮小し、自治体平均と大差ないか、あるいは逆にそれを上回っている自治体も多くなっており、部落問題をめぐる国民の意識も大きく変化してきています。

1、全解連が1993年3月に実施した「同和行政実施状況調査」では、全国274の市町村からの回答を集約していますが、 1991年度末現在における同和対策関係物的事業の残事業量については、「残事業なし」の市町村が33.6%で、「10%未満」の市町村を含めると、全体の56.2%と過半数の市町村で物的事業は完了または完了に近づいています。 事業種目別にみても、大方の市町村で公的施設を含め物的事業はすでに完了もしくは完了に近づいており、都市の一部の大型部落において住宅建設がやや遅れているほか、一部の市町村で汚水雨水幹線整備や生活道路・河川改修などの進捗がやや遅れているにすぎません。

2、現行法の制定を前に政府が把握した「登録残事業」は、約3267億円です。しかし、このなかには地元の合意が得られていない事業なども含まれています。1992年度の進捗率は国費ベースで20.5%であり、「進行管理」を十分行うなら法期限内事業の完了はおおむね達成できる見通しです。なお、事業計画が承認されている事業は別として、地元の合意が得られず法後に事業が残ったものは、一般対策で対応すべきです。

3、きわめて劣悪な状況におかれていた同和地区の住宅事情は、全体として著しく改善され、すでに1985年の政府調査の結果でも、同和地区における世帯員一人あたりの畳数は9.5畳で、全国平均(9.2畳)と、特に差異はみられません。最近全国各地の自治体で実施された調査結果をみても、世帯一人あたりの平均畳数は、多くの同和地区において当該自治体平均と大差ないか、あるいは逆にそれを上まわるに至っています。

4、かつての同和地区においては、零細農民と日雇い・臨時雇などの不安定雇用者が大半を占め、職種にも大きな片寄りがありました。しかし今日では、不安定雇用者の比率は、全国平均では増加傾向を示しているのに対し、同和地区では急減ないし減少の傾向を示しているところが多く、特に若い年齢層や高学歴層におけるほど、その比率が著しく減少し、雇用の安定化がすすんできています。職業構成の面でも、若い年齢層や高学歴におけるほど「専門的・技術的職業」や「事務的職業」従事者の比率の格差も縮小し、また、相対的に大きな経営で働く人が増加してきているなど、就労状況が急速に改善・向上してきています。就職の機会均等が「部落」を理由に拒まれていた実態は、全解連も参加した「就職差別撤廃共闘会議」などの運動の前進により、統一応募書式の徹底や、応募者の能力と適性に応じた選考システムの定着にともなって、基本的に解決されています。

5、著しく高かった同和地区における失業率も、急速に減少傾向をたどってきており、今日では、失業率は同和地区によってかなり異なっており、すべての同和地区において失業率が高いとはいえなくなっているだけでなく、むしろ失業率が平均よりも低い同和地区も少なくありません。また、同和地区においても、高学歴層におけるほど失業率は低くなっています。

6、教育の問題では、戦後の長欠・不就学の克服、非行問題の解決、低学力の克服、進路保障などが同和教育運動として幅広くとりくまれてきました。

 その結果、長欠・不就学問題は1950年代後半から1960年代初めまでに基本的に解決され、非行問題も、今日同和地区の子どもに集中してみられるという事態もなくなりました。

 低学力の克服も前進してきています。かつてのように、同和地区の子どもの多くが低学力であるという実態は基本的に解決されました。最近の教育調査でも、府県段階でみると低学力の子どもの中に占める同和地区の子どもの比率がやや高い傾向がみられますが、市町村段階でみるとほとんど差のない地域も少なくありません。

 高校進学率は、1963年度には全国平均66.8%に対し同和地区では30.0%と36.8ポイントの格差がありましたが、1975年度には全国平均91.9%に対し、同和地区平均87.5%と4.4ポイントの格差となりました。その後、5〜7ポイントの格差で推移し、1992年度は全国平均95.9%に対し、同和地区平均91.2%と4.7ポイントの格差となっています。府県段階でみると同様の傾向がみられますが、市町村段階でみると同和地区生徒の進学率の方が高い地域も少なくありません。こうした格差の縮小や解消は、同和地区住民の生活の安定、保護者や教育関係者の努力、奨学金などの経済的措置によって実現したものです。かつて存在していた、社会的・経済的要因によって教育の機会均等が保障されていないという実態は大きく改善されました。

7、社会的交流の進み具合をおしはかる一つの指標として、同和地区内外の結婚率があげられます。1989年に実施した全解連調査によっても、夫婦とも同和地区が50.2%、どちらか一方が同和地区外が34.1%、夫婦とも同和地区外が9.4%となっています。これを夫の年齢別にみると、おおむね10歳若くなるごとに10%ずつ同和地区外との結婚が増え、20代では60.2%に至っています。

 また、最近の自治体による同和地区内外の結婚に際しての被差別体験を聴取した結果をみても、七割前後の人々が何らの反対もなしに結婚しています。同和地区出身者ということで結婚式への出席を拒否、あるいは式後もつき合いを拒否された人は、いずれも一割台にとどまっており、さらに現在もなお親・兄弟姉妹・親戚からつき合いを拒否されているという人も、一割以下となっています。

 いずれにせよ、近年になるほど同和地区内外の結婚が急増してきているだけでなく、結婚にともなう被差別体験も急減してきていることがわかります。

8、一般的に差別問題は、直接的、具体的、実質的な権利侵害や実害をもたらす言動です。法務省の調査によると、「差別待遇(同和関係)」の「人権侵犯事件」は、1969年の「同和対策事業特別措置法」制定後の受理件数の推移をみてみると、1974年35件(全体の人権侵犯受理件数12561件)、1984年108件(14050件)、1990年45件(15067件)、1991年26件(15202件)、1992年27件(16189件)となっています。このうちすべてが人権侵犯と認定されていないことから、侵犯件数はさらに少なくなります。この数字からもわかるように、国民全体では「人権侵犯事件」の受理件数が毎年増加しているにもかかわらず、「差別待遇(同和関係)」は減少傾向あり、部落差別だけが他の人権侵犯の内容に比較して大きな比重を占めるという状況になっておらず、この面での前進も着実に進んできています。

 いずれにせよ、今日では行為者も特定できず、その人数も動機も明かでない「落書き」の件数だけでは、部落差別が「深刻化」していることの客観的な証拠にはなりえません。

9、主体的条件の成長では、同和地区の住環境などの客観的な変化が、同和地区内での自立にかかわる主体的条件を整えてきています。就労構造の激変により、同和地区内においても労働者階級の比率が就労人口の70%となってきています。40歳未満の年齢層では、高校卒業以上が過半数を越え、高学歴化が進行してきています。

 同和地区内外の社会的交流や結婚の増大は、同和地区に残存する前近代的な「共同体」意識を弱めさせ、同和地区の人々の生活様式の改変をもたらしています。こうした変化は、同和地区のなかで規律性を高め、生活基盤の安定化をうながし、相対的に近代的・民主的意識を定着させ、社会的交流の増大へとつながっています。

また、同和地区の公的施設が部落外の人々にも開放され、民主的に運営され内容も設置目的に沿っているところでは、さまざまな行事や活動に参加することを通じて、同和地区内外の人々の社会的交流に広がりと深まりがみられ、連帯・融合が促進されています。

五 、 残 さ れ て い る 問 題 点

 「残されている問題」は、部落差別の結果というよりは、むしろ同和地区内外に共通した一般的要因にもとづくものとなっています。

1、初期に建設された公営・改良住宅や公共施設が老朽化し、新しい住宅や施設にくらべて広さなどの水準が見劣りしてきていますが、これらは時間的経過によるもので、いずれも同和地区だけにみられる現象ではなく、部落差別とは何の関係もありません。したがって老朽化した公営住宅や公共施設の建て替えや諸条件の改善は、同和地区内外を問わず一般対策で対応していかなければならない課題です。

2、同和地区における不安定雇用労働者(日雇・臨時雇・パートなど)の比率についてみると、1977年には全国平均(8.9%)との格差は7.6ポイントにまで縮まりましたが、その後は縮小せず8〜10ポイントの格差が続いています。これは主として、学歴とも関連して「60歳以上」の高年齢層と、女子における不安定雇用者の比率の高さが要因になっています。

 不安定雇用者の比率の高さは、一般的に年金水準が低く、低所得のため、高年齢になっても働かざるをえないことが基本的な問題です。したがって、生きがい対策ではなく、高齢者の能力を生かし、働く希望をかなえる対策が必要です。

 また、不安定雇用者は不況の安全弁にされており、同和地区内外を問わず不安定雇用者や高齢者の首切り・合理化が強行されるなかで、さらに拡大されることが予想されます。これは部落差別によるものではなく資本主義の矛盾であり、労働者の要求を抑圧する労働組合などのあり方も反映しているものです。したがって国民の立場から首切り・合理化に反対し、国民本位の不況・雇用対策の強化を求めなければなりません。

3、不況の深刻化や輸入自由化、大企業優遇政策にともなって、部落の農家や食肉関連業者、皮革・履物関連産業、再生資源集荷業、土木建築業などは厳しい状況が余儀なくされています。しかし、これらの問題は、部落差別の結果でも、部落にだけみられる課題でもなく、したがって同和地区だけを対象にした特別対策では解決しえない一般対策の問題であり、国民共同の取り組みで日本の経済主権を守り国民本位の経済に変えていく課題でもあります。

4、同和地区における生活保護世帯の比率は、以前に比べると低下してきているとはいえ、現在でもその比率は、全国平均に比べると概してかなり高くなっていますが、その比率は同和地区によって著しく異なっており、全国平均と大差ないところも少なくありません。しかし同和地区においては、五年以上あるいは十年以上の長期にわたって生活保護を受けている世帯の比率が相対的に高くなっています。生活保護世帯の存在は、基本的には、資本主義の高度化にともなって相対的過剰人口が生み出されるなかで、不安定雇用者や失業者などの生活困窮世帯が高年齢層を中心に増加してきていることに起因している問題です。しかし、同和地区、特に都市部の同和地区においては、改良・公営住宅への入居に際しての世帯分離にともなう高齢者世帯の増加や、来住世帯のなかで占める高齢・低所得階層の比率の高さなどが、生活保護世帯の比率を相対的に高くしている要因となっています。

5、最近の府県段階の教育調査によると、低学力の子どもの中に占める同和地区の子どもの比率がやや高い傾向があります。近年は特に、同和地区内の生活困難層の子どもに教育問題が集中して現われていますが、こうした傾向は同和地区外の生活困難層の子どもにも見られ、同和地区内外で共通した問題になってきています。なお、地域によっては、公務員採用における「同和枠」の存在や「解放教育」など同和地区の子どもへの特別措置の常態化などによって、子どもの自立が阻害されていることが、地域・家庭の教育力が十分育っていないこととも重なって、高校・大学進学率の格差に反映していると考えられます。高校中途退学の比率は、1991年度で全国平均2.2%に対し、同和地区平均4.2%とやや高くなっていますが、これも地域によって異なっています。さらに、同和地区生徒の中途退学の理由は経済的理由ではなく、「学校生活不適応」「学業不振」「進路変更」など、いずれも中途退学した高校生全体の理由とほぼ同様の傾向を示しています。

6、大学(四年生大学・短期大学)進学率は、文部省調査では1991年度全国平均31.6%に対し、同和地区平均19.9%となっています。しかし、この数字は高校時代に同和奨学金を受けていたものが分母となっていたり、「把握が困難」とする自治体もみられるなど正確なものではなく、実態をみるうえでの目安にしかすぎません。また、高等学校卒業後大学に進学しない生徒が相対的に多いという事態そのものは、特別措置の対象とすべき教育上の「低位性」を示すものではありません。大学に進学するかどうかは、一定の教育水準(高校教育の保障)に到達した後に生徒が選択すべき進路の一つです。つまり、大学進学は基本的には生徒の生き方・進路選択に関わる問題です。

 仮に、経済的理由によって大学進学が困難であるという場合は、「教育の機会均等」の理念から奨学金制度の充実などで解決されるべきです。同和対策の奨学金制度は、こうした役割を果たしてきました。ただし、同和対策の奨学金制度が存在するにもかかわらず、1985年から大学進学率の格差が縮小していないということは、経済的条件以外の事情も働いていることを示しています。進学を希望しない場合、あるいは希望したとしても本人の学力・意欲などにかかわって進学できない場合など、生徒によって事情は一律ではありませんが、いずれにしても、大学進学は基本的には本人の努力や関係者との合意の中で解決されていくべき性格の問題です。

7、同和地区内外住民のわだかまりのない社会的交流は、全体的には前進していますが、一部の地域で「地域改善対策に係わる行政の主体性の確立、同和関係者の自立、向上精神のかん養、えせ同和行為の排除及び同和問題についての自由な意見交換のできる環境づくりの四つの課題」などが解消されておらず、阻害要因になっているところで十分すすんでいない状況がみられます。

六 、 憲 法 の 保 障 す る 暮 ら し ・ 福 祉 ・ 教 育

    な ど の 当 面 す る 課 題 に つ い て

 臨調「行革」路線により国民の暮らしと福祉、教育などは大幅に切り捨てられています。行政水準を「受益者負担」などの名のもとに低下させている自民党政治の枠組みは、国民との矛盾を深めています。いま国民は、憲法のかかげる平和と人権、民主主義の諸原則を政治と暮らしに生かすことを切実に求めています。

 ここでは、これまで述べてきた同和地区に「残されている問題」に対処し、「円滑な移行」をはかる課題、さらにそれらにかかわる分野での当面する国民的課題などに限定して、その解決に必要な憲法の保障する暮らし・福祉・教育などの充実を提起します。

1、まちづくりの基盤としての住宅・生活環境水準の引き上げ

(1)狭小で設備不備の公営・改良住宅については、住戸改善事業、建て替え事業を住民参加のもとに計画的に実施できるようにする。住戸改善事業の計画策定にあたっては、誘導居住水準(家族4人の標準世帯で、3LDK、91平方メートル)を基準に、国が三分の二に補助率を引き上げるなど経費補助制度を充実する。

(2)高齢者や障害者の生活と権利を守る立場から、住宅の設備や機能を改善する補助制度をつくる。

(3)生活にうるおいと安心をもたらすため、緑地や空地を計画的に配置する。

(4)公営住宅の建設費の補助単価および補助基準を引き上げる。

(5)都市の公営・改良住宅には、全戸数の二分の一以上の自動車駐車場を付置する。

(6)同和公営・改良住宅の家賃については、公営住宅に準じて適正化をすすめる。家賃算定基準から地代相当額をはずし、家賃の設定をおこなう。また、家賃の軽減制度を充実させるための補助制度を創設する。

(7)公営・改良住宅の管理・運営にかかわる経費補助制度を創設する。

(8)居住者のライフサイクルに合わせた住み替え制度を充実する。

(9)階層間の公正さを追求するために、民間借家の建て替えに対する低利融資、家賃減税・家賃補助など、国の支援を拡充する。また、持ち家の取得を望む層に対しても、住宅取得減税の強化など、負担を軽減する施策につとめる。

2、公的施設の整備水準の引き上げ

(1)公的施設を全市(町・村)的に拡充・整備し、機能をはたし得る運営費補助や職員の配置をおこなう。

(2)隣保館は地域の実情に応じて、コミュニティーセンターとしての役割や総合福祉センターとしての役割の充実をはかり、実態に応じた名称変更を進める。また、自治体は全体的にコミュニティーセンターや総合福祉センターなどを計画的に整備し、国は補助制度を充実する。

(3)児童館や児童センターなどの施設を十分整備する。

(4)住民の自主的な教育文化活動を援助する施設の拡充をはかる。

3、教育行政水準の引き上げ

(1)就学援助の予算を大幅に増額し、支給額を引き上げる。準要保護の認定基準は所得を基礎としたものに改め、対象を生活保護の二倍まで引き上げ、手続きも民主的にする。

(2)同和加配教員制度を全面的に廃止し、小学校・中学校においては、要保護などの子どもの在籍数・在籍率などを基準にした新たな「教育困難校加配」教員制度に改組する。高校においては、中途退学の生徒数・生徒比率などを基準にした「教育困難校加配」教員を新たに配置する。

(3)小学校・中学校において35人学級を直ちに実現し、高校においても35人以下(職業科・定時制はさらに少人数)の学級を実現する。幼稚園においても学級定数の引き下げをおこなう。

(4)公立・私立をあわせた高校の教育条件を整備して、希望するすべての中学卒業生に高校教育を保障する。私学助成を大幅に増やす。

(5)高校に進学しなかった生徒や中途退学した生徒の社会的自立を援助し、再教育の要求の実現を援助するための制度を創設する。

(6)高校・大学の授業料を大幅に引き下げ、教育費の父母負担の軽減をはかる。また、「教育の機会均等」を保障するために、給付による一般奨学金制度を新設する。

(7)日本育英会の奨学金制度については、「教育の機会均等」の保障を基本理念とし、原則として生徒・学生の経済的必要度に応じて適用する制度に転換する。また、貸し付け条件の緩和及び貸し付け額の引き上げ、対象枠と免除枠を大幅に拡大する。さらに、入学仕度金の無利子貸与制度を設ける。

(8)地方自治体が行っている給付制奨学金制度に対し、国庫補助金制度を新設する。給付制奨学金制度をもたない自治体は、新設する。

(9)国会で批准された「子どもの権利条約」を子どもに知らせるとともに、各分野(医療・福祉・教育・司法など)で条約の理念・原則を具体化するための施策を確立する。

4、社会福祉や社会保障水準の引き上げ

(1)児童福祉法にもとづいて、現行の公的保育措置制度を維持・拡充し、将来的には全額国庫負担にする。また、保育料の引き下げ・減免枠の拡大、職員配置基準の引き上げをすすめる。

(2)生活保護は、障害者や高齢者など制限扶助主義の傾向をあらため、保護費の水準を大幅に引き上げる。また、生活保護受給者に不当な人権侵害をやめ、受給基準の公表など手続き上も申請者の人権を保障する。さらに、生活福祉資金の修学資金を実態に応じた額に引き上げる。

(3)国民健康保険料の低所得世帯への高負担おしつけをやめ、国保制度に対する国の責任を明確にして国庫補助率を従来にもどし、保険料(税)を引き下げる。また、滞納者への保険証の未交付をやめ、給付内容も健保なみにする。

(4)全額国庫負担による7万円の最低保障年金制度(緊急に月額5万円)の創設と、それに伴う現行の基礎年金の上限を引き上げる。基礎年金に対する国庫負担を三分の一から、ただちに二分の一に引き上げる。また、本人掛け金の引き下げ、60才年金支給を継続する。

(5)老人医療費の無料化を復活する。老人差別医療を撤廃し、いつでもどこでも安心して必要な医療が十分に受けられる体制を確立する。地域医療体制の拡充では既存の施設を活用し、住民が日常的に健康相談を受けられる体制として「住民健康センター」を歩いて利用できる範囲に配置する。また、必要な訪問看護婦を診療所・病院に配置し、「寝たきり」老人・障害者・在宅患者等に対して、保健婦やホームヘルパーと連携し、訪問看護・訪問リハビリを行う。訪問歯科診療も行う。

(6)「高齢者保健福祉計画」(ゴールド・プラン)への国庫負担を大幅に増額し、計画を早期に実現する。特別養護老人ホームは65才以上人口の1.1%にすぎない入所率を少なくとも二倍にするために、家族が住む街のなかに大量に建設する。また、「家族が介護できない場合」(入所資格)という規定を削除し、特養ホームの設置基準(定員50名以上)を改正して小規模のものもつくれるようにする。そして、公共用地の提供、用地費への補助制度をもうけ、個人のプライバシーをまもるために個室制を基本とし、「生活の場」にふさわしいものにする。看護婦・ヘルパーなどケア付き老人住宅は高齢者の5%以上の入所率をめざす。

(7)在宅福祉関係事業の国庫補助率を80%に引き上げ、充実をはかる。ホームヘルパー(家庭奉仕員)は、すべての市町村で必要な人には週7日の訪問ができるよう、政府計画を少なくとも倍増し、身分保障、労働条件・研修を抜本的に改善する。あたたかい給食サービスを少なくとも1日1食、入浴サービスを週1回、また、ふとん乾燥車も配置する。既存の老人いこいの家、福祉センターなどを活用して、車イスで歩いてかよえる範囲に日帰り介護施設(ディサービス事業)を設置する。また、痴呆性老人も受け入れられるよう、国の職員配置基準を大幅に改善する。いつでも利用できる短期入所施設(ショートスティ)及びベットを大幅に増やし、また、介護者が入院した場合など長期間入所できる制度(ロングスティ)を設ける。

5、産業・就労対策の水準の引き上げ

(1)これまでの農畜産物価格引き下げ政策、競争原理導入、食管制度の部分管理化、農畜産や海産物輸入自由化政策をやめて、食糧自給率を高める。また、米の減反政策を大幅に緩和・見直し、復田経費への補助を抜本的に強化する。生産者米価の生産費を補償し、消費者米価を引き下げる。そして、政府の農産物価格保障制度を強める。自主的な経営改善、組織化を援助するため、機械・資材の独占価格を引き下げ、農林漁業の協業化、営農集団・生産組織に対する補助・融資等の支援を行う。

(2)地場産業や伝統産業をまもり発展させるために、輸入を制限する措置をとり、振興・発展計画を創意性を発揮して作成し、公的な援助を強める。山村、過疎地域の産業・就労対策として、農林・畜産・ハウス栽培等の近代化施設整備事業を積極的に推進し、営農指導を強める。

(3)消費税を廃止する。大企業優遇税制を公正民主的な税制に転換するとともに、税務署による強権的な徴税を規制する。また、納税者の権利をまもるために「納税者憲章」を制定する。中小企業対策予算を大幅に増やし、国・自治体や金融機関の融資の返済が困難な業者に対して、「返済猶予制度」や「借り換え制度」を創設する。また、経営が困難な中小業者に対し、無利子の「生活資金融資」制度をつくる。中小業者の経営・技術・開発力の強化のために、情報、技術などの国・自治体の支援体制を強化する。事業転換、新分野進出、新規開業などにたいする助成を強化する。

(4)中高年齢者の労働者資質向上・技術取得のため、職業安定促進講習事業を役立つ内容にし、制度活用の普及を実施する。雇用機会の地域的不均等を縮小するため、地域ごとにきめこまかい雇用の拡大をはかる措置をとる。技能訓練を職業効果に役立つ内容にするため、教科の新設、高齢者分野の充実をはかる。パ−トなどに社会保障制度を適用し、普及を徹底する。雇用創出をはかる中高年令者事業団にたいする助成を行う。国と地方自治体の責任で高齢者の体力、能力にみあった就労を保障する。年齢による雇用差別を禁止し、企業に高齢者雇用の枠を設ける。応募者の能力と適性に応じた選考・採用システムの強化をはかる。

(5)経営指導員及び高齢者担当職業相談員の充実・指導資質の向上と賃金待遇などの改善をはかる。

(6)国は、ガット(関税貿易一般協定)のウルグアイ・ラウンド(多角的貿易交渉)による農産物の輸入自由化や皮革・革靴製品の関税引き下げ「合意」を撤回し、地場産業従事者などの生活と地域経済をまもる。

(7)家内労働者の低工賃と長時間労働の解消や権利の向上、社会保障の拡充、労働諸条件の最低限の保障の確立などを実現するため、現行家内労働法の改正をはかる。また、家内労働者に対して「賃金の未払いの確保等に関する法律」を適用するとともに、労働災害保険特別加入者についてはただちに実施する。

6、人権擁護行政の一層の民主化

 全解連が主張してきた公正・民主・公開・住民合意を行政のあり方としてさらに徹底するとともに、行政手続き法にもとづく行政機関の行為のうち、主として「申請に対する処分」、「不利益処分」及び「行政指導」の事前手続きの整備の一層の民主化をおこなう。法務省人権擁護局の「人権侵犯事件調査処理規定」を改正して、 1国民に申請権を保障する、 2両者の意見を同時に聴取する機会の提供、 3調査結果を文書で回答する義務規定を設ける、 4このための予算・人員増をはかる。また、人権擁護委員の選出や委員会の運営を民主的にし、 1委員会議事録の公開、 2報告の義務、 3機関の民主的体制強化をおこなう。

六 、 お わ り に

1、1922年に全国水平社は「人間を尊敬することによって自ら解放せんとする」と高邁な理想を掲げました。全解連はその精神を正しく継承・発展させて、独占資本や反動勢力の差別政策と「解同」の蛮行とたたかって、平和と民主主義を擁護し、部落問題の解決、すなわち国民融合の前進を進めてきました。

 同和行政は部落問題解決の条件整備であり、「差別が現存」している実態も大幅に変化した今日では、差別的言動が受け入れられない状況を実現した地域社会も生まれてきており、部落差別は同和地区内外住民の連帯で克服できる段階に達しております。そのことは、『基本方向』で、「部落問題がなお解決されていないのは、わが国において民主主義が成熟していないからであり、日米独占資本がこの民主主義の発展を妨げているからである。したがって、部落問題の解決は、独占資本と反動勢力の横暴な支配を民主的に規制し、民主主義を確立・推進するたたかいを前進させることによって実現できる」とする課題に本格的に取り組む時期を迎えたことでもあります。

 今日、大企業への民主的規制は、第一に国民の生活をまもり改善するために、第二に経済政策の方向を転換し日本経済の進路を方向づけるために、第三に日本資本主義の異常な体質を改善するために、避けて通れません。規制の政策は、特権的地位を築いてきた大企業に対して社会的責任を明確にし、国民生活に損害をおよぼす横暴をおさえることであり、経済の運行を大企業への特権的優遇をなくし国民本位にすることです。憲法の保障する暮らし・福祉・教育などの充実、民主主義を前進させる取り組みは、まさに国民本位の日本経済再建の道と重なるものです。

2、全解連は、部落問題解決の当面する課題を5点に整理した「日本国憲法をまもり、いまこそ部落問題の解決を」(略称「部落問題アピール署名」)を当面、300万目標にとりくみます。

1 旧身分を理由にした差別の垣根をとりはらい、部落問題の正しい理解を広げ、部落差別を受け入れない社会的世論を高め、部落内外の交流と連帯を促進します。

2 不公正・乱脈な同和行政を是正し、同和対策事業の早期終結と一般行政への移行をすすめます。

3 憲法の平和的・民主的原則をかたくまもるとともに、憲法の保障する福祉・社会保障の充実を求めます。

4 部落問題解決に逆行し、部落差別を半ば永久的に固定化する新たな法律や条例には反対します。

5 国民の自由な意見交換を妨げ、新たな差別をつくりだす糾弾行為を社会的にとりのぞきます。

 全解連は、この国民的合意と共同の課題でもある「同和対策事業の早期終結と一般行政への移行」のために、世界に誇る憲法を職場や暮らしに生かす立場から、実態手続き的にも公正・民主、住民が主人公という地方自治の原則を生きたものにし、「自立・自治・連帯」の運動方針にそって民主的な地域社会づくりをはじめ、同和地区内外住民の共同の取り組みを通じて世の中を住みよくする取り組み、同和地区住民自身の人間的な高まりと市民的連帯をつちかうために奮闘するものです。

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