(1)平成一一年五月一四日判決言渡・同日原本領収 裁判所書記官 福内洋一
   平成一〇年( )第一〇号町議会議員除名処分取消請求事件
   平成一一年三月五日 口頭弁論終結

   判 決
    当事者の表示  別紙当事者目録記載のとおり
           主 文
    一 被告が平成一〇年一月一九日原告に対してなした川島町議会議員の除名処分を取り消す。
    二 訴訟費用は被告の負担とする。

(2)声明
 本日徳島地裁は川島町議会の同議会議員日出和男氏に対する除名処分取消の判決を言い渡した。日出議員に対する除名処分の理由は、議会の質問で解放同盟(以下解同という)森本一族の不正、不当な利権あさり、町への人事介入に対し「えせ同和行為」であると厳しく指弾球したことが無礼な差別発言であるということにあった。しかし日出発言が的確であったことは徳島県警の森本一族に対する検挙などその後の経緯によっても余りに明らかである。
 同町議会の除名処分は町、議会が解同森本一族と癒着し、そのいいなりになってきたこと、解同への批判を許されざるものとする解同タブーに支配されていることによるものである。
 それは議会の議員発言を否定する点で、議会制民主主義への挑戦でもあった。

 本日の判決は、日出発言が正当でありその除名処分は違法なものとして取消したもので、解同に対する批判の自由を認め、民主主義を護ったものとして高く評価することが出来る。
 日出除名についてはすでに執行停止に関して、高松高裁、最高裁判所において違法であるとの判駅がなされ確定している。
 私達は地裁判決がなされた現在川島町議会がいたずらに抗争することを止め控訴を断念するよう強く求めるものである。川島町議会は議員が力をあわせ、解同森本一族によって喰いものにされてきた町行政のゆがみを正すことに全力を挙げることが急務である。
 川島町議会が地方自治の精神に則っとり住民の期待に応え、本来の責務を果たすよう心から要望する。
 右声明する。
   一九九九年(平成十一年)五月一四日
日出和男除名処分取消訴訟弁護団

(3)

一 原告の主張(一部抜粋)
 1 地方議会議員の除名処分に対する司法審査のあり方について
 (一) 本件は、地方議会の議員の議会における発言内容を理由とする除名処分が問題となっているのであるから、懲戒処分の理由及び除名処分が選択されたことの適否が法律や議会規則に照らして積極的に審査されなければならないものである。
 すなわち、地方議会は言論の場であるから、議員の言論表現の自由は最大限保障されなければならないのであり、司法審査の限界を検討する上で、議員の表現の自由に対する配慮が当然必要である。そもそも、表現の自由は、議会制民主主義の過程を支えるものとして重要な意義を有する。本件は除名処分であるが、除名処分によって議員は議会から排除され、議会での発言の機会を完全に失い、誤りをその後の議論で正す機会さえ失うことになる。したがって、地方議会に自律権が認められ司法審査が一定限度制限されるとしても、それは無制限なものではなく、議会における表現の自由が侵害されひいては民主主義が阻害されるおそれがある場合には、裁判所は、謙抑的であってはならず、積極的に司法審査を行わなければならない。
 (二)自律権が認められる団体は、地方議会以外にも、例えば、宗教団体や政党等があるが、地方議会の場合、憲法や法律で存在や役割、構成、運営方法が定められており、宗教団体や政党のように団体の自主性に任されているわけではない。従って、いずれにも団体の自律権が認められるとしても、地方議会の自律権の内容を政党や宗教団体と同様に広く考えるわけにはいかない。
 地方議会は、直接の構成員は議員であるが、全住民の代表機関であって、宗教団体や政党のように団体の目的に賛同して集ってきた特定の者たちだけで構成されているわけでない。すなわち、いわば住民の全員加盟制団体である地方自治体の代表機関である地方議会は、議員に対して、特定の政治的立場からの処分を厳に戒めなければならない。
 また、議員は住民各層の利益や意見を議会に反映させることを期待されている。住民の意見の多様化が進んでいる今日、どの議員も欠くことができない貴重な存在である。こうした議員の地位と機能の重要性にかんがみれば、議員の除名処分は、住民と議会とのパイプを断ち切ることを意味し、宗教団体や政党の場合と異なり、処分を受けた当該個人の問題に止まらない面を有することになる。
 以上の次第で、本件のような除名処分に対しては、裁判所の積極的な審査が求められるのである。

 2 本件除名処分の手続違反について
   被告川島町議会の平成九年第四回定例会における一般質問において、原告が地元解放同盟幹部の無法な町行政への介入、利権あさり問題を取り上げ、その際「解放同盟はえせ同和行為だ」などと発言したことに対し、平成九年一二月一七日、馳川議員らから、無礼の発言であり同和問題解消に心血を注いできた人々を深く傷つけ差別を助長する発言で議会の品位も大きく傷つけたとして懲罰動議が提出され、被告川島町議会は同日これを可決し懲罰特別委員会に付した。このように、懲罰動議は「解放同盟はえせ同和行為だ」との発言に対してのみなされたものであるが、同委員会は右発言のみでなく、富士清掃について阿波衛生社と比較対象して質問したことが利益誘導発言にあたるとして、これを懲罰理由につけ加え、平成一〇年一月一三肉、除名処分に付すべきであるとする審査報告書を提出した。そして、同月一九日、本会議において右報告書通りの事由により、除名決議がなされたのである。
 ところで、川島町議会会議規則(一〇九条)では、懲罰動議は文書によりかつ懲罰事犯があった日から三日以内に提出しなければならず、また懲罰動議がなければ懲罰委員会の審査は行えず、そして、懲罰処分の議決は、懲罰委員会の審査なくしては決定できない(一一〇条)とされている。このような規則の趣旨からいって、議会の懲罰処分は懲罰動議の範囲内でしか出来ないことは明らかである。書面に記載された懲罰事由から離れて別個の事由で処分が自由になし得るとすれば、書面による三日以内の懲罰動議を必要とする規則の手続的要件は無に帰してしまうからである。
 馳川議員が提出した懲罰動議においては、利益誘導発言は懲罰理由とされていない。それ故、懲罰動議になかった事由を懲罰理由につけ加えて行われた本件除名処分は、右規則に違背した違法があり、取り消されねばならない。


 3 被告川島町議会が主張する差別発言について
 (一) 「えせ同和」という言葉自体いわゆる差別用語でないのはいうまでもないが、そもそも「えせ同和」排除は同和問題における重要な国の基本方針の一つであり、その対象は運動団体にも及ぶことは総務庁が正式に決定し、発表しているところである。それ故、原告が解放同盟はえせ同和であると発言しても、それが当然に無礼発言や差別発言になるものではなく、解放同盟とりわけ原告の指摘した川島町等における解放同盟の実態がえせ同和と指摘されてもやむをえないものかどうか、それとも原告が全く事実に反することを述べたものかどうかを慎重に調査、審議し、その結果えせ同和行為と指摘すべき何らの根拠もないということになって初めて懲罰に付すことがあり得ることとなるべきものである。
 しかるに懲罰特別委員会の審査も議会の議決もそして徳島県知事の審決もその前提問題を全く不問にしたまま、解放同盟をえせ同和と指摘すること自体が、事実がどうであれ、無礼、差別発言ときめっけるものであって、これはまさに解放同盟を神聖にして侵すべからざる存在とする立論以外の何物でもない。本件除名処分は原告の指摘するえせ同和発言を根拠あるものかどうかを審査せず、発言自体を許されざるものとしてなしたものであり、この点ですでに違法不当なものと言わざるを得ない。

 (二) 川島町における解放同盟の状況等
   (1) 徳島県下での解放同盟の無法ぶりは全国的に顕著であるが、なかでも最も悪質で最早運動体とも言えないほど一族が支配し、解放運動とは単なる名目で、実態はその同族の同和事業の利益独占の手段にほかならない実情にあるのが川島町など麻植郡下での解放同盟の姿である。
 森本寛らは、父子で解放同盟の支部長等に就任し、その立場を利用して同和事業を独占してきた。昭和五四年一族の工事高は一億三千万円程度であったが、平成九年では二五億五ハ三五方円まで急上昇するに至っている。とくに、川島町では、町の公共事業費のうち平成七年度が五億三二二三万円七千円のうち四九・七パーセントの二億六四三八万一千円が同和事業費、平成八年度が六億二二一七万六千円のうち四三・四パーセントの二億七〇〇八万六千円が同和事業費となり、乏しい町予算のなかで同和事業にきわめて偏重している上、その五〇パーセント(平成七年)、四七・八パーセント(平成八年)を森本一族の会社が独占的に占めているのである。
 また、町のくみ取りについても、もともとは町内業者の富士清掃へ請負わせていたものを圧力により町外業者である森本一族の経営する阿波衛生社に請負わせるようになり、平成九年には同社の受注が四〇パーセントも占めるに至った。
 このような森本一族への利権の集中は、町当局への恫喝もしくは町当局との癒着によるものとしか考えられない。そして、町住民の誰もがこのような川島町における解放同盟の実態に心を痛めつつも、後難をおそれて公然と批判することができず、それをいいことにますます森本一族がほしいままに自治体を喰い物にしてきたというのが、原告質問当時の川島町の実情であった。
   (2) 平成九年六月町議会は、町工事等について町会議員等の三親等内企業の排除要望を決議し町はこれに従う形で要綱を決めた。しかし、右決議は解放同盟森本一族が同年四月一〇日に「行政交渉」と称して川島町会議員をひとりひとり解放同盟の拠点となっているこだま会館(隣保館)に呼びつけ、決議を迫り、応諾させ、町に強要したものである。その真の意図は後藤田哲夫議員の兄の経営する後藤田工務店を指名業者から除外させ、森本工務店が一般の公共事業まで独占しようとするものであった。
   (3)平成九年一〇月一日、川島町同和対策課職員であった山下明義が突然に教育委員会へ配置転換された。原告が調査すると、山下に差別発言があり、町として同職員を「同和問題の啓発に従事させ、自らの差別意識の解消を図らせるため」異動したということであった。
 山下の差別発言なるものは次のようなものであった。平成九年国の補助による同和対策事業として川島町が公園墓地造成事業を行っていたが、同事業も例によって森本一族の株式会社森本工務店等が請負っていた。山下は担当職員として現場に臨み、墓石業者に対し「地域の事業は難しいので、この人達のいうことをよく聞いてせないかんでよ。」と言ったのを居合わせた森本寛が差別発言であると町に因縁をつけたものである。しかも、森本によって山下の発言は「この辺の人は面倒でよ。」と言ったとされ、それが差別であるとして、山下職員の処分を町に強要した。
 結局山下は「日頃から差別意識があり、うっかり口に出た。」と反省をさせられた上、前記配転処分を強行されたものである。しかし、原告の調査の結果、山下が述べたとする「この辺の人は面倒でよ。」発言は全くのデッチ上げであり、このデッチ上げ発言をもとに解放同盟の干渉によって町職員の配転人事が行われたことが明らかとなった。山下の差別発言なるものが森本寛によってねじ曲げられつくり上げられたものであることは、原告の山下に対する直接の聴き取りによっても確認しているが、そもそも解放同盟のなかでも超大物であり、粗暴さで近辺におそれられている森本寛の面前で、山下が「この辺の人は面倒でよ。」などと発言できるはずがない。
 (三) このような解放同盟森本一族の行為は「部落解放」の美名のもとに実際は一族の不当な利益を得るための利権あさりであるとともに、町行政に干渉した人権侵害行為であり、いわゆる「えせ同和行為」そのものである。このため、原告はこれら一連の森本ら解放同盟の行為は「えせ同和行為におとるこっちや」、「解放同盟」の行為は「えせ同和行為じゃ」と指弾したものである(なお、原告発言が解放同盟組織全般を指したものでないことは、右発言に先行する質問から明白である。)。したがって、原告の発言は正に当を得ており、それは無礼発言でも、差別発言でも絶対にない。誤った同和の名による利権あさり、行政への不当な干渉を批判し正そうとするものであるから、むしろ真の意味で同和問題の発展とその解決に対して多大の貢献をしたものであり、その発言を理由とした本件処分は違法きわまりない。
 そして、原告発言の正しさは今般の徳島県警による森本一族に対する一斉検挙によって公的にも明らかとなった。前記争いのない事実等八記載のように、解放同盟森本一族の行動が「部落解放」を口実として自らの利権あさりに狂奔し、自治体財政を喰いものに、恫喝や、理不尽な行動を展開した「えせ同和行為」そのものであったことは解放同盟県連すら自認するところとなっているのである。

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