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ひねくれたオーディオ趣味のページ

特集・SMEアームのラテラルバランスの簡単な調整法

現在のラインアップ(12/01/21現在)

自宅地下室

大学研究室

実働していない機器


オーディオの記事はブログ(@nabelabひとりごと)にもあります。最近はそちらでもオーディオ記事を更新中。


ふたたびMCカートリッジ体制に(12/01/21)

あるカートリッジを気に入って使っていても,しばらくするとなんとなく気に入らなくなって別のカートリッジに変えてみるということが定期的に繰り返される。まあ飽きるんだろうと思う。グラドを使いはじめてからこの2年くらいそれで安定していたのだが,やはりその日が来てしまった。そしてSME3009SIIIにまだMCカートリッジを一度もつけてみたことがなかったのを思い出し,まずは軽くてハイコンプライアンスのテクニカAT-F3IIをつけて,QUAD44のMCモジュール(Bタイプ)で受けてみる。

これはしばらくMMカートリッジを聴いてからMCカートリッジを聴くと必ず感じることだが,MCではカッチリとした枠の中に密度の高い音が詰まっている。楽器や奏者の実体感もMCならではだ。グラドはMMの中ではMC寄りの音だと思うが,やはり密度感はMM的なやや薄味なものだ。今度はOrtofon MC-20SuperIIをつけてみる。やはりいい音だが,3009SIIIにはテクニカのほうが合っているように感じる。驚いたのは,3009SIIIにつけるとテクニカもオルトフォンも3009Rで聴いていたのとはまるで違う音で鳴ることだ。フルイドダンパーの効果も大きいと思う。

ちょうど「MJ無線と実験」の原稿料をいただいて懐が暖かかったのでテクニカのもっとよいカートリッジ(AT33EV)を買ってみた。実売37500円というのはこれまで買った中でいちばん高価なカートリッジだと思う。聴いてみると実に上品な音,もちろんテクニカ的な高域寄りのバランスではあるのだが全体にもっと穏やかで秘めやかな音だ。それでいて出るべき音はすべて出ているし,奏者が力を込めたところでは力もちゃんと出す。さすが現代カートリッジはたいしたものだなあと思う。古いプレスのレコードや傷んだレコードにも意外に強い。当分これで聴いていこうと思うので,モノカートリッジもグラドからテクニカAT-MONO3LPに戻して音色を揃える。

グラドカートリッジのリフレッシュ法(11/12/17)

この2年ほどグラドのカートリッジを気に入って聴いているが,新品の時の素晴らしい音が割と早い期間で劣化してしまうのが気になっていた。メインのPrestige Gold 1についても,それで1年も使わずに針交換しているのだ。ただその針交換の時に「もしかして」と思ったことがあった。ここ数日またGold 1の音が気に入らなかったので「それ」を試してみた。簡単なことで「針をいちど外して,もう一度取り付ける」だけのことである。予想はみごとに当たって,音は新品の時に近いものにリフレッシュされた。グラドのカートリッジをしばらく使って「音が悪くなってきた」と感じた方は針交換のまえに騙されたと思っていちど試してみていただきたい。

最近はSME3009IIIにつけたグラドはずっとフルイドダンパーつきで使っている。フルイドダンパーを使うことで軽針圧のグラドがある程度針圧をかけるカートリッジと似た力を持つようになり,うまくかからなかったレコード(とくにグラモフォンのドイツ盤)もとてもよい音で聴けるようになった。フルイドダンパーによってとりあえず私の装置では現在グラドは「これまで使った中でもっとも万能なカートリッジ」になっている。

QUAD44の変遷・増補改訂版(11/08/18,11/09/13修正)


これまで得た情報を整理して,以前の「QUAD44の変遷」を増補改訂した。最大の変更は「中期型」という分類を廃止して,内部構造とトーンコントロール基盤の変更を基準に「前期型」と「後期型」の2種類に分類しなおしたことである。(上の表は縮小表示されているので見えにくい方は新規ウィンドウで開いてご覧いただきたい。)

QUAD44は1979年から1989年までの10年間に35390台が製造された(Dada Electorics資料)が,製造中最大のモデルチェンジは1985年のNo.23000以降でトーンコントロールがロータリースイッチからアルプス製のモールド型に代わり,それに伴ってトーンコントロール基盤がまったく新しくなったことである。同時にTILTが±2段階から3段階に,BASSのSTEPも2段階から3段階に増えている。また,FILTERを0にした状態でもBASS LIFT/ STEPとTILTが動作するようになったので,トーンコントロールのキャンセルを示すLEDも廃止されている。

一般に44は「ベージュが前期型,グレーが後期型」と考えられているが,ベージュでも構造が後期型のものはたくさんあり,実機のシリアルから類推するとベージュの44も最後まで製造されていたと考えられる。デッカのレコードレーベルがそうであるように,オーディオでもレコードでも,イギリス製品のバリエーションは必ずしも製造時期と一致しない。

前期型は1979年の製造開始からしばらくは頻繁にマイナーチェンジしており,外見は同じでも中の基盤が変わったりする。一般にNo.2400までが「最初期型」といわれるものである。ボディの変遷に伴って入力モジュールにもさまざまなバリエーションがあるが,それについてはこのページの他の項目で別に考察している。

こういう仕事は休日でないとできない。休みはありがたいものである。

QUAD44 No.28984(11/08/15)

ヤフオクで「音は出るがセレクタが不良」の後期型QUAD44を約35000円で手に入れた。外見はきれいに見えたし,モジュールが5枚,それもピンジャックつきのTAPEモジュールが2枚手に入ると考えればまったく動かなくてもかまわないという判断だった。届いてみると外見は期待通りほとんど傷のない美品(写真1枚目),しかし音は出なかった(笑)。音についてはこれからリストアしてなんとかしたいと思う。シリアルナンバーは28984,グレーの後期型44の中では最も早い時期のもので,その後なくなった電圧切替スイッチがまだついている。1986年末から1987年初頭の製造と思われる。出力はすべてピンジャック,面白いことにRADIOポジションとCDポジションの両方にCD/AUXモジュール,それもベージュのパネルのものがついている(写真2)。ただこれらが古いものの代用ということはピンジャックの位置から見て考えにくい。おそらく最初からこれがついていたのではないか。

後期型44はBASS LIFTとTILTがそれまでのロータリースイッチからアルプスのモールド型にかわったのに伴い,トーンコントロール基盤とその取り付け方が変わって,中期型B以前とは内部の構造が大きく変わっている(写真3,左が後期型,右が初期型)。古いトーン基盤がLF351/TL071とディップタンタルで構成されているのに対し,新しいトーンコントロール基盤はデュアルのTL072を使うようになり,コンデンサーもすべて普通の電解になっている。おそらく音も大きく変わっているはずである。

後期型についているモジュールはピンジャックの位置がそれよりも低い位置に変わっている(写真4)。これはDISCモジュールのアース端子がピンジャックの下から上に移動した仕様変更(写真2でわかる)に合わせたものだろう。旧型モジュールと混在するとデコボコになって見苦しい。面白いことに,以前から持っていたグレーのCD/AUXモジュールはピンジャックが元の高い位置にある(写真4の左)。いっぽうその後買ったグレーのCD/AUXモジュールは低い位置(右),そして今度の44についていたベージュのCD/AUXモジュールは新しい低い位置についている(中央)。このことからもベージュとグレーの後期型が並行して製造されていたことが推測される。

SME 3009SeriesIII(11/03/19)

地震が起きてからしばらくは音楽を聴く気もおきず,週明けくらいからようやく音楽は聴けるようになったが,レコードをかけたのは地震から1週間近くすぎてからだった。日本は大変なことになってしまったが,この犠牲の上に前より少しでもよい社会が作られたらと思う。

今月の初めにデンマークから箱入り未使用の SME 3009 SeriesIII が届いた。これはさまざまな意味で特別なトーンアームで,音が出るまでにもずいぶん苦労をした。しかしさまざまな調整機構の仕組みは実に合理的で精密,調整していてワクワクするアームだ。もちろん軽針圧のグラドとの相性は抜群で,とくに低音域の質感は3009RやS2impより相当に優れている。なによりトレースの安定感,音質的にもビジュアル的にも「針が音溝にピターっと接触している感じ」がする。

今日はいよいよフルイドダンパーにオイルを入れた。オイルはイメージしてたのに比べてかなり粘度の高いもので,ジャムくらいの固さだ。トレースも音もますます安定感を増した。このシリコンオイルの粘度は200000csということだから,ラジコン用のダンパーオイルを使うことができるはずだ。SMEの純正消耗品の値段は高すぎる(ダンパーオイルは5250円)。

しかしポールのベースとリンゴのドラムスのコンビネーションはほんとに素晴らしい。ミュージシャンとしてはジョー・オズボーン/ハル・ブレインよりポールとリンゴの方が上だな。

QUAD44のリストアで一般的にやるべきこと覚書(10/06/22)

2台のQUAD44のリストアが一通り終わったので,リストアでやるべきことの覚書を作っておきたい。

必ずやるべきこと(電気製品としての機能のリストア)

1)マザーボードの電解コンデンサC404/405(1000uF,25V)とC402/403(47uF,16V)の交換
2)トーンコントロールボードのタンタル電解コンデンサC522/523(100uF,6.3V)の交換
3)トーンコントロールボードの電解コンデンサC528(47uF,40V)の交換(初期型)またはマザーボードの電解コンデンサC407(100uF)の交換(中期型以降)
4)電源ボックス内のスパークキラーの交換,初期型ではスパークキラーの追加,できれば電源スイッチの交換
5)マザーボードのジャンパ部分のハンダ修正

やったほうがいいこと(音質のリストア)

1)トーンコントロールボードのオペアンプ(TL071)の交換
2)各入力モジュールの電解コンデンサ,タンタル電解コンデンサの交換
3)各入力モジュールのオペアンプ(NE5534,TL071,TL072など)の交換
4)プリアウトおよび各モジュールのピンジャックの交換

やると精神衛生上よいこと

1)トランジスタが使われている入力モジュールのトランジスタ交換
2)マザーボードのトランジスタ(BC441,BC461,TIP31)やダイオードの交換
3)各ボードのセラミックコンデンサの交換
4)入力モジュールの接触の悪いディップスイッチの交換
5)リレーの交換(製造時期により場所と部品の種類が違う)

故障していない限りやらなくていいこと

1)マザーボードやセレクタボードのロジックICの交換
2)各ボードのフィルムコンデンサの交換
3)電源ボックス内のヒューズホルダおよびヒューズの交換
4)抵抗類,LEDの交換

私は2台のQUAD44について,上記の「精神衛生上よいこと」までのすべてと,「やらなくていいこと」の1)の半分と3)を試行錯誤で実行して,結果から優先順位を学んだ。ほとんどの交換部品はRSコンポーネンツなどのパーツ通販で手に入れることができるが,電源スイッチとリレー,一部のトランジスタはとくに初期型だと入手に苦労する。ディップスイッチは同じものはすでに入手できないが代替品がある。マザーボードの1000uFはオリジナルと同じチューブラ(アキシャル)タイプで修理したい。少し高価だがRSにRIFAのがあるし,Dadaなどからニチコンのデッドストックを入手することもできる。

オペアンプは新品に交換するだけで相当の改善があるので,OPA134などの高級オペアンプへの交換は必須ではないし,交換するとかえってQUAD44の音が失われる場合がある。高級オペアンプを試す際は基盤に直付けしないでICソケットを使うと,気に入らなければすぐにもとに戻すことができる。トーンコントロールボードの100uFや各モジュールのカップリングコンデンサ(タンタルの2.2uFが多い)は交換で音がすごく変わるので,ここを最近のオーディオ用電解に交換するのも一興だろうが,私はオリジナル通りタンタルで修理したい。ディップタンタルは徐々に手に入りにくくなっているので多めにストックしておくのもよいと思う。

QUAD44には壊れる箇所が少なく,電源が入らない(LEDが光らない)のは電源ボックスのスイッチかヒューズホルダが物理的に壊れているか,マザーボードのコンデンサかトランジスタの不良である。電源は入るが音が出ない場合はマザーボードとトーンコントロールボードの接続,マザーボードのジャンパのハンダ不良を疑う。片チャン出ない,音質が変などはモジュールのオペアンプかコンデンサの問題が多い。なお,リストアのためにはサービスマニュアルが必須である。最近はネット上でも探せば手に入るようになっているので探してみてほしい。


QUAD44電源スイッチを代替部品で修理(10/06/21)

eBayでNOSで買ったほうのQUAD44の電源ボックス,未使用だったはずなのにもう電源スイッチが切れなくなった。LORLIN製スイッチで生じるこのトラブルは経年変化も原因であることがわかる。純正のアルプス製SDG5P-Eの代替品を見つけたことはブログにも書いたが,残念ながらこのLORLINタイプはネジ穴の位置がこれらとは違うので,交換のためにはスイッチの固定部分を板金加工してスイッチ軸の穴とネジ穴を大きくする必要がある(写真左)。またパーツの方の取り付け穴はネジが切ってないので,ボルトとナットを別に用意して固定する必要があること,パーツの端子が黒く変色していてハンダの乗りがひどく悪いこと(事前に磨いておくべきだった)で苦労した。2時間ほどかけて作業は完成し,とりあえず代替部品に交換して,とくに問題なく電源のオンオフができるようになった。なお最初からSDG5P-Eがついている個体では板金加工などなしでごく簡単にこの代替部品に交換することができると思う。興味のある方は若松通商でSS-13というタイプのスイッチを探してみてほしい。


QUAD44のDISCモジュール・つづき(10/05/22)

eBayに写真のようなQUAD44用DISCモジュールが出ていた。銘板には「4B 100µV 100R 22nF」と書かれている。これは最後期のグレー44の頃(1987年以降)に売られていたMCモジュールで,QUADのサービス資料によると感度が200µVの「4A」,100µVの「4B」,400µVの「4C」の3種類があることになっている。基盤番号はM12797-1だが,資料にはパーツの抵抗値や容量しか書いてなく,モジュールのインピーダンスや負荷容量がどうなっていたかはわからない。写真を見ると電解は普通のコンデンサが使われており,あまり音がよさそうには見えない。回路図によると使われているオペアンプはTL071のままだが,トランジスタはZTX650とZTX750が各2個,これも入手に苦労しそうなトランジスタだ。200µVという感度はもし手許にあればなかなか使いやすそうなのだが......


QUAD44のDISCモジュール(10/05/02)

QUAD44のサービスマニュアルには以下の7種類のDISCモジュールが記載されている。このうちMM用とMC用A,B,Cタイプは実物を持っており,Dタイプについては実物の存在を確認している。E,Fタイプについては日本国内では販売されていなかったようで,実際に存在したのかどうかもわからない。

名称 Type 基盤番号 感度 インピーダンス 容量 適応ブランド(ハーマンの国内カタログによる)
Disc Input (MM) M12515/M12518 1mV, 3mV,10mV(DIP) 47kΩ 50pF, 230pF(DIP)
Moving Coil Disc Input Type A M12542 300µV 470Ω 22nF EMT,オーディオテクニカ,ダイナベクター,ソニー,ビクター,ヤマハ,デンオン
Moving Coil Disc Input Type B M12542 100µV 100Ω 68nF Ortofon MCシリーズ,オーディオテクニカ AT-1000MC,ナガオカ デンオン DL1000A,グランツ GMC-55
Moving Coil Disc Input Type C M12542 300µV 100Ω 68nF Ortofon SPU,MC10Super,コーラル,アントレー,FR 7f・PMC-3,ナカミチ,スペックス,グランツ GMC-10E
Moving Coil Disc Input Type D M12542 100µV 470Ω 22nF FR Iシリーズ,テクニクス,ゴールドバグ
Moving Coil Disc Input Type E M12542 100µV 100Ω 1.5nF 国内カタログに記載なし
Moving Coil Disc Input Type F M12542 300µV 100Ω 1.5nF 国内カタログに記載なし

MM用のモジュールには私の手許にあるものだけで2種類がある。上の写真のうち左が初期の基盤番号M12515-ISS4で,オペアンプ(TDA1034またはNE5534)2個で構成されたシンプルなモジュールだ。いっぽう写真右は製造番号12000(1981年頃)以降の44に付属している基盤番号M12515-ISS5で,オペアンプ(TL071)2個に加えてトランジスタ(BC214CおよびBC413C)4個から構成されたやや複雑なものに変わっている。いずれも,カップリングなどの電解コンデンサーはすべてタンタルになっている。2つのモジュールの音は確かに違うが,どちらかがとくによいというほどではない。サービスマニュアルによると製造番号23001(1984年3月)以降の44にはM12158-ISS2のDISCモジュールがついているが,回路図を見るかぎり12515-5と大きな変更はないようだ。

MC用モジュールは入力感度や容量が違っても基盤はすべて同じで,CRの定数が違うだけだ。私が持っている3枚はすべて上の写真左のM12542-ISS3で,オペアンプ(TL071)2個とCANタイプのトランジスタ(BC440-6およびBC460-6)で構成されている。ここでもタンタル電解がふんだんに用いられている。写真右はグレーの後期型44についていたMCモジュールの写真(ネットより)で,基盤はM12542-ISS5になっている。オペアンプはTL071で同じだが,トランジスタがモールドタイプになるとともに,部品の配置もすっかり変わっている。使われているコンデンサのタイプも変わっていて,タンタルではなく普通の電解がついているのが目立つ(これは後で交換されたのかもしれない)。

DISCモジュールに限らず,初期から中期の44にはタンタルコンデンサーが多用されているが,後期になると同じ場所に普通の電解がついている。この間に電解コンデンサの性能が大きく向上したこともあるが,コストダウンもあったかもしれない。環境問題や製造コストから国内メーカーはすでにこうしたディップタンタルの生産をやめており,入手が難しくなっている。ある程度のストックは可能としても,将来的には代替品を試していかないとならないだろう。


TD-150用ベースを作った(09/12/03)

懸案だった2台目のTD-150用のベースを作った。塗装はあまりうまくいかなかったけれど(写真ではわからない),とりあえず裸の状態からは脱却することができた。もう一台のTD-150についているオリジナルのベースは9mm厚の板でできているが,素人工作でこの厚さは不安なので15mmにしたところ,その分ひと回り大きくなってしまった。この大きさだとますますLP-12にうりふたつになるので笑う。

構造上予想される通り音質的には大きな変化はないが,3本のネジだけで立っていた状態に比べると,こころもち低域がゆったりしたような感じがする。これは良し悪しなのだが,おそらく箱がついている状態がTD-150の本来の音なのだろう。フローティングにはまた微調整が必要なようで,まあのんびりやっていこうと思う。

下に「むしろ少し悪くなっている」と書いた Joel の thrust plate だが,彼の言うとおり数日後からどんどん透明感が増すとともに,低域の抜けと量感が以前より相当改善された。レコードプレーヤーとはじつに不思議なものだ。


TD-150のオイルいっぱいあります(09/11/17)

eBayでいつものJoel Boutreux氏から買ったTD-150その他用のスピンドルオイルが届いた。注射器8本分のお徳用で送料込み19ドル。1本で1台のスピンドル2〜3回分なのでTD-150が16台以上注油できる(笑)。もちろんこんなにたくさんいらないのだが日本への送料とかで少量を買うよりこちらのほうがはるかに割安だった。油の寿命とか考えると4〜5本は自分用にキープしてあとはヤフオクにでも出そうかと思っている。これはいまノアで売ってる「トーレンス純正オイル」と比べてかなり粘度の高いものだが,元トーレンス社員の Joel はTD-150や160などの焼結ブロンズ軸受にはこれしかないと言っている。オイルの適量はわかりにくいので,思い切って多めに入れてしばらく回して溢れ出た分を拭き取るのがよいと思う。このオイルを試してみたい人いますか?

追加用のthrust plate(スピンドル軸受の底でスピンドルを受ける板)もいっしょに届いた。摩耗して窪みのできた底の上に乗っけてスピンドル下端のベアリング球を受けるわけだが,今のところ音が良くなった感じはしない,というか少し悪くなっている。Joel は「100%になるまでには時間がかかるよ」と言ってるので期待して待とう。


V15TypeIIIよりよいカートリッジ(09/11/15)

いま聴いているレコードのジャケットを飾るためのフックをオーディオラックの上に取り付けた。私の作業なのでいつものようにわずかに右上がりに傾いている。あまりにいつものことなのでわざわざ妻を地下まで呼んで「また傾いてるでしょ」と確認させた。まあ右上がりで縁起がいい(?)からいいのだけれど,ここまで規則的だと不思議に思う。

グラド Prestige Blue1 で聴くジャズはとてもいい。久しぶりにMMモジュールが嵌っているし3009S2impも戻ってきたのでV15TypeIIIを試してみたが,グラドと比べると高域はキャッキャと楽しいが中低域がずいぶん薄い音に聞こえる。これまでクラシック用にはいろんなカートリッジがあるけどジャズはV15TypeIIIに敵うのはないよなあと思っていたが,少なくともいまの私の環境ではグラドはV15TypeIIIよりジャズを楽しく聴かせる。そのうえクラシックの古いレコードも上手に鳴る。MC的な実体感とMM的な闊達さが両立した本当によいカートリッジだと思う。とりあえず当分の間は交換針の心配が不要なカートリッジで楽しめるのはとてもうれしいことだ。

グラドの唯一の欠点はハムだ。2台目のTD-150でMC+にハムがあるのに気づいたが,注意して聴いてみると1台目の Prestige Blue もわずかにハムっている。ハムはカートリッジがモーターに近づくほど大きくなる。ネットで調べてみるとこれは「The infamous Grado hum」と言われるほど有名な問題で,グラドがどのプレーヤーでハムるかのデーターベースまで作られている。グラドのコイル構造がモーターの磁界を拾いやすいことが原因らしいが,この音質を生み出しているのもその構造なのだろう。私は小音量派なのでいい音がすれば多少のハムは気にならない。


コンデンサの交換(09/11/11)

2台目のTD-150はいい音で鳴ってはいるけれど,電源オフの状態でモーターがプルプルと振動していることと,シャーシにAC数ボルトが漏れているのが気になっていた。たぶんコンデンサだろうな,と思って交換してみた。写真左が元ついていたもの,モーター用(下)が0.33uF/160VAC,スイッチのスパークキラー(上)が0.01uF(10nF)/1000Vである。最初はモーター用の0.33uFは定数通りにした(耐圧だけは同値だといまのものは非常に小さくなってしまって収まりが悪いので630VAC,写真右下)が,スパークキラーは1000V耐圧なんてなかなかないし機能さえ同じならよいと思ってQUAD44用に買ったRIFAのRC-Unit(47nF+120Ω)をつけてみた。結果として振動も漏れ電流もかえってひどくなってしまった。トーレンス名人の Joel Boutreux 氏にメールで尋ねてみると「0.01の方を正しいのに替えろ!」ということだったので同じ定数/耐圧のもの(写真右上)をRSコンポーネントから取り寄せて交換してみたら,振動も電流もピタリと消えた。0.01uFは単なるスパークキラーではなかったようだ。これでとりあえず動作は完璧。あとは箱だな。


2台のTD-150(09/11/03)

たまたまヤフオクにモーターが壊れたTD-150が出ていて,それを2万円ちょっとで落札できて,たまたまスペアのモーターを買ってあった結果,私のTD-150は2台になった。なにかを蒐集していると,運命とか出会いというものがほんとうにあることをたびたび感じる。

知人宅から帰ってきた3009S2impをとりつけ,グラドMC+で「ペットサウンズ」の米オリジナル盤(T-2458)を聴いてみる。期待通りの良い音が鳴ってくる。SL-1200MK5にMC+でもモノラル盤はずいぶん良い音で鳴っていたのだが,TD-150とSMEで聴くと低音はもっともっと深く伸びるし,中音域は活き活きとして「モノラル盤ってこんなに良い音が入っていたのか」と改めて感心する。TD-150はなにしろ音の良いターンテーブルであることを再確認した。ただ現状ではモーターのハムを少し拾っているので,そのうちなんとかしないとならない。箱がないことについても息子たちから強いクレームが出ているので,これもそのうちなんとかしよう。

こんどのTD-150はシリアルNo.16666で,もとのTD-150(No.52003)よりかなり前のものである。比較してみるとモータードライブ用のコンデンサの形状やメーカーが違ったり,トップパネルが#52003では梨地のような艶消しになっているのに対して#16666ではアルミの艶がそのままだったり,違うところがいくつかある。アームボードの銘板も,書いてあることはまったく同じだが「MADE IN GERMANY BY EMT.....」の文字が#16666の方が少し大きい(写真右端)。まあ実にどうでもいいことだけれども。 オーディオマニアならLP-12を2台とかTD-124やガラード301を複数使っている人は珍しくもないと思うが,TD-150を2台使っている人なんてなかなかいないだろう。「ひねくれたオーディオ趣味」の面目躍如である。

(09/11/08追記)よく見比べてみたら,2台のTD-150はサブシャーシ(ターンテーブルとアームが載ってフローティングされている部分)の形がまるで違うことがわかった。#52003ではスピンドル軸受の周囲にサブプラッターより少し大きい直径の円盤がついているのに,#16666にはそれがなく,下から覗き込むとサブプラッターが回ってるのが丸見えだ。誰かが外した跡もなく,元からなかったものと思われる。なにかが複数あると必ず詳細に比較検討せずにいられないのは一種の職業病かもしれない......


SL-1200シリーズ用のSMEボード(09/10/31)

eBayで落札した英soundsupports社製のTechnics SL-1200/1210シリーズ用のSME3009アームボードが届いた。ヤフオクなどで時々見るような金属板1枚にSMEアーム穴を開けただけの単純なものとは違って,2枚の金属板を組み合わせてSMEアームベースがきちんと沈み込むように細工されている(写真左が表面,右が裏面)。これは恐らくSL-1200付属のターンテーブルシートがMK5以降薄くなってターンテーブル面が低くなり,純正アームでも多くのカートリッジで高さ調整ができなくなっていることに対応しているのだろう。加工も精密にできており,すぐにでもこれを使ってSL-1200MK5にSMEアームを取り付けてみたくなる。しかし下にも書いたようにSMEアームの取り付け先は別のプレーヤーに変更になってしまった。さてこのボードとSL-1200MK5はどうするかなあ。手放すにしても,このままそれぞれ別個にヤフオクで売るのと,SMEボードのついたSL-1200MK5と取り外した純正アームをそれぞれヤフオクで売るのと,どちらが結果的に得る金額が多くなるだろうか。このページをご覧の方でこれらのものに興味のある方はぜひお知らせください..........


TD-150レストア中(09/10/30)


1台目で4年間修行を積んだだけに,今回は完全にバラバラにして各部を磨き上げて組み直すのもスムーズに進んだ。心配していたモーターも問題なく回り,回転数も正確に出た(しばらく前にeBayで買ってあったプーリー付モーターがほんとうに50Hzなのか気になっていた)。しかし代替ベルトではやっぱり回転数の切替えがうまくいかず,純正ベルトをもう1本注文する必要がある。フローティングサスペンションはキャビなしでもきちんと機能することがわかったので,3009S2impが戻ってきたらとりあえず「ベイシースタイル」で使ってみようと思う。


さてこれからやるべきことは....(09/10/27)

油断していたらまたこんなものが家に届いてしまった。いちばん大切なところが完璧に壊れていて回らないのだが,その壊れている部分の補修パーツは手許にある。壊れているところ以外は,いま使ってるTD-150よりも状態はずっとよくてツヤツヤしている。ただしキャビネット(plinthという方が雰囲気は出るが)はない。さてこれからやるべきことは(1)全体の分解掃除(2)故障部分の部品交換(3)アームの取り付け(4)キャビの自作,である。ネットで見るとTD-150IIをキャビに入れないで使っておられる方もいる。「ベイシー」のLP12みたいでかっこいいのでこういう使い方もあるかと思う。気になるのはこの状態でフローティングは効くのか,ということだ。まあいろいろ試してみよう。また苦難の道のりだとは思うが腕が鳴る。私は登山はしないが(大学の「山の会」の宴会部員ではあるけれど),登山をする人の気持ちもこんなようなものなのだろうか。実は SL-1200MK5にSMEをつけるボードも今頃イギリスからこちらに向かっているのだが,それは使わないことになりそうだ.......


Bulginの旧IECソケット(09/10/22)

eBayに初期型QUAD44の電源アウトレットに使う旧IECタイプのソケットが出ていた(写真はeBayより資料的価値のために転載)。これは手に入れなきゃと入札したのだがどんどん値が上がって追いつけなかった。最終落札価格は26ポンド,邦貨約4000円である。世界中で探している人がいる筈だから理解できないこともないが,たぶんもとはせいぜい1〜2ポンドのものだろう。私自身,このソケットの実物を見るのはこれが初めてだ。このページの下の方で紹介した現行IECを改造したソケットに比べると,プラグのピンがけっこう先の方までカバーで絶縁されていることが特徴で,ピンの長さ自体は変わらないように見える。当時のイギリスではそれなりに使われたコンセントなのだろうが,私は同じタイプの電源コネクタが使われている機器を他に一度もみたことがない。44はどうしてこれになっていたのだろう。

いっぽうeBayにはSL-1200シリーズにSMEアームをつけるためのボードも出品されている。これを落札するといよいようちのSL-1200MK5にもSMEをつけられるわけだがさてどうなるか。

グラドのステレオカートリッジ(09/10/10)

MC+がとてもよかったのでこんどは米Gradoのステレオカートリッジ「Prestige Blue1」を買ってみた。これは同社のラインナップでは下位から2番目くらいのもので,これも1万円ちょっとだった。

手持ちのLPが500枚を超えた頃から,私にとってオーディオの改善の目的は「1枚でも多くのレコードがきちんと聴けること」に特化した。どうしても歪んでしまうレコード,傷や摩耗のあるレコードが,新しい機器で少しでもましな音で聴けるようになることがうれしい。その点で「Prestige Blue1」はMC+に続いて私を大喜びさせてくれた。これを書いているいまも,MC20SuperでもDL103でもAT-F3IIでもうまく聴けなかった英国プレスPhase4のストコフスキーのワーグナーがまともな音で鳴っている。チェコ盤のアンチェルの「グラゴルミサ」も,三波春夫の「世界の国からこんにちは」のシングルも,ずいぶん普通に聴けるようになった(ドイツ製のプレーヤーとイギリス製のアームとアメリカ製のカートリッジで三波春夫を聴いてるというのも不思議だけど.....)。

音もまったく悪くない。MC的なカッチリ感とMM的な開放感のバランスが取れていて眠くないし,音場感や高さもきちんと出る。低域もずっと下まで柔らかく伸びてセカセカした感じもない。当分はこれを常用することになると思う。QUAD44にはMMモジュールを2つ挿して2台のレコードプレーヤーをつないでいる。要りもしないMMモジュールをもう1個買っておいてよかった(笑)。

グラドのモノカートリッジ(09/09/29)

2chのピュアAU板で話題になっていた米Gradoのモノラルカートリッジ「MC+ Mono」を買ってみた。針先は1milと古典的だが針圧は1.5gしかかからない。値段は正規輸入品で1万円ちょっと。だがその再生音は期待をよい方向にかなり裏切るものだった。

なにしろどんなレコードもきちんとかかる。いままでステレオカートリッジはもちろんDL-102やAT-MONO3でもひどく歪んだり傷みが気になったレコードのかなりの割合が,とりあえず聴くに堪える音で聴ける。金文字LXTでどうもうまく鳴らなかったものや何がいいのかわからなったトスカニーニのLM初期盤なども,かなり満足できる音で鳴る。こういうのはバリレラとかで5gくらいかけて聴かなければダメなのかな,と思っていたのに1.5gできちんと鳴るのだから,驚くしかない。針先が1mil(DL-102などは0.7mil)というのが効いているのだろうか。いっぽう傷のあるレコードなどでの針飛びが減ったのは,ハイコンプライアンスの賜物だろう。

音質的にもDL-102よりは明らかにワイドレンジで,低域もずっと下まで伸びている。ただやはりMMなので音像感がやや薄口になるのは否めない。しかし私はLP再生では微細な音質差よりも「できるだけ多くのレコードがきちんと聴けること」を重視するので,当分はこれで聴いていくことになると思う。あとはこのメーカーがいつまでカートリッジや替針を供給してくれるかだ。

オーディオラックの新調(09/06/02)

自宅地下に自分の部屋ができた時に,メタルラックの木製棚板を使ったオーディオラックを作った。これがまさに曲者で,機器の重さであっという間に反ってしまって,プレーヤーの水平を出すのに苦労するようになった。その状態でも1年以上使っていたのだが,ついにラックを新調した(写真左)。今度もオーディオ用として売られているものではなく,倉庫用のスチール棚だが,業者と相談して棚板の耐荷重300kgのものにした(メタルラックの耐荷重は90kg)。結果は上々でプレーヤーを置いてもまったく反らないし,かなり重さがあるので置くだけでもほとんどガタつかない。それで値段は送料込みで15000円かそこらで,メタルラックよりも安く済んだ。

外観的にはインテリア性皆無で,こんな棚を自分の部屋には絶対置きたくない人も少なくないだろうが,私はこういう「道具としてのアフォーダンスだけを示すデザイン」が好きなので気に入っている。一方レコード棚はメタルラックのままで,レコードの重さで盛大に反っている(写真右)。これもそのうちスチール棚に入れ替えないとならないだろう。ちなみにスチール棚は北島株式会社というところから通販で買った。


あけましておめでとうございます(09/01/01)

今年もよろしくお願いいたします。こういうWebページを公開しているとたくさんの方から情報や質問のメールをいただくのも楽しいものだ。写真は兵庫県の新見さん(というよりCozyさんと呼んだ方がオーディオ系ネットでは通りがよいだろう)からいただいた中期A型QUAD44(Ser.21943)の写真。Cozyさんのブログは「QUAD44」で検索すると必ずヒットするもののひとつで,オーディオだけでなく音楽やカメラの趣味も私と近いので以前からよく拝見していた。そうしたページの作者の方から直接連絡をいただくとうれしいし,たいへん恐縮する。しかしこの44ウッドケースはうらやましいなあ。44と405はペアになるのにどうして横幅が違うのか気になっていたが,ウッドケースに入れるとこうして同じサイズになるというのは盲点だった........

自分へのお年玉として買ったのはこういうものだ(EDIROL UA-25EX)。これでAirMacExpressから光デジタル出力を取り出してDA変換し,44へ送ることができるようになった。もちろんMac本体からもUSB経由でサウンドを送ることができる。AME経由の音とUSB経由の音はやはり微妙に違って,AMEのほうは穏やかで癒し調,USB経由はもっと鮮度が高くオーディオ的になるが,どちらにしてもAMEのアナログ出力と比較して驚くほど改善された。iTunesの曲がいい音で聴けるのはもちろん,ナクソス・ミュージック・ライブラリーやネットラジオがまじめに聴ける音に変身したのはうれしい驚きだった。いまAMEをアナログ出力でオーディオに繋いでいる方はぜひ外付けDACを試してみてほしい。しかしUA-25EXのインジケーターLEDがやたら明るいのにはまいった。DTMやPAの現場ではこのくらい必要なんだろうが,部屋ではあまりに眩しくてさっそくビニールテープで隠してしまった。

オーディオは甘くないよ(08/09/21)

スペインから送られてきた未使用デッドストックの44電源ユニットはQUAD印のシールで密封された元箱入りだった。開封して取り出し,さっそく中を確認してみたら驚いた。写真左のようにこれは新IECアウトレット,丸形の電圧切替スイッチ付きの明らかに中期型44用の電源ユニットでノイズサプレッサーも付いているのだが,使われている電源スイッチはなんとアルプスではなく私の最初期型44 (Ser.2072 ノイズサプレッサーなし)と同じLORLINの白い部品なのだ。

これが私のジャンク44(Ser.8504でアルプススイッチとノイズサプレッサーつき)より後に作られたのは確実なので,44のスイッチはLORLINからアルプスに「変更された」のではなく,2種類のパーツがロットによって適当に使われていたということがわかる。「変更された」と信じていた時には中期型以降の44でも電源スイッチのトラブルが多いと言われるのが不思議だったが,LORLINのほうのパーツが使われているものでは中期型以降でも故障が起きていると考えれば辻褄が合う。

骨董オーディオの修理では「オリジナル部品」にこだわる人が多いが,QUADに関しては創業者ピーター・ウォーカーは自分の回路の性能はどこの部品でも機能や定数さえ満たされていれば常に同じだと考えていたようだ。コンデンサーのメーカーなどもロットによってさまざまだ。30年近くも使われた場合のパーツの耐久性に差があったからといってウォーカー爺を責めることもできまい。

QUAD44の本格修理(08/08/18)

電源スイッチの不具合が再発し,こんどはまったく電源が切れなくなってしまった。そこでついに懸案の電源ユニット本格修理を行なった。電源スイッチとヒューズホルダーの交換,ノイズサプレッサーの追加である。予定ではついている部品を交換してからサプレッサーを取り付けるだけ,1時間程度の作業のはずだった。

開けてみて驚いた。電源スイッチに使われているパーツがジャンク44についていたものとも,QUADから送られてきたものともまったく違うものだったのだ。ヤバいな,と思ったとおり端子の配置も取り付け寸法も大きく違う。シャーシの金属加工が必要になったし,リード線の取り回しも違うので一部延長しなければならなかった。結局修理には3時間を要してしまった。写真左が完成写真。上記の理由でQUAD独特の幾何学的な配線は台無しになってしまったが,ノイズサプレッサーを入れたことで起動時のポップノイズが非常に小さくなったし,問題なく動作しているのでよしとしよう。取付寸法の違いのせいで電源ボタンが今までよりかなり前に出てしまった(ボディからの飛出しが長くなった)のも愛嬌である。

写真右は電源スイッチのパーツ。左側の白いものが今回修理したSer.2072の44についていたもの(LORLIN P8MS)で,プラとファイバーボードだけでできている。右側のグレーのがSer.8504についていたもの(アルプスSDG5P-E)で,取付部分は金属になっている。見るからにアルプスの方が信頼性が高そうだ。Ser.8504やネット上の写真と比較すると,この最初期型は電源トランスもまったく別の型のものがついている。eBayで落札した中期型の電源ユニット(NOS)が届いたらまた研究してみたい。

CANCEL LED復活(08/08/08)

CANCEL LEDのパーツをQUADに注文したあとになって,部品取り用に買ってあるジャンク44(Ser.8504)にもLEDが残っていたことを思い出した(忘れている自分にも驚いた)。LED基盤ごと移植してみたら見事に光って問題解決。気のせいかもしれないが前のLEDよりずいぶん明るい。部品が改良されているのか,それとも前のLEDが経年劣化していたのか。

いっぽうでここ数日,電源スイッチが切れないトラブルがまた起きるようになった。近いうちにいよいよ電源ユニットの本格修理(電源スイッチ,ヒューズホルダー,ノイズサプレッサーの交換)に手を付けなければならないようだ。失敗した時のためにジャンク44のほうの電源ボックスも修理しておこうかと思う。こうやってコツコツ直していくと,自分の44はどんどんニコイチ,3個イチになっていく。初期型の生産からもう30年,今も元気に動いている44のかなりの部分はそういうものだろうから,44のバリエーションはますます千差万別になるのだと思う。


QUAD44の変遷(08/08/02,08/08/16,10/05/03,11/08/15加筆)

QUAD44がよく言われるような前期/後期だけでなく前期型,中期型,後期型の3種に分類できること,各型にもまた微妙なバリエーションがあることは前にも述べた。最近オークションなどネット上のQUAD44の画像を詳細に見比べ,資料とも突き合わせたところ,おおよそ以下のようなことがわかってきた。(形式の名称は私が勝手につけたもので,他の場所では通用しない。)

形式 ボディ色 入力ボタン CANCEL LED TILT STEP RADIOモジュール プリアウト 電源アウト 電圧切替 Ser. No. 製造時期(推定)
初期型A ベージュ 黄と赤 あり ±2段階 2段階 DIN,黒 DIN+RCA1系統 旧IEC 角形 2072 1979-1980
初期型B ベージュ 黄と赤 あり ±2段階 2段階 DIN,ベージュ DIN+RCA2系統 旧IEC 角形 8504,1235X 1980-1981
中期型A ベージュ 黄と赤/茶 あり ±2段階 2段階 DIN,ベージュ DIN+RCA2系統 新IEC 丸形 1808X,1943X(Mボタン赤),
2123X,2172X,21943(Mボタン茶)
1982-1983
中期型B ベージュ 黄と茶 なし ±2段階 2段階 DIN,ベージュ DIN+RCA2系統 新IEC 丸形 1983-1984
中期型C ベージュ 黄と茶 なし ±3段階 3段階 DIN+RCA,ベージュ DIN+RCA/RCA3系統 新IEC 丸形/なし 2468X,2556X,2599X,2622X,
2794X,2888X,3422X
1984-1986
後期型 グレー グレー なし ±3段階 3段階 DIN+RCA,グレー RCA3系統 新IEC 丸形/なし 28984,3093X,3149X,3381X,
3446X,3505X,36910,37165
1986-1989
※私自身が所有するもの,持ち主の承諾をもらったもの以外のシリアルナンバーは慣例に従い末尾1桁をXとした。

QUAD44の製造中の最大の変更は,中期型C(1984年3月,23001番以降)でトーンコントロール関係の可変抵抗がそれ以前のロータリースイッチからアルプスのモールド型に変更になったことで,それに伴いトーンコントロール基盤や内部のコンストラクションが大きく変更されるとともに,TILTとSTEPの調整範囲が各1ステップずつ増えている(写真左が初期型A,右が中期型C,ボディ色の違いは撮影条件によるもの)。後期型44は音が違うとよく言うが,この違いはおそらく中期型Cから生じているはずだ。なお製造番号などから見て中期型Cと後期型はしばらくのあいだ並行して製造されていたと思われる。CANCEL LEDは中期型AとBの間に廃止されているが,この間に基盤の変更はないので,中期型Bでは基盤にはLEDへの給電端子が残っているかもしれない。

入力モジュールの違いについては代表的なRADIOモジュールだけをとりあげたが,DISC系モジュールにはもっと様々なバリエーションがある。入力に限らず44の各部はモジュール化されていて整備で簡単に交換できるので,とくに入出力は整備によってバリエーションが生じている場合も多いと思われる。QUADの資料では電源アウトレットが新IECタイプになるのは1982年の19000番台以降のはずだが,ネット上の写真ではもっと若いナンバーのものが新IECになっていた。この個体はMボタンは赤だったので,電源ユニットが交換されている可能性がある。

写真は滋賀県の宮原健吾さん所蔵の美しい最後期型44。44は約4万台製造されたとのことなので,初期型が1万8-9000台,中期型が1万2-3000台,後期型が1万台弱というのがおおよそのところと思われる。これを読んでくださっている方で,ここに載っている各タイプをお持ちの方はぜひシリアルナンバーをお教え願いたいし,これと一致しない44をお持ちの方もぜひお知らせいただきたい(写真もお送りいただけるとなおうれしいです)。

このページを見てくださった方からQUAD44について問い合わせをいただくことが多くなった。ごく基本的なこととして,QUAD44の操作マニュアルやサービスマニュアル(英文)はネット上のあちこちで入手することができるので(たとえばここ,10/05/03更新)まずそちらをご覧いただくとよいと思う。

QUAD44壊される(08/07/17)

3歳の三男が妙に熱心にQUAD44のパネルを撫で回しているのでよく見たらトーンコントロールのキャンセルを示すLEDがなくなっていた。しかしこのLEDが引っ掛けてあるだけで固定されていないことは知っていたので,内部に落ち込んでいるだけで簡単に直るだろうと思った。実際,同じ位置に取り付け直すことは簡単だったが,電源を入れてみると光らない。テスターで調べてみると電流は来ているので,3歳に押されてLEDが破損してしまったようだ。LEDは写真のような小さな基盤に取り付けられていて直径は3mm。小さな穴を経て外へ出るので,この大きさのLEDでなくてはならない。でもネットでちょっと調べてもこの形この大きさのLEDは見つからなかった(quad44とledで検索したらヒットしたのはこのページだったorz)。またイギリスに問い合わせなければならない。このLEDが平面から飛び出して,押す行動を非常に強くアフォードしていることは気になっていた。自分自身も押したい衝動に繰り返し駆られたが,大人だから我慢できた。3歳には我慢できなかっただろう。こればかりはQUADの設計に問題ありで,のちの44でこのLEDが廃止されたのはコスト削減のためだけではなかったかもしれない。

FMアンテナを設置してみる(08/06/28)

通販に注文していたFMアンテナやケーブル類が届いたのでさっそく2階のベランダに設置してみた。ケーブルはベランダから庭におろして地下室の換気口から引き込んだ。これでコミュニティFMも含め全局ステレオで受信できるようになった(帯広で聴けるのは合計5局)。フィーダーアンテナでは盛大にジュルジュルいっていたマルチパスもかなり治まって,普通に考えて実用上問題のない受信状態だろう。しかしステレオ受信の場合NHK-FMのクラシック番組を本気で聴くにはまだSN比が足りない。ベランダからだと局方向に隣のアパートがあるので,これ以上は屋根上に本格的なアンテナを立てないとだめだろう。いずれ電気屋さんに頼まざるを得ない。むかし埼玉県新座に住んでいた時には東京タワーが目視できる2階のベランダに5エレ八木を設置して聴いていた。強電界でもきちんと受信するには最低5エレのアンテナを注意深く調整する必要があるのはわかっているのだが,いま時それはちょっとやりすぎな気もする。

44のTAPEモジュール改造(08/06/25)

チューナーをつなぐのにRADIOモジュールだとゲインが高すぎるのでゲイン調整のできるTAPEモジュールに換えた。RADIOモジュールとTAPEモジュールのREPLAY側では音がすこし違う。全体にTAPEモジュールの方が柔らかめのバランスになる。RADIOモジュールがLF351またはTL071を使ったオペアンプ構成なのに対し,TAPEモジュールのREPLAY側はE5270トランジスタによるディスクリート構成になっているせいか(RECORD側はCA3140Eを使ったオペアンプ構成である)。AirMacExpressを受けるのもTAPEモジュールにしてみるついでに,RECORD側をピンジャックに出してみた。金工も含む大改造で一瞬ヒヤリとする場面もあったが(電ドリの刃が基盤上の部品を削った.....)挽回して,ピンジャックから録音用の出力を取り出せるようになった。ついでにオペアンプと電解も交換。この出力をMacに取り込めばレコードをデジタル化できる。まああんまりそういうことはやらないんだけれど。

ラジオを聞く(08/06/22)

ヤフオクでケンウッドのT-1001というチューナーを買った(落札価格3100円,写真左)。ネットラジオをAirMac経由でQUADで聴く楽しみは定着したけど,そうなると普通のラジオやとくにNHK-FMも聴きたくなったからだ。QUADやLINNの機器に合うように小型のもの,と思って探したらこれが見つかった。FMアンテナがないのでリード線を伸ばしただけで聞いてみると,ステレオではマルチバスノイズ(懐かしい)がひどいがモノラル受信だとほぼクリアに聞ける。今朝も「20世紀の名演奏」でマルツィをやっているが全部モノラル録音なので問題なし。久しぶりに聴くFMの音は癖がなくてよいものだ。写真右のようなものを作って44のサービスコンセントに接続できるようにもした。本格的なアンテナを注文したのでそのうち20数年ぶりにアンテナ工事もやってみよう。昔のバリコンチューナーも欲しくなってくる(ヤフオクでただ同然の値段で大量に出ている)。心配なのはNHK-FMの放送がいつまで続くかだけだ。

TD-150のクリーニング(08/02/11)

オーディオ関係のクリーニングといえば無水アルコールがデフォルトだが,ターンテーブルのゴムベルトにはアルコールは良くないといわれる。そこでTD-124に詳しいページなどで推奨されるベンジンを買ってきて試してみた。まずプーリーを磨く。無水アルコールでそれなりに磨いていたのだがベンジンだとどんどん綿棒が黒くなってピカピカになる。インナープラッターのベルトが当たる面も磨く。ボロ布がけっこう汚れるので驚く。最後にベルトをかけて回転させながら,ベルト内側の接触面だけを清掃する。これも綿棒が驚くほど黒くなる。(この方法だと純正ベルト表面のThorensロゴが消えてしまうこともない。)

結果はすごく良かった。悩みの種の回転数切り替えもいままで何だったのかと思うほどスムーズになったし,トルクが向上したこともあって音も元気になった。今後はベンジンでクリーニングすることにしよう。イギリスから届いた互換ベルトは幅が広くて(純正は4mm,このベルトは5mm)回転数切り替え不能。ただし不具合を報告したら代金は返金された(great eBayerである)。こんどは純正ベルトを測定して長さ,幅,厚さの同じものをゴムベルト屋に作ってもらっている。うまくいったら大量仕入れして売ろうかな。

(08/02/17追記) 作ってもらったベルトはとてもうまく働いて回転数切り替えもスムースだ。やはり鍵はベルトの幅だったようだ。ちなみに作ってもらったベルトは幅4mm,厚さ0.6mm(これは純正よりちょっと薄い),直径166mm(全長520mm),価格は純正の半額くらいだった。

良いイヤフォン(08/02/10)

iPodについてくる純正イヤフォンは中域重視のカマボコサウンドで好きなんだけど,徒歩通勤(35分間)の間にズレてくる。スポンジのイヤパッドをつけると多少ましだが,今度は音がコモる。それで耳にきちんと固定されるイヤフォンを買おうと思ったのだが,ネットでいろいろ調べているうちに音質的にもそれなりのものが欲しくなって,テクニカのATH-EC700というのを買った。アマゾンで1万円ちょっと。

最初はキンキンでまた失敗したかと思ったが,1日くらい使ってる間にどんどん音が柔らかくなった。純正と比べ低音域が解きほぐされてチェロやコンバスの動きがよくわかるようになったし,空間感も向上した。感心したのはテクニカのカートリッジとちゃんと同じ「テクニカの音」がしていること。細身だが分離の良い中低域にややアクセント気味の高域が乗るテクニカサウンド。好き嫌い分かれると思うが私は好きだ。

トーレンスが復活(08/01/12)

SMEが帰ってきたのでTD-150をセッティングした。しかしSMEがほんとにピカピカの新品同様になってきたのには驚いた。ハーマンのサービスにはいつも頭が下がる。QUADの代理店もハーマンのままだったら何の心配もなかったのだが。

フローティングのプレーヤーはサスペンションの調整次第でターンテーブルやアームベースが前後左右にどんどん傾くので,まず置き台やボディーの水平をきちんととって基準を定めてからサスペンションの調整をして,結果としてアームベースの水平が確保されるようにするとフワフワの「good bounce」が得られる。オルトフォンをつけて聴いてみるとずいぶん違うしなやかな音だ。SL-1200MK5もかなり良く鳴っていたとはいえ格が違うのは当然か(あるいはプラセボかw)。しかし回転数の切替はまた不安定になっている。純正ベルトならわりといいのだが,道楽としてはまた別の互換ベルトを買ってみようかと思う。

三が日にQUAD44のヒューズホルダーを掃除して戻したら(ネジをやや強く締めすぎたせいか,パーツの経年劣化か),ヒューズホルダーにひびが入ってしまった。互換パーツを注文したので,次に電源スイッチが具合悪くなったらスイッチと一緒に交換しようと思う。まあいつになるかわからないが。


QUAD44のMCモジュール(08/01/02)

正月はおせちを食べたり酒を飲んだりする以外は新居の地下に潜ってオーディオ三昧で過ごしている。こんなに幸せでよいのかと思うし,どうせそのうちまたひどい目に遭うだろうとは思うが,先のことは心配してもしょうがないので今はこの生活を楽しみたいと思う。SMEが修理中なのでSL-1200Mk5にいろいろなカートリッジをつけて試しているが,予想よりずっとまともな音で鳴るようになってきた。これが5万円ならまあ文句はない。

今日はオペアンプだけ交換したままになっていたAタイプのMCモジュールのコンデンサーを交換して,ついでにこのモジュールと新しい方のMMモジュールのRCAジャックを新しい金メッキのものに交換した。オペアンプを新品に交換するとずいぶん音が変わるが,コンデンサーは換えてもとくに変わった感じはしないことが多い(ノイズが出ていたのが治ったことはある)。もともと劣化の少ないタンタルコンだし,電源周り以外ではコンデンサーはあまり劣化しないようだ。RCAジャックも含めてやや精神衛生的側面の大きいメンテナンスといえる。

QUAD44のMCモジュールにはA,B,C,Dの4タイプがあって,このうちA,B,Cを持っている。違いは感度とインピーダンス,容量の3点で,Aタイプは0.3mV/470Ω/22nF,Bタイプは0.1mV/100Ω/68nF,Cタイプは0.3mV/100Ω/68nF,Dタイプは0.1mV/470Ω/22nFとなっている。ハーマン時代のカタログを見るとAタイプがEMT,テクニカ,デンオン等用,DタイプはFRやテクニクス,ゴールドバグ用(マニアックだ)となっている。問題はBとCで,オルトフォンMCシリーズはBタイプが指定されているのに対してSPUとMC10SuperはCタイプが指定されている。この2タイプは感度以外は同じなので,音量の好みで選べばよい......はずだが音も違う気がする。同好の士がどのオルトフォンとどのモジュールを組み合わせているか知りたいものである。

ショックだったのは交換したRCAジャックの寸法(長さ)が以前他のモジュールにつけたのと違っていたことだ。アンプにつけるとモジュールごとに段違いになってしまう。秋葉原の同じ店の同じマスの中から買ったのにどうしてこうなるのか。しかし気がついてみるとこのページももう10年近くやっている。10年分が1ページに収まっているWebページというのも今時珍しいのではないか。

QUAD44のアウトレットにつなぐ電源ケーブル(08/01/01)

あけましておめでとうございます。さて,QUAD44の裏側には3個の電源アウトレット(サービスコンセント)がついていて,44の電源スイッチに連動するようになっている。303や405などのパワーアンプには電源スイッチがないので,このアウトレットから電源をとるのが合理的だ。ところが初期型44だとこれが旧型のIECソケットになっている。マニュアルをみると新品の44にはこれ用のソケットが1個付属していたようだが,いまは世界中探してもこのソケットはみつからない。これで困っている人は多いのではないかと思う。

しかし解決法は意外と簡単だ。まず新IECソケット(写真右,秋葉原で400円)か,このソケットがついた電源ケーブル(パソコンショップにモニター連動用の電源ケーブルがある)を買ってくる。そして,新IECソケットの外枠(スカート)をニッパーかなにかでもぎ取る。もぎ取った後をヤスリなどできれいに平らに仕上げれば出来上がり(写真左)。新IECのスカートの中のプラグが旧IECと全く同じかどうかは確認できないが,とりあえずこれで初期型44のアウトレットに差し込むことができるし実用上は問題ない。

いままで4個ほどこの加工をしたが,新IECソケットのスカートはすべて予想外に簡単に,きれいにもぎ取れた。もしかしたら旧IECとの互換のために取れやすくしているのかもしれない。しかし完成したソケットをQUAD44に差し込むのには意外とコツがいるのだ。44のアウトレットには「フタ」がついているのでプラグでこれをこじ開けないとならない。まっすぐ入れても刺さらない。札幌の病院の人にコツを教えてもらってやっと差し込むことができた。コツは「ソケットを斜めにしてアースプラグから差し込む」ということだ。

QUADのサービス(07/06/18)

QUAD44の電源スイッチが調子悪いので交換しようとパーツ(アルプス製のSDG5P-E)を探したが,古いタイプのスイッチでまったく見つからない。同じ部品を交換したと書いてあるホームページの作者に問い合わせてみたら「QUADに聞いてみたらどうか」とアドヴァイスをもらった。ハンチンドンのQUADの(正確にはIAGの)サービス部門にメールを書いたらすぐ返事が来て,クレジットカード払いで送ってくれた。送料も含め邦貨約2200円。30年前のアンプのパーツがまだメーカーに確保されていて,頼めばすぐ送ってくれるというのはすごいことだ。QUADサービスの評判が本当だったことを実感するとともに,それがIAGに吸収されてからも健在であることに心強さを感じた。それはいいんだけどこのパーツを注文して以来,44の電源スイッチはすこぶる好調で一度も障害(電源が切れなくなる)が起こらない。壊れていない機械はいじらないのが鉄則なので,送ってもらったパーツを実際に使うのはしばらく先になりそうだ。

SL-1200MK5とDL102(07/01/08)

引越の少し前に久しぶりにDL-102を1個買った。でもTD-150+3009Rにつけて聴くと「このカートリッジこんなに寝ぼけた音だったかな」と思うような音だったのだが,これはまだ判断できないな,とは思っていた。正月明けに自分用引越祝いとしてSL-1200MK5を1台買った。これにDL-102をつけてみるとびっくりする程よい音だった。DJ用にかなり低感度化されていると噂のMK5のアームとDL-102との相性が良いのか。昔の経験を活かしてトランス経由でつなぎ,針圧もたっぷりかけるとますます力感のある良い音になる。

趣味性はかけらもないプレーヤーだが,これだけきちんとしたものが今でも実売4万円台で買えるというのはすごいことだ。結構重いカートリッジもつくし(サブウエイトは自作もできる)針圧も4gまで直読できる。気軽にモノ用カートリッジをつけて古いレコードを聴くには最適だと思う。ちなみにステレオカートリッジはつけてみていない。音が良くても悪くても,そういうことをするのはなんか粋でない気がする。

新しい部屋へ(07/01/03)

大学の改装で新しい部屋に移った。ずいぶん狭くなったこともあってオーディオを開梱して設置するまでにはずいぶん時間がかかった。最初はスピーカースタンドはあきらめてLS3/5aを「ブックシェルフ」式に本棚に入れてみた。しばらくそれで聴いたが低音はこもるし高域は伸びないしで全然楽しめなかった。オーディオラックも置けないのでアンプなどは本棚に並べることになったが,これはホームセンターで立派な棚板を切ってもらってとてもうまくいった。

ようやくレコードプレーヤーも組めたので正月2日から大学に来て,思い切ってスピーカーを本棚から出してみた。やっぱりこの音だ。引越から2週間,やっとレコードが楽しく聴けるようになって,ここが自分の仕事部屋だという気がしてきた。というわけで「年内」の約束だった仕事をどんどんこなして行かねばならない。

eBayと世界の人々(06/09/22)

eBayでQUAD44用のDISCモジュール(基盤がM12515-Iss.5になった中期タイプ)とTypeAのMCモジュールを買った。ふたつで送料込み46.72ポンドだから1万円ちょっとだ。出品者が極東の辺境の落札者にとても親切な配慮をしてくれたのもうれしかった。eBayではイギリスの人と取引することが多いけど,イギリス人でもイヤな奴は少数ながらいるし,タイの人や香港の人にはとても親切にしてもらった。人間の違いは国籍や文化よりも個人差の方が大きいことをますます痛感する。

これまでDL103をTypeCモジュール(300μV,100Ω,68nF)につないで聴いてたのだが,同じ300μでもカタログでDL103用とされていたのは470Ω,22nFのTypeAだった。そんなには違わないだろう,と思っていたけど聴いてみるとずいぶん違う。いままでどうも眠い音だなあと思っていたのが一気に元気になった。これでType A, B, Cが揃ったわけで,こうなると残りのTypeDも欲しくなる(必要ないんだけど......)。

Iss.5のDISCモジュールもサービスマニュアルには初期型44ではノイズが出るみたいなことが書いてあったが全く大丈夫。基本的には初期型モジュールと同じ音だがやや明快で現代的な音になっている。昔使っていた34のフォノはこんな音だったような気がする。2ちゃんのQUADスレで昔「後期型44に初期型モジュールが最高」みたいなことが書いてあったのを覚えているが,たしかに好みによって差し替える可能性がある程度には違う音だと思う。44は面白いアンプだ。

405-2が熱い!(06/08/16)

べつに「いま,405-2がアツい!」みたいな話をしようとしているわけではない。ほんとに405-2が熱いのだ。帯広はこの10日ほどすごく暑い日が続いている。ここ数日は少し涼しくなったのだが,研究室は風通しが悪いこともあって相変わらずの暑さだ。研究室が暑いのはコンピュータや冷蔵庫など熱の出るものが多いせいもある。その熱源戦線に札幌の病院から戻って来た405-2も参加したのでますます暑いのだ。

405-2は病院で電源や基盤のコンデンサ交換,オペアンプ交換などの治療を受けてすっかり元気になった。また,交換されていたスピーカー端子をオリジナルに近いバナナ専用に戻してもらったのも気に入っている。もちろん音も治療前よりずっとよくなった。しかしすごく熱くなるのは相変わらずで,しばらく大きな音を出した後など真夏にはアッチッチになる。これでは定期的なメンテナンスが必要になるのもわかる。405-2のためにも早く本格的に涼しくなってほしいものだ。

ノイトリックのDINプラグ(06/06/12)

eBayで買ったNeutrikのDINプラグが届いた。ボディに刻まれたブランドはReanだがノイトリック製。とてもよくできていて精度も高く,QUADのDINジャックにすごくしっくりはまる。そのうえピンや内部接点は金メッキだ。これは気分的には最高のDINプラグだと思う。値段はPREHととくに変わらなかった。しかしDINプラグの種類で音なんか変わらない。あくまでも気分だ。でもオーディオ趣味の80%くらいは気分だと思う。その点でこのとても素敵なDINプラグに「CHINA」と刻まれていることは気分的にはやや欠点かも知れない(あくまでも気分の問題として)。

QUAD44のMCモジュールのタンタルコンデンサを思い切って全部交換してみた。パーツ代も作業時間もけっこうかかったが結果はとても満足のいくものだった。ほとんどすべての電解コンデンサーと過半数のオペアンプが新品に交換された44と電解コンデンサーがすべて交換された303の組み合わせで鳴っている音は理想にかなり近い。しかし素人がこれだけいじって失敗がまったくないのは奇跡としかいいようがない。とかいってそのうちまたいじりたくなるだろうから危険は去らないけど。

QUAD44のいろいろ(06/05/30)

QUAD44は1979年から1989年までの10年間に約40000台製造された(Kessler,2003)。これらにはさまざまなバリエーションがある。後期のものでボディやボタンの色がグレーになり,キャンセルLEDが廃止されたり入出力がピンジャックになったりしているのは有名だが,ベージュ色の「前期型」と言われるものにもいくつかのバリエーションがある。私の44はベージュ色で製造番号2072,まさに最初期型である。プリアウトのピンジャックは5Vしかない。最近手に入れたジャンクの44の製造番号は8504,これも前期型だがすでにピンジャックは5Vと1.5Vに増えている。

2072の方は入出力モジュールのパネルの色が黒,8504ではボディと同じベージュになっている(もちろん後期型44ではボディに合わせてグレーになる)。違いはそれだけでなく,テープモジュールの再生と録音の表示が上下逆になっている(写真右)。これは初期型の製造ミスで上が再生,下が録音が正しく,取説にも絵入りの訂正文が入っている。私のは2台ともテープモニターボタンは鮮やかな赤(写真左),サービスコンセントは古いIECタイプ(写真中,最初はフタがついてるのかと思った)だが,モニターボタンは後にもう少し黒ずんだ赤に変わるし,コンセントも製造番号19000あたりから現行のIECタイプに変わる。コンセントが新IECでモニターボタンの黒っぽいベージュの44を「中期型」と呼ぶこともできるかもしれない。

サービスマニュアルを参照すると,44は外見だけでなく内部にも多くのバリエーションがあることがわかる。たとえばフォノ入力ボードは製造番号12000あたりでまったく違う回路になっているし,AUX入力ボードも最初はLF351/TL071オペアンプを2個使う構造だったのが後のCD/AUXボードではデュアルのTL072オペアンプ1個で賄うように変わっている。グレーの後期型は内部のコンストラクション自体も初期型とはまったく違うし(トーンコントロール基盤の取り付け方法,アッテネーターなど),音も全然別物だと言われている(私はちゃんと聴いたことないので)。そういえばフォノボードのリストアをしていてコンデンサーにも抵抗と同じカラーコードで容量が示されるものがあるのを初めて知った。オーディオはまだまだ奥深い。

文献:
Kessler,K. 2003 Quad; The Closest Approach. Huntingdon, International Audio Group Ltd.


病膏肓に入る(06/05/24)

この写真を見てください。QUAD44が2台あります。もう一台買ってしまったのです.....

ヤフオクで出ていた電源が入らないジャンクの44を3万で落札した。(1)なかなか手に入らないMM用のDISCモジュールを手に入れたい(2)ノイズの出ないTAPEモジュールを手に入れたい(3)今の44の傷んだノブやつまみを交換したい,というのが買った理由だ。届いた44は全体としては今の44よりきれいだが,なぜか入力モジュールがひどく汚れていた。なにか接点復活剤か油のようなものが多量に付着している。電源が入らないのは電源ユニットが壊れている(ヒューズがアセンブリごと取れている)せいか,電源ボードの電解がかなり液漏れしているせいだろう。ノブやつまみはきれいなものがついていたのでとりあえず(3)は達成。汚れた入力モジュールも掃除したらだいぶきれいになった。運良くDISCモジュールは生きていたのでさっそくオペアンプとピンジャックを交換して再生する。これで(1)も達成。現有44の問題点はほぼ解決してしまった。しかしTAPEモジュールはやはりノイズが出て(2)は達成せず。3個のTAPEモジュールすべてでノイズが出るのは何か別の原因を考えなくてはならない。

何はともあれ愛用の44はずいぶんきれいになったしMCトランスもつなげるようになった。何個もの入力モジュールが手に入ったのもありがたい。これで3万円は安いと主観的には思うのだがもうこれは普通の経済感覚ではないだろう。病膏肓に入るというやつだ。

いろいろなDINプラグ(06/05/23)

QUAD用のラインケーブルを作るためにいろいろなDINプラグを買って試した(写真)。右から順に(1)RSコンポーネンツで買える独Lumberg社製のプラボディ5ピンDIN(2)同じくRSで買える英Deltron社製の金属ボディ5ピンDIN(3)独PREH社製の金属ボディ5ピンDIN(4)同じくPREH社製の4ピンDIN,である。Lumbergはプラで安っぽく見えるし値段も安い(200円くらい)がとても精巧にできており信頼性が高い。いっぽうDeltronは金属だが仕上げが雑なだけでなく精度も悪く,私が買った5個のうちQUADのジャックにきちんと嵌るのは1個しかなかった(それで値段はLumbergの2倍くらいする)。いっぽうPREHはさすが丸形DINコネクタのオリジネータだけあって仕上げも美しく信頼感があるし,実際精度が高くQUADのジャックにきっちりと嵌る。

結論として金属製ならPREHがお薦め,PREHが買えないならLumbergを使うのがよいだろう。しかし残念ながら私の知る限りPREHのDINプラグは日本国内では買えないようだ。私はflashback sales から買う(1個2.89ポンド,送料1.99ポンド)か,eBayに出品されているもの(だいたい1個2ポンドくらい)を買うかしている。日本のRSコンポーネンツで金属製DINプラグとして表示されている写真はPREHのように見えるが実際に送られてくるのは外見も全然違うDeltronであるから注意が必要だ。ネットで見るとNeutrikのDINプラグというのもあるようで,いつか入手して試してみたい。だんだん変な趣味に展開してきた。

QUAD303の音(06/04/28)

QUAD303が札幌の病院から帰ってきた。すべての電解コンデンサとトラブルの多い可変抵抗が交換され,ハンダもすべて補正されたのでもう安心。自分の体と同様,やはり早めによい病院にかかることが大切だ。

さっそく44につないで聴いてみる。405-2よりもややハイ上がりだが実に元気な音。よく欧米のHPで303は more transparent だと書かれているがその通りで,細身だが見通しがすごくよい。しかし33につないでみたら驚いた。44につないだ時よりずっと中低域が充実して「重厚」といってもよい響きに変わる。405-2ではプリの違いでこんなに音は変わらなかった。これは侮れない。

「ブリティッシュ・サウンド」のイメージから言えば,33+303の音はまさにそれだ。ゆったりした中低音の上にちょっとスパイスの利いた高域が乗って,音楽をやや隈取り気味に聴かせる。いっぽう44-303はもっとハイファイだが神経質だ。どっちが好きかというとハイ上がりの好きな私としては44+303の方が好きな音かも知れないが,33+303の音の「説得力」は圧倒的だ。それでこの外観だもんなあ。まいったまいった,脱帽だよ。

QUAD44で遊ぶ(06/04/18)

QUAD44のMCモジュールが調子が悪いのでコンデンサーを交換したのだがミスって壊してしまった。オペアンプが逝ってしまったのだ。それでオペアンプも取寄せて交換することにした。QUAD44に使われているオペアンプICは後期型だとTL071/072CPに統一されているようだが,私の初期型44はオペアンプ回路黎明期だけあって今では珍しい各種のオペアンプが使われている。RADIOモジュールにはLF351N(写真は交換前),TAPEモジュールにはRCAのCA3140E がついていた。ありふれたTL071/072なら100円以下で買えるが,こういう珍しいのは300円以上する。といっても恐怖の輸入オーディオワールドではタダみたいな値段であることに変わりはない。

研究室にあったジャンク基盤で十分にハンダ吸い取りとハンダづけの練習をしてから,とりあえず壊れたMCモジュールのTL071CPを交換してみる。成功。音がちゃんと出るようになっただけでなく,音がすごく良くなった。それこそ「ヴェールが一枚剥がれた」みたいな感じ。こんどはCD/AUXのTL072CPを交換する。これも大成功。CDの音はびっくりするほど改善された。ついでに接触の悪いピンジャックも新品に交換する。そんな調子で手持ちの全部のモジュールのオペアンプを交換したが失敗はひとつもなかった。

44はどうも33より音が良くない感じがしていたのだが,今回の部品交換でずいぶん変化した。もちろん33の良さ,44の特徴は基本的にそのままだけど,交換後の音なら44だけしかなくてもとくに不満はないと思う。しかしこの44にはDIYまで楽しませてもらって本当にありがたいことだ。今日現在まだ取り返しのつかない大失敗がないのも奇蹟的だ(そのうちきっと本格的に壊すだろうがそれも楽しみのうちである)。

いっぽうイギリスからはるばるやってきた303は予想通りトラブルがあって札幌の病院に入院中orz。

44の音と33の音(06/03/29)

もう4月になるというのに帯広は写真の通り大雪。でもこういう日にはレコードがいい音で鳴る。

無事に退院してから2週間,QUAD44と33の2台のプリアンプ(QUADではControl Unitというわけだが)を何度も何度もとっかえひっかえして聞いてきた。同じQUADでも2台の音はずいぶん違う。もちろん前のLINNと比べればどちらも正真正銘QUADの音なのだが,33の音はオールドアンプらしく聞かせる音と聞かせない音を整理して強調して聞かせる演出型の音だ。いっぽう44はもう少しフラットで,その分レンジは上にも下にも伸びている。音場感も44の方が上で,高さがよく出る。オーディオ的には44の方が明らかにレベルの高い音だと思う。

しかし音楽を聴いて楽しいのは33のほうだ。とくに古い録音のヴァイオリンなどを聞いた時に,33は録音に寄り添ってそれを最大限いい音で聞かせようとする。いっぽう44はやや突き放したような感じに聴こえる。44の方向なら前のLINNでもよかったかもしれないと思う。けっきょくここ数日はずっと33が405-2につながっている。

オーディオ機器には個体差があるから,これがそのまま33と44の本質的な差ではないだろう。私の44にはMC入力しかなく,33のトランス入力と比べているのも44に不利かもしれない。とりあえず44のMM用ディスクモジュールが見つかるまでは33を中心に聞いていくことになりそうだ。eBayで衝動買いした303も今週中にははるばる英国から届くであろう。33を303につなげば33と44の差がますます33方向に進行するのではないかと期待しているが,オーディオでは期待はたいてい裏切られるからね......

naitの音(06/02/23)

ヤフオクで知り合っただけで顔も見たことのない人が,私を信用してアンプを貸してくれる。オークションはときどきいやなこともあるが,基本的にはみんな良心的で心やさしい,相手思いの人たちが中心だ。私はヤフオクを始めてから,むしろこの世の中がいまもたくさんのきちんとした人々によって動かされていることを痛感した。eBayや海外通販も同様で,人の違いは国籍よりも個体差のほうが大きいことを感じさせられる。

naitを貸してくださったwatiさんは,私がときどき出品する日本に1〜2名しか必要とする人がいないような品物を2回にわたって落札してくださった方。たぶん私より年上で,イギリスのオーディオに大変造詣の深い方だ。トーレンスの前に使っていたレガもいまはwatiさんのところにある。お借りしたnaitは日本にもかなり入っていたnait2ではなくオリジナルのもの。まあシンプルな作りで筐体はがっしりした金属の質感の高いものだが,つまみ類はプラの素っ気ないもので,ボリュームに至っては瓶のフタみたいなプラ部品だ。

しかし音を聴いたら驚いた。まったりした暗めの音を想像していたのだが,まるでちがう元気でワイドレンジな音。QUADよりずっと現代的な音で,とくにロックやジャズはほんとに気持ちよく鳴るし,クラシックでも小編成のものはとても素敵だ。オーケストラなどはQUADにやや譲るが,それにしても十分高品位な音でスピーカーもよくドライブしている。他のものがなくてこれ一台ならとくに不満も持たず聞けると思う。naitやCyrusのような縦長スタイルのアンプが今も気軽に買えるならプリメイン一台でシステムを組んでみたいなあ。とにかくフルサイズの横長オーディオは嫌いだ。

研究室にはQUAD44も届いた。これで以前使っていた34も含めてQUAD全盛期のトランジスタ型プリは全機種使ったことになる。34もまた欲しい(こんどはベージュのDIN入力のやつがいいな)。44は33よりかなりワイドレンジで現代風だがやっぱりQUADの音。33と44では33の方がよい面もあって,どちらか1台残すなら相当悩むと思う。じっくり聴き比べたいのだが残念ながら来週からオーディオはしばらく楽しめなくなってしまう。

QUADの音(06/02/01)

QUAD33と405-2で聴くレコードやCDの音は,LINNのアンプとは明らかに違っている。LINNの音はよくも悪くも自然で,だけどややのっぺりしている。いっぽうQUADの音はブログにも書いたようにきちんと料理された音だ。楽器の音や人の声や,その響きにはすべて独特のテクスチャーがあるのだが,QUADで聴くとそれらすべてのテクスチャーが現実よりもずっと強調される。すべての音を平等に鳴らすのではなく,聴くべき音だけを整理して前に並べてみせるのだ。これは「自然な音」ではないけれど,私はこの音がLINNの音より好きだ。五味康祐は「デッカのオーケストラ録音の高域には砂金が混じっている」と書いたが,QUADの音もその種類なのかもしれない。私の部屋でQUADの音を聴いた同僚が「オーケストラの音が細かく泡立っているようだ」と言った。さすが良い耳だ。


トーレンスのベルト(05/12/21)

TD-150が研究室に届いた時には,とりあえず回ってはいたが回転数の切換えがうまく行ったり行かなかったりする状態だった。ベルトを昔TD-321で使っていた純正のものに替えるとかなりマシになった。eBayで手に入れた互換ベルトでは良くなるどころか45回転が回らなくなってしまったので,古い純正ベルトに戻して聴いていた。同じトラブルはこのプレーヤーを譲ってくれた人のところにあるもう一台のTD-150でも起きていた。私が「純正ベルトだとかなりマシです」と連絡したので,その人はさっそく純正ベルトを買いにいった。純正ベルトに交換したらトラブルは完全に解決したそうだ。それでその人はお礼ということで新品の純正ベルトを1本私にも送ってくれた。

交換してみたら驚くほど変わった。キビキビ回るし回転数調整もスムーズになった。それより驚いたのは音質も良くなったことだ。新しいベルトで回転トルクがかなり強くなったことと関係あるらしい。古いベルトはTD-321のを新しいものと交換したときに取っておいたもので10年以上は経っている。かなり劣化していたようだ。ベルトの交換でサスペンションもある程度調整する必要があった。ベルトもサスペンションの一部,とトーレンスに詳しいホームページにも書いてあった通りだ。

ネットで調べてみてもTD-150のベルトのトラブルは多い。他のトーレンスのベルトドライブ機は互換ベルトでも問題ないようだが,初代ベルトドライブのTD-150だけはベルトを神経質に選び,ベルトの幅や厚さ,伸縮度などが純正と違うとうまく行かないようだ。純正ベルトは3700円。輸入オーディオでも「単に値段が高いだけではない」ということはたまにはある。ごくたまに,だけれども。

(06/01/25後記)懲りずにまたeBayで非純正ベルトを買ってみた。今度は大当たりで純正とまったく同じように完全に機能する。これがアメリカからの送料合わせても$12.98というのはありがたかった。とはいえ上で述べたダメベルトは1本$4.98だったから,やはり「安物買いの銭失い」というのはあるようだ。

一生使えるか......(05/12/10)

印税が入ったら一生使えるプレーヤーを買う予定だった。予算は30万くらいまで,アームレスでSMEが使えて,回転数の切換えが簡単にできて,できれば機械式で電子制御でないもの,そしてできるだけコンパクトなもの,というのが条件。予算的にはTD-124やガラードでもいいし,中古なら旧タイプのLP-12だってありだ。でもガラードはなんだか欲しくないし(大きくなるから),TD-124は消耗パーツの供給が心配,LP-12じゃあまりにそのまんま,で悩んでいた。

そんなときにオークションにTD-150が出ていた。TD-150は1965年から1968年まで売られていたトーレンス最初のベルトドライブ機(製造はEMT)。LP-12の原型とも言われるじつにコンパクトなスプリングサスペンションのプレーヤー(実際いくつかの部品はLP-12と互換するらしい)。写真に一目惚れした。これだ!ということで購入。すごく安いということもなかったが,予算の数分の一で希望通りのものが手に入ってしまった。

モーターが電気で回る以外は,すべてがシンプルな機械制御で動く。意図的に壊さない限り,基本的なメンテをしていれば壊れるところはない。部品もコアなものを除けば汎用のパーツやネジで交換可能だ。すでに40年使われてどこも壊れていないのだ,おそらく残りの一生使い続けられるだろう。

そのぶん調整すべき部分は無数にある。30歳の私だったらまったくお手上げだっただろうが,その後10数年の経験とインターネットの力で,各部の分解掃除と組み直し,アームの取り付けと基本的な調整までこぎ着けて,すでにとても良い音で鳴っている。ああ,レコードってこういう音だったよねえ,というちょっと懐かしく心の温まる音,それでいて解像度はレガに劣らない。これからゆっくりと微妙な調整を仕上げていこうと思う。

最近のカートリッジ事情(05/10/01)

ケーブル自作は面白くて最近はベルデンの8412という2芯シールドで作ったラインケーブルで聴いている。カナレよりもう少しふくよかな感じで気に入っている。スピーカーケーブルは自作の基本ビニールキャブタイヤの極太ケーブルが偶然手に入ったので今はそれがついている。カナレより低音が出るが高域はやや荒い。しかしエージングが進んだのかだんだん滑らかになっている(客観的には耳の慣れだと思う)。電源ケーブルはベルデンも試したがやはりリンのアンプはリンの付属電源コードが一番良いという結論になる。現在のところ全体には悪くない音だ。

カートリッジもいろいろ試した。知人の推薦でSUMIKOのPearlというMMカートリッジを買ってみた。奥行きが深く雰囲気のある再生でオーケストラなどとても美しいが,私はハイ上がりで神経質な音のほうが好きなのでどうもやや眠く感じて常用にはならず。いっぽう遊びで買ったオーディオテクニカのAT-F3IIIというMCカートリッジ(写真)はとても気に入って,最近はおもにこのカートリッジを使っている(アンプでMC受け)。定価10000円という安いカートリッジだが高域の輝かしめの癖が私の好みには合っているようだ。これでアルヒーフなど聴くと輝かしくて輝かしくて恍惚となる。思い出せば初めて買ったトーンアームはオーディオテクニカだった。最近ではテクニカは昔のカートリッジメーカーからマイクメーカーに転身した感があるし(シュアもそうなのは興味深い),副業の「寿司を握るロボット」も好調で経営は良いようだ。できる限り長くカートリッジを作り続けて欲しい。

いっぽう学会出張で秋葉のキムラ無線で針交換してきたDL103もとてもよい。手元の古い103と聴き比べると,どうも私のシステムではMCカートリッジは針が減らなくても2年程度でずいぶん音が悪くなってしまうようだ。帯磁だと思うがもしかしたらプリから直流が漏れてたりして.....測定する勇気はなし。

カナレとV15 TypeIII(05/08/26)

カナレ化はラインケーブルにまで及んで全体にやや和風の生真面目サウンドになっている。リンのインターコネクトケーブルはほんとに良いもので不満はないのだが,どうもスピーカーケーブルがカナレの場合に限ってはラインケーブルもカナレの方がバランスが良い(ジャポネスク風味が一貫する)ように感じる。

この20年はおもに海外製品を使ってきたけれど,自分が育てられてきた音・安心する音は日本のものだったことを痛感する。でも今の国産オーディオに私が欲しくなるような製品がほとんどないことが大きな問題だ。昔のデンオンPRA2000とか今あったら欲しいなあ。和風化されたシステムではオーディオテクニカのカートリッジがとても良い音で鳴るし,久しぶりに使ってみたV15 TypeIIIも期待通りに鳴ってくれている。緻密でありながら暖かい音。そういえばV15 TypeIIIの設計者も日本人だと聞いたことがある。

カナレのラインケーブルの一部は自作してみた。ケーブル作りも昔はずいぶんやったがリンのケーブルを使うようになってからほとんどごぶさたしていた。ちなみに必要な長さのラインケーブルをステレオ1ペア作る材料費は1000円弱である。ケーブルを作るとしばらくの間指先が痛い(被覆線の皮むきなどに指先を使うから)。でもこれも快い痛さだ。

バイワイヤとシングルワイヤ(05/07/18)

スピーカーケーブルをカナレ4S8にしてから,シングルワイヤ接続とバイワイヤ接続を何度か入れ替えて試してみた。一長一短。現在のところバイワイヤになっている。

K400と4S6を入れ替えて驚いた時の明るさや空間感,広がりはシングルワイヤの方が優れている。全体に柔らかいので歪みっぽい音源でも聴きやすい。そのかわり音はやや薄く腰高になる。バイワイヤでは音の実在感が強まり,とくに低域の制動が良くなって音が厚くなるが,そのかわり音はやや暗めになり,空間感や広がりも控えめになる。固めなので歪みっぽい音源ではややつらい。バイワイヤ専用のK400ではバイワイヤのこうした弱点が前面に出ていた気がする。

これと似たような対比を経験したことがある。MMカートリッジとMCカートリッジだ。シングルワイヤの音はよいMMカートリッジの機嫌のいい時の音に似ている。いっぽうバイワイヤの音はMC的だ。カートリッジについては私は結局実在感でMCを残している。MCでも結局オルトフォンよりデンオンを好むのもその理由だと思う。同じことがスピーカーケーブルでもいえそうだ。しかしシングルワイヤの明るく繊細な音も捨てがたい。ときどきV15typeIIIでレコードを聴きたくなるのと同じように。

(05/07/21追記)いろいろ試してみたがSMEのアームコードも結局純正に落ち着いた。それもニッケルメッキの古い方。SMEアームの音は純正アームコードの音なんだなあと再確認。そういう意味ではコードのない中古がひどく廉くなるのは当然か。

(05/07/25追記)カートリッジはまたオルトフォンMC20に。どっちもいいんだよ。とくにドイツグラモフォンの比較的新しい録音はオルトフォンがいいなあ。いっぽうDL103はデッカや古い録音にいいなあ。でもダブルアームとかもうイヤなんだよなあ。SPUかコントラプンクトでも買えばこうした悩みも解決するのか。6万円もするカートリッジを買うのには私の常識からしてかなりの抵抗があるが,年齢や収入から考えれば,またそれで音的に満足するのであればそれほど高い買い物でもないのだろう。でもそれで解決しちゃうほど人生は甘くないはずだとも思う。

カナレのスピーカーケーブル(05/07/14)

研究室のオーディオはひさしぶりにこれといった不満を感じないような良い音で鳴っている。その原因としては以下のようなことがあげられる(またこれらは印税がいくらか入ったことに起因する)。

この中でもっとも音質改善に効果があったのは電源ではなくカナレのケーブルだった。これまで使ってたのはリンのK400という図太くて黒くて重いバイワイヤ用のケーブル,4000円/m。自宅システム用に買ったカナレ4S6(80円/m)が良い音だったので遊び心で取り替えてみたら驚愕。まあおよそすべての面で80円のケーブルのシングルワイヤリングの方が良いのだ。数回つなぎ換えて比べてみてもK400は暗くて詰まった音でやや歪み感もあるのに対して,カナレは明るくて透明,歪み感も少なく「高さ」もよく見える。ただしカナレの音はやや腰高なのが不満と言えば不満という程度だった。

そこで同じカナレのもう少し太いケーブル4S8をバイワヤリングでつないでみた。これでも140円/mしかしないので通販送料合わせて総額1500円に収まる。こんどは重心がかなり低くなって,それでも4S6のときの明るさや透明感はしっかり残るという理想的な結果になった。しかしK400はどうしてあんな音なのだろう。ケーブルに故障はないにしてもあまりに悪すぎる。端末処理(バナナプラグなどがハンダづけしてある)に問題があるのか,あるいは経年変化か(かれこれ5年近く使っていた)。そのうち暇になったら端末処理やり直して試してみたいが,いまはカナレの音に何の不満もないので当分このままだろう。カナレはスタジオやステージ用の電線で世界的に有名な日本のメーカーで,愛知県日進市で作られている。カナレとモガミ(長野県塩尻市)の業務用電線は中部地方オーディオマニアの誇りだな。

電源の改善も相俟ってとくにCDの音がとても良く聞けるようになった。今日現在ではLPよりCDの方が良いかも。電源の改善では自作の図太い電源ケーブルなどはすべて排斥してリンの純正の細いものと,それと同じメーカー製のやや太いモールドケーブル(ヤフオクで1本2500円)だけになった。結局その方が良かったからだ。リンのラインケーブルも細くてしなやかだが良い音だ。少なくとも私の好みの範囲では「ケーブルは細くて安い方が音が良い」。

再びシンプルなシステムへ(05/06/23)

ステレオLP用とモノ/45用の2つのプレーヤーを切換えボックスで1つのトランスにつなぎプリアンプにMM受けで入れる,という冗長なアナログシステムを1年間以上使ってきた。そろそろ疲れていたところへモノ用プレーヤー(最近はテクニクスSL-1500という古いDDを使っていた)のアームが接触不良となった。よい機会なのでシステムをリセットした。

プレーヤーはレガ1台に。当然切換えボックスはお役御免。どうせだからトランスも片付けてWAKONDAはMC受けに切り替える。ついでにカートリッジもしばらく付けっぱなしだったDL103RからオルトフォンMC20SuperIIに換える。聴いてみるといい音だ。専用トランス受けではどうも眠い音でDL103に負けていたオルトフォンがすばらしく美しく鳴る。久しぶりの褒め殺しサウンドを満喫する。 オルトフォンはこんなによかったか。そういえばあれはどう鳴るかな,と引き出しの奥から取り出したのはMC10SuperIIだ。

私の記憶に間違いがなければ(間違いの可能性はあり)このカートリッジを買ったのは結婚するより前だから少なくとも12年経っている。最後に使ったのはまだ帯広にくる前だ。それに取り替えてみる。これもいい音だ。MC20に比べてやや線が太くわずかにドンシャリなのだが,それがとくに古い録音ではかえってMC20よりいい味になっている。オーディオは面白いなあ。なおこのカートリッジの復活にはメラミンスポンジによる針クリーニングが決め手になった。1万円もする針クリーニング液など全く必要ない。2ちゃんねるに書いてあることもときどき役に立つ。

6/24追記
1)とかなんとか言ってカートリッジは今日現在すでにもとのDL103Rに戻っている。オルトフォンはほんとにきれいな音なのだが,高域にややピークのあるDL103の音じゃないと結局私はレコードを楽しめないのか。103Rと103無印のどちらがよいかは常に迷う微妙な判断だが,いずれにしてもよい音の80%は慣れである。しかしDL103Rにもメラミンクリーニングは確実に効いたよ!
2)私の記憶にはやはり間違いがあった。どこが間違っていたかはこのページのずっと下の方を見ればわかります。

こういうものを作らせたら(05/06/13)

自宅でCDやiPodの音楽を聴くために簡素なオーディオ装置を揃えた。最初にヤマハの小型スピーカーNS-10MMT(有名な小型モニターいわゆる「テンモニ」のそのまたミニチュア版,人呼んで「ミニモニ。」)を新品ペア9800円で買って,それに貰い物の古いBOSEのアンプとビクターのCDプレーヤーをつないで聴いていた。そのうちにもっとちゃんとした音で聴きたくなった。予算からいえばもう少し高い値段のマランツのアンプとCDでも良かったのだが,何しろ大きい。QUADやLINNに慣れた目からは一般的な国産アンプは巨大すぎる。

それで選んだのがデンオン(いまはデノンというらしい.....)のCDレシーバー。これだけでCDもFMもAMも聴けてアンプもついている。イギリスのオーディオ誌でこれの旧モデルがベストバイに選ばれていたのも印象に残っていた。送料も合わせて約3万円。総額4万円のオーディオシステムだ。予想よりずっと良い音だった。高域寄りのバランスは好みだし,FMもきれいな音で聴ける。AMもそれなりに音楽的だ。こういうものを作らせたらやっぱり日本はすごい。家でゴロゴロするのが前より楽しくなった。

レシーバーの上に乗っているのはスタックスのイヤースピーカーのドライバー。これで聴くと3万円のレシーバーでも研究室のオーディオより明らかに良い音で聴ける。といってもヘッドフォンの方がCDレシーバー本体よりずっと高価なんだけどね。

またトチ狂ってしまった(04/03/18)

最初はAT-MONO3/LPというカートリッジを面白半分で買ってみたことから始まった。ところがこれでモノレコードを聴くとずいぶん良い音であるだけでなく,これまでひどい音でしか聴けなくて盤が傷んでいるものとばかり思っていた古いモノラルレコードがかなりの確率で普通に聴けるようになった。死蔵していたワルターVPOの大地の歌のオリジナルLXT盤とか,英HMV盤のトスカニーニNBCのブラームスとかがみごとに蘇った。そうなると,モノラルカートリッジ用のサブプレーヤーがあってもいいかな,という気持ちになる。ちょうどコスモテクノという3万円以下で買えて78回転も聴けるプレーヤーが気になっていて,恐いもの見たさで取り寄せてみたのがいけなかった。

中国製で外観や造りは絶望的になるほど安っぽいのだが,モーターはDDできちんと回り,回転数の変更はスイスイだしスイッチひとつでターンテーブルがピタッと止まるのでほんとに便利。そのうえ音も決して悪くなかった。ちょうどヤフオクにはまっていたという悪条件が重なって,中古のMCトランスやフォノイコライザーまで買い揃えてしまって写真のようなことになった。これでいちいちカートリッジ交換をしなくてもモノラル盤がとても良い音で聴けるし,取り寄せ中のM44G用のSP針が届けばSPも聴ける。コスモテクノはアーム高の調整ができず,カートリッジごとに高さ調整してないことが免罪されるので精神衛生上もよろしい。それでもステレオ盤をかけると音場感がまったくないし音色も硬くて余り楽しめず,やはりレガ&SMEはいいわということになったのも同様に精神衛生上よいことだった。

久しぶりの大仕事(04/01/21)

よろこんで使っていたレガのトーンアームが断線した。代理店は補修パーツは売らないというし,いよいよずっと暖めていた計画を実行することにした。すなわち「レガにSME3009Rを取り付ける」。そのためにはレガにSME用の穴を開けなければならない。数年ぶりの大仕事に心が弾む。昔ならとるものもとりあえず手持ちの工具で開けてしまっただろうが,そこはすでに不惑の年,じっくり計画してまず工具をそろえた。電気ドリルや各種の刃,養生用のマスキングテープなど合計8000円余。買ってきた工具でまずはいらない板にSME穴を開ける練習,それから本番。

準備のかいあって数時間の作業で3009Rはレガのボード上に収まった。まるで最初からSMEがついていたような感じ,心配していたダストカバーもちゃんと閉まる。音を出してみるとやはりトーレンスよりかなり現代調の音ではあるが,レガのアームに比べると良くも悪くも「いかにもアナログ」な雰囲気,まったく悪くない。数年のうちにはTD124かガラードに再挑戦と考えているが,それまではこれで聴いていこう。KAN STANDが届いてLS3/5aもきちんと鳴らせるようになったし,研究室の改装に伴うオーディオ試行錯誤は一段落だ。

LS3/5aでマターリ(03/11/25)

地震でスピーカーに傷がついたり,アンプのボンネットが曲がったりもしたが,最大の被害は研究室の天井が一部崩落したことだった。結果として部屋の一部が使えなくなり,そこにあった仕事机やコンピュータは別の部屋に移動して,ひと部屋は実質オーディオだけになった。このことは音質的にはプラスに働いたが,仕事しながら音楽を聴けないという問題が生じた。仕事が忙しいとアンプの電源も入れないで,音楽はもっぱらコンピュータで聴く日々が続く。悩んだあげくの結果が写真の通り。ふるいLS3/5aを取り出して,仕事机の横にオーディオセットを並べることになった。まあ総額100万円のミニコンポですな。

しかし,久しぶりに聴いたLS3/5aはやっぱり良いスピーカーだった。レンジや音場感などは新しいKEOSAにはまったく及ばないが,なんていうか音色そのものが魅力的なんだな。LS3/5aの音自体は少し神経質で決して癒し系ではないのだが,その音に深く深く癒されてマターリ。オーディオって面白いものだなあ。QUADのアンプもとってあったらもっとマターリできたかなと悔やむ気持ちもちょっと生まれた。


RegaとV15TypeIIIの復活(03/01/21)

12月頃からトーレンスの調子が悪くなった。回転ムラが増えているようで音が濁る。気になり出すともうどうしようもない。でもLP-12が買える財力はない。そこで「つなぎ」くらいのつもりで,前から気になっていたRegaのPlanar3を買ってみた。約8万円。ちなみにトーレンスは総額20数万円............。届いたのはそれこそ「板にターンテーブルとアームがついているだけ」の極限までシンプルなプレーヤーだった。どうせシャレだからと久しぶりにV15TypeIIIを引っばり出してつけてみて,何枚かのレコードをかけてみた。.................沈黙。

新規購入のプラシボ効果もあるだろうが,いろんなレコードがなんと楽しく鳴ることか。さすがはV15だけれども,それだけではない。トーレンス+SMEにつけたV15はこんな音では鳴らなかった。V15の「いかにもアナログ」の音に,これまでは聞けなかった空間の奥行きや高さといった「現代ハイファイの要素」がきちんと加わっている。これは聴けるわ。DL103やOrtofonではそれほどではなかったが,それでもトーレンスと比べて悪くはない。付属のRB300というトーンアームが侮れないようだ。当分はRegaとV15TypeIIIという組み合わせでいろんなレコードを聴いてみよう。交換針のストックもまだ2個あるからね。

ヘッドフォンオーディオにはまる(02/10/15)

必要があってわりときちんとしたヘッドフォン(B&O Form2)を買った。パソコンにつないでみたらmp3オーディオが予想外にいい音で聴けた。それでは,ということでiPodを買った。それ以降毎日こればかり聴いている。10GBのiPodの中にはビートルズの公式録音曲全曲,ベートーベン交響曲全曲(トスカニーニ),ブラームス交響曲全曲(ケンペ),シベリウス交響曲全曲(ベルグルンド),マタイ受難曲などに加えてたくさんの「心のアルバム」や懐メロが入っているが,まだ十分余裕がある。付属のイヤフォンでもそれなりに快い音なので移動の時にはそれで聴いているが,Form2に変えると格段に音の品位が上がる。ヘッドフォンはもともとスピーカーよりいい音が出やすいから有利だ。すごい時代になったものだと思う。

研究室のオーディオの方も根本的にセッティングを見直したり,ケーブルや接続部分も見直したりして,この2年くらいでは最も良い状態で鳴っている。iPodと聴き比べれば違いは一目瞭然,mp3というものはやはり音が悪い。それでもiPodに魅せられているのは目新しさだけではないと思う。

オーディオと人生(02/08/14)

悩んだすえにT-10MkIIは取り外し,カートリッジもDL103に戻した。DL103はトランス経由ではなく,MC受けに戻ったWAKONDAプリに直接つながっている。結局1年ほど前の状態に戻ったことになる。それだけでなく,下の方に写真がある自作木製ラックもやめた。結果として,ここしばらくの苦悩が嘘のようにすっきりした音に戻った。あーあ。(じつはこの1か月の間にもケーブルを取っ替え引っ替えしたり,ケーブルを作ったりいろいろしていたが,それらもぜんぶ放逐。)

なんとなく「これが良くないのかもなあ」と思いつつも,それなりに手間や金をかけてしまったものを捨てるのには勇気がいる。ダム建設や干拓がやめられないのもそれだし,人生のいろいろな場面でも同じことがある。オーディオはほんとうに人生の縮図だなあと思う。しかし,MCトランス受けはケーブルで難儀するなあ...T-10MKIIはどうしたものかなあ....

よい音とは?(02/07/14)

どうも最近音が気に入らないので,カートリッジをDL103(トランス受け)から再びMC20SuperIIに換えた。プリアンプはMM受けにしてしまったので,DL103用のトランス(AU320改)の3Ω側を使って聞いてみる。解像度はよいが高域にピークがあるようで弦の音がキンキンして楽しめない。3Ω側はいままで一度も使ったことがなかったので,エージングでなんとかなるかとも思ったが,ボーナスでわずかに懐が暖かかったこともありオルトフォン純正のT-10MkIIを買ってしまう。さすがに純正組み合わせは安心して聞ける音。でも前(DL103)よりよくなったかというと,なんともいえない(笑)。

なんか気に入らない音だ,となるとどこかをいじる。音が変わるとよくなったと喜ぶ。これがオーディオ趣味だ。その繰り返しで音はどんどん変わっていくが,実際に音がよくなっているのかは結局わからない。最近は音の良し悪しというのは装置や調整よりむしろ体調や意欲など聞く側の要因がすごく大きいことを感じる(いまさらながら,だが)。最近音が悪いのは俺が疲れており,時間がなくてゆっくり聞く意欲も持てないからだろう。

小学生の時に7000円のステレオ電蓄に拾ってきた16センチスピーカーをつないで聞いた渡辺暁雄指揮のアルルの女のダイナミックな音には衝撃を受けた。中学生の時に拾ってきたオプトニカのターンテーブルにテクニカの廉いアームとM44Gをつけ,ステレオ電蓄につないで聞いたピンクフロイドの「エコーズ」は本当にいい音だった。大学に入った頃にグレースのアームにフィリップスのMMカートリッジ,ビクターの廉いアンプとダイアトーンDS25Bで聞いたシェリングのベートーベンは恍惚とするような音だった。今はそれらの数倍,数十倍の値段の装置で聞いている。たしかに客観的には音の質はすばらしく上がっている。しかし,そこで聞き惚れるべき自分がすでにいないのだ。

続・やっぱりケーブルはあなどれない(01/11/9)

LINN PHONO

少し時間があったので3009Rの純正ケーブルをモニターPCのプラグを使って修理した。それでレコードの音はほぼ原状復帰し,まあ満足して聴けるようになったんだけど,そうなるとまた欲が出てくる。前からアームケーブルをリンにしてみたらどうかと考えていた。ラインケーブルの代用では失敗したが,リンのアームケーブルなら良いかも知れない。サウンドマックの大黒さんに相談してみたらAKITO用のケーブル(5Pプラグ)を改造してくれるとのことだったので,お願いした。プラグも込みでSMEの純正ケーブルの半額にも及ばない値段,普通に考えればねえ......。届いてみれば案の定やすっぽいケーブルで,アーム側は交換してもらったからまだしも,アンプ側はなんとプラスチックモールドのプラグ,量販店で売ってる1000円のAVケーブルみたいなものだ(写真左)。いつもながらリンのケーブルはなあ,と思いながらつなぎ替えて,最初のレコードをかけた瞬間からすっかり納得。客観的にはともかく自分の音の好みはリンのケーブルと相性が良いのだと思う。全体に歪みが減って静かになった。これをリン臭い面白みのない音と嫌う人もいるだろうが,いままで歪みっぽくて楽しめなかったレコードがそれなりに,良いレコードはますます気持ち良く聴けるようになった。安いものですから,SMEアームをお使いの方は試してみたらいかが?

やっぱりケーブルはあなどれない(01/08/21)

自作ラック

どうも最近レコードの音が気に入らず,楽しめずにいた.どうも歪みっぽかったり,元気がなかったり.カートリッジを取り替えてみたり,MM受けでトランスを入れてみたり,「ターミナルケア」をしてみたりしたが,どうしても良くならない.ふと思い付いて,アームケーブルを取り替えてみたら驚いた.

しばらく前にSME 3009Rの付属ケーブルを断線させてしまい,リンのインターコネクトに取り替えていた.前にも書いたように,リンのこのケーブルはラインで使えば奇跡的に良いものなので,アームに使っても良いはずだと思って,それを使っていたのだ.甘かった! 交換したのはSME製の,アームについていたものよりはずっとローコストなもの.それでも音は激変した.しばらく前までレコードを楽しく聴いていたあの音が帰ってきたのだ.もちろん好みもあるのだろうが,良いラインケーブルがアームに使っても良いとは限らん.まったくケーブルはあなどれない.オーディオは一生勉強だ.こりゃあ純正ケーブルに戻さなきゃ,とハーマンにメールで問い合わせたら同等品は25000円(!)だって.これはしばらくおあずけ.

ホームセンターに良いヤナギ材の単板があったので,プリアンプとCDプレーヤーを乗せるラックを作った(写真).これまでの安物スチールラックより雰囲気も良いし,音も良くなった(ような気がする).総工費2500円.乗っているものは40万円強.まあいいや.

スピーカーがまた入れ代わってしまった(01/05/17)

LINN KEOSA

卒業式の日の信じられない出来事によって,ATCは在室わずか3ヶ月弱で,研究室から姿を消した.音楽を聞くためには新しいスピーカーを買わねばならなかった.そして,KEOSAがやってきた(写真).ペアで12万円,前のATCと比べれば,定価で半額以下.あきらかにダウングレードだが,緊急事態だし,仕方ないだろうと思っていた.

音を出してみた.そして,深く考えさせられた.少なくとも,私の耳にはATCよりも数段好ましく聞こえる.それも,エージングも全くしていない状態でだ.それからどれだけのLPやCDを聞いたか,どれもこれもこれまでになかったほど,元気よく,楽しく奏でられる.本当の意味でのLINNのサウンドが,はじめて私の部屋に響いた瞬間が,これだったのだと思う.いまから10年以上前に大泉の「サウンドリンツ」でうまれて初めてLINNの音を聞いた時の感動が,鮮やかに蘇ったのだった.

前のATCが実にイモイ,暗い音であったこと,そしてアンプなどがすでにすべてLINNになっており,それらとの相性が考え抜かれている筈であることなど,割り引いて考えるべき要素はたくさんあるが,この買い物は実に成功であったし,KEOSAのコストパフォーマンスが非常に高いことはまぎれもない事実だろう.買って良かった.学生さんがATCをあの世へやってくれて良かった.

ただ,黒色ビニール仕上げの外観が安っぽいことは,値段を考えれば仕方ないだろう.あと,スピーカー上面についている「LINN」のロゴ,こんなのカタログ写真にはなかったのに,ピカピカ光ってますます安っぽさを強調している.新しいロゴを定着させたいのはわかるが,最近のLINNのデザイン指向には多少疑問を感じないでもない.

7980円で劇的改善...涙々(01/01/08)

A7Tとカーペット 昨日から劇的に音が良くなった.LINNシステムがいよいよ本領発揮?..否.暮れに衝動買いしたATC A7Tスピーカー(写真左)がLS3/5aよりすごく良い?..否.研究室のスピーカー付近にカーペットを敷いたから.1月4日に納入されたA7Tは最初はツイーターが鳴ってないかと思わせるボケボケ音,ツイーターが鳴りはじめるとキンキンで相当のエージングが必要と判断された.それで,エージングを待つ間にもうひとつの懸案を解決しようと考えた.

もともと古い鉄筋コンクリート造り,床も壁もコンクリ系ですごくライブな研究室,手を叩いてみるとちょっとフラッターかかったエコー,これは良いわけないとは思っていた.でもLS3/5aはそれなりに鳴っていたし,なにより「仕事場」である研究室に手を加えるのには抵抗があった.でも,最近部屋の古い床に張られたタイル状のものが接着剤の経年劣化でやたらに剥がれる.A7Tのセッティング時にもスパイクに引っ掛けて何枚も剥がし,ボンドで貼っていたがもうきりがない,上になにか敷いてしまおう,と思った.つまり音響対策というよりは床の剥がれ対策.

早速ホームセンターに行ってカーペットを買ってきた.別に何でもいいわけだから,ほとんど一番安い7980円の奴だ.遊びに来ていた息子と2人でカーペットを敷き,スピーカーやソファーをその上に配置して音を出してみた.あれ?全然キンキンしないぞ.それに,全体に少し音量が下がったような感じ.これは私の経験では良い傾向.そのあとかけてみたLPもCDもどれもこれも巧く鳴ること.客観的に言ってこの1年間の機器総とっかえと同等か,それ以上の改善.とにかく音が柔らかく,つながりが良くなって,ATCのエージング不足もそれほど気にならないのだ.音が良くなったのだから良いけど,カーペットにかかった費用は7980円,LINNシステムやATCは.....まあ考えないことにしよう.音は良くなったんだから.しかし「オーディオは最後は部屋」っていうけど,どうも「最初から部屋」だよ,これは.

スピーカースタンドと壁コンの改良,「Bolero」を聞く(00/11/14)

スタンドと壁コン 最近とにかく忙しくて,まとまった仕事は全然できない.それでちょっと空いた時間はオーディオに逃避する. Alphason の AkrosII というスピーカースタンドを導入,前のターゲットオーディオと値段はたいして変わらないのだが外見&雰囲気の満足度は著しく向上.音質も少なくとも悪化はしていないし,すこし見通しが良くなったような印象.ただし組み立てはけっこう面倒だったしマニュアルも不十分,ポール内部の充填材がこぼれてゴミが出るのも大変だった.

サウンドマック大黒さんから「コントロール系とパワーの電源を分けてみたら」という示唆を受けてはいたが,研究室でオーディオに使えるアース付きコンセントは一つだけ,他の壁コンは古い配線でアースもない.それでもオーディオはなんでもやってみるのが鉄則,古いベルデンのタップを改造してアースを外に出し,パワーアンプの電源を古い方の壁コンからとってアースだけ他の機器のタップに落とした.どうもピンと来ない音,前の方が良かった? しかしオーディオはやる時はやれるところまでやるのが鉄則,まだあきらめないで壁コンのユニットを前に大黒さんからもらった松下電工製医療用3Pに交換してみた(アースは浮いている).これは効いた.明らかに前より安定感と密度が増したので,それ以来そのまま.部屋にコンセントがいくつもある人は,プリやCDとパワーの電源を別々のコンセントから取ってみるべし.

11/3,畜大院生のオーディオマニア後藤君が愛用のスピーカー「Acoustic Labo Bolero」を持って(!)来訪.我がシステムに評判のボレロをつないで聞く機会を得た.とにかく何を聞いても良く歌うスピーカー,そして色気.フランス・ギャルを聞いて「これは抜ける!」と叫ぶ私に後藤君の複雑な表情(笑).こういうスピーカーも欲しいなあ,と本気で思った.もちろん,そのあとLS3/5aに戻したら「あー,俺はやっぱりこういうクールなスピーカーが良いのかなあ」と再び納得するわけだけど.

カートリッジは結局...(00/10/03)

新システムとカートリッジの相性は二転三転して,結局DL103を専用トランス(AU320を改造して直結にしたもの)経由のMM受けに収まった.DL103Rのトランス受けもなかなか良かったのでついでにと思って東京出張でDL103無印を買ってきて付け替えたら驚いた.なんという新鮮な音.そういえばDL103Rは数年前に買ったもの,MCカートリッジも年数が経つと鈍るようです(どうも「帯磁」らしい).システムの配置も整理してバッチリ,だったのだが作業中にスピーカーを倒してしまい,愛するLS3/5aの角が丸くなってしまった.申し訳ない,許して.さすがにプロ仕様,丈夫にできているようで音は今までどおりなんだけど.

LINNシステムチューニング中(00/09/04)

新システムも徐々に落ち着いてきた.カートリッジ問題はしまい込んであった古いオルトフォン(MC10スーパー)を付けてみたら予想外のベストマッチで当面解決.さすがオルトフォンはなにを聞いてもきれいな「誉め殺しサウンド」でLINNと相性がいいみたい.スピーカー位置のチューニングも始めたが,これが敏感で驚く.前のシステムでは位置を動かしても良くなったのか悪くなったのか判然としないことが多かったんだけど,今度は数センチ動かすとものすごく変わる(変わるように感じる).スピーカーの水平をきちんと取り直したのも効いた.こういうことがアンプやCDプレーヤの入れ替えで変化するというのも変な話だが,オーディオには変な話はいくらでもある.結局スピーカーはこれまでよりも10センチ以上前へ出て,後ろの壁(窓)からの距離は165センチになった.リスニングポイントからの音が良くなったのは当然だけど,いつも仕事しながら聞いている仕事机の位置から聞いてもすごくバランスが良くなったのに大満足.まだまだ微調整で化けそうなので暇を見てがんばろう,って暇なんかホントはないはずだぞ!

LINN システム導入(00/8/25)

LINN SYSTEM 3週間ほどかけてコントロール系,駆動系をLINNのシステムに入れ替えた.本来はCDプレーヤとパワーアンプだけ入れ替えて,プリは当分QUADを使い続けるという計画.最初に届いたのはCDプレーヤ「GENKI」だった.1枚目のCDから大満足,今まで最低の音と思ってたどんなCDでも嫌な音が出ない.パワーアンプ「LK140」が届くとこの傾向はますます進んで,ピュアで自然な音色と音場感に感激.ところが,CDの良い音と比較するとQUAD経由のLPの音はいかにも埃っぽくて薄っぺらにしか聞こえなくなってしまった.ちょうどアームを3009S2impから3009Rに交換したせいでV15がどうも巧く鳴らなくなってたこともあり,DL103R(トランス経由)に替えてみたりしたけどダメ.うーむ.もうこうなったら仕方ないや,とプリアンプも新調を決定,たまたまサウンドマックにデモ品の「WAKONDA」の出物があったのでお願いした.「WAKONDA」は昨日届き,鳴らしてみて大満足.LP(MC入力のDL103R)がきちんとLINN的に鳴るようになったのみならず,CDも前よりもっと楽しく聴けるようになった.

一方,電源ケーブルを交換して比較してみるとCDもアンプも附属のケーブルの時がいちばんよく鳴る.というわけでQUADに使ってたぶっとい電源ケーブルはお蔵入り.さすがLINN.

QUADが(実質的に)戦線離脱してしまった今,古き良きブリティッシュオーディオの精神を受け継いでいるのは結局スコットランドのLINNだけといえる.小型で地味・質素な外見に,自然で控えめながらよく聞くとオーディオ的にも優れた音質,これらの特徴は昔はQUADのお家芸だったはず.しかしLINNのアンプたちのこの質素な外見.各5万円といっても十分通るだろう.実際の値段は.....まあ最近稼がせてもらった印税はみんな消えました.

ケーブル道楽もいいけど「ターミナルケア」もね!(00/3/27)

LINN Cables 暮れから最近にかけて,ラインケーブルとSPケーブルを新しくした.総額約6万円.こういうことはもうやめないといけないとは思いながら,「このケーブルが良くないのでは」と疑いだしたらもう何も聴けなくなるのがオーディオマニアの宿命である.どうせならと「自分自身の価値観で現存最高と思えるケーブル」を導入したのがこの結果.もちろんアメリカ的成金オーディオにはもっと高価なケーブルが山ほどあるわけだけど,私はそういうものには興味はないのだ.最近の私の趣味によってケーブルはどちらも英国LINN製,いつもの福岡サウンドマックに特注してちょうど良い長さのを作ってもらった.

最初に届いたのはラインケーブル(Linn Interconnect)である.値段の割には細い,華奢なケーブルで拍子抜けしたが,しなやかなケーブルは好感が持てるし,プラグもとても良くできている.さっそくCD〜プリ間とプリ〜パワー間,これまでの「MonitorPC」ケーブル(これだって一組1万円以上)と交換してみた.はあ〜,深いため息,オーディオっていったいなんなのだ.これまで美観を損ねるぶっといケーブルで取り回しに苦労していたのはまったく無駄だったのか,もうやんなっちゃう,という音.レンジが伸びたとかどうとかいう次元ではない,音場全体がごく自然なたたずまいになって,これまでまったくイヤな音でしか鳴らなかったいくつかのCD(クレンペラーのベートーベン東芝旧版など)がふつうに聴けるようになった.これはすごい.

これはSPケーブルも換えたらさぞかし良かろうとまた注文.うちのLS3/5aはバイワイヤリングしているのでバイワイヤ用のケーブルに純正のバナナプラグで加工してもらった.ラインケーブルとは違って今度は真っ黒なゴムホースと見紛うようなぶっといのが届いてまたビックリ.ところが,結果は期待したほど良くならなかった.たしかに細かく聞けば改善されているし,ラインの時の変化と同じ方向で変わってはいるけど,まだどうもなあ,という感じだった.まあそのときは風邪で耳の調子もよくなかったし,エージングも必要だろうとそのままにしていた.

その後ずっと忙しかったのが,最近になってなぜかちょっと時間ができたので,気になっていた部分を手入れした.SPケーブルが届いたときバナナプラグがメッキされてない無垢で,ちょっと汚れて見えたのだが「こういうものなのかな」とそのまま接続していたのだ.思い切ってパワー側の端子やスピーカー側の端子を含めてSPケーブル接続系すべてをきちんとクリーニングしてみた.ああ,もっと早くこれをやれば良かった....

オーディオマニアの皆さん.接点クリーニング(私はこれを「ターミナルケア」と呼ぶ)は大切です.サボらずやりましょう.クリーニング後の音はまさに私がこのSPケーブルに期待していた音.あくまでも自然でレンジ感などは控えめだけど,伸びるべき高低域はきちんと伸びている,そして音場は深く「高く」広がる.なにより演奏者の息づかい,力みやフッと息を抜く瞬間がきちんと聞こえてくる.フォルテの後のピアノの音を弾き始める瞬間に,そっとブレスしてあくまでも丁寧に弓を動かす,という感じがこれまでになく伝わってくるようになったのだ.ウソみたいだけど本当.

レコードやCDの「録音の良し悪し」というのはほんとにわからない.それまで最低の録音だと思っていたものがオーディオが改善されると俄然良くなったり,気に入っていた録音が良いオーディオでは不自然に聞こえたり.でも,基本的にはオーディオを良くするということは,どんな録音でも楽しく聴けるようにすることだと思う.金をかけるほど録音の粗が目立って来るようなことでは私は困る.新しいケーブルになって,古いモノやSP復刻のレコードがますます楽しめるようになった.もしあなたがそういうオーディオを志向しているのなら,国産やアメリカ製の成金ケーブルはすぐに捨てて英国製品,とくにリンの製品をぜひ試してみるべきだと思う.

オーディオにおけるお金の使い方(99/9/15)

nittygritty

ニッティ・グリッティ(Nitty Gritty)のレコードクリーニングシステムというのを買った.各種ある中でかなりローコストのものを買ったのだが,機械が289ドル,アメリカ(NVI Classics)からの送料が75ドルかかってまあ邦貨四万円強か.LPレコードを機械に取り付けて附属の洗浄液を塗布,手で回しながらビロードブラシでこする.その後洗い出された汚れやゴミとともに洗浄液を電動バキュームで吸い取り乾燥させるという仕組み.もっと高価なタイプになるにしたがってこうした作業が徐々に自動化される.半信半疑だったが効果は劇的,スクラッチノイズが減るのはもちろん,全体に暗騒音みたいのが減少して「聴感上の」SN比が向上する.それだけでなく再生音の分離や純度も改善されて,まさにオーディオ機器をグレードアップしたような感じ.これまでレコードを洗剤で洗ってみたりアルコールで磨いてみたりいろいろやって,洗って汚れ(あるいはレコード材料からの析出物)を取ると音が良くなるということは漠然とわかっていたけれど,どの方法でもここまでの効果はなかった.世の中にはまだまだ俺の知らないすごいものがある.アメリカにはかなわない.(ただし,バキューム吸引時の騒音は驚くべきもので,夜間や人のいるところでの使用がはばかられるのが玉に瑕.また,洗浄効果は汚れや傷の程度や種類によって異なるし,レコードの摩耗が原因のノイズ等には効果がない.)

問題はこの値段.やっぱり普通の感性ではいまどきレコードを掃除するだけの機械に4万円は出せないだろう(上位機種は実に10万円以上).でも,古いレコードをそれなりの出費で大量に集めている人間にとって,この値段は決して高くない.音が良いという初回プレスとかオリジナル盤とかを何千円,ときには何万円も出して買ってはみたものの,どうもあまり良い音で鳴らない,ノイズがひどくて聞けないなんて時には洗浄がいちばんとは知っているけど,失敗して傷を付けたり,レーベルが傷んじゃったりするのが恐い.で,せっかくの逸品がお蔵入りになるなんて経験はコレクターなら誰でもある.そういうレコードがこの機械でかなり高い確率で,それも非常に安全に復活する.また,最近は中古市場も成熟して珍しいレコードも汚れや傷があるとけっこう安く買える.傷はともかく汚れはこの機械でかなり取れるから,安く買ってきちんと楽しむこともできる.ある特殊な状況にある人間にとってはこんなに経済的な機械はないのだ.

こういうアクセサリー系のもので音を良くするのが好きで,ずいぶん金を使ってきた.電源ケーブル類などは万円単位だし,冷静に考えればそういうものに長年使ってきたお金を合わせればマークレビンソンのアンプくらい買えるかもしれない,いや,間違いなく買える.でも周辺をきちんと整えないレビンソンより,うちの(ほとんど過保護気味の)クオードの方がきっときちんと鳴っている.そういうお金の使い方が私は好きだ.

セッティングいまだ決まらず(29JUN99)

仕事も意外と忙しく,自動車学校へ行ってることもあって聴くだけでいじれなかったオーディオ,昨日今日と時間を見ていじっている.まず,スピーカーの間にあった大型テレビとビデオを移動,スピーカーの間に空間をちゃんと取った.スピーカーケーブルのあまった部分を切って短くした.どちらもオーディオ基本だけど,なかなか手が着けられなかったことだ.さて,音はよくなったか? 4月からこつこと調整していたセッティングがすべてご破算になったので,また一からやり直しになっただけ.でも,これを詰めていけば必ず前よりよくなる.忍耐と努力だ.ところで前回に書いたサウンドマックのLINNケーブル使用テーブルタップだけど,特注したかいあってとっても丁寧な作りの音のよいものが届いた.外部アース端子がないのが玉に瑕だけど,その旨メールしたら端子のパーツと取り付け用の高級ハンダをすぐに送ってくれた.忙しくてまだアース端子はつけてないけど,お客としてショップにちゃんとした扱いをしてもらえるのは心温まることだ(それは当然のことだけど,最近はあまりお目にかかれないのだ.Thanks>大黒@サウンドマックさん).

オーディオすべて研究室へ(30APR99)

 帯広にやってきて官舎に住むことになり,家に自分の部屋がなくなった.ところがうまくしたもので大学では12畳くらいの広い部屋を2部屋ももらえることになり,オーディオ装置一式はもちろん,家にあったレコード,CDもすべて大学へ持ち込むことにした.
 今までマンションの5.5畳の部屋で聞いていたときとエアボリュームが全然違うので,鳴らすのには苦労しているけど,この2〜3日はだいぶ良くなってきた.最初はLS3/5みたいな小さいスピーカーじゃ駄目かなあ,とだいぶ悲観したけれど.

電源が曲者だった!

 研究室にはAC電源が2系統来ている.ひとつは恐らく学部棟の建設当時(昭和41年)から通っていると思しき壁内配線で,コンセントは新しくなっていた.もう1系統はごく最近設置された壁配線で,こっちはアース付きの3Pコンセントになっている.
 オーディオ常識的には当然後者から取るわけだけど,この配線は天井をはっていて,コンセントも天井にある.昔の立派な建物で天井は高いから,手持ちのオーディオタップでは届かないし,ケーブルがつり下がっているのは美観上もよろしくない. それで近くに付いていた古い方の配線からベルデンのオーディオタップ(8000円+ハベルのプラグに取り替え)でつなげていた.
 で,どうも音がまとまらない.部屋が広くなってスピーカー間隔も開いちゃったし,反響もわりとライブで今までの部屋と全然違うから,しかたないかなあ,などと思っていた.ところが,試しに新しいコンセントからアース線だけを引いてタップに落としてみたら,音が多少まとまった気がした.アンプもCDもQuadで本来グランドアースを取るようになってるから,これは当然か.そうなったら電源丸ごと新しい配線の方がやっぱりいいかと思ったけど,タップが届かない.

パソコン用タップでもいいんだから...

 一方,研究室のMacintoshは近くの新配線から3Pタップで電源とアースを取っている.このOAタップ(生協で約2000円)は長さ3m,天井に届く.やってみるか? 当然やってみた.驚いた.オーディオが生き返った.OAタップは音が悪いことを何度も経験していたのに,どう聴いても旧配線+オーディオタップ+アース線より格段に良い.まったく電源というのは恐ろしい.手近のコンセントで良いとナメていた俺が甘かった!
 天井のコンセントを使うことに決着,届くようなオーディオタップを入手することにした.電源ケーブルはLINNがいい.現在Quadの電源ケーブルはすべてLINNブルーケーブルで自作したものを使っている(プラグはハベル等).このケーブルのときにお世話になった福岡のサウンドマックにLINNイエローケーブル5mのタップを特注(約3万円).ただこれが出来てくるのは早くても連休明け,それまではOAタップで我慢しよう(Macintoshにはもっと安い家電用テーブルタップ,アースなしで我慢してもらうんだし).これでも前よりは格段に良いのだから.しかしタップが来るの楽しみだなあ.
 ところで,QuadマニアのためのHPを発見.名前はQuad World.喜んでるのは俺だけか....

SHURE V15TypeIII との蜜月

 アナログレコード用のカートリッジはここ10年以上SHURE V15TypeIIIを使っている.途中V15TypeV-MRやVxMR,DL103なども買ったけど,いつもしばらくするとV15TypeIIIに戻している.使いはじめた時点ですでに製造中止になって数年経っていたが,シュアの交換針がなくなるなんてこと,その当時は(誰にとっても)考えられないことだったし,MMカートリッジは針交換でマグネットなど消耗系は総取り替えになるので,一生使い続けられると思っていた.その頃は楕円針のVN35EとラインコンタクトのVN35HEの両方が入手可能だったし,その後VN35MRに変わったが,供給は続いていた.
 その後しばらくオーディオから離れていて,2年ほど前にまた復帰して,まずは針だと東京出張の折に秋葉原へ行って驚いた.どこへ行っても売ってない.ここなら絶対と思ったラジオ会館4階の店でも「おととい売り切れた.残念だったね」といわれた.さあ焦った焦った.ほったらかしにしてた恋人が浮気してると知って急に嫉妬に燃えるみたいな感じで針を捜しまわったが,結局東京では手に入れられなかった.
 灯台もと暗し.札幌の問屋に電話してみたら純正があと2個と,「国産」がいっぱいあるという.国産?そんなのあったの,とそれも2個,計4個取り寄せた.4万円.国産の針は昔の純正のコピーで,音も今の純正より昔に近かった.製造元に電話して聞いたら在庫もたっぷりあるし,これからも製造すると言ってた(2年前の話).この針は普通のレコード屋で注文すれば手に入ります.TypeIIIユーザーにはけっこうお勧めかも.
 その後純正針が限定再生産されて,今は市場に結構あるみたいだけど,そのうちまたなくなるだろう.TypeIIIの音が他社製はもちろんシュアの他のカートリッジでも絶対に出ないことは,一度使った人ならわかる.惚れ込んだらのめり込むし,他のカートリッジでレコードを聞いても全然楽しめない.普通はジャズ向きと言われるTypeIIIだけど,うちではクラシックだってこれで聞いてる.デッカのスイスロマンドやテレフンケンなんか夢のような音で鳴る.クラシックファンもぜひ試してみてください.昔のシュアは逆位相だからリード線の極性を変えてみて音が好みな方を選べばいい.ちなみにうちでは逆位相のまま使ってます.
 いま中古市場では1個3万円くらいが相場かな.今のうちに本体をもう一個と,針をもう少しストックしておきたいなあ.
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