長唄についてのちょっとした知識

長唄の歴史

長唄は、17世紀前半に上方からもたらされ、歌舞伎音楽
として江戸で発展しました(いわゆる江戸長唄)。現在でも、
歌舞伎の黒御簾で演奏しているのは長唄ですし、歌舞伎
舞踊でも長唄で踊るものは数多くあります。
「京鹿子娘道成寺」(1753年初演)などは有名です。
長唄が最初に大ブレイクしたのは、このような舞踊の
地方(じかた)としての発展からでした。

幕末になるとお座敷長唄と言って純粋に演奏用の長唄が
作曲されるようになります(秋の色種などが有名)。明治に
なると、吉住小三郎・杵屋六四郎(のちに吉住慈恭・稀音家
淨觀)らによって、歌舞伎を離れた長唄演奏が盛んになり、
新しい趣向の曲も作曲されました(「研精会」の始まり)。
研精会は流派の名前にもなり、現在の東大長研も流派は
研精会です。直次郎さんによるさらに詳しい解説が
ありますので、こちらのページもぜひご覧下さい。

 

演奏のときの並び方

長唄を演奏するときは、最低でも唄と三味線、賑やかになると
お囃子も入れて演奏されます(曲によっては琴などが入ることも
あります)。通常は舞台に向かって左が唄、右が三味線で、
一列に並びます(お囃子が入るときはお囃子の後ろの段に
並びます)。大人数になると2列以上に並ぶこともあります。
数えるときは、唄を枚で三味線を挺で数えるので、三味線4人と
唄4人なら4挺4枚と言います。唄も三味線も、真中から順に
タテ、ワキ、三枚目…と呼びます。また、一番端の人
トメまたは巻軸(かんじく)といい、大変重い役です。

なお、上調子のある曲はトメの場所に上調子が座ります。
上調子については別に説明します。
タテとは、その曲をリードする人です。タテ唄とタテ三味線が
隣に並び、二人でイキをあわせていくことで曲を
進めていきます。タテ以外の人(ツレと言います)は、
基本的にはタテにあわせて演奏します。
巻軸はタテから最も遠いところに座っていますから、
神経をタテ三味線の音に集中させます。
タテより先に出てしまってはいけませんが、かといって
音はしっかり出さないといけません。常にタテをねらい、
落ちそうだと予感したら、一瞬の判断で空撥をこなすのです。
タテの癖まで知り抜いた人でなければ、本来
勤まらない重い役目が、この巻軸です。

替手と上調子、独弾(三味線)

普段、三味線は全員で同じ手を演奏していますが(連弾)、
時々一人だけで演奏したり(独弾)、一人だけ別の手を
演奏したり(替手)することもあります。

独弾は、浄瑠璃のような効果を出したいところなどで多く
使われます。弾くのはほとんどがタテ三味線です(長いときには
二人以上で分担することもある)。他に、ノットガカリといわれる
手の最初の2つの音は独弾など、暗黙の了解となっている
ところもありますが、稽古の時には一つずつ説明して
いきますので、新入部員の皆さんは徐々に覚えていって下さい。

替手は、全員で演奏している中で一人だけ違う手を弾きます
(替手以外の人が弾くのは本手と言います)。たいていは
合方(合の手)で使用されます。本手の一オクターブ上
(甲音)を弾くこともあれば、裏拍を弾いたり(打ち合わせ)、
全く違う手を弾くこともあります。替手は、三味線弾きを引き立たせる
難しい手が付いているものもあり、三味線弾きの腕が試される
場でもあります。弾くのはタテとは限らず、特に学生長唄では
出来るだけ多くの人に替手がまわるように考慮しています。

替手の一つにタマというのがあります。これは、タマを弾く人
以外が繰り返し同じ手を弾いている上に、替手が即興で
難しい手を弾くもので、代表的な曲では、「娘道成寺」のまり唄、
「二人椀久」の踊り地など多くの曲でその活躍を聴くことが出来ます。

一部の曲では、上調子という特別装備の三味線を弾く人がいます。
上調子は、三味線の棹の(糸の全長の)上から4分の1の
場所に「かせ」という駒のようなものを立てて、糸の長さを短くして
弾くものです。出せる音が違ってくるので、最初から最後まで
替手を弾いていることになります。通常は一人で弾きます。
上調子のある代表的な曲としては、「勧進帳」「鞍馬山」「秋の色種」
「吾妻八景」「助六」「賤機帯」「外記猿」などがあります。

○書籍の紹介
長唄を研究するのに役に立つ書籍を紹介します。

書籍名

著者

説明

長唄名曲要説

浅川玉兎

あまりにも有名な本。曲についての解説が充実しており、長唄にかかわる人はぜひ読んでおきたい。新品でも良いが、邦楽関連の古本屋に行けばたいてい手に入る。値段は3000〜4000円前後(先日、某大学の長研部員がこの本を100円で手に入れたらしいが、普通は数千円する)。続〜・〜補遺・稀曲〜など続編が出ているが、続あたりまでは最低欲しいところ。

三味線読本

速水哲郎

三味線のことが、初心者にもわかりやすく説明してある。上達するのに参考になると思う。