時には競技に燃えるのも
| (茂木のMr.12Points) | |
| コックピットマネージメント | |
| 計器に対する考え方 | |
| 高度計 | |
| 昇高計 | |
| 境界層の魔術師 | |
| NRS解説 | アプローチの真実 2001MOTEGI熱気球インターナショナルチャンピオンシップ |
| ストイックなフライト 鈴鹿バルーンフェスティバル2001 | |
| 無風状態の中でのフライト 佐久バルーンフェスティバル2001 | |
| ELBOWの設定に対する異議申立ての内容について 渡良瀬バルーンレース2001 |
パイロットの資質
筆者は学生時代クルーザに乗っていたこともあり、今でもヨットの雑誌を時々読んでいます。 海と空の違いこそあれ自然と風を相手にしたスポーツであることから、参考になることが多々あります。 KAZI 1998 5月号にあった記事から、艇長の資質についてのアンケート結果の中から気球でも参考になる 意見をピックアップしました。
熱気球におけるチームワーク
これもヨット雑誌の記事を気球用に修正した文章です。1988年頃にまとめた内容そのままなので、 今読むと若干時代を感じさせるところもありますが、敢えてそのまま載せています。
風船 Summer No106 2002掲載
パイロットとは
パイロットは気球乗りの誰もが夢見るポジションだろう。レゴを握り、クルーを指示し、自由に気球を操る。それがバルニストの仕事だ・・・が。
パイロットは会員の信頼を得て、その気球のフライトについての全ての権限を与えられる。インフレからランディング・回収に至るまで、クルー全員を指揮して安全にしかも快適にフライトを完成させなければならなずその責任は極めて重い。空を飛んで起こるあらゆる状況に対して、また、チェイスの動きについても常に冷静に、適格な判断を下すことが求められる。
どんな小さな事故であっても、それは全て、パイロツトの貴任であって、「あいつがあんなヘマをやらなければ……。」といった言い訳は口にしてはならない。
さて、P1としてフライトするには、先ずメンバーを集め快適にフライトを行なえる状態を作り出すことが、必要である。それにはメンバーのみならず、その家族からも同様の信頼と満足を得られるようでなければ、ままならなくなる。
いかなる条件下でも冷静に適格な判断を下し、クルーに「この人になら自分の命を預けられる。」と言った信用を失ってはパイロットは勤まらない。
クルー達を指揮する統率力、クルーの能力を高める指導力もパイロツトに求められる資質でであり、偉そうに構えて怒鳴り散らすようでは失格である。
パイロットはバルニストとしての長い経験と確かな知識だけでなく、一般の社会生活においても、人々の信頼を得られる様でなけれぱ勤まらないという、より広く高い人間性がもとめれられているのである。
フライトトレー二ングについて
パイロットの資格を得るためには、20時間、インフレからランディングまで15分フライトを10回等の後、チェックフライトと連盟では規定している。しかし前述のようにパイロットに課せられる責任は重く、単に規定を満たせぱよいと言うものではない。
パイロツトになるにはまずクルーとしても優秀であることが必要である。冬、強風下の長距離フライトのチェイスを、一人でこなせるようになることを一応の目安とする。
クルーとして有能になってきてから本格的なトレー二ングを受けるのが望ましく、またそのほうが気球の動きに対するセンスが鋭くなり上達が早い。
トレーニングは短期間に集中して行なわなけれぱ効果はない。4〜10月末までの渡良瀬内の時期にインフレからランディング・低空のレベル・アプローチ・タッチダウンに至る基本的な操作を身に付け、11月〜3月末の外でのクロスカントリーのシーズンにフライトプラン作成・強風下でのインフレ・ランディング・高々度フライト・急降下(高々度からのアプローチ)・リツプを使ってのフライト・電線等の障害物に対する飛行方法など充分訓練を積むことが必要である。
このようにトレーニングを受け年間20〜30時間のベースでフライトすれば理想的である。レゴ操作を一ケ月間行なわないと、途端に感が落ちるので月二回はフライトできるように時間をつくり、メンバーを集めることも必要である。トレー二ングは短期問にあるレベルに達するようでないと苦労する。
競技フライトとレギユラーフライト
「競技フライトと普段のフライトは全く別であり、競技には参加しないからのんびり飛べばいい」と考える人がいる。たしかに同乗者として空の散歩を楽しむのであれぱ大いに結構だが、ひとたぴP1としてレゴを握るのに漫然と飛んでいいのだろうか。確かに競技では一人一人に高度なことを要求され極度の集申カを必要とする。しかし狙ったラインを飛べるとゆうことは、安全に飛べることにもつながる。レギユラーフライトでも競技のテクニツクを使うことで不用意に危険な状態に陥る可能性が減る。
一例として、図で上空は強風で・サーフェスは微風が図のように吹いていた場合について考えてみる。@の用に上空Aでリツプを引くことにより降下すれば、気球のスピードにブレーキがかかり前方の森のプレツシャーは減り、B地点までたどり着けば後は自由にかつ安全に飛べるが、Aのように自然降下にまかせると結局間に合わず、Cでバーナーを焚き後はパニックということにもなる。
ほかにも強カなインフレーターは素早いインフレを可能にし、強風下でも風にたたかれないだけでなく、慣れない人間でも開口部を焼く確率を減らす。頻繁な無線交信はロストバルーンの恐れがなく、気球を狙ったコースに飛ばせれば長時間フライト、乗負交代もしやすくなる。このようにレギユラーフライトでも競技フライトの考え方を取り人れることはバルニストとしても上達し、望ましいことである。
チームワーク
競技において、ゴンドラの中、そして車の中の人間ば何を考えて行動すればよいのだろうか。フライト経験の豊かさ、気球への造詣の深さと言った全ての面で圧倒的な能カを持った才一ルマイティーなパイロツトの下では、その絶対的な権カの行使に従い、手足のごとく働きひたすらタスクをこなすだろう.しかし何が自分に与えられた仕事なのかがつかめないままに、いたずらに混乱が起きると言った不協和音がたちやすく、そうしたムードでは決してレースに良い結果を期待することは無理であり、運良く勝ったとしてもそれが自分の勝利と言った実感をもてずに終わってしまう。
最も常にソロでレースに参加するならぱ、一人の天才的なパイロツトのカで頂点を極めることは不可能ではない。しかし競技が高度にそして先鋭化がすすんでくれば、ハードなフライトと長いシリーズをこなし、勝つためには、何でも一人でまかなうと言ったやり方ぱ通用しなくなる。スーパーマンに頼ろうと思っていては、いつまでたっても強くはならない。
では勝てるチームとはどのようなチームだろうか。それは、各自が自分の仕事を的確にこなし個人個人の能カを充分に出しきったチームが、勝利とゆう栄冠をつかむことができ、またその勝利を支えた一人一人のクルーが優れたバルニストとして称えられることになるのである。
では次に理想的なチーム作りについて考えてみる。
コックピットの人間達
日本でも競技においてレスポンスを求め、気球の軽量化が進んでいる。従来65で3人だったのが、56の2人乗りで参加するチームが増えてきた。いずれは45でソロフライトするところもでてくるだろう。しかし、ここではコックピットの人間に求められる重要な資質を、ナビゲータ・タクティシャン・ファイアーマンの三要素に分けて考えてみる。
ナビゲーター
ナピゲーターぱ魅力のある仕事だ。空を見通し、雲を読み、気球を安全にしかも精度よく目的地に向かわせる。そのためにはパイロツトの求めるあらゆる機器に精通し、完璧に使いこなすこと。時にばグランドクルーを使ってでも自分の位置を正確につかみ、現在何度の風に乗っているか、上昇、下降にともない、どの風に変化するのか、どの高さに何度の風があるのか、現在の風で目的地までかかる時間がどのくらいか、と言ったミニマムな情報から、風はどう振れていくか、どのコースを採ったら地形・高圧線に影響されずスムーズにターゲツトに近ずけるか、残りのガスで問に合うか、安全におりるにはどうするか、といった先を読む能力に長けていなければならない。その仕事は瞬時も気を抜くことのできないハードなものなのである。
レースに勝つにぱ天候、気象のあらゆる情報を頭の中に整理して、最も有利なコースを選択しなければならない。「ずっとターゲツトに向かって飛んできたのに、最後風が振れてまいったよ。」などとぼやくうちは、一人前ではないと知らなければならない。変転する空と風の表情の、ほんの僅かな変化に的確なコースを読み取らなければ、いいナビゲーターとは呼ばれるはずがない
優れたナピゲーターとなる資質は、空と海に関する科学的で正確な知識を持っていること・自らの経験を常に科学的に分析して整理する能カ・その知識や経験を組み立てて最も効率のいいコースを空間に描く、コンピュータをもしのぐ頭脳が必要で、経験がものをいうスポーツといわれるこの世界で、経験を科学の領域に持ち込む努力を抜いてはいいナピゲーターにはなれないはずである.
「運がよくて勝つことはあっても、運が悪くて負けることはない。」それがナピゲーターの信条でなければなるまい。
タクティシャン
レースにおいて重要な役割を分担するのがタクティシャンと呼ぱれる戦術家であり、その比重はきわめて高い。レースにおいて戦略・戦術の決定はタクティシャンの仕事である。一発勝負のレースではオンターゲツトでトツプにたつことだけを考えれぱよいが、選手権太会のように数タスク以上のシリーズレースにおいては1000点以上を取ることよりも、全てのタスクを確実に上位半分につけることを考えてフライトすることが鉄則である。PDG・Fly in・Fly onではそれぞれの気球の作戦は分からないが、他の競技では自分が現在何点とれるポジションにいるか予想できる。タクティクスとは何メートルまで近ずけるかより、いかに飛べばより良いポイントを取れるか考えることであり、常に500ポイント取れる位置を守りフライトするように計画を立てなけれぱならない。またトップかピリかといったギャンブルをしてぱならず、800点から900点台前半が計算できるフライトを、辛抱強く続けることが勝利に繁がる。
優勝候補のマークを忘れてはならず、また常に自分にとって貴重な情報を得られそうな気球の位置をチェツクし、上空・低空・場所によって、どの角度へどのくらいのスピードの風が吹いているかをみつけることが重要である。とくに上空の気球の動きに注意し、急上昇しても安全か判断できれば無用な危険に陥ることはなくなる。またターゲツト付近に集まってくる気球の動きに左右されず、自分のコースを引くことも大切な仕事である。
タクティシャンはコツクピツトのルールブツクであり、ルールに対する間違った解釈で不利な飛びかたをしたり。ましてはペナルティをとられるようではタクティシャンとして失格である。競技規則を熟知していることぱ、レースで勝ち残るための必要条件で、競技規則も武器にし、ブリーフィング会場で、そしてフライトで、ぎりぎりの勝負を展開することである。
このように、ポイントの計算を考え、フライトプランを立てるのがタクティシャンであり、勝負師としての鋭いカン、そして旺盛な闘争心が求められる。そして沈着にして果敢な判断カが身に付いた人間でなければならない。
フアイアーマン
ナピゲーターが風を需み、タクティシャンが考えた作戦によって立てたコースどうりに気球を動かす人問を、ここではファイアーマンと呼ぷことにする。俗称釜焚きとよぱれている人間は、気球の動きに対するスピード感と、方向にたいする精度、上昇・下隆の操作に、鋭い感覚が必要である。空間にベクトルを描き、イメージどうりに気球を操ることがその仕事である。
上昇・下降中にあるどんな風の変化にも反応し、バーナーを焚き上昇するのか、リツプを引いて下降するのかの判断が、瞬時に行なえる様でなければ勤まらない。動物的なフライトセンス、そして高い集中カ、さらに辛抱強さといったものが、求められる資質である。
レーシングパイロツト
レースに参加する場合、一つの気球に2人以上乗るのが一般的であるが、P1がレゴを握るか、P2がレゴを握るかの思想は、各チームによって違っている。しかし、いずれにせよコックピットを指揮するパイロツトは、熾烈なレースになればなるほど、ガスの残量・障害物・コース・ランディングポイント・フライト時間等、ぎりぎりの状態でのフライトを強いられる。極限の状態でもいたずらに動揺せず、
常に冷静に、淡々と計算されたコースを描き、フライトを遂行させることを考えればよい.それには人並み以上の集中カ・体力と、勝負に対する執着心を必要とする。
この爪の先まで神経が張り詰めた興奮を味わうことも気球の醍醐味であり、大掛かりな道具を使う気球も、突き詰めれば、テクニツクに基づいた集中カの競い合いであるという事実を見れば、他のスポーツと少しも変わらないことに気ずく筈だ。
グランドクルー
ゴンドラ内に立つスペシヤリストと同じように、グランドクルーもスペシャリスト集団であれば、レースにおける勝率をより高めることができる。
グランドマスター
グランドクルーで最も重要な役割を担うのがグランドマスターであり、時にはグランドマスターの力量が、勝負を決定づけることがあると言っても過言ではない。
コックピットの人間がたとえどんなに優秀であっても判断に迷うことがあり、上空では気がつかないことでも、地上からは的確な情報を送れることは多々ある。なんといっても、ゴンドラ内からは真上は見えない。現在トップレベルのチームには、優秀なグランドマスターがいると言ってよく、逆にグランドが貧弱では、長いシリーズには息切れしてしまう。
グランドマスターは、常に車が気球のそばにいるよう、ナビゲーションすることも大切である。ナビは気球の位置と方向、自分の位置を把握し、安全に確実に、渋滞に巻き込まれることなく、最も早く目的地に着く道を選ばなければならない。
グランドマスターは、コックピットのパイロツト・タクティシャン・ナビゲータと同等の知識と経験がある人間が担当するのが望ましい。
ドライバー
ドライバーは、決してドライビングテクニックにおいて秀でている必要はない。常に安全連転で同乗者にいらぬ不安を与えることなく、気球の位置を確実につかみ、道と方角に対する感覚が鋭いことが必要である。ドライバーは明るくひようきんで力強い元気者を夢に見る。
チームコーディネイター
長い遠征には、競技以外に数多くの間題・用件が出てくる。メンバーのスケジュール・ホテル・飛行機の予約から、会計、伝達事項、買い物等、ありとあらゆることを一手に引き受け、メンバーが競技に専念できる状態をつくりだす役割を担うのがコーディネイターで、想像以上に重要な仕事であり、バルニストとしても一流であることを要求される。
細かく気を使いながら素直で気分のいい人間が理想的である。
その他
グランドクルーの中に球皮の修理ができる人間と機体のメカニズムに詳しい人間がいることが大事である。トラブルが起こったときのダメージが全く違ってくる
チームカについて
以上理想的なチームについて考えてきたが、現実には一人で複数の仕事を受け持ったり、何人かで一つの仕事をこなすことが一般的であり、それがチームの体制となってくる。いずれにせよどのような状態でも、各々がもてるカを十二分に発揮することが大事であり、それが競技の魅カでもある。
最後に
理想的なチーム、勝てるチームになるのは、一朝一夕では無理な話である。本気でレースに出るならば、勝利こそがレースの目的だと思うことである。レースに出る以上絶対に勝つ。そして、勝つために、自分のもてる全精力を注ぎこむのが当然であり、そうでなければ、レースに出る意味がない。
勝利をもたらすのは、一にも、二にも、三にも、心構えである.全員が「勝つことに執着することに執着する」ことが必要なのである。
気球の競技は、大きな犠牲を払ってでも取り組む程、重要なことではないと思う人がいるかも知れないが、そのような人間はレーシングチームに入る資格はない。いずれオリンピツクの種目になれぱ、熱気球が青少年のスボーツではなく、大人が人生を賭けて戦う場に変わり、終生の目標として相応しいこととなるであろう。
参考文献
デニス・コナー著 大儀見薫訳:COMEBACK,祥伝社(昭62)
志賀仁郎:“クルーの役割分担”,HELM,2-3月号,p9‐14(1984)
ミラクルを越えた男(茂木のMr.12Points)
風船 Spring No104 2002掲載
11月下旬紅葉に色取られた那珂川流域で『2001MOTEGI熱気球インターナショナルチャンピオンシップ』が開催された。この大会は『2001熱気球ワールドホンダグランプリ』最終戦も兼ねていて、世界の強豪が一同に会した大会と言える。
高気圧に覆われ雲ひとつない快晴に恵まれ穏やかな風の中、11/21水曜日から11/25日曜日午前中まで9フライト21タスクが実施された。参加者が最も注目した、ワールドホンダグランプリは500万円の副賞とともに オーエン・キオン がタイトルを手にした。
その オーエン大会中、口にし続けた名前がある。大会中 オーエン のクルーを勤めた坂井さんによると、『SOKI』の名前は200回は言っただろうとのことだ。大会中に、より多くの選手、クルー、観客の記憶に残るタスクがどんなタスクだろうか。
午前のフライトは通常タスク数が多く、次のタスク次のタスクへと移動するから、午後のタスクのほうが他の気球のアプローチをゆっくり見ていられる。さらには、全部の気球が一箇所に集り、クルーがその付近で待ち構えるJDG,FIN系が注目を集め、夕食や温泉での話題となりやすい。2日目午後に行われたタスクはFIN1発。風は0°から60°へ向かい、この辺から離陸した気球は誰でもターゲットにからむことが可能なタスクだ。3km離れたところから離陸し、少しして気球に積んであるフィールドスコープ(バードウッチング用望遠鏡)で田んぼに連なっている車、人の群れ、ターゲットの順で位置を確認したら、マップボードを下ろしてナビゲーションフライトから目視でのフライトに切り替える。
前方では藤田さんとウーベがくっつくようにしてターゲット上空で急降下競争をしている。ターゲットから1km付近でマタィズのアプローチラインを確認し、それに乗せるように1000ftから降下したら、ターゲットが目前に迫ってくる。
茂木に参加しているパイロットのレベルは高いので、どの気球も明確な意図を持っていて、どの気球のラインも参考になり、裏切られることはあまりなく、皆ターゲットに寄ってくる。
地上風が多少振れてもターゲットに絡むよう、ある程度の高度を維持してぎりぎりまでターゲットに寄せてからリップを引き、よりサーフェスに近づくよう気球を沈み込ませる。
接地しないよう注意しつつ、角田さんと目を合わせ、大岩さんに挨拶しているうち、さらにターゲットが正面に。右側でマーカー投下か左側でマーカー投下か迷っていたら、ターゲットがクロスしている正方形の上にマーカがひとつ落ちていた。そうなったら、なんとしてでもその内側にと思うのが人の常。グラビティマーカドロップなので、マーカの端を持って最後のタイミングを測る。
2〜3m/sの風に乗っていたので、マーカが流されることを考え。1m程手前でマーカリリース。どんぴしゃり0cmとはいかなかったので、先にあったマーカとの位置関係を確認する。カーリングで最後の1投の後の気分だ。どう見ても自分の方が近い。やった、トップだ。残る気球は10数機程度。そうそう近づいてはこれないだろう。ガッツポーズで勝利の雄叫び。デビー・スパースに"inside"と叫び、町田晶子さんのアナウンスは絶好調。後は観客へのサービスとアピールでゴンドラの中で勝利の舞。最高の一瞬、至福の一時。
結果は0.32mと0.23m。これが佐賀の週末午後のフライインだと、きっと10万人の大観衆が立てる地響きのような大歓声を一身に浴びるのであろうが、ここは茂木、しかもサーキットから20km離れた田んぼのなか。それでも、フライトしている一流のパイロットと、そのクルーたちに見られているので、わかる人にはわかってもらえる。マーカ投下の時には知らなかったが、中心にあったマーカを投げたのはグランプリ優勝を狙うオーエン。オーエンはフライト後クルーたちに『今日は最高のフライトだ、あそこまで寄せたのはミラクルだ』とトップの12点を手中にしたと全く疑っていなかった。
公式掲示板を見て、始めて自分が2位と知り、1位がSOKIと知った後は、SOKI,SOKIと騒いでいたとのこと。2年程前グランプリに同じチームで参加したので知らぬ仲ではないが、その時はこちらもたいした結果は残していなかったが、オーエンも助っ人とは呼べない働きで、入賞圏外の成績だった。ところが、今年のオーエンは佐賀も制して、完全復活絶好調。日々自身に満ちたフライトをしている。
それに対して、こちらは数日間にわたる大会は、'98仙台以来。今年はいまひとつ冴えがなく、切れ味鈍いフライトが続いている一パイロット。翌日の午前はそれなりにフライトし、午後のタスク。今日はPDG,FIN。今回の茂木で午後のフライトは、水戸付近でフライトしたり、宇都宮付近でフライトしたりとたっぷり移動してからの離陸となる。離陸するエリアに向かって走っているとなぜかふと風まかせの浅野さんがパイバル放球しているところに出くわす。風まかせは大会で使用しているのと同じようなタイプのパイバル計測器を持ち運びしているので、見かけたら車を止めて、にこやかに挨拶してデータを何度かわけてもらった。今日はそのままランチサイト探しについていった。角度距離を考え街中をうろついていて、時間を考えたらそろそろ別行動をとったほうが賢明かと考えたとき、芝に覆われた空き地と理想的なランチサイトが目の前に現れた。
浅野さんは車を停めたらあっという間にインフレ開始、そのまま飛び立っていった。あまり早く離陸して目印の気球がないのも困るので、こちらはだらだらと準備。少ししたら何機かやってきたので、どれかの気球の後に飛ぶようさらにゆっくりセッティングを行う。そうこうしているうちオーエンもやってきたので「昨日はYOUが投げた30cmの内側に入れたから、今日は先に30cmのところにマーカ投げて待ってるから20cmに入れてくださいな。」と挨拶した。
リチャード・パリーの離陸を待って直後にTakeOff。PDGはFINまでの直線上のほぼ半分に宣言した。トレンドは北に向って飛んでいる中2000ftで60°、中層は30°、サーフェスはしっかり確認しておらず、少し東に振りすぎまた上昇したが間に合わず130m。後で、地上まで降ろせば少しはリカバーできたと気がつく。
次のFIN。2000ftの高度をキープし、HONDAの気球が下を飛んでいるのを見て地上風とそのラインを確認。先程のミスをしないようサーフェスの風をチェックしつつ、かなり前から徐々に降下し、風の変わり目を感じながら降下速度を微調整。またもターゲットが正面に近づいてくる。今日も右側で投げるか左側で投げるか悩みつつ地上に沈みこます。今日は0cmと思ってリリースしたが、3〜4m/sの風があったせいか昨日よりはずれ50cmに投下。最初のほうでアプローチしたので、これからやってくる気球がわんさかある。抜かれるかなと思っていたら、町田さんのアナウンスで「今日は昨日ほどリアクションがありませんね」と聞こえたのでガッツポーズ連発。なんでも二日続けてで、のどが枯れそうになったので翌朝は現地に行くのをやめたそうだ。
後で聞くと、知った気球人でガンバレの応援は2割、残り8割は「はずせ」「地面にぶつかれ」等の野次のこと。最も自分も地上にいたら最後のドンデン返しを見たいので8割の口ですが。後で掲示板を見たら2位は5mと思ったより離れていたが、良く見ると誰あろうオーエン。後で聞いたら、「ターゲットに寄ったら中心に1つマーカがあったけれど、他のマーカは少しちらばっていたのでまずまずGOODだ」とフライト後言っており、夜成績を見て1位がSOKIとわかった所でオーエン曰く、「あのキャラクターはすごい、フライト前にあんなこと言うのもすごいが、言った事を本当に実行した。2日続けて午後のフライイイン2位だけれど、負けて悔いなし。SOKIはミラクルを越えた」
その後、坂井さんは何かあるたびにSOKISOKIと200回は聞いたとのこと。多少の運に恵まれたところがあるとはいえ、世界のオーエンに意識されることはやはり競技者冥利と言える。翌朝のGBM、クルーも含めた皆が1位のパイロットを当てる賭けを行った。ここ2日間のフライトがあるので、何人かは自分に賭けるかと思ったので、ここであろうことかいらないことを考え、狙って1位を取りにいってしまった。しかもよけいなことに、最も劇的で印象に残るのは最後にターゲットやってきて0cmにオンターゲット。これが出来れば自分は『伝説のヒーロ』になれると考えた。
本当にそのとおり離陸した。ほぼ最後にTakeOff。後ろに2機いたが、後で考えるとオフィシャルバルーン。
昨日と同じようにアプローチしている気球の動きを見てアプローチラインを決め、そのラインに乗せ那珂川大橋を越えてから降下。最後地上風で南に切れ込みオンターゲット。のはずだった。
前の気球が通過してから2分程の遅れが命取り、地上風が違う。地上に下げても下げても曲がらない。そのままターゲットの脇を通り抜け50m。『伝説のヒーロ』は夢と消え、自分にかけた人の期待を裏切り、その後のフライトは焦燥感と惰性で飛んでいった。裏切った人の中にはオーエンとそのクルーも含まれていた。オーエンはSOKIに賭けろSOKIに賭けろと言っていたそうだ。
その日の朝まではWGPも下から2つの27位から、10位まで上昇していたが、このGBM以降はぷっつりで、結局その他大勢の順位に落ちていった。
とは言え、大会第1タスクのPDGも1000点と、印象づけたFIN2発も1000点で、大会中ミスターサウザンドとかMr.12Pointsとの称号をいただいた。(オーエン、ウーべ、水上さんたちも3つ1000点とってますが)1000点を取る方法と何人かに聞かれたが、今回1000点とったフライトには確かに共通点があった。
先ず、基本の位置を1000ft以上の高々度にとり、下の気球の動きをじっくり見つめていた。特に#1PDGはPDG制限距離MAX7km近くで#2JDGに近い谷間の交差点を選んだので、5000ftの高度を取りPDGを投げ終わりJDGに向かう気球の動きを長時間見つめていた。FINも同様で1000ft以上の高さからアプローチしている気球を何機も見ているとターゲットに届くラインがかなり手前から明らかになる。これを『勝利の花道』と呼ぶことにする。花道を進む気球を見ているうちに、風の振れやその他の要因で花道の位置が変化していく様子もよりはっきりと見えてくる。あとは、その花道に乗せることだ。今回の茂木で最も感動したことは、1000points取ったフライとではなく、地形を見事に利用した角田さんのタスクセット。特に那珂川大橋付近の攻防は、過去日本で行われたタスクで最高のタスクセットといえる。
23日午前は那珂川大橋下流300mの河原にセットしたターゲットに向かうFIN。その後5km那珂川下流のJGO。後はFON,ELB。(FIN4070-4386、JDG4367-3973)。
24日午前はサーキット南駐車場(CLP3114-4186)から、那珂川大橋のターゲットに向かうGBM(4070-4386)後はPDG,FON。
25日午前は同じくサーキット南駐車場(CLP3114-4186)から23日と同じ場所のJDG(4367-3973)。但し直線的に進む風はなく、那珂川の川風を使わないとたどり着けず、結局ほとんどの気球が円弧を描くような航跡で那珂川大橋を通過する必要があった。
このように少しづつ難易度を増し、最終フライトは、距離と角度と残り時間を計算してのフライトで、GPSに表示する、到達時間を見つつのフライトであった。8時を過ぎた頃から、9時のScoreing Periodまで、どうしても3〜4分足りないと思いつつのフライトであった。
ロスのないよう、ロスのないよう考えながら、ただターゲットに近づけるだけでない複雑なナビゲーションを要するフライトだった
結局JDGは、9時頃たどり着いたが、あと90秒、300m足りずマーカ投下で、13位/36チームのResultだった。
僅かに足りないもどかしさも競技ならば、後ろに後ろに20機いるのを見て、まあまあかと思うのも競技である。那珂川大橋へのアプローチは手前の御前山から谷間に落ちていくような感覚と景色が印象的で、また、那珂川大橋を越えた瞬間川風が強く吹き出し角度も変化するのでFIN,GBMのアプローチは橋を越えてからの僅かな距離が勝負の分かれ目となる。
完璧に天候に恵まれ、9フライト21タスクのボリューム、素晴らしいタスクセット、夜が長くゆっくり出来ることから疲労も少なく、気球の競技を満喫し堪能することの出来た5日間であった。今年の茂木に参加したことは、選手、クルー、役員他関係者皆、幸運であったと思うことの出来る大会であった。
必勝七つ道具
ゴルフでは、たいして練習もしないのに新しいクラブを買えば何ヤードか遠くに飛ばせると信じ込み、スキーやスノボ・テニスなどでは有名選手が使っていると自分も使いたくなり、ナイキはトップアスリートと考えられない高額の契約を結びます。
そう、スポーツでうまくなるにはまず『かっこ』からです。自分では使いこなせない高額/高性能の道具を使うことでうまくなったように思い込み、見た目を真似することで、一流になったような気がするものです。
有名選手が使っている機体を買えばいいと単純に考える人もいますが、ここでは視点を変え、装備という面で、勝つ為の道具について考えてみます。
コックピットマネージメント
風船 Spring No101 2001掲載
1フライト4タスク/5タスクさらにはFINだ、FONだなどと次々にゴールを選び飛び次のゴールを選ぶようなフライトでは数多くの作業をこなす必要がある。そこでは角度を測る、高度をチェックする、リップを操作する、バーナーを焚く、地図を参照する、ゴールを確認する、他の気球の位置を把握する等々。それぞれの操作を行うのに、いくつものアクションが必要であると短時間に多くのことは実行できなくなる。
それぞれの操作を「ひとつのアクション」で終了出来るよう、コックピット上でのパイロットの動作/動線を見直す必要がある。
マーカ

マーカは気球の競技で必ず使用される。ブリーフィング会場に置かれたマーカの数でその日数多くのタスクがあるかないか認識する。では、配布されたマーカは何処に保管するのだろうか。仮にフライトバックに入れたとしたら、マーカを投げるまで
- バッグを取る→
- 投下する色のマーカを探す→
- マーカを取り出す→バッグを置く→
- 投下までマーカをどこかに置く→
- 投下の瞬間再度つかむ→
- 投下する
これだけのアクションが必要になる。
ゴンドラのリジットに投下する順に結びつけるパイロットもいるが、それでもランチサイトでバスケットを組み立ててから離陸までに、マーカを「しばりつける」アクションが必要で、投げる前に「ほどく」というアクションが必要になる。
筆者が渡良瀬バルーンレース2001用に作成したのが写真のベストで(未だ試作の段階なので、デザインは2の次)、マーカを入れるポケットが4箇所ついている。左上/右上/右下/左下と自分の中で投下する順番を決めておき、ブリーフィング会場で輪ゴムを外し、投げた際からまないよう巻き直し、タスクシートを見て投下順にポケットに入れておく。
これでブリーフィング会場を出た後は、マーカを「探す」「選ぶ」「一時的に置く」「ほどく」などといったアクションが不要になり、投げる瞬間に「取る」「投げる」のみ、さらには片手でマーカに目をやらなくても可能になる。バスケットへの積み込み忘れも防ぐことが出来る。
ストラップ
競技中、首には何を掛けているでだろうか。携帯電話、コンパス、IDカード、HONDAのボールペン。何をするにも首まわりが乱雑でわずらわしく感じる。必要なものを手にするたびにヒモがからまりいらいらする。とはいえ首にかけてあるといつでもすぐに使えて便利ではある。
写真のベストでは右肩に携帯電話、右胸に無線のマイク(本体は腰)、左胸にIDカードとストーミーホイッスル。左胸のポケットにペンをさすので、首に掛けるのはデジタルのコンパスのみになっている。
マーカを何処に置こうと、首に何がかかっていようと些細なことと思えるが、わずかでも無駄な動きをそぎ落とし洗練させることこそがバスケットマネージメントと言える。
地上にゴンドラを置いて、ゴンドラの中に立ち、離陸直後/ターゲットへのアプローチなど各種ケースを想定して、数々の道具を手にし、計器を読み、上空や地上に目線を向けたりしてイメージトレーニングをする。その中で余計なアクションが何であったか理解することで、自分なりのスタイルを確立することが出来る。
計器に対する考え方
風船 Summer No102 2001掲載
気球の道具としては、ゴンドラに取り付けられた高度計、昇降計、GPSなどの計器が最もそれらしい道具として思い浮かべる。では、その計器についてどのような考え方で、どのような使うかについてはあまり議論されることはなかった。
ここに記載した文はヨット雑誌に掲載された記事を筆者が熱気球用に修正したものであり、計器を道具として接する方法について記述している。
フライトを科学する《感覚/知覚》
現在、ゴンドラの名かには何らかの「航空計器」が積み込まれていると言える。シンプルに高度計だけの気球から、GPS・バログラフなど複雑で高度な物までさまざまある。
しかし、我々はこの「航空計器」を本当に正しく理解し、使いこなしていると言えるだろうか。もしかしたら、宝の持ち腐れになっていたり、あるいは頼りすぎていたりしないだろうか。
日進月歩で進化する「航空計器」類に対する正しい知識を持ち、力強い相棒として使いこなせぱ、もっと幅広いフライトの世界が開けてくるはすだ。
それが「コンピュータ・フライト」の世界だ。
そこで、ここでは航空計器の限界と可能性を正しく把握することについて記する。
『計器ば道具の一つだということを忘れてはいけない。レースで勝つのはパイロットであって計器ではない。しかし……』
《周囲を見回す》行為について
トップバルニストの動作を観察すると、一ケ所だけに目を集中していないことに気付くことがある。計器、上空、地上、または地図へと自が動く。こうして、できるだけ多くの情報を取り入れて必要な情報を吸収している。
周囲を注意深く見回しているのは、一見すると気が散ってキョロキョロしているように見えるかもしれない。だが「周囲を見回す」という行為は、ふたつの重要な特性を示している。それは、なるべく多くの周囲の情報を感覚的に得ていること、それに加えて、その情報を過去の経験に照らし合わせて、感覚の自信につなげているという点である。
この自信は、100%の能力を発揮していることの裏付けになっていく。
五感すべてから情報を得る
トッブバルニストになるには鋭く発達した五感と、そこから得た情報を吸収できる力が必要である。
五感とは聴カ、視力・嗅覚・味覚・触覚のことで、風の音を聞き、バーナーの音で出力を知り他の気球の位置を知る。視覚は気球の位置を知り、気球の飛んでいく方向を確認する。風見を見て上下で流れる風を知ることは重要な武器になる。臭覚や味覚ですら凪の状態で次に吹き出して来る風を察知するのに役立つ。
しかし、その中で最も大切なのは触覚や感覚、特に方向感覚であり、これらをフィーリングと呼ぶこともある。距離感覚、高度感覚、昇降感覚、気球の動くスピード感覚、微妙なレゴ操作を指先で行い、腕にかかる力からリップをデリケートに扱う。顔や指先にあたる空気から風を寮知できる。僅かでも肌に温度の変化を感じたときは明らかに風の変わり目におり、より早く風の変化を見つけることが出来る。
《視覚》に頼りすぎてはいけない。五感をフルに使った《感覚》を研ぎ澄ます
問題は、多くのパイロットが「視覚」を最も大切だと信じていて、視覚だけが貴重な感覚だと考えていることだ。
視覚に頼りすぎた場合、パイロットとしての力と可能性が激減する事は確かだろう。その理由の1つには視覚に頼りすぎると地上を見ることばかりに夢中になってしまうからである。
こうゆう状態に陥りやすいのは、大人になるほどその傾向が強い。年齢が上になるにつれて人間は視覚に頼って情報を得るようになり、他の感覚は少しづつ衰えていく。
私たちの多くは、五感をフルに活動させてその吸収カと感性を磨くようにフライトしていない。特に感覚については。
しつこいようだが、気球に対する「感覚」がフライトの基本であり、最大に必要な要素なのである。パイロットには砥ぎ澄まされた感覚が必要とされ、周囲で同時に起こることに対処する知識が要求される。
計器は《感覚》の代わりにはならない が、手助けにはなる
さて、ここまで書いてきたような感覚の間題を、計器類が解決してくれるものだろうか。答えは残念ながらノーである。世界のどこを探しても人間の感覚が見つけるよりも先に周囲の変化を察知し、それに合わせて気球を操縦していけるものはない。フライト装置は人間の代わりには絶対にならないのである。
しかし、手助けにはなる。計器類を使う目的とはまず
・自分たちの弱点を見つけること
・自分たちの感覚を強化し、さらに発達させ、確認をとること
・その結果から自分の感覚に自信を持つことができ、自らの判断を信用できるようになること
の3つだ。覚えておかなくてはならないのは、計器には限界があるということだ。
目標は自分たちの感覚を磨くことだと思えばいい.年をとったからといって出遅れたと思うことはない。大人は感覚を学ぶということができるのだから、心配無用だ。
我々には思考力もあれぱ、客観的に判断する力もあるので、理論的に自分の感覚と計器が示す数値との相互関係をみつけることができるものだ。
もちろん最初は僅かな変化を識別する事は難しい。たぶん、大きな変化しか目に止まらないだろう。しかし、時間をかけて集中していけぱ、感覚はより敏感になり、気がつくと大きな進歩を遂げているものだ。
見やすい位置にレイアウトした計器で《感覚》を確認する
ある飛行機の訓練では「計器の走査」を教える。この意味は全ての計器を繰り返してチェックしていくサーキュレーションシスdテムを、自分で作る事なのである。つまり、1つのディスプレイに釘付けになってはいけないということだ。
また自分の五感を信じてはいけないとも教える。目眩、空間で失う方向感覚などからの錯覚が惨事へと導いていくからである。
基本規則は、常に感覚で得たものを計器で示される全ての情報と照らし合わせて確認をとることである。
そのためには、まず計器のレイアウトとそれぞれの役割を理解することが大切である。
計器は道具のひとつ だから正しく使えば強い味方になる
計器は複雑な情報データを分析するのにも活躍する。計器は内臓する計算能力を発揮して、タクティクスやナビゲーションの計算問題を解くことができる。とすれば、計器は偉大なものに思えがちだが、気球を正確に動かすのは人間の研ぎ澄まされた感覚であり、それが差をつけるものだということを忘れてはいけない。
計器は道具の一つだということをしっかりと頭の中に刻み込み、そして、この道具を正しく使用する方法を覚えたら、常に取り出せるところへ配置しておけば良い。計器だけでは正しい方向へは行かない。しかし、計器は人間の感覚のバックアップになる情報を提供してくれる。そしてそれが感覚を磨く材料となり、自信となり、正しい判断を下せるようになる。
レースで勝つのはパイロットであり、計器ではない。が、バイロットの力が等しいものならば、優れた航空計器を正しく使用できるチームの方が、技術面でもフライト感覚でも、レース空域の気象条件を把握する点でも有利に立つことが出来るものだ。
視覚 ・高度
・気球の飛ぶ方向
・風見聴覚 ・風の音
・バーナの音
・他の気球の位置
・地上の音
触覚感覚・気球の反応動き
・バーナーのパワー
・リップラインにかかる力
・気球の変形
・風の変化
・風の温度
臭覚味覚・次に吹き出してくる風
参考文献:SAIL(ヨット雑誌 既に廃刊) 1992.12号
ジムマーシャル「セイリングを科学する」
高度計
風船 Autumn No103 2001掲載
気球で搭載する計器といったら先ず高度計を思い浮かべる。
高さと風の層
気球は高さの違いによる風の違いを利用し操縦する乗り物であることから、トレーニングしたてのPu/tでも「上空の風はあちらの方向に吹いており、地上はこうだから、上ってから下がって何処何処に行く」と考えながらフライトする。しかしフライトが終わった後、何ftの高さでどちらに風が吹いていたかの記憶は結構曖昧なものである。
そのフライトでの最高高度の到達時刻とその高度が何ftであったかのチェックから始め、レベルフライトした時にはその高度を覚えておき、さらには上昇/下降中での高度/風向きの変化を把握する事により、自分の中で高度と風向きに対する感覚と分析能力が発達する。チェックを密に行なうにつれ、ある高さで風が変わったと感じた際、それが時間/気温/地形/天候など、どの要因を強く受けで風向きが変わったのか想像出来るようになる。
高度の違いによる風向きの情報をより多く得ることで、上昇/下降し、またもとの高度に戻ったとき風向きが変化していたら
(1) 風の層が移動(より高くまたはより低く)
(2) 風の層の風向が変化
(3) 風の層が消失
(4) 風の層が一時的に変化
したのか考え、Pilotは上昇/下降して別の風の層に気球を乗せ、目的地への新たなルートを開拓する。
(4)の場合、特に風が弱い時に言えることだが、Pilotはより確実にターゲットに向かう風を探したくなるもので、後で考えると多少の変化はあれどトレンドとしてはターゲットに近づいていても、より速くより直線的にゴールに向かう風を探そうとして上昇下降するうちにターゲットに向かう風に乗りそこね(戻りそこね)、結局外れてしまうことが往々にしてある。トライすることが悪いとは言えないが、忍耐強くフライとすることも大切である。
筆者も誘惑に駆られそうなときは『辛抱我慢、しんぼうがまん』とつぶやいてフライトしていることがある。
レベルフライト
気球を風に乗せるには一定の高度でレベルを保持するよう一般的に教わる。しかし、風の層と言うようにある方向に吹く風は通常ある高さからある高さまでの幅をもつ。従ってその層(幅)の中にいる分には少々上昇しようが、下降しようが大して影響はない。むしろ適度に上下動しながら風を探す動き、風の層を認識するフライトをする方が次の行動の指針になることが大きいと言えよう。ただし、意図していないのに、200ft、300ftと高度が変化するようではレースを行う以前の問題と認識すべきである。
デジタルの高度計には高度のデータをパソコンにダウンロードし、グラフ表示が可能な機種がある。フライト後に記憶と記録を比較することで、自分の描いていたイメージ通りの高度変化であったか、客観的に分析することが出来る。
見やすい位置に高度計を
お客さんや友人を乗せての遊覧飛行の場合、コンパス/GPS/地図などはシビアには見なくても高度だけは常々チェックするものである。ただ、都度「こちらに移動して下さい」とか「計器の前には立たないで下さい」と注意するのも少々興ざめすることがあるので、筆者の気球ではPilotが何処に立っていても高度が見えるよう常設で3つの高度計を取りつけている。さらに競技用には高度計/GPSのセットを使い、都合4台の高度計を取りつけてフライトしている。最近デジタルの高度計を使用するのが一般的であるが、いざと言うときに電池切れや故障する場合もあるので電池を使用しないメカニカルな計器は重宝である。また、複数の高度計があることで、自然と精度のチェックが出来ることもメリットとなる。
多くの気球ではゴンドラのある箇所もしくはリジットに高度計を取り付けているが、いざターゲットにアプローチの際、取り付け位置が進行方向と反対だととどうなるだろうか。高度チェックするたび後ろを振り向かなくてはいけないことになる。これでは最も集中を必要とするアプローチで意識が散漫になることを意味する。その場合のPilotの行為は必然的に高度計を見ないことにつながる。これはコックピットマネジメントの視点から望ましくない。
そこで、いつでも進行方向に計器があるよう、高度計とGPS1つのユニットにして、いつでも進行方向に配置することで集中を切らすことなく微妙な高度調整を行なうことが出来る。
筆者の使っているユニットは簡単に作成出来るので試してみてはいかがだろうか。軒継手を使用し、ゴンドラの縁に載せられるところがポイントである。(1)1mm厚の塩ビ板と10mm厚の板を計器が取り付けられるサイズにカットする
(2)計器はKinsem HCP 超強力デュアルロックファスナー(発売元 ホースケアプロダクツ 東急ハンズで購入可)で固定
(3)塩ビの雨樋用軒継手100mmに薄手のマウスパットを滑り止めに貼付け板の裏にネジ止め
(4)ストッパーとしてロープかベルトにカラビナをを取り付け
挿絵:東北芸術工科大学 小林 幸
昇降計
風船 Summer No106 2002掲載
デジタルの昇降計が普及する前は、時計型のいかにも航空計器といえる昇降計が一般的で、針が振り切れたと言っては急降下を自慢するパイロットの武勇伝をよく聞いたものだ。
最大降下速度を知るのが昇降計の主要な目的と思うのが一般的だろう。最近は圧力センサーを利用したデジタルの昇降計を使用する気球が一般的になってきた。
デジタル昇降計のメリットとしてあげられる機能にピーク音がある。機種にもよるが最初は間欠音で、上昇降下速度が増すほどピッチが短くなり音程が高くなったりする。
フライト中、常に昇降計を見なくても音で認知出来るのは気球の挙動に集中しているときには有効な機能と言える。
メカニカルの昇降計と比較するとデジタルの昇降計は精度の良いものが多い。それはレベル付近の微妙な上下動を正確に知ることが出来るといえる。つまり、計器を使用することで、緩やかな上昇下降速度を緻密にコントロールするフライトが容易に可能になることを意味する。
上昇下降の操作性
気球の操作で、レベルフライト、緩上昇、緩降下と比較するとどの操作が難しいだろうか。
1.形状による抵抗
スポーツ気球は通常ディアドロップ形なので、天頂部は多少湾曲しているとはいえ、真上から見ると大きな円盤状になっている。上昇時にはこれがそのまま大きく抵抗 となる。逆に下降時は尖塔形をしているのでスムーズに空気が流れることから抵抗は少ない。
抵抗 大
抵抗 小 球皮の形状による抵抗 2.冷却による浮力
熱気球は熱による浮力で上昇する。少しでも時間がたつとその分冷却し浮力が減少する。従って時間の経過とともに降下速度が増すことになる。
↓↓ ↓↓↓↓ 温度 高
温度 中 温度 低 時間の経過 ⇒ 3.高度による浮力
ロードチャートで分るよう、同じサイズ同じ球皮内温度では高度が高いほど浮力が得にくくなる。
高 中 低 この3つの効果をイメージで表現すると、上昇しようとすると上から柔らかく押さえつけられている感じで、少しバーナを焚くことでレベルフライトや柔らかい上昇のコントロールは容易に操作出来る。
逆に、降下時は下にひきずり込まれる感じで、ゆっくり降りたつもりが気がつくと思った以上に急降下することがあるように、バランス的に不安定な状態といえる。
緩い降下のすすめ
-20ft/min,-50ft/min程の緩降下ができることは高度調節の微妙なバランスを保てることを意味する。
それは電線を越えてのランディング、ピンポイントのアプローチなど行う際、降下のタイミングをとりやすくする。レベルだと降下の開始を制御するのが難しく、狙った場所にアプローチできず通り過しやすいものである。
障害物をクリアしてストンとランディングするにはこの操作が大切である。
タイミング とりやすい タイミング とりにくい レベルフライトからアプローチに移るとき、ランディングするつもりが、上昇してしまっていて、リップを引いて急降下してしまい、ハードランディングになったということは初心者にはよくあるだろう。
こうなると、いざ地面に着陸する時、リップをひき切っていないことが多く、気球が引きずられる要因になる。
リップ
ステップバイステップアプローチ
このように、レベルをとることを基本とするのではなく降下スピードのコントロールを覚えることが大事である。
急降下からの停止も高度計を見るより昇降計を見ながらコントロールする方法がある。
事前に自分の乗る機体のレスポンスと自分の技量を把握する。
つまり、長めの一焚きでブレーキのかかるのは、-500ft/min とか -300ft/min と経験や練習の中で設定する。
3000ft,4000ftの高々度からアプローチの際、始め -1000ft/minで降下し、1000ftとか決めた高度を切ったころから何度かバーナを焚き500ftとか300ftとある高さで-500ft/min程にし、最後地上付近や目的の高度で昇降計の表示を0に戻す。初心者が降下の練習をするときは
2000ftレベル→降下→500ftレベル→降下→200ftレベル→降下→50ftレベル→アプローチ→ランディング
のように高度を階段状に落とすことを教わる。
その次の段階の練習として、高度でなく降下速度が階段状になるよう降下することで気球をコントロールする方法があることを理解して欲しい。降下しつづけることが容易な操作性を生む。
高度を階段状 降下速度を階段状 ステップバイステップアプローチ
挿絵:東北芸術工科大学 小林 幸
境界層の魔術師
気球は高さの違いによる風向きの差によって、行き先をコントロールする乗り物であることは、気球乗りなら誰でも知っている。では、風の変わり目はどのようになっているのだろうか。
風は高さの変化に従い少しづつ変化して吹いている場合(図1)もあれば、ある面を境に風向きの異なる層が接している場合(図2)もある。
実際はもっと複雑であったり、ランダムに流れるだろう。
図1 図2 以下、気球の動きを考えるにあたり、モデルとして考えた条件は
- シャープな界面によって風向が変わっている(図2)
- 気球の慣性は無視する
とする。
この前提で、上空と地表で90°角度(風向)が変わっている時アプローチした場合、一般には図3のような航跡を思い描くであろう。
図3 つまり、「次の道路に達した所で急降下し、下の風を使ってオンターゲットだ」。
確かに急降下したときはそうかもしれないが、ゆっくり降下したときはどうだろうか。
よく使われる球皮は10数mから20mほどの高さがある。簡単の為50ftとしよう。そうすると、-100ft/minの降下速度で降りた場合30秒もかかることになる。これは上層と下層両方の風の影響を受ける期間が30秒あることを意味する。
気球の形状をTearDrop(涙型)から円柱のモデルに置き換えて考えると、気球の動く方向は徐々に変化することが理解しやすいだろう。(図4)つまり、うまくバランスをとれば2つの風向きの間なら、どの方向にも飛べることになるのだ。
実際には弧を描いた航跡になるので(図5)、変化の開始ポイントはかなり手前からになる。
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図4 図5
例として、上空が南風(TO0°) 3m/s。地上が西風(TO90°)の場合、50ftを-100ft/minで降下したら、30秒かかることになる。このとき、急降下で鋭角に向きを変えた場合(点線)と比べると50m弱手前から変化が始まることになる。南西風(TO45°)、北西風(TO135°)でも同様である。(図6)
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| 図6 |
一般に(1))の航跡でアプローチするパイロットが大半だと思われる。それはなぜか?。見た目にわかりやすいからである。特に地上班からはAポイントに達する直前で気球が急降下し、(2)のラインに乗ることを確認できれば、後はターゲットの上を通ることを見守るだけで済む。急降下という行為がパイロットの意思判断が妥当か地上班が検証することを可能とする。
それに対して境界層を有効に使ったフライトは地上班からでは理解しにくい。
図7 ゆっくり降下する最大のメリットは降下速度を微調整することで、一回の降下で確実にアプローチラインに乗せることができる点にある。
一般にアプローチは上昇降下を繰り返し、ノコギリ状にラインに乗せるとされている(図8)が、上昇下降が間に合わない場合や、ターゲット付近で気球が密集しており、上昇下降がままならないデメリットがある。
緩降下のデメリットは、大きく高度を変化させるのを若干躊躇する傾向が出る場合がある。
1998年12月に行われた大会で、たまたま藤田氏の近くを飛んで感じたのが、200ftくらいの高度差をつけた上下動を繰り返し、それが実に小気味良く、それぞれの上昇下降に明確な意思(フライトプラン)を感じさせた
最近、球体のレスポンスを重視した球皮がレース界ではやっているが、高々度からの最大降下スピードを重視するパイロットもいるだろうし、短い高度差のレスポンスを重視するパイロットもいるかと推測される。
図8 図8は境界層の風の動きを調べるため作製した、釣り竿に吹流しを取り付けた道具で、風の変り目で下の風を読み取る為に使い、かなりはっきりと変化を見てとることが出来る。真横に流れるときも多々あり、むしろだらんと垂れ下がっている時の方が少ないくらいである。
図9 先のシミュレーションでは円柱のモデルで説明したが、実際の気球はTireDrop(涙)型である。
降下中は、順に
Aで吹流しが流れ
Bで顔や体で風や空気の違いを感じ
Cで下層の風を受け気球が動き出し
Dで下層の風の影響を大きく受ける
AからDへ移る間の操作で目指すラインに乗せることが出来れば地上や他のパイロットは、ありえない方向に飛んでいるようにも見え、手品を見ているような気分になる。そう、『境界層を制する者はレースを制するのである。』挿絵:東北芸術工科大学 小林 幸