北京近郊、長城めぐり
1998年、ひな祭りの日から四泊五日の旅程で、拙著の第三部の舞台ともなる山海関を含む、八カ所の長城を取材しました。
1日目。
四泊のうち、三泊は北京郊外の地方都市ということで期待半分、不安半分の旅行だったのですが、いきなり初日の移動日からやってくれました(^_^;。宿舎のある秦皇島に高速バスがたどり着いたのは、なんと21時半(^_^;。
原因は、道の渋滞。切り石やレンガ、北京から買いだした荷を満載した連結トラックがやたら多い。さらに明らかにスピードの違う馬力のない車両、そしてロバの引く荷車、トラクターまでもが街道に乗り入れているため、なかなか前に進めないのだ。簡単に追い越しがかけられる自家用車での下見で、大型バスの移動時間を計ったのだろうか……。
秦皇島での遅い夕食のメニューは、豚肉、ベーコン、ピータン、豆等の前菜六皿に始まり、おこげのあんかけ、ほたて、ブロッコリー、ジャガイモの千切り等の炒め物、鳥味のスープ、魚の煮物、西瓜、ネーブル、パイナップル等の盛り合わせでした。四川系の影響が大きい店でしたが、やはり北方らしく、全般的に少し塩味の強い料理でした。
ガイドさんの話によると「お手伝いさんが、貧しい西の方から流れてくるので、北京一帯では四川料理の影響が強い」とか。またサービスが大胆。多少料理が残っていても、全くおかまいなし。テーブルの上に、皿が三層を成すまで積み上げていくのが印象的でした。
ホテルは、ちょっと高級なビジネス・ホテルといったところでしょうか。北京っ子のガイドが驚くほど近代的でした。
2日目。
長城が海へ至る城、老龍頭長城、お目当ての「天下第一関」山海関、そして5時間ほどの移動の後に、黄崖関を見学しました。ガイドさんの話では、長城の保存には、賛否両論が多いのですが、基本的に観光客に開放されている場所は、石やセメントを使った現代の技術で修復されている、とのことでした。確かに明代の日干しレンガ、土と石灰ともち米の煮汁を混ぜて突き固めた土塁を、そのまま再現するのはメンテナンス等の諸問題から難しい。しかし、まるっきり観光用に再開発されている史跡、というのも味気ないものです。
宿泊は、懐柔の町中にある県の宿泊施設。部屋の鍵は、各階のエレベーター前に儲けられたカウンターの女性職員が預かって開閉するという、昔ながらのシステムのホテルでした(一応三星クラス)。
料理は、七皿の前菜で始まり、とんそくの煮物、ほたて、海老とちんげん菜等の炒め物、牛カツ、鳥と朝鮮人参のスープ等と、例によって盛りだくさん。素朴なれど、しっかりした味付けが好ましく思えました。
3日目。
午前中、山の中の一般道を使って四時間かけて宿泊先のホテルへ移動。少し早い昼食を取って、司馬台、金山嶺長城を見学。それぞれ1時間も取れない。さらに地元の売り子さんが、長城に昇る我々一人一人にピッタリと張り付いてくる、というおまけ付き(^_^;。ガイドブック百元、Tシャツが四十元、絵はがきが二十元。ちなみに帰る間際には、半値以下に値切って売り込んできます。
ホテルは、山荘と名付けられるも、ディスコ、サウナ、ジムが使えるばかりか、20レーンぐらいありそうなボウリング場まで完備した、典型的なリゾートホテルでした。ただ、少し余裕のない設計なのでしょうか。チェックインしてまもなく、一階の部屋は洗面から水が逆流して通路にまで溢れる始末。たぶん日本人の団体が、一斉に風呂を使ったせいでしょう(^_^;。
料理は、鯉のあんかけをメインに据えた、スープ2鍋を含む20皿近い料理。自家製の豆腐、調味料が売りのようでした。
4日目。
(八達嶺にて)
慕田峡、八達嶺、長城博物館、「天下第一雄関」居庸関、水関を巡りました。みんな観光地と化しており、だいたい昇り口から左右三番目あたりの物見台まで、すなわち観光客が小一時間で足を延ばすあたりまで修復されているのが、妙に印象的でした(^_^;。
この中で不当に軽んじられている、と感じたのは居庸関。見てくれ拒否反応が出てしまうかもしれません。ですが、歴史といい、城門に彫られた同じ教典が各種言語の翻訳のカギとなった(中国のロゼッタ・ストーン! しかも、その価値に気がついたのは日本の研究者)といういわれといい、いま少し人気が出てもいいような……。八達嶺のような、極めつけの景観を誇る長城が近くにあったのが不運だったのでしょう。
北京のホテルは、五星の崑崙飯店。やっぱり違うわ(^_^;。
また嬉しいことに、ホテルの前に茶の専門店がありました。これ幸いと、チェックインの手続きをしている間に、こずかいの大半をはたいて、龍井の緑茶、ジャスミン茶と、一年分を買いまくりました(^_^;。
またこの夜は、嬉しいことがいま一つ。夕食を食べた後、北京城内の西部にアパートを持つガイドさんにタクシーで同行してもらって、羊のシャブシャブを食べた事です。半紙のように薄い丸まった肉を、ゆがいた大蒜をかじりながら、香菜と葱がたっぷりと入れた胡麻タレでいただくというもの。腹を壊し、ついでに2キロあまり太りましたが、念願のシャブシャブが食べられた口福は、何者にもかえがたいものでした。
……単に、喰い意地が張っている、とも言いますが(^_^;。
4日目。
天安門、故宮を早足で見学して、帰国しました。
この旅を総括すると、とにかく移動時間が長かった(^_^;。えらい歩いて長城にたどり着いても、15分だか30分の自由時間しか与えられない。その後は、2時間、3時間の移動がざら。多分、飛び地なっている黄崖関一つを外せばこの旅、ずっと有意義な、満足感の持てるものになった、と思います。長城で散策する、ボンヤリと時間を過ごす、という楽しみ?だか欲求を、現地の人はあまり理解していないのかな……。それから当分、中国茶には困らないでしょう(^_^;