その筋の人々の間ではものすごく有名な、伝説的参加型B級SFホラーミュージカル映画(?)「ロッキー・ホラー・ショー」(以下「ロッキー」)を見に行ったときの感想です。
2002年
あらすじとしては…道に迷った婚約者カップルが、電話を借りようと訪れた森の中の城、そこには異星人の科学者とその仲間たちが住んでいた。そしてその夜、科学者の手によって人造人間「ロッキー」が誕生しようとしていた…というものです。SFですが、変わっているのはその上映形態です。
タイトルにもリードにも書いてあるとおり、この映画は「参加型」です。映画のせりふに合わせて突っ込みを入れる、シーンに合わせて歌い踊る、小道具を使う、などなど。誘ってくれた友人の説明を聞いても、最初はぴんときませんでした。映画館の上演のお知らせを見ても、「基本的には何をやってもOK。ただし、火薬など危険物は持ちこみ禁止。」とあり、ちょっと事情がわかりません。
当日は、ロッキーを何回か見たことのある友人Hさんと、かつてロッキーのファンクラブに入っていて、10回以上はゆうに見たという友人Jさんに連れていってもらいました。整理番号の札をもらって上映館の前で待っているとコスプレをしている人がやってきました。しかも何人も…。どうやらファンクラブの方々のようです。
好きな席につくと、ファンクラブの方々より「好きなときにお使いください」と一人一人に紙ふぶきが配られました。離れたところでは「新聞あります。早い者勝ち〜!」という声も。両方とも、映画を見ながら使う小道具です。
私はビギナーゆえ、何も持ってきていませんでしたが、友人HさんもJさんもいろいろ用意してきていました。クラッカー、お米、新聞、ペンライト、鳴り物…。一体いつ、どのように使うのか…。
上映前に、ファンクラブの方より注意事項がありました。みんなおとなしく聞いています。さあ、これから何が起こるのでしょうか…。
映画が始まって、オープニングの音楽が流れ始めました。客席も一緒になって歌います。私達の席の斜め前にファンクラブの女性が座っています。この方、美しい声で歌っていらっしゃいます。
教会での結婚式のシーン。教会の先頭部分がアップになり、カメラが引いて全体が現れるのですが、スクリーンに人が出てきて、まるで教会を持ち上げるような動きをします。
続いて、花嫁花婿がライスシャワーを浴びるシーンでは私達もスクリーンに向かってお米を投げました。でも、私は投げ方が下手で、お米がひとかたまりになって2列前の人の肩にバララッと降りかかってしまいました。痛かったかもしれません。ごめんなさい。
「ツッコミ」とは…例えば、ブラッドという登場人物が考え込むシーン、客席から「ブラッド、あごに何かついてるよ!」という声がかかると、次の瞬間ブラッドがあごに手をやります。絶妙なタイミングです。こうしたツッコミの場面が何度となく出てきます。
登場人物のコスプレをした人は、自分のキャラクターが登場するシーンになるとスクリーンの前に出てきて、映画の画面と同じ動きをします。
雨が降ってきて、傘の代わりに新聞紙をかぶるシーンでは客席のほとんどの人もガバッと新聞紙をかぶり、なかなか面白い光景でした。私も新聞紙をかぶりましたが、英字新聞ではなく、東スポでした。
雨の降る暗闇の中にお城の明かりを見つけるシーンは、感動的な音楽が流れ、ちょっとステキでした。ふと見ると隣の席のJさん、かばんの中から静かにペンライトを取りだし、ゆっくりと左右に振り始めました。客席には他にもいくつかペンライトの光が。美しい〜。
友人Hさんの用意したクラッカーは、自分の好きなキャラクターが登場するときに鳴らすものだそうです。上映前、クラッカーの話をしていたら、すぐ前に座っていた人が席を移動してしまいました。危険を感じたのでしょう。確かに、真後ろでクラッカーを鳴らされたらコワイですね。やがて、Hさんの好きなキャラクターの登場のシーンが近づいてきました。でも、クラッカーを持ってきている人が他に見当たらない。
「火薬はいけないそうだから、クラッカーもいけないんじゃ?」「そんな…」。ひそひそと話していると、斜め前のファンクラブの女性が、「鳴らすタイミングわかる?」と声をかけてくれました。「誰が好きなの?」「フランクが…」「じゃあ、エレベータから降りたところがいいわ」。おおっ心強い。しかし歌舞伎の合いの手と同様、これもタイミングが重要です。一歩間違えれば映画自体台無しにしてしまうかも…。ひとごとながら緊張。そのシーンが迫ります。フランク登場!音楽が鳴る!同時にクラッカーがはじける!「きゃーっ!!」。友人Hさん、見事なタイミングでした。斜め前の女性が振り返って、涼しげな微笑をうかべて親指を立てました。
謎のお城でのダンスシーンは、さあご一緒に!みんなでタイム・ワープ・ステップを踊るのです。ふだんの私なら、「そんなことはできない」とかたくなに拒否していたことでしょう。しかし、すでに脳の状態が普通でなくなっており、また周りの全員が立ち上がっている中で黙って座っている方がよほど恥ずかしく思えて、ダンスの輪に加わってしまいました。「踊る阿呆に見る阿呆同じ阿呆なら踊らにゃ損損」…であります。
うーん、「一体となる」って、ステキですね…。
つわものどもが夢のあと…。明るくなった場内を見渡せば、恍惚とした表情を浮かべる人、すがすがしく満足した表情の人。そして床には米粒、紙ふぶき、クラッカーの紙テープ…これはファンクラブの方々がお掃除をするのでしょうか。たいへんなことです。ちょっと特殊な上映形態なので、普通の映画以上に、多くの人の協力の元に成り立っているのだろうな、と思いました。
-以上-
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