(左のプレーヤーで朗読が再生できます) 朝焼け |
| ただならぬ気配に振り返ると、窓いっぱいに襲いかかるオレンジの光 開く窓からはすさまじいばかりの光のスクランブル 美しい 美しい たまらなく美しい たばことライターをつかみ階段を疾駆する 外に出ればきっとこの美しさはボクのもの はやくはやく 河原をまっすぐに横切り水際に腰をかける 大気に身をおき天空の美しさを全身にあびる この時この場所で私だけに見ることを許されたのだ。 日の出を待ちきれない太陽はちからいっぱい金色の光を伸ばしている その光は雲を包み込み漏れた光が幾筋もの滝となってほとばしっている 長く走る雲はうっすらと天女の羽衣のよう 西の空には、白い雲が青い空と絶妙に絡み合って対極の美しさを出している。 美しい 美しい たまらなく美しい 限りない赤から、限りなく白に近いブルーまで 1兆色のカラーが競演し 白い雲がこの世の美しさをきわだたせている 神よ これは何をお示しなさっているのですか 私に許されたこの時 このうつくしさを永遠に抱いていたい 時よ止まっておくれ この美しさを永遠にとどめておくれ 空を見上げれば溶け始めている 青空が侵略しだしている ああ 一瞬だったのだ 神と一体となり得たのは さあもどろう 立ち上がるボクの足下にはアザミが辺り一面の草々に混じって過去を顧みることなくいまを生きている 私の罪は許された 世界はいま癒されたのだ |
時代を変える圧倒的な洪水が押し寄せてくる 抗するすべてのわざは役に立たず いともたやすく駆逐される 構築し蓄積した土塁は 一瞬にして押し流され 広く深く水に覆われ 遥か水で満たされる すべてが停止する 完膚なきまでの敗北だ なんと静かなことだろう なんと穏やかなことだろう すべてを放棄し、すべてを成り行きにまかせる おお、見るがいい すべてを飲み込み、あれほど渦となって荒れ狂った 土砂流も沈下してゆく 清々しい上澄みがせせらぎとなって 少しずつ少しずつ引いてゆく すべてが引いたとき、現出する姿、それは廃墟 そこに鳥は空を横切るだろうか 生けるものはその影を落とすだろうか ひび割れた世界、むき出しの世界 それでもあしたには太陽は昇るだろう ゆうべには星々が大地を鎮めるだろう 私はトカゲ 石の下にかくれるトカゲ 夢を見、眠り続ける 夢見て広く白く この廃墟の世界 石は太陽に焼かれ、雨に打たれ やがて砂になろう 砂はタネを呼び タネは虫を招く 生きとし生けるものの生命の連鎖が ゆっくりと ゆっくりと まわり出す 時代は変わる 時代が変わる夢を見続ける |