| 【白い犬】 |
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| ハチを飼い始めて数週間経過した頃だった。軽い散歩のつもりで隣のスーパーの駐車場へハチを連れ出した。楽しそうに駐車場のフェンス脇を走ったり、臭いを嗅いだりしている。ハチにとっては、全てのものが珍しく好奇心でいっぱいなのだ。フェンスの角まできたとき、ハチが急に頭を上げ、遠方を見ながら小さな尻尾を振った。小生もつられて振り返ると、反対側のフェンス脇に五〜六匹くらいの野良犬軍団がうろついているではないか。こんな大群に襲われたら大変と思い、ハチを小脇に抱えて退散! それ以来、必ず早朝にこの軍団を見かけるようになった。早朝の散歩なんてこれまでしたことがない。多分、ハチを飼う前からいたのだろう。この軍団の中で、大きくて白い犬がひときわ目立っていた。他の犬と違って何かオーラのようなものを発している感じがする。多分リーダーであろう。不思議なことに、日中見かけることは一度もない。これほど多くの野良犬が、人目に触れず何処に潜んでいるのだろうか? その後、この軍団が気になり観察していた。数週間くらいすると、野良犬の数が減っていることに気づく。そして一匹一匹と少なくなり、最後は大きな白い犬一匹になってしまった。キッと保健所の野犬狩りにあったに違いない。そんな中で頭が良く体力のあるリーダーだけが逃げ切っていたのだろう。当然、世間では、危険だから怖いからという理由で、保健所に一日も早く捕まえるように嘆願していたと思われる。不謹慎かもしれないが、小生は捕まるなよ!何とか逃げ延びて逞しく生きろよ!と心中密かに声援を送っていた。しかし、数週間後、ついにリーダーも見ることがなくなった。 ”あ〜捕まっちゃったんだな〜 可哀相に・・・” 動物病院の医者からハチを土の上で散歩させても良いと許可が出た。少し遠出をするようになったある日、草むらの中で白いものが動いた。ハチもそちらの方を見つめる。そう、あの白い犬、リーダーだ。未だ捕まっていなかったのだ。凄いぞ!偉いぞ!でも、すぐ逃げていなくなった。 そして、翌日も、その翌日もリーダーを見るようになった。しかも不思議なことに、必ずハチと一定の距離を保って何処からともなく現れる。その度に怖さ知らずのハチは、小さな尻尾を激しく振って愛嬌をふりまく。かなり遠くまで散歩に連れて行ったときも、見え隠れしながらず〜っとついてきた。いつか餌でもやろうと思い鞄にジャーキーを入れているのだが、少しでも近づく仕草をすると、さーっと逃げる。そんなことを数週間、繰り返していただろうか、ついに見ることがなくなった。 数ヶ月が経過した雨の降る日である。偶然にも、濡れながらショボショボと歩く白い犬の後ろ姿を見つけた。まだ生きていたのだ。凄い!そして翌日、駐車場の隅っこで腹這いになって休んでいるリーダーを発見。ハチと一緒に、今度こそ餌をやろうと鞄を持って追いかけた。しかし、リーダーは、少し走っては振り返りながらドンドン離れていく。そして、住宅街の細い路地裏へ消えていった。これが白い犬を見た最後であった。 今頃、何処でどうしているのだろうか?リーダーだけは、捕まらずに生き延びていると思いたい。しかし、こんな街中で野良で生き抜くことは容易ではない。誰かやさしい人に拾われて、元気で生きていて欲しいと願っている。 |