§§§  花雑記  §§§
 


 

■ シクラメン                            シクラメンの花をクリックして下さい。
シクラメン


 12月も15日を過ぎました。「ノア・レポート」(12月18日号)の表紙のカウントダウンの数字も「14」、15日目は新しい21世紀となります。成人で新しい世紀のボーダーラインを跨ぐことができるのは、地球上の人類で私たちだけなのです。それを考えますと、今この時に生を受けていることがどんなに素晴らしいことなのか考えさせられます。
 むかし、安藤鶴夫さんが師走の風景をこんなふうに書いていました。
 「あの十二月の、しだいに数え日になって、大晦日がちかづいていくざわめきや、なんともいえない気ぜわしさが、たった一晩のちがいで、さッと消えて、元日の朝は、こどもごころにも、なにからなにまで清澄に思えた」と。
 21日は「冬至」、一年中でいちばん昼が短い日で、日の影が一年中でいちばん長くなる日なのです。暦を見ますと、東京で、冬至の日は夏至の日より5時間近く日が短かいのです。5時間も日が短いのですから一段と気忙しく感じるのは無理ないことです。
 気忙しい年の暮れを迎えた先日、立派なシクラメンの鉢が送られてきました。シクラメンが届けられるようになってもう今年で3年目です。尊敬している私の「大好きな大好きな看護婦さん」からの贈り物です。人にとって言葉は大切なシグナルです。その看護婦さんとは不思議なくらいに言葉が合うのです。
 先日家内が「今年はシクラメンの花がおくれているのね」と言った翌日に届きました。昨年のシクラメンは花びらが斑なピンク、花びらの輪郭は白で縁取られた見事な花でした。今年は深紅の花弁のシクラメンです。部屋に飾った鉢を見ていますと、シクラメンの花が白い炎に見え、真紅の炎に見え、斑なぼたん色の炎に見え、冬に咲くシクラメンの花が炎の舞を舞っています。そんな感じからかがり火花とか、かがり火草と呼ばれているのでしょう。
 シクラメンの鉢を観察してみますと、葉は密生していて、深い森を思わせます。その深い森からすくすくと茎が伸びて花をつける。花は萼がうつむいているのに、花びらは反り返り上をむこうと咲いています。上を向こうと反り返っている様が炎の舞のように見えるのです。深い森を静かに探索する思いで、シクラメンの葉をかき分けてみますと、大小の蕾が、噴き出る生命を抑えるようにして静かに息をこらして出番を待っているみたいでした。人々はシクラメンのこの生命力に惹かれ、シクラメンが人気と冬の季節の人気なっている所以ではないでしょうか。
 甘やかされたシクラメンは逆境に弱いが、自然児として育てられたシクラメンは葉も堅く、砂漠のように渇いた室内でも強さを保つのだそうです。
 シクラメンは、12月20日の誕生花、花言葉は「はにかみ」「理解」です。
  

 安西 均の「花の店」という詩です。
 
  かなしみの夜の とある街角をほのかに染めて
  花屋には花がいっぱい 賑やかなことばのやうに
 
  いいことだ 憂ひつつ花をもとめるのは
  その花を頬ゑみつつ人にあたへるのはなほいい
 
  けれどそれにもまして あたふべき花を探さず
  多くの心を捨てて花を見てゐるのは最もよい
 
  花屋では私の言葉もとりどりだ 賑やかな花のやうに
  夜の街角を曲がるとふたたび私のこころはひとつだ
  
  かなしみのなかで何でも見える心だけが。
  





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