「アレなアニメの館」
アレなアニメの感想など。
(御注意!ネタバレ有です)
 
海のオーロラ
時代: 2000
監督: 菅野 嘉則
時間: 91分


1)はじめに

 マントル深く眠っていた危険な太古のバクテリアを巡り、深海の掘削基地を舞台に伝播を押し留めようとする少女と現場作業員達との奮闘を描くサスペンスSF。
 全編3DCGによる画面とベテラン声優陣と俳優の競演によるCV、天野正道の音楽が光る日本テレビ製作による(多分当時としてはそこそこ予算のあったと思しき)アニメ映画。


2)物語

 2033年、世界的な異常気象は一向に収まる気配が無く、それによって引き起こされる自然災害によって世界人口は最盛期を過ぎてしまい減少の一途を辿っていた。一方、同じ頃開始された日本への石油輸出禁止措置による国内への影響が深刻化、一向に解除される気配の無い状況を鑑みこの苦境を打開するべく政府は南鳥島沖の海底資源掘削に唯一の望みを託していた。

 海岸で頭上を飛ぶヘリを見やる少女。傍らには少年が寝息を立てている。少女は意を決し拳銃に弾丸を装填した。同じ頃、掘削ドリルが地中に突き進む海底では、多くの者の期待に応えるかのようにマントル下に原油が見つかった。湧き上がる掘削基地の面々。方や、海上の支援船「はるしま」。永の海底暮らしを終え連絡シャトルで掘削基地から上がってきた「息吹ヒロシ」だったが、支援船に現れた少女に拳銃を突き付けられ、止む無く三人で再び海中へと舞い戻る。

 少女は連れの少年から「チェンル」と呼ばれていた。チュンルは網膜認識セキュリティを「王玉竜(ワン・ユーロン)」、つまり男の名前で突破、現場監督「甘利シンジ」に海底掘削を中止するよう要求する。その要求はかつて一度は海底掘削を推進したものの、途中から強行に反対するようになった故人・天才的生物学者ワン・ユーロンの弁と全く同じだった。

 海底基地の別の場所では密かにインサイダー取引で一山当てようと目論む掘削基地駐留の科学者「トウル・エンリケス」(地質学者)が石油発見についての詳細データを連絡シャトルに乗せ海上の支援船へと送った。しかし、そのシャトルを追うオーロラの如き謎の光。光は大気に触れると大爆発を起こし、支援船は海の藻屑となってしまった。
 その光の主こそチュンルによれば太古地球に生まれた最初の生物、バクテリアの「オーロラ」。二酸化炭素を吸収し酸素を放出、現在の地球大気を創り上げたものの増えすぎた酸素を避けてマントルへと生活圏を移していたという。そしてワン・ユーロンによればオーロラは酸素に触れると過剰反応を示し大爆発をおこすという。

 時既に遅し。だが海上での惨事に気がついた掘削基地は、幸いにもそこそこの期間耐えられる資材がそろっていた。加えて海上での事故は救援隊をもたらすはず。となれば、現在、危険なバクテリア・オーロラを詳しく調べ、情報を得る事が出来るのは海底基地だけ。早速バクテリアを採取すべく準備を進める面々だが、バクテリアにはまだ未知の力が宿っていた・・・。


3)感想
 本作「海のオーロラ」はまずもって全編3DCGにて製作されている点がセールスポイントになっていたようです。流れとしては同じくCR-GAGAプロジェクトの「VISITOR」と関連付けるのが宜しいかもしれません。勿論その第2段である「A・LI・CE」とも比すると、3DCGの変遷について考える題材になるでしょう。あるいは、人形的表現の3DCGであること、未来SFであること等から「ゼビウス・劇場版」と比較しても面白いでしょう。

 物語については、地中深く閉じ込められていた危険なバクテリアが海底資源掘削によって世界に蔓延してしうかも、という骨格部分がサスペンス(orアクション)SFの王道を往くかの如きアイデアなので、この部分を膨らましきれなかったのが残念至極という他ありません。第一、掘削施設の海上支援船にバクテリアが辿り着いた段階で、蔓延し始めてしてしまいそうという大きな問題点が。とはいえ骨格部分がしっかりしているからこそ、疑問符が付く部分が散見したり、全編お約束の構成でもそれなりに観れてしまうのでしょう。
 概ね、こいういった物語の作品は海外であれば実写特撮で製作される類のものですが、それが何故かアニメーションで表現されるという所になんというかどこぞの国の映画界の哀しい状況が端的に現れているように思えてなりません(注記01)

 画面の構成から本作「海のオーロラ」を観ると、「A・LI・CE」において試みられたキャラクターのフィギュア感を抑えた作風から、再び人形味の強い表現となっています。ただし、3DCGとして独自の表現を試みたと思しきキャラクター達は何故か手が不自然に大きく、やや不気味っぽい雰囲気を漂わせています。最も大きな疑問符が付くのはメカニック・デザインで、生物をモチーフとしたその造型は正直グロテスク、独自性とヘンテコは異なると思うのですが。
 これらを総じて今日的な感覚では例えレイトショー的公開であっても、劇場に掛けられたというのは、う〜ん、どうなのでしょうか。本作は2000年の作品ですが、1998年には海外で「アンツ」や「トイ・ストーリー」等が既にお目見えしていたので、当時にあっても比較されてしまうのは止む無しといった所でしょう。

 さて、本作「海のオーロラ」は製作に日本テレビが関わっていた事もあってか、3DCG以外は結構豪華なのではと感じる部分が多々あります。まず、声優陣。アニメーションの大御所的存在である古川登志夫、千葉繁、川端竜太、田中秀行、神谷明。この段階で既に唸ってしまいますが、本作では主役〜準主役に、いしだ壱成、奥菜恵、石田純一、 林原めぐみ、金掛かっていそうです。メディア的には親子競演というネタも正にテレビ局製作といった感じです(注記02)
 という訳で画面のアレさ加減を声の出演者さん達が頑張ってフォローしている訳ですが、当サイト的には本作の一番の鑑賞処は楽曲にあります。音楽担当、天野正道(注記03。オーケストレーションの楽曲は、画面のショボさを補って余りあるもの、特にオープニングはそのカット割りと相俟って、何やら海外のSFアクションものを想起させる程、本作出色のパートと言えるでしょう(注記04)
 あるいは、 オーケストレーションの楽曲と人形劇ということで、ITC作品風を目指したのでしょうか(注記05)。だとしたら、かなり哀しいものがあります。

 以上を鑑み、本作「海のオーロラ」は、CV担当の俳優陣が好きな御方、楽曲の天野正道を聴きたい向きはもとより、3DCGの発展史に興味のある向きにはお薦めできるでしょう。

4)必要ないと思いますが一応の注記
01)「リターナー」に溜飲をおろした向きも少なくないでしょう。
02)まぁ、拙サイト管理人としては、奥菜恵がCVあてているというだけでオッケーな訳ですが。「弟切草」での○○役もさる事ながら、「呪怨」での演技がその筋には印象に残っているかもしれません。2003年春には舞台「ドント・トラスト・オーバー・30’S」で幾多の公演を行うようです。
03)吹奏楽関連では既に名を馳せていらっしゃるそうですが、アニメ的にはOVA「ジャイアント・ロボ〜地球が静止する日〜」のオーケストレーション・アレンジなどが記憶に新しいところかもしれません。おしむらくは本作の楽曲の場合、ややホーン・セクションが前に出ているかなといった感があることで、このような構成が得意なのは理解できますけれどもここはやはりストリングス系の楽器がうねるような、あるいは粘る作品をお聴きしたいものです。なお、当記事記述時にては「ストラトス・フォー」も手掛けていらっしゃいます。また、 余談ですが「シックス・エンジェルス」の音楽も担当なさっています。でも印象に残りませんでした。m(_ _)m
04)興味深いのは、タイトル、スタッフの文字の演出が「映画版ファイナルファンタジー」と重なるか如き部分の見受けられることです。もっともこちらは2001年の作品です。
05)実際、「サンダーバード」のパーカーを想起させるキャラクターがいたりと、ちょっと気になるところではあります。

4)DVDパッケージ

130KB



記述:2003-05-08