「マイナ〜アニメ館」
マイナーなアニメの感想など。
(御注意!ネタバレ有です)
 
へヴィメタル (もしくは”ヘヴィ・メタル”)
年代: 1981年アメリカ
監督: レオナルド・モーゲル


1)はじめに

 アメリカの有名コミック誌「HEAVY METAL」の世界をアニメーション化した意欲作。悪の化身「ロックナー」を巡り繰り広げられる時空を越えた8つの物語からなるオムニバス。楽曲を当代の盟主達が提供した事でも有名で、今日でもカルト視されているようです。


2)物語

 漆黒の宇宙空間をスペース・シャトルが進む。機体下面(!)から射出されたクラシック・コルベットは無事、惑星上に着陸する。岡の上の一軒屋でドライバーを待っていたのは一人の少女。ドライバーは調査から帰った科学者であった。科学者が土産に持ってきたのは緑色に光る球体。だがカプセルが開かれるや否や球体の光は増し、科学者を一瞬にして溶かしてしまう。逃げる少女だったが球体は空中を漂い追い詰める。球体は悪の化身と名乗り、少女に自らを巡って繰り広げられる物語を語って聞かせる。
 何処かの異星で球体を発掘するも魔力によって滅ぼされてしまう者、 未来のニューヨークを舞台とする争奪戦。あるいは全くの異星で繰り広げられる球体の力を巡る冒険譚。死者を蘇らせ、純粋な心の持ち主をも惑わせてしまう強大な魔力を持った球体「ロックナー」は、だが何故少女に物語を聞かせるのか。
  ロックナーは、時空を超えて終わる事無く続いてきた、悪とそれを封じようとする者達との争いに決着を付けるべく少女の前に姿を表したのだった。ロックナーは勝利し、悪が栄えてしまうのか。ロックナーが迫る少女の秘密とは・・・。


3)感想

 逸品です。

 公開当時、東京の劇場ではあまりの不人気さに数週間(噂では2週間)で打ち切られてしまったそうです。幸い筆者は封切後直ちに劇場に向かいましたので、大画面で見る事が出来ました。また、原因は推し量る事が出来ませんが、ヴィデオの発売もかなり時間の経った1990年代中期であり、永い間幻の作品であり続けました。1981年といえば日本のアニメも勢いがあった頃で、海外作品に注目が集まる事が難しい時代であったかもしれません。近い時代のTVアニメ作品としては「戦闘メカ・ザブングル」があり、本作のパロディのキャラクターが出ています(グレタ・カラス)。
  なお、日本に先駆けて発売された海外版のヴィデオにはカットされたエピソード「NEVERWHERE LAND」が含まれていました。本編は人類の歴史を「悪」の面から捉えたおどろおどろしくも深遠な内容で、あまりにもストレートな描写に初見の時に驚いた記憶があります。かえすがえすも本編に含まれなかった事が残念です。このエピソードは、国内でDVDが発売された時にようやく収録され、広く目にする事が出来るようになりました。

 元々「HEAVY METAL」誌自体が、それまで小児向けであった漫画を大人の鑑賞に堪えうる水準にまで引き上げる事を目指していましたので、映画にもその精神が引き継がれています。スペース・オペラ、ファンタジーはもとより、アニメーションでは本格ホラーとして初出と見る向きもある話(B-17)など、どれをとってもきちんとした物語と映像、そして音楽で構成されています。

 映像的には、例えば特徴ある色彩で日本のコミック界に影響をあたえた「コーベン」の流れを汲む短編や、コミック・アーティストとして著名な「メビウス」のタッチで描かれた最終話、そのいずれもが”動く”事自体脅威的です。本作を見ると海外のアニメーションはどのコマで止めても一枚の絵画たらんとしている事が判ります。対して日本のアニメは”漫画のコマ的”で、止めた時に一枚の絵として成立しにくいものがみられ、海外のアニメーションとは異なる進化を遂げた事が理解できます。加えて本作では、模型等も積極的に利用しています。この事から、彼らのとってのアニメーションというものは、本来静的な事物に対して動きを与える表現であると考えられます。とするならば、主にセルから発展した日本の一連の作品群は”アニメ”、彼らのものはこういったやや狭い範疇で括る事の出来ない”アニメーション”として捉える事が出来るかもしれません。
 ですので、当時の日本のアニメ的な感覚で捉えようとすると理解の領域を超えてしまうので消化不良となった向きが多かったのでしょう。先に挙げたパロディのキャラクターあたりで限界だったのかもしれません。とても残念です。

 音楽では当代の大御所、あるいは人気ロック・バンドが曲を提供していたのが画期的でした。ハードロック、へヴィ・メタル系が多いのですが、テクノやAORからも協力を受けている所に選曲の妙があります。「ジャーニー」「グランドファンク・レイルロード」「チープ・トリック」、 「ブラック・サバス」「ブルー・オイスター・カルト」、「ディーヴォ」、「ドナルド・フェイゲン(スティーリー・ダンの主要メンバー)」、渋いところでは「スティーヴィー・ニックス」 、これだけ紹介しても全員ではありません。著名アーティストの手になる楽曲がアニメーションと見事に融合しているのですから感動です。そういえば当時海外ポップスを紹介してくれていた深夜TV番組「ベストヒット USA」でもクリップ的に一部分流した事がありました。
 そして、いま一つ大切なのは、映画音楽に欠かせないオーケストレーションの曲も使用されている点です。ポイントはファンタジーのエピソードで用いられている事で、特に最終話「タールナ」ではクライマックスに相応しく見事なまでに盛り上げてくれます。あるいは 「タールナ」の冒頭、主人公が翼竜に乗って飛行する様を追いかけつつ、オーケストレーションがバックに掛かるのはなんともいえない昂揚感をもたらしてくれ、本作でも出色のシーンといえるでしょう。音楽は大御所の「エルマー・バーンスタイン」(注記01)、どーりで、さすがのガッシリした音作りです。私見ですが、このオーケストレーションの楽曲という点では日本のアニメは未だに追いついていないと感じます。なんとか頑張っていたのが劇場版の「宇宙戦艦ヤマト」シリーズと、こちらは海外の作といえるかもしれませんが映画版「ファイナル・ファンタジー」でしょうか(比べる相手が悪いという感もありますが)。

 当サイトではレアであったり”アレ”であったりするアニメーションをはじめ、あまり人気のない作品を掲載している関係上、なかなか多くの方にお勧めするできるものを指し示しのが難しいのですが、本編は数少ない一見の価値がある映画です。

 本作は別格、お勧めです。


3)必要ないと思いますが一応の注記

01)「エルマー・バーンスタイン」、代表作は「十戒」「荒野の七人」など多数。アメリカ映画音楽界の大御所です。でも当サイト的には「狼男アメリカン」や「スペース・サタン」、はては「月のキャット・ウーマン」も氏の手になるという話を聞くにつけ嬉しいやらなにやら。尚、とても著名な指揮者のレナード・バーンスタインとは御縁はないそうです。


4)ビデオ・パッケージ

220KB

210KB


改定:2002-12-07