「マイナ〜アニメ館」
マイナーなアニメの感想など。
(御注意!ネタバレ有です)
 
ほしのこえ  
年代: 2002年日本
監督: 新海 誠


1)はじめに
 2002年初頭、発表されるや否やアニメ、映像関係に強い衝撃を与えた”個人製作”による作品。

※実は本作については既に多くが語られ、敢えて本サイトで”マイナーなアニメ”などと称して改めて御紹介するまでもないのですが、やはり画期的な一編であると言う事と、未見の向きには前向きにお勧め申し上げたいので取り上げます。


2)物語

 電車の中で、人気の無い街で、携帯電話でメールを打つ少女。だが、そのメールは相手に届くのか。なぜなら彼女は今。

 時間は遡る。学校から一緒に帰る少女「長峰美加子」と、僕「寺尾昇」。二人は同じ中学の3年生。部活も同じで進路について話しあったりする仲の良い友達。
  一見今と変わらないかのような、あるいは懐かしささえ覚える風景。だが、違っていたのは彼らの頭上を国連宇宙軍の戦艦が航行している事、そして時は2046年。
 火星上で発見された異星人の遺跡、がしかしどこからともなく現れた彼等の攻撃を受け調査隊は壊滅。その後異星人達は人類の目の前から姿を消してしまった。彼等は「タルシアン」と名付けられ、人類の脅威とみなされた。遺跡を調査し、知識を得た人類は、タルシアンの追跡を決定。その為の戦艦が美加子達の頭上を航行していたのだ。今度は人型汎用調査機「トレーサー」の編隊が飛行してゆく。そして今回の調査隊のメンバーは各所から募られていた。
 まるで他人事のように、でも興味があって長峰に調査隊の話をする昇。しかし、当の長峰自身がメンバーに選ばれていた。

 昇は普通に進学し、長峰は調査隊に加わり地球を発った。調査隊は順調に航行を進めてゆくが、それは次第に地球から遠ざかる事を意味した。長峰は昇にメールを送るが届くまでの時間は延びる一方。

  二人の気持はそれまでのように通じ合えるのか。 しかも調査隊はかつて地球人を攻撃してきた異星人を追跡しているのであった。もし調査隊の目前に異星人たちが現れたら・・・。


3)感想

 とても画期的な作品です。
 本作「ほしのこえ」は大枠で言えば音楽以外は総て一人の手によって完成された作品です。まずこの点で脅威と申し上げたいところです。

 物語は正統派SFで、鍵となる部分に携帯のメールを持ってきたところがポイントといえましょう。大枠で捉えてしまえば、遠距離恋愛ものとも表現できるわけですが、現実世界においても地球〜宇宙とまではゆかないまでも空間を隔たって心を通じ合わせようと努力している方々は多いはずで、共感を得る部分は多いのではないでしょうか。主人公が少女、少年ですので、あるいはジュビナイルと捉えられるかもしれません。

 映像では鮮やかな美術が出色です。何気ない風景の描写を積み重ね物語を紡いでゆきますが、切り取られた情景が美しく一コマ一コマが風景画のようである構成は、日本のアニメよりは海外のアニメーションの感覚に近いものがあるかもしれません。

 また、音楽がとても効果的に用いられています。サウンドトラックCDのライナー・ノートによれば監督より時間軸での細かい展開の要請がなされたそうです。音楽はその進行に合わせて物語や世界が展開してゆきますので、この点を理解して(あたりまえといえばそうですが)丁寧に用いれば映像との相乗効果がもたらされます。粗雑に扱えば楽曲の世界が破壊されてしまうので、映像との相乗効果が望めないばかりか、そのアラが目立ってしまいかねません。堂々と劇場で公開されている映像であっても、本作の如き丁寧さを持っていないものも散見しますので、ここは御見事でございました。
 音楽は天門、主題歌を唄うはLow、聴かせてくれます。

 さて、かように本作は”個人製作”という枠で語れない高水準の一編です。いわゆる”自主制作”といったものを観る時の視点ではなく、一般的な商業作品の時の眼差しで、ついつい語ってしまいます。翻って、ここまでの高みに至っていない”商業作品”が散見するのは、どうなんでしょう。

 かつて2001年の秋、東京・下北沢にある短編専門上映館「トリウッド」で行われたCGアニメーション上映会で予告編が掛けられ、とても驚いた記憶があります。 新しいOVAかしらん、とか。 それが個人製作のアニメーションであると知るのはもっと後になってからでした。2002年初頭、同じくトリウッドで上映され、記録的な動員数を確保したと伝えられます(その観客の一人は筆者)。後にDVDが発売、ラジオ・ドラマが放送され、サントラCD、ノベルと多方面に展開。地域によっては地上波放送も行われたようです。

  おそらくは、今後のベンチマークとして捉えられてゆく作品となるのではないでしょうか。そういった観点では「ほしのこえ以前以後」あるいは「ほしのこえ・インパクト」などと称してもいいかもしれません。次回作はもちろんの事、本編を観て触発されたクリエイターさん方もおられる筈、これからに期待です。


4)追記:「雲のむこう、約束の場所」パイロット・フィルムについて

 約一年半の歳月を経て、即ち「ほしのこえ・インパクト」に遡ること約1.5年、再び東京・下北沢にある短編専門上映館「トリウッド」で新海 誠の新作パイロット・フィルムが掛けられました。
 物語は既に各方面で取り上げられている事でしょうから、ここでは詳細は割愛致します。「ほしのこえ」「彼女と彼女の猫」の上映と併せてでしたので、その時のフライアーを参考として掲示させて頂きます。

 フィルムを観ての感想は、とても失礼な物言いになってしまうかもしれませんが、てだれた印象があります。
 やや気になったのは、提示されている物語の要素がやや多いかなといった事で、ここは氏に総ての要素を収束させる手腕が期待されるでしょう。
 画面構成は、新海氏の特徴である鮮やかな風景描写はそのままに、カメラ・アングル等にも効果的な演出を意図した部分が感じ取られ、見ていて不安ありません。飛行機の舞うシーンには空気の存在が感じられ、また短いカットですがカメラを人物の周囲で廻り込ませる映像は観ていてはっとさせられる美しさがあります。

 完成版に期待、です。


4)チラシ

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記述:2002-09-29
改定:2003-02-20