「マイナ〜アニメ館」
マイナーなアニメの感想など。
(御注意!ネタバレ有です)
 
INTERSTELLA 5555  
年代: 2003年フランス・日本合作
監督: 竹之内和久、西尾大介
時間: 67分


1)はじめに

 フランスのダンス・テクノ・ユニット「ダフト・パンク」と松本零士とのコラボレーションで出来上がったアニメーション映画。全編通して音声の台詞が一切無く、ダフト・パンクの音楽が響き渡る。ダフト・パンクのサウンドに惹かれる方々は勿論、松本零士のファンも楽しめる一本。



2)物語

 地球とは異なる何処かの惑星、住むのは青い肌を持った人々(注記01)。そのとある会場でコンサートは開かれていた。出演しているのはギター、キーボード、ドラム・パートの男性3人、ベースの女性一人、全員で4人のバンド。彼らが奏でるサウンド「ワン・モア・タイム」は惑星の到る所に配信され、若者達は勿論、老若男女に受け入れられていた。

 そこへ宇宙の彼方より現れる宇宙船。コンサートの中継に夢中になっている惑星宙域の監視員達は宇宙船の惑星への進入を許してしまう。地表近くへと辿り着いた宇宙船からは謎の兵士達が現れ、地表を急襲。何故かコンサート会場から逃げる途中のバンドのメンバーを捉えると意識を失わせ連行してしまった。
 一方、突然の侵入者達に掌握されていた惑星宙域の監視所では、現れた兵士達が撤収すると緊急信号を発信。受け取った一人の男はギターの形をした宇宙船を駆りバンドのメンバーを追って旅立っていった。

 バンドのメンバー達を捕らえた宇宙船が還り付いたのは地球。捕らえられた4人はファッション、肌の色、そして記憶までも謎の男に操作され、気鋭のバンド「ザ・クレッシェンドールズ」としてデビュー。すぐにも人気を得た彼らはトップへと登りつめるべくスター街道を疾走しだしたのだが。。。


3)感想
 まずはじめに。
 画一的ではなく、さまざまなアニメーション表現が試みられ、かつそれを視聴できる状態というのが製作者、観客にとって幸せな状態であると感じていますので、本編のような作品が現れるという事自体諸手を挙げて歓迎したい気持ちです。

 まず成立から。本作「INTERSTELLA 5555」は
フランスのダンス・テクノ・ユニット「ダフト・パンク」と松本零士とのコラボレーションによります。なんでもダフト・パンクのメンバーが松本零士の作品のファンで、ミュージック・クリップに是非にとの依頼を行ったとか(注記02)。フライヤーによればダフト・パンクのアルバム「ディスカバリー」からシングル・カットされた4本のヴィデオ・クリップ〜一連の話を形作る〜として発表されたそうです(注記03)
 そして今回完成したのはこれらの作品をを拡張し、アルバム「ディスカバリー」全14曲を網羅した一大ヴィデオ・クリップとも言えるでしょう(注記04)

 本作「INTERSTELLA 5555」の物語は謂わば音楽産業の影に蠢く怪しい存在を悪役に据え、スペース・オペラ・タッチで描いた娯楽作といえるでしょう。原作、脚本は海外の御仁です。総設定・デザインに松本零士。

 映像表現に於いて最も着目したいのは、全編通して音声の台詞が一切無い事で、また、字幕もありません。どうしても必要な場合は、映像内で必然的に現れる文字を用いるというこなれた手法、これならアニメやコミックの表現に慣れた方であれば問題なく物語は判る筈ですし(注記05)、また様々な土地で上映される際の言語対応もかなり楽ではないかと。勿論ダフト・パンクのサウンドが存分に愉しめるのはいうまでもありません。
 また、作画のことは良く判りませんが、安心して愉しむ事が出来ましたから、きちんとしたものであったのだろうと思います。

 本作「INTERSTELLA 5555」の上映は渋谷のミニ・シアターにて、レイトショー(一部モーニング・ショー)でした。なかなかな選択で、観客層も如何にもアニメ好きそう、といった御仁はもとより、ダフト・パンクが好きで、といった極めて当世風のお若いカップルも結構みえていました。このあたり、渋谷での上映といった塩梅の妙を感じます(注記06)。夏休み、といったこともあるのでしょうけれど、本作「INTERSTELLA 5555」を劇場にかけてくださった関係者の方々にあつく御礼申し上げたい気持ちで一杯です。

 本作「INTERSTELLA 5555」はダフト・パンクの音楽に興味ある方々、松本零士のファンの皆様は勿論の事、ミュージック・クリップの制作に携わる御歴々、プロ、アマチュア問わずアニメーション作家さん達に是非御覧戴きたい作品です。お奨め。

4)必要ないと思いますが付記

01)松本零士の作品で青い肌の異星人とくれば「宇宙戦艦ヤマト」のガミラス星人を思い起こしますが今回は異なる〜のでしょう、多分。
02)この辺り、日本のアニメが好きな海外の方からの依頼による作品といえば、はやり「アニマトリックス」が想い起こされます。まぁ、マトリックスの監督の御仁は日本のアニメの影響を明言しておられましたし。勿論冷静に考えれば自作の興行的な部分での拡張を狙ったところもあるのでしょうけれど、ここでは単純に、”日本のアニメには世話になったし”的に恩返しと思いたい所です。そういえば、日本での劇場公開も同じ2003年でした。
03)そういえば、まずはCDショップにて陳列されていたジャケットを観て驚いた記憶があります。テクノ・ポップ系ですと、アニメやコミック調のジャケットというのは珍しい訳ではないのですが、それでも松本零士そのものの絵が並んでいたのには、おぉ、と思ったものです。
04)単なる楽曲紹介としてのヴィデオ・クリップが、物語や映像を重視し短編映画のような造りへと変貌していったのは1980年代前半あたりでしょうか。小林克也のVJによるTV番組「ベストヒット USA」やピーター・バラカンの「ポッパーズ MTV」といった興味深い番組が多数あった頃です。尚、この時の画期的な作品としてマイケル・ジャクソンの「スリラー」があります。此方は最早短編映画として完成されており、その影響は未だに本作をパロディのネタにする事がある位です(映画版「FINAL FANTASY」の豪華版DVDの特典ディスクに収録)。
05)本作とは直接関係ありませんが、少なくとも拙サイト管理人が観た範囲ですと、海外の短編3DCG作品あたりに台詞が無くとも物語が読み取れるといったものが少なくないように感じます。尤もそういった優れた作品だからこそ、日本でも紹介されるのでしょう。残念な事に、近年注目をあびている日本のアマチュア3DCGはこの辺りの表現が弱いのが多いように感じます。こういった事からも、映像で説明するというのはとても難しいことなのだろうなぁ、と御推察致しますです。
06) 実際に、ごく普通の方と思しきカップルの女性のお客さんが「DVD(売店で)売ってたら欲しいな〜」と仰っていましたしねぇ、ありがたい事です。


記述:2002-08-20