「懐かシネマンガ」
懐かしいアニメや漫画や映画やらの感想など。
(御注意!ネタバレ有です)
 
アリサ!  
作者: 平野 仁
時代: 1979〜
発行他:

秋田書店(週刊少年チャンピオン)



1)はじめに
 不思議な運命に導かれた主人公「アリサ」が、彼女を執拗に付け狙う謎の組織の魔の手を逃れつつ、パラレルワールドを放浪する、SFアクション。週刊少年チャンピオン連載。単行本は全四巻。やや劇画的な画面、銃に対する緻密な描写。当時の少年向け週刊誌に乗る作品としては異色だったかもしれません。残念な話ですが、エンディングからして打ち切りの可能性があります。


2)物語

第一巻)
【平凡な女子高生「アリサ」、部活(空手?)でも男子部員に相手に余裕で立ち会える活発な女の子。16歳の誕生日を迎える晩、両親はアリサの家に侵 入した黒ずくめの男たちに殺されてしまった。逃げるアリサは、日頃親しくしている近所のおじさんに助けられる。逃げる中、おじさんの口から出たのは、意外な話。パラレル・ワールド実際に存在し、アリサはAレベル・ワールドの第一 政官アウラの娘、多重世界を統治する能力を持つ血筋の唯一の人間であった。 両親を殺害したのは執政官とその組織を滅ぼした征服者たるソロンの追っ手。 彼らは、アリサに備わるある年齢に達すると目覚める特殊な能力を恐れ、襲っ てきたのだ。そこで護衛官として、助けたのだ、と。 追っ手の激しい追撃に、辛くもアリサは独り異空間へと脱出なるが・・・】
 第一巻の見所は(個人的で趣味が出て申し訳ありませんが)、中盤の射撃の特訓場面でしょう。アリサはモーゼルM712を使用しますが、この銃はセミオート・フルオートの切り替えが可能なマシンピストルです。その機能と、設計年次の古さから同拳銃は大型であり、少女・アリサが扱うには少々厄介なものでした(え、マイアミ★ガンズで桜小路妖が使っていると。あのお方は武術にも長けてるみたいですしねぇ)。多重世界を放浪し始めて最初にアリサを助けてくれた謎のおじさんは、彼女にこの銃を使いこなせるように、訓練を施します。また、同銃は激鉄の形が独特である為滑りやすく、これを解決する術を教えます。連載時には激鉄を改造するシーンがあった記憶がありますが、単行本では収録されていません。その回以降激鉄の形が異なっているカットが散見します。なお、この「おじさん」はかつて満州で馬賊であった事をアリサに語ります。現実世界でも、当時モーゼルM712は実際に良く馬賊に用いられたそうで、連射機能とその反動を利用して銃を横に寝かせて弾幕を張る「扇撃ち」は大変威力があったそうです。
 また、第一巻では現実社会とあまり変わらない多元世界を移動しています。その途中に出会う人々と交流を軸に物語は進行してゆきます。飛び込んだ世界では、虐げられているあるいは苦労している人にアリサが手助けをし、解決するという基本的な筋が見えます。

第二巻)
【アリサをなかなか捕まえられない謎の組織。その長たるソロンは「ハーディー・ベスタ―」を派遣した。厳しくなる追跡。辛くも追っ手から逃れたアリサが浜辺で出会った青年「竜也」。彼もまた、父親が不慮の事故で突然死亡した直後に謎の黒づくめの男たちに襲われていた。亡き父の言葉に従い、ヨットにて離島にある母の墓へ向かう竜也に同行するアリサ。嵐の去ったあと、アリサの肩にあるアザを見て驚く竜也。いったい島には何が待っているのか・・・】
 第二巻では、ついにアリサを追う者たち、そしてアリサ自身の謎が明らかにされます。多重宇宙を混乱なく互いに平和にあるべしと監視を続けていた者達の存在。彼らを滅ぼしたのは多重宇宙を支配し統治しようと企む集団でした。 しかし、多重宇宙の救世主出現の予言に表される少女、彼女は優れた超能力と肩に目印となるアザを持つと伝えられ、それはアリサにあるものと同じでした。アリサは追っ手の目を逃れる為、未だ調査のなされていない宇宙へと送られていたのでした。未来の希望として。
 また、本巻ではだんだんと異世界濃度が上がってきます。物語の進行に勢いがついてきたようです。

第三巻)
【アリサと竜也がたどり着いたのは、この世界に落ち込んでしまった旧ナチスの部隊が統治する恐怖の土地だった。抑圧されていた土地の者達は、アリサ、竜也と共に城に乗り込み、辛くも彼らを解放する事に成功する。奇しくも多重宇宙を行き来する空間移送機を発見するが、敵司令官の最期の抵抗により二人は別々のタイミングで異なる世界へと飛ばされてしまう。アリサが新たに訪れたのは、一見、この現実世界と変わらない見た目をしていた。だが、実は裏社会がその勢力を表にまで及ぼそうとしている恐ろしい世界だった・・・】
 この巻の後半で、アリサの超能力の一部が漸く目覚めます。身体機能の劇的な向上ですが、一方それまでのあどけなさを残した”少女”であった外見が成長します。男で言えば、少年→青年への変化で、それまでの中学生高学年的雰囲気が高校〜大学生位まで変わっています。また、今までトレードマークとなっていたモーゼルM712をこの巻でついに失ってしまいます。以降、悪役の銃を奪って使用してゆきます。加えて、多重宇宙の支配を狙う組織がどのようにしてそれを行っているのか、其の片鱗が登場します。総じて軽めだった雰囲気をややハードよりに振った形跡が見られ、読者層を変えようとしたのかもしれません。

第四巻・完結)
【ひとまずはその世界の支配を狙う集団を打ち破る事に成功したアリサ。だが再びアリサは謎の集団に捉えられる。アリサの目の前に現れたのは、宿敵ソロンの部下、ハーディー・ベスタ―。間一髪、脱出したアリサはまるで開拓時代のアメリカ西部のような世界へと流れ着いた。幾多の障害を乗り越え、彼女と同じ姿の女性を探している老人のいる街へとアリサは旅立っていった。了。】
 完結。アリサはその後どうなったのか。この現実世界でそれを知る術はありません。もしかしたらどこかの異世界で大ヒットとなっていたりしたのかもしれません。
  邪推ですが路線変更も上手くゆかなかったのでしょうか。本巻約1/3あたりで既に話の勢いが無くなってしまっています。


3)感想

 今見ても結構読み応えがあります。多元宇宙ものなので、ある程度の自由はあるのですが、比較的現実社会から外れていない世界が多く、物語構成の狙いを感じます。アリサに助けられる異世界の人たちは、総じて社会的に虐げられた、弱い存在であるのも特徴でしたが、その辺りはやや少年誌には重い内容だったかもしれません。もっともその分、今日でも十分鑑賞に堪えるのでしょう。
 銃が結構正確に描かれているのも通好みで、大抵は型式を指摘できる程です。加えて銃の取り扱いの描写が細かく、例えば全弾打ち尽くした時の自動拳銃のスライド・ストップがアクション・シーンに上手く取り入れられています。

 さて、じ・つ・は、もう一つ、本作にはオマケがあります。いや、オマケといっても興味ない方にはなんでもありませんが。
アクション前提の為の必然とは言え、主人公アリサのコスチュームが ボディラインにタイト・フィットであり、加えてサービス・カットがしばしば登場する事です。まぁ、コスチュームは別にして、いくら物語の流れでそうなるとはいえどうなんでしょうね、当時としては良かったのでしょうか。

 本作「アリサ!」はジュビナイルSFと呼ぶには少々難があるかもしれませんが、キャラクターの作りや、アクションを積極的に取り入れていたことなど、意外と今日的な作品であったように感じます。多元宇宙ものの傑作、あるいはジュビナイルSFの名作として、NHK少年ドラマシリーズの「なぞの転校生」があります。こちらは1998年に主人公を女性に変更して(主演:新山千春)映画でリメイクされており、今日に於いてなお楽しむ事が出来ます(筆者は劇場にて鑑賞)。そういえば、近年DVD販売やメディア・ミックス前提のアイドルさん起用のSFドラマも増えています。
 ここは一つ、「アリサ!」も如何ですか。
 結構、面白いものが出来そうですよ。



記述:2002-09-10