「懐かシネマンガ」
懐かしいアニメや漫画や映画やらの感想など。
(御注意!ネタバレ有です)
 
BLACK OUT  
原題:BLACK OUT
時代: 1995年日本・テレビ朝日系放映
時間:

30分×25回/12話



1)はじめに
 21世紀を目前に控えた1999年。加速する一方である科学技術の進歩は時として善良な心を欠いた者の手に渡り、悲しい事件が引き起こされていた。それら科学技術を駆使した事件を操作する為に警視庁内に組織された「科学捜査チーム」のメンバー二人の活躍を描くTVドラマ。原作は渡辺浩弐の「1999年のゲームキッズ」、「週刊ファミコン通信」に連載されていた短編小説群。


2)物語

 ”1999年すでに・・・”

 科学技術の進歩は目覚しく、その勢いは加速さえしていた。かつては夢物語であった事が突如実体を伴って現れる時代。進歩した科学技術”ハイテク”は必ずしも人々に恩恵のみをもたらしたのではなかった。頻発するハイテク犯罪。だが、現行法下では新しい部署を創設するのに長い時間が掛かる事が懸念された。これに対処すべく警視庁が採ったのは、軽快に動き回れる特殊捜査チームを設立する事。 その名は「科学捜査部」。一人目は、米国でプロファイリングを研修していた女性捜査官「中園祥子」。彼女は急遽隠密裏に帰国を命じられていた。方や西北大学理工学部の講師、専門は応用物理の「華屋 祟一」、ハイテクに関する広範な知識をかわれ嘱託としての参加。科学捜査部のメンバーは以上の二人のみ。そして二人に協力する潤館大学法医学監察医の「沖野真由美」、時に影となって情報収集・解析などのアシストを行う天才ハッカーの「小林少年」。この四人が科学技術を悪用する者達に立ち向かってゆく。

◆第1話・Futurity 1 「DNA」◆
 若干二十歳で有名コンクールを制した気鋭の天才ピアニスト、だがある日のコンサートは盛況ながらも精細さを欠く演奏しか出来なかった。同じ頃、とある雑木林で発見された謎の死体。全裸でしかも極度の凍傷を負っていた。いったいどのような事件に巻き込まれたのか。しかも骨格から復元した遺体の顔はピアニストに瓜二つだった。

◆第2話・Futurity 2 「プラズマ」◆
 とある街中の大きなスクランブル交差点。信号が青になり、駆け出した青年は突如炎に包まれ一瞬にして炭化、両足首をだけを残し都会の雑踏の中に吹き消されてしまった。これは自然発火現象なのか。だが続けざまに都内に頻発する謎の発火事件。華屋は”ある兵器”の可能性を感じ捜査を開始するが。

◆第3話・Futurity 3 「ウイルス」◆
  ある建設会社のコンピューターが突如ウィルスに襲われた。しかも部屋の中には不気味に光る何者かが存在し、様子を覗った警備員に何かを吹きかけた。警備員はその後吸い込んだ物によって死亡してしまう。新手のコンピューター・ウィルスの出現。しかしどのようなものなのかは天才ハッカーの小林をしても皆目見当がつかなかった。

◆第4話・Futurity 4 「ホログラフ」◆
 とある独り暮らしの男性が自殺した。だが食卓にはバースディ・ケーキといない筈の加えて2人分の食器も用意されていた。失った家族への想いに耐えかねての行為か。部屋にある仕掛けに気付く華屋。その機械にはホログラフィを用いた3D・バーチャル・アイドルのプロモーションを行っている会社のマークがついていた。

◆第5話・Futurity 5 「CALL」◆
 大学の期末で忙しい華屋のもとへ中園がやってきた。心臓の急激な停止と、頭蓋骨内に過度の衝撃を加えたれた跡、そして鼓膜の破裂。いったい何が被害者を襲ったのか。華屋は多忙を理由に積極的な助力は固辞するものの、やがて中園のペースに引き込まれてゆく。

◆第6話・Futurity 6 「毒」◆
 夜の大学の実験室、蝿の孵化を見守る白衣の女生徒。だが翌日には彼女は遺体となって発見された。全身が極度にうっ血した異様な死体。法医学者の沖野は何か未知の毒物によるのではないかとの結論を得るが、特定は出来ない。彼女を襲ったのは何なのか。

◆第7話・Futurity 7 「パラサイト」◆
 東京湾岸で発見された極度に痛んだ遺体は腐乱が激しく石灰質の膜のような物に覆われていた。最近発生した水難事故は何れも人口さんご礁が目玉の新手のリゾート・ホテルの傍で起きていた。人口さんご礁は沖縄のとある研究所が開発した物であった。時を同じくして偶然にも学会に出席する為沖縄を訪れている華屋。華屋は追って飛んできた中園と共に研究所に調査に向かう。その頃ネット上では沖縄で伝説の怪異「キジムナー」が現れていると噂になっていた。

◆第8話・Futurity 8 「インストール」◆
 満月の夜、道無き雑木林を一心不乱に行進する少年達。翌日彼等は全身傷だらけの状態で発見された。生徒達自ら企画した野外観察授業の途中、担任が目を離した僅かの隙に何処ともなく姿が見えなくなってしまっていたという。生徒たちが通っていたのは高い進学率で父兄に人気のある有名校。調査に向かう二人だったが学校周辺に不思議なアンテナがあるのを発見する。

◆第9話・Futurity 9 「SLEEP」◆
 とあるオフィス・ビルで起きた極平凡なサラリーマンによる不可思議な殺人事件。現場を多数の同僚たちが目撃しているのだが、犯人にはその時の記憶が全く無いという。しかも精神鑑定にも異常が見られない。唯一彼が多くの人達と違っていたのは、夢の内容を自在に変える道具を身に付けていた事。睡眠中も夢の中で仕事を行う事で効率を上げるその装置は会社自体が推奨して身に付けているものだった。

◆第10話・Futurity 10 「LIFE」◆
 小林はネット電話である少年と会話していた。彼はもうじき事件が起こると予言する。そんな頃、ある殺人事件が起こる。大学教授の撲殺。だが問題は犯行に用いられた凶器は金属の冷凍カプセル。中身は冷凍保存された受精卵、遺伝子の一部が殺害された教授と一致した。

◆第11話・Futurity 11 「selfishness」◆
 一旦は惨敗したものの再びリングへと戻ってきたベテラン・ボクサー、相手は躍進中の若手。誰もが若手の為の慣らしであると悲痛な面持ちで試合を見守る中、ブランクと年齢を感じさせない実力を発揮しKO勝するベテラン。一方、とある河川敷では不法投棄された大量の注射器が発見された。中身は人成長ホルモン。人成長ホルモンを不法に製造、頒布している者がいる。調査を進める二人だったが。

◆第12話・Futurity 12 「BLACK OUT」◆
 そして未来。遺伝子による人の性向・能力の研究は極限にまで達し、遂に官憲は将来犯行に手を染めると予測される者を監視するようになる。時代は遡る。遺伝子による犯行予測の調査がはじまった頃、華屋は科学者として理解を示した。しかしどうしても人として納得できない中園。二人の見解の相違は埋められない。新たに疑惑が浮かんだ人物の研究室へ一人で向かう中園。だが、その研究室から漏れている放射線の量は尋常では考えられないほど大量だった。


3)感想

 ”1999年すでに・・・”

 この魅惑的なフレーズで紐解かれる未来の数々。1999年を遡る事4年、本TVドラマ「BLACK OUT」はそんな未来世界をブラウン管を通じて垣間見せてくれました。

 本作を語る場合、まず「1999」という数字から話さなければなりません。30歳を超える世代、即ち昭和40年(1965年)中盤あたりまでの世代にとって21世紀というのは到来する事が無いほど遠くに感じられた未来として存在していました。
 そしてその直前の1999年は
頭を押さえつけられ将来への成長を封じ込められたかのような奇妙な圧迫感のある年でした。一方で何かその空気を突き破る物があるのではないかといった漠とした希望もありました。 2000年を迎えた時の大騒ぎはこれらの目に見えない圧力から開放された発露とも捉えられるでしょう(正確には21世紀は2001年からですので実際は千年紀という意味合いの方が強いのかもしれません)。
  ITCによる傑作スペースオペラのTVシリーズ「スペース1999」は本作のはるか以前に製作されていますが、その数字の持つ特殊な意味合いを上手く捉えていると題名と言えるでしょう。今日そういった印象は既に過去の記憶として押しやられていますが、時代の空気という物が如何なる力を持つかを知る一つの手掛かりとして忘れる事は出来ないのではないでしょうか。

 本作「BLACK OUT」は原作においては「根も葉もない物語にはしない」という狙いがあったそうです(書籍あとがきより)。本来SFというのは今ある科学から推し量って将来の予測される姿を描きだすものですから、今日ハードSFと称されるものこそ、その大本に近い存在と言えるでしょう。とすれば本作は正にSFです。ギリギリと言えなくもない物語もありますが、反対に放送された当時に起こっていても全く不思議ではない事件も描かれていました。
 個々に内容を吟味すると、遺伝子や生命科学にまつわる「バイオテクノロジー」関連の物語が散見します。これは当時遺伝子の研究が急速に進んだ事と無関係とはいえないでしょう。また、生命工学や特にヒトの遺伝子については、 人間そのものの存在意義や社会との関わりといった根源的な問題へ向けておのずと焦点が合ってしまうので、軽はずみに扱えるものではありませんが、大きなテーマとして挑むに値するものである事はいうまでもありません。
 特に人間へバイオテクノロジーを用いた物語では安易に扱えない内容でもあり、技術と扱う者、そして結果生まれるモノと接する人々に対して冷徹なまでの眼差しが向けられ、問題提起がなされます。この点では第11話・Futurity 11 「selfishness」が最も重いテーマを扱っています。健康とは、ヒトは何もって幸せとするのか、人生の目的とは。それらに対して科学は何を提示できるのか、社会は、法は。
 脱線しますが、”医”に携わろうと志す者が最初に出逢うのは”ヒポクラテスの誓い”と呼ばれる宣言だそうです。これから学ぼうとする技は如何なるものか、どのようにして用いるべきか、あるいはどのような目的、時にその力を振るわないか。それらをこの宣言を元に心に刻み込むのだとか(医学部に在籍していたわけではありませんので真偽の程は判りませんが)。広く知られている宣言ではないかもしれませんが、これを目にした後で本作の物語を観ると、より考えさせられる点が多くなります。
 総ての物語がハッピーエンドで終わらずに、いうなれば”暗い”落ちとなっています。これは安易なモノの見方への警鐘とも採れ作品世界に深みを与えています。逆にいえば純エンターテイメントとしては相応しくないかもしれません。ですが、お気楽な話だけではSFの持つ可能性を狭めてしまいます。
 本作は敢えて難しいテーマに切り込んだ意欲作といえるでしょう。

 物語は科学捜査部のメンバーである「華屋 祟一」椎名桔平、アメリカ帰りのプロファイリングの専門家「中園祥子」山本未来を中心に腕利き検察医「沖野真由美」高島礼子、コンピューターの達人・天才ハッカー「小林少年」大地らが参加して進んで行きます。当時は「X-FILE」が人気を博していたので男女ペアの捜査官という設定の類似性が喧伝されたようですが、この点”だけ”を取り出せば確かにそうとも言えるでしょう。
 科学の力を信じ、常識や固定観念に捉われない華屋、方や捜査官として現実を冷静に見据える中園の人物の対比は判り易く、物語世界にすんなりと入り込めます。演じる椎名桔平、山本未来もこの点は意識していたようで、ある程度大袈裟とも感じる芝居ではありますがキャラクターがたっているので、魅力を感じればそこからも楽しめます。また、御二人とも本作は楽しみながら取り組んでいたような雰囲気が漂いうので結果重い世界観の中の一服の清涼剤となっています。
 脇を固める高島礼子は大ブレイク直前の登場ですが、(悪い意味ではなく)アクの強い検察医を好演しています。加えて小林少年役の大地は天才ハッカーという設定を、生活観の希薄な無機的な人物として特徴をもって描ききっています。

 画面で言えばやや残念なのが特撮で、予算のアオリをもろに受けてしまったのかもしれません。もっとも本作は特撮そのものをウリにしているのではなく、あくまでも物語世界を描くための手段ですから、この点だけを指摘して悦にいるというのは野暮というものかもしれません。なお、特撮番組としての関連からすると、科学技術が用いられた事件の捜査劇、そして何よりも多くの問題提起を行っているという点で「怪奇大作戦」に最も近く、後継といえるのではないでしょうか。方や「ウルトラQ」は主人公が新聞記者で、ある種怪獣モノの側面が、「緊急指令10-4 10-10」は民間の有志の団体”電波特捜隊”の活躍する、やはり時たま不可思議な生物が登場したりする作品であった印象があります(でも両方とも筆者は好き)。

 本作は放送終了後、株式会社アミューズビデオから全6巻テープで、サウンドトラックは株式会社ヒートウェーブからCDで販売されました。

 1999年を経た今日、改めて過ぎ去った時代を振り返り、本作を見直してみるのも宜しいのではないでしょうか。


記述:2002-09-20