「懐かシネマンガ」
懐かしいアニメや漫画や映画やらの感想など。
(御注意!ネタバレ有です)
 
マーズ  
作者 横山 光輝
時代: 1976〜
発行他: 秋田書店(週刊少年チャンピオン)


1)はじめに
 地球人の攻撃性を恐れた異星人によって作られ、人類を監視し、いざとなれば惑星ごと破壊すべく指示を受けていた少年「マーズ」が命令に反抗、任務遂行の為同じく各地に派遣されていた異星人達を相手に仕手のロボットなどと共に闘いあうSF。
 映画化もされた人気TVアニメ「六神合体ゴッドマーズ」の(一応)原作。後に本作に忠実な物語を目指したOVAが製作されたが、こちらは完結したかどうか。


2)物語

第一巻)
【日本近海で突如噴火、隆起して島を形作った海底火山。調査機は島の岸に全裸の少年を発見する。救助されるも何も話さない少年。検査を受けると少年の体は明らかに人間ではない事が判った。方やニューヨーク。とあるビルの一室に集まった黒尽くめの男六人は新島で発見された少年を報じる新聞の記事を見て驚愕していた「彼はマーズなのか」。
 少年は容態を見守る為医師の自宅へと招かれていた。そこへ訪れるニューヨークに集まった男の内の一人。男は少年を外へと連れ出す。二人の拳は岩をも砕き、跳躍すれば空高く舞い上がる事もできた。少年は男が探していた「マーズ」その人であったが一切の記憶はなかった。
  二人はマーズが発見された新島へ移動、海底で目覚めた巨大な人型ロボットを前にする。早速ロボットを発見し攻撃する防衛艦。男達とマーズは遥か大昔に地球を訪れた異星人によって造られた人造人間であった。異星人たちは広く宇宙を探索していたがその経験からして、地球人たちの攻撃性、残虐性に 驚き、恐れをなしていた。人類はいまだ文明も発達していない段階であったが、いずれは科学技術を身に付け、その恐ろしい性向そのままに宇宙へと侵略を進てゆくだろうと予測。異星人たちは人類が宇宙の脅威にならないように、科学が発達した段階で滅ぼす事が出来るよう、男たちとマーズを造り残していった。また、異星人たちはその為の兵器も準備していた。彼等全員に一体ずつ、おのおの大陸を滅ぼし尽くすまでの性能をもったロボットを用意していた。マーズに与えられたロボット「ガイアー」はその中でも抜きん出た攻撃力を持っており、一体だけで地球を爆破できる力を秘めていた。
 遂にはロボットは撃破されてしまい人類は危険な水準にまで進化していたことを示してしまった。だが納得できないマーズは地球爆破の命令を10日間待ってくれと言う。男は不承不承引き下がるが・・・。】
 一巻では物語の大本が語られます。地球に訪れた未曾有の危機、ですがその全貌はまだ語られません。そして異星人の残した男によって人類が如何なる存在であるかとうとうと語られます。本作が重い内容である事が明らかになります。

第二巻)
【マーズによる地球爆破の命は下されなかった。男たちは任務遂行の為、おのおのマーズ抹殺を目指し活動を開始する。
 東京では春に雪が降るという異常気象が続いていた。一方、富士山測候所では猛烈な吹雪の中、ぴたりと動かない気球が現れ所員達は困惑してた。そんな中、謎のロボットが現れる・・・。】
 主に敵ロボットとの戦闘が繰り広げられます。なお、敵ロボットが実際に姿を現すまでの描写が比較的長いエジプトでの話は、じわじわと迫る演出がなされ、かなり盛り上がります。実際第二巻ではほとんど姿を現しません。

第三巻)
【エジプトのスフィンクス、それは異星人の残したロボットだった。鉄をも溶かす高熱を発するスフィンクスを前にエジプトは焦土と化していた。作戦が功を奏しスフィンクスを打ち破るマーズ。
 一方、異星人の手によってマーズが残されていた場所に何らかの手掛かりがあるかもしれないと調査を開始する防衛軍。単身上陸したマーズの発見者、新聞記者の「岩倉」はマーズの部屋に入る事に成功するが再噴火に巻き込まれ取り残されてしまう。異星人の残した機械を前に孤軍奮闘する岩倉。
 その頃、マーズは目の前に現れた第三のロボットの攻撃を避けるべく踏み込んだとある山中で広大な地底湖へと迷い込んでいた・・・。】
 三巻も敵ロボットとの闘いが主になっています。敵ロボットのデザインや攻撃のパターンなどがとても個性的ですので、その点でも楽しめます。

第四巻)
【幾多の闘いで傷ついたマーズ。彼の肉体を回復させるには、異星人の残した培養液に浸るしかなかった。マーズは敵ロボットの攻撃を避けながら、新島へたどり着く事は出来るのか。しかし既に男たちは異星人によってマーズが残されていた部屋を破壊すべく、新島へと向かっていた・・・。】
 第四巻からクライマックスへかけて物語が一気に展開します。敵ロボットの秘密を知り、独自の対応を試みる防衛隊など人類側の動きも活発になってきます。そして攻撃にさらされ絶望的な状況で次第に本性を現してゆく人間。

第五巻)
【マーズを攻撃してきた男たちのロボットは遂に最後の一体となっていた。だが、新島で異星人の残した記録を解読した岩倉のメモから恐るべき事が判る。マーズが命令を下すまでもなく、男たちの六体のロボットが総て破壊されても、ガイアーによって地球は破壊されてしまうという。これは異星人達の残した人類抹消の為の万全の策であった。マーズには、人類には打つ手があるのか・・・。】
 最後まで予断を許さない展開は圧巻です。そして戦慄のラスト。これはいくらなんでも書けません。ただし、この一点において本作は単なる”〜風”ではなく、SFであるといえるでしょう。是非、全作通しで読んで頂きたいものです。


3)感想

 冒頭述べましたが、映画かもされたヒットTV番組「六神合体ゴッドマーズ」(注記01)の原作です。ですが設定を引用しているだけで全くの別物語です。それがどうこうというものではありません。後に原作に忠実な物語を狙ってOVAが製作されましたが、第一巻が出ただけで完結したかどうかは定かではありません。

 本作の魅力はまずもってその物語です。人類の攻撃性に驚いた異星人が地球破壊の為に残した人造人間。彼が何らかの手違いによって命令を実行せず、仲間に攻撃されるという構成はとても興味深い物です。そこではあくまで人間は傍観者としてしか存在できず、歯がゆい思いをする向きも多いのではないでしょうか。このあたりのフラストレーションは物語後半の四巻以降で一気に噴出しますので、巧みな演出といえましょう。
 そしてなにより物語の根底に流れる人間に対する厳しい眼差しが本作を格調高い作品へと押し上げています。人間が持つ攻撃性、残虐性。これらは人類の最も顕著な特徴なのか、あるいはそうではないのか。本作における作者の回答は物語の最後に提示されます。この鋭い提示ををもってして、本作は凡百のロボット・バトル漫画やSF風作品群とは異なる物語となっているのではないでしょうか。

 方やロボット・バトルものとして捕らえれば、 名メカ・デザイナーたる氏の感性の輝きがとても眩しいです。味方となるガイアーはもちろんの事、序盤から登場する敵ロボット達も個性豊かでかつ魅力に溢れています。敵メカが魅力的でないとないとならないのは、言うなれば物語で悪役がカッコ良くないとそれに対するヒーローが盛り立たないのと一緒で、決してなおざりに出来ない点です。本作はこの面でも優れていると感じます。

 全五巻という長さをまったくダレることなく緊張感とリズムをもって描ききった本作、その冷徹な作者の眼差し、何れをとっても文章による作品と比してなんらひける所はありません。

メカ好きには勿論ですが、純SF愛好家にこそよんで頂きたい一編です。


4)必要ないと思いますが一応の注記

01)TVアニメ「六神合体ゴッドマーズ」は地球を侵略してくるギシン星の皇帝ズールによる軍団との闘いを描いた作品で、1980年代初頭に放映されました。毎回異なるデザインの敵側ヤラレ・メカが登場する点でいわゆるロボットものの王道を継承しています。
 原作との関わりでいえば、主人公「タケル(=マーズ)」が地球を破壊する為に送り込まれたという設定はほぼ一緒ですが他は全く別物です。当時は(今も?)登場する美形キャラクターが女性に人気でそれはもう大変なものでした。あるキャラクターが物語上死亡するという事が判るといろいろあったそうで、遂には葬式が執り行われました。当時の雑誌にはその折の記事が載っていたりします。
  ということでそっち系の話ばかりが着目されがちなアニメですが、ロボットものとしてはバトルよりは物語重視であった事なども含め幅広い層に受け入れられた作品として捉える事が出来るでしょう(ちなみに筆者も好きでした。ただし、いわゆる毎回登場するヤラレ・メカと女性キャラ)。なお、主人公の操るロボットだけでなく敵方ヤラレ・メカもプラモデル化され今日でもたまに店頭で見かける事があります。



記述:2002-09-20