「懐かシネマンガ」
懐かしいアニメや漫画や映画やらの感想など。
(御注意!ネタバレ有です)
 
なぞの転校生  
年代: 1998年日本
監督: 小中 和哉
時間: 95分


1)はじめに
 NHKの1970年代、少年ドラマシリーズの名作にして眉村卓・原作の「なぞの転校生」のリメイク。時代に併せ主役を少年から少女へと変更、演じるは新山千春と佐藤康恵。
 ジュビナイルの今日的解釈による佳作。


2)物語

 一人たたずむ少女。彼女は何を見つめているのか。

 一見、気の合う友達と楽しく過ごしているかのような女子高生「翠」。彼女は心から打解けているのではなく、友達への冷ややかな眼差しを抑えられず、その二面性を自ら認識していた。
 ある日、翠のクラスに「真祐未」が転校してきた。彼女は最初の挨拶で「世界が滅びなければそれでいい」と言い周囲を唖然とさせる。そんな彼女は物理の授業で高度な理論についての質問に難なく答える秀才であった。
 翠は採集してきた花を図書室の本に挟み込み押し花へとする密かな趣味が合った。 今日も翠は本に閉じ込めた花をひとつずつ確認する。しかし、その中の一冊を真祐未が借りていた。翠の趣味に気がついた真祐未は話し掛ける。そして次第に打解けてゆく二人。
 ある日真祐未は翠に自分が母親と共に核戦争によって荒れ果てた異なる次元からジャンプしてきたのだと告げる。 訝しがる翠に、真祐未は共に仄かに未来の世界へとジャンプしてみせる。それまでと変わらない世界に見えたものの、その時から翠にもまたジャンプする能力が目覚める。わずかなきっかけで度々ジャンプする中、翠は危機が訪れている世界を垣間見る。
 そんな中、翠の家には世界が危機に陥る事を予感させる不吉なニュースが流れ込んできていた・・・。


3)感想

 何分、あまりにも少年ドラマシリーズが伝説化してしまっていますので、厳しいものがある訳ですが。

 ジュビナイルという事もあり、あまりヘヴィーなテーマなりを扱われたりすると気が重くなります。ここは、この年代特有の現実との乖離感や、理想(幻想?)的な仄かな想いやらをどう描ききるかが要となるでしょう。
 この点では、主演の新山千春は内面と外面との乖離に葛藤を感じている女子高生を好演しています。また、真祐未を演じる佐藤康恵も明確な個性があるので、主演の二人に気持ちが入れば楽しく観れるでしょう。

 物語そのものは、実は核戦争とかの軽くないテーマを扱っているのですが、重くなりすぎないのは好ましく感じました。劇場で観ても楽しめるのですが、ご家庭のヴィデオでも十分に堪能できるでしょう。公開された時代が世紀末であった事もあり終末観が漂いますが、それを如何に乗り越えるかが、ポイントとなっています。
 なお、次元ジャンプというと、生き辛い世界からの逃避とも捉れかねない文脈ですが、本作はそれを巧みに翻し、小気味良いラストへと導きます。(注記01)
 特撮はまあ、それなりというか。あまり期待していなかったのですが、やっぱりでした。

 本作は主演の二人に興味があるか、ジュビナイルが好きな向きにはお勧めできるでしょう。

 なお、関西では日本橋周辺での単館上映と相成りました。あまり大きくない劇場だったのですが、それにしてもお客さんが少なかったような。もったいないですね。


4)必要ないと思いますが一応の注記

01)直球勝負で現実からの逃避を描いた作品は「ウルトラQ」の「あけてくれ!」です。こちらもその筋では有名。幻想的な多元世界を描き自ら失踪してしまった作家を軸に巡る物語。きついオチがあります。



改定:2002-10-24