「懐かシネマンガ」
懐かしいアニメや漫画や映画やらの感想など。
(御注意!ネタバレ有です)
 
ザ・フォッグ  
原題:THE FOG
監督: ジョン・カーペンター
時間: 94分


1)はじめに
霧に隠れた影が、忌まわしい過去を持つ村を襲うホラー映画。ジョンカーペンターによるしんしんと迫る恐怖演出が光る作品。


2)物語

 人里離れたキャンプ場。年老いた船乗りは少年達に一つの物語を聞かせる。今から丁度100年前の今日、翌日は4月21日。霧に迷った帆船がかすかに発見した火を目指して航行したが難破、乗員諸共海の藻屑となった。再び霧が現れる時、海底に眠る者達がかがり火を求めて蘇る、と。
 折りしも北カリフォルニアの小さな漁港アントニオ・ベイでは街の
生誕100周年をラジオが伝えていた。21日を迎えた瞬間、村のあちこちで奇妙な現象が頻発する。そして時ならず沖合いに発生する霧、沖合いに停泊していた漁船は取り込まれるや否や何者かに襲われた。
 夜が明け村では生誕祭を始めるべく準備が進められる一方、そこかしこで奇妙な現象が起き始めていた。その頃村の神父は教会に隠されていた日記によって土地の由来を知ってしまう。
 夜になり生誕祭は予定通りに開催、人々が宴を愉しんでいる同じ頃、沖合いに発生した光る霧が風に逆らい村へと迫っていた。 霧の中から現れ人々を襲う謎の影。
 いったい霧に覆われた影の目的は何なのか。 だが、霧は遂に村に達し、一人また一人と犠牲者が増えてゆく・・・。


3)感想

 まず始めに、単純に怖がる映画が観たいのであれば、本作は期待に添えないかもしれません。この作品はビックリさせたりといった演出は採っていません。ここが持ち味で、監督、脚本、音楽をジョン・カーペンターのテイストに満ちています。それはいうなれば”しんしんと”あるいは”ひたひた”と怖くなる感じです。基本が因縁話でもあるので致し方ありませんが、夏の夜に灯を消して怪談話を聞く時の背筋に走る冷気を思い出せば遠くないでしょう。これを強化するのがカーペンター自身の手による要素を極力押さえた音楽、ミニマル・ミュージックで、正にハマっています(注記01)
 映像表現においても輝くものがあります。まず、霧。光る霧がひたひたと意志を持つように漂うさまはこの作品の白眉といえましょう。加えて、漁村風景の描写でも、光と影の対比がもたらす効果を巧みに取り入れており、はっとするシーンがあります。
 カーペンターというと、一部の世代には「遊星からの物体X」の印象が強い為(注記02)か、強力な特殊メイクで驚かす監督のような印象を持たれる向きも少なくありません。ですが「X」で描いたのは、実は”誰が怪物か判らない”恐怖で、原作のテーマもそこにありました(注記03)
 いうなれば本作は怪談話を映像化したもので、テイストこそが特色、その路線がお好きな向きにはお勧めできる一編です。


4)必要ないと思いますが一応の注記

01)カーペンター監督、ミニマル・ミュージックがお好きなようで、概ね自作に用いています。確かに、これでもか、という音楽よりはしんしんと迫る監督の演出にあっているので、そては流石といえましょう。やはり心臓の鼓動音をモチーフにしているんでしょうかねぇ。
02)「ニューヨーク1997」も勿論有名ですが、それはさておき。
03)「影がゆく」ジョン・W・キャンベル・ジュニア。東京創元社・創元SF文庫「ホラーSF傑作選・影がゆく」収録。読むと、カーペンターが如何に原作を忠実に映像化したかが実感できます。短編ですが小気味良いテンポで話が進みますので未読に方で興味を持たれた向きにはお勧めいたします。また、ホラーに於いてカーペンターは一貫して”訳のわからない存在がじわじわと迫る恐ろしさ”を描いており「パラダイム」もその一つ、「ゼイリブ」はそれに社会派テーマを持ち込みSFに仕立てた意欲作といえます。「パラダイム」はかなり押さえた演出と地味目の話ですので好みが分かれるでしょうけれども、「ゼイリブ」はエンターテイメント性も加味してあるので未見の向きにはお勧めです。



改定:2002-09-20