「たんかん座異聞」
映画をはじめとする映像作品などの感想を
サイト製作者の興味のおもむくまま追加しています。
(御注意!ネタバレ有です)
 
フェアリー・テイル  
原題:fairy tale  a true story
監督: チャールズ・スターリッジ
時間: 98分


1)はじめに
 1900年代初頭のイギリスで実際に起こった、妖精を捉えた写真を巡る騒動「コティングリー妖精事件」を描いた作品。潤いに満ちた存在感ある英国の森林・田園風景と、主演の二人の少女と脇を固めるベテランの演技が圧巻。幼き日の心を持ち続ける大人の為の童話。


2)物語

 第一次大戦のイギリス。稀代の魔術師、天才的脱出トリックの盟主「フーディーニ」が活躍する時代。そしてシャーロック・ホームズの生みの親「コナン・ドイル」も同じ時間に生きていた。

  身寄りを失った少女「フランシス」は一人で従姉妹「エルシー」の住むヨークシャーへと向かう。列車の中は戦争に傷ついた人々に溢れ、苦しい時代である事を幼子心に感じるフランシスだったが、その純粋さ故に周りの人々に小さな安らぎを与えていた。
  豊な自然に囲まれたエルシーの家で暮らし始めるフランシス。年上のエルシーは秘密の遊び場へとフランシスを連れてゆく。そこはとても小さなせせらぎが草と木々に囲まれる小宇宙。妖精の存在を信じる二人は度々その場所を訪れる事になる。

  一方、エルシーの父「アーサー」は村の事業に協力しており、工場の誘致についての打ち合わせを進めていた。彼はある日突然子供たちに写真機を貸してほしいと頼まれるが、初めての事だけに手伝おうと伝える。しかし二人はビックリさせたいからといって結局彼女たちだけで写真を撮ってきた。フィルムを現像するアーサー、だがそこには到底信じられないものが写っていた・・・。


3)感想

 「コティングリー妖精事件」、コナン・ドイルが取り上げ、20世紀初頭のイギリスで真贋論争を巻き起こしたといわれる事件の映画化です。数十年続いたこの論争も、”一応”少女たちによる贋作であったという事で落着いているようです。もっとも、これほど長く追求されたら、ご本人たちもたまらないものがあるのではないでしょうか。

 本作は、まずロケーションの妙による画面の美しさが出色です。 いかにも妖精が姿を現してくれそうな、豊かな自然。いるか、いないかの事実が大切ではなく、”いてもおかしくない”と感じる気持を持てる事が大切であると気付かせてくれます。
 全編にわたって画面が丁寧に作られているのが印象的で、”その時代の空気”を再現しようとしているのだなと感じさせてくれます。そういう時代であったからこそこの事件が起きたのではという解釈。しかもその眼差しに暖かさが漂い、心休まります。

 俳優陣の演技も光ります。いかにもイギリス紳士然としたコナン・ドイル役を重厚に演じているのは、「アラビアのロレンス」といえばこのお方「ピーター・オトゥール」、作品世界に深みを与えています。コナン・ドイルの親友フーディーニを演ずるはハーヴェイ・カイテル(ピアノ・レッスン、パルプ・フィクションなど)、ベテランの演技派だそうです。一方、主役フランシスを演じるエリザベス・アールはなんと本作デビュー、末恐ろしい。エルシー役フランシス・ハースは当時13歳、既に出演作も多いそうです。やはり彼の地は層が厚いのでしょうか。
 魅せる方向性が異なるので喰う食われるという事はありませんが、主役の少女二人と脇を固めるベテランの存在感がいい塩梅の対峙しているので隙はありません。

 物語は妖精を捉えた写真をもとに大きく展開してゆきますが、そこに描かれているのはいうなれば純粋な心とは何かということ、年齢を経るに連れて失ってしまうものの大切さです。それを実感できるのは、つまるところ既になくしてしまったからなのでしょう。忘れてしまいがちなだけに、改めて気付かせてくれたことに感謝です。

 本作は難しい上に派手な場面はありませんので、お子さんにはやや辛いのではないでしょうか。ということで残念ながら家族で観るには相応しい作品ではないかもしれません。ですが、妖精に興味のある向きは勿論、幼い日の何かを未だに失わずにいる、あるいは無くしてしまったけれど今一度取り戻したい向きにはお勧めできるでしょう。
 また、英国の田舎風景、湖水地方やら蜂蜜色の村 ・コッツウォルズやらがお好きな向きにもお勧めできます。



記述:2002-09-16