「たんかん座異聞」
映画をはじめとする映像作品などの感想を
サイト製作者の興味のおもむくまま追加しています。
(御注意!ネタバレ有です)
 
ゆんぼーさんが来る  
ユニット: playunit fullfull
時期: 2003-04-17〜04-20
劇場: 劇場MOMO(東京・中野)


1)はじめに
 公式サイトによれば”おもしろいことなんでもやりたい集団、play unit - fullfull ”だそうです。そんなユニットの第6回公演。第5回公演の「クラブ」が当サイト的にかなりのヒットでしたので期待しての観劇です。
 突如故人となってしまった放浪の画家・ゆんぼーさんと残されたフィアンセ、親族の混乱を描く、設定を考えればやや黒い、でもそれを微塵も感じさせない、ハートウォーミングな物語。


御注意
 本文章は一観客の遠慮会釈のない感想です。
よって、劇に詳しい、若しくは当該劇団若しくは作品を応援したい関係各位の観点からは異を御持ちになる向きもあるかもしれませんので、この場合は以下を見ない事をお勧め致します。
また、須く、悪意をもって記述したのではない旨、御理解ください。
念のため申し上げますと、敢えて記述するという事は、幾多の引っ掛かるものがあったとしても、そうしたくなる何かを本作品には感じたからである旨は是非御含み置きください。


2)物語

 とある民家の一室。礼服を着た女性、普段着の男。さて、長じた方ならその時点で判るのでしょうけれど、これはとある方の御通夜。暖かくなったら一緒になろうと約束されたものの独り残された女性、逝ってしまった男の妹、友人。
 故人「ゆんぼーさん」は絵を描きながら旅をしていた。そんな自由気ままに暮らしていた故人の想い出を胸に、御通夜の晩は更けてゆく。
 恐らくは一般的な御通夜であれば平穏に過ぎてゆくはずなのだが、そうはならなかった。故人の作品が突如評価され始めたのだ。事情を知らない画商が尋ねてくるは、旅先で出合った人物は訪れるは、身近にいた者達の悲しみをよそに、混乱は深まるばかり。
 予想だにしなかった価値を持ち始めた故人の作品はどうなるのか、いやそれ以前に御通夜、葬式は無事に終える事が出来るのか・・・。


3)感想

 いや〜、面白かったです。

 こういった作品を拝見出来ると、映画評論家にして監督であられる水野某氏の「いや〜、映画って、本当に面白いですね」をもじって、「いや〜、演劇って、本当に面白いですね」と申し上げたくなってしまいます。
 まったくもって楽しい。安心して観ていられます。で、楽しんで幕が下りると。
 当たり前の事なのかもしれませんが、「劇」に徹しているのがまず心地よいです。物語にさして関係ない歌を得意げに唄われたり、カッコイイ役やってる俺(あたし)ってステキみたいなのが全くありません。勿論客席いじりもありません。ですが物語は面白いですし、役者さんは生き生きとしています。

 こういった作品を拝見したいものです(力説)。

 開幕早々、御通夜という展開に虚を突かれますが、民家の部屋とその庭が舞台となります。やや唐突な場面で観客を掴み、進行と共に物語の背景と登場人物の関係などを解きほぐしてゆく様は、説明的な場面や台詞が無くとても自然で心地よいもの、安心して観ていられます。恐らく物語の組み立てが練られているのでしょう。申し訳ない物言いになってしまいますが、この辺りがままならない作品も散見する訳で、こちらの作家さんはたいしたものですねと思います。
 事情は計りかねますが、描かれる対象としての女性の心理描写に長けている御様子です。台詞は勿論の事、総じて当りが柔らかい描写で、この点も是非賞賛申し上げたいところです。御通夜を舞台に物語は始る訳ですから、ともすれば黒い展開に陥りがちなところをさらりと流しているのはこれまたこなれた印象があります。
 なお、少し気になったのは劇中故人から掛かってきた電話で、その伏線は何処へいったのでしょうか、ハテ。いや拙メの読み取りが足りなかったのかも。
 暗転中に物語の進行の手助けとして映像を流す手法は今回も活用され、軽快なテンポ作りに貢献しています。惜しむらくは、タメがやや多めに感じる場面がしばしば見受けられましたか。この辺りは独特の呼吸との兼ね合いでしょうから難しいのでしょうけれども、ちょっと一考願えれば幸いといったところです。
 細かいところでは、場面転換する折の音楽のフェードアウトの仕方などにより気を使う余裕が出ると好ましいのではないでしょうか。
 前回同様、役毎の個性と俳優さん達の持ち味の兼ね合いは磐石で、不安は全く感じませんでした。

 約2時間弱、ちょっとの笑いと心和む台詞に物語。十分楽しませて戴きました。
 次回も期待致します。

2003-05-10:追記:今回、勿論ある種の印象というのは観る側による部分もあるのですが、それを強く喚起してくれたと感じた部分がありましたので、やはり記述させて頂きます。劇中、青山貞子さんの所作が演技を超えて、”地”といいましょうかあまりに自然になった場面がありまして、拝見していたこちらが驚いた瞬間がございました。何と申しましょうか、お笑いでいう処の「笑いの神様が降りてきた」、能で「面が活きる」といった瞬間。舞台に魂が宿るといいましょうか、このような体験は初めてでしたので、ちょっと感動でした。
 ですので、ますます次回に期待です。


4)おまけ・開演まで

 劇場では、受付はじめ関係者の皆様方が黒尽くめなのに一瞬戸惑います。劇が始ればその理由は直に判る訳ですけれども。劇場はほぼ満席、素晴らしい。やや小さめの劇場といった印象も無きにしも非ずで、その分役者さんの熱気が直に伝わってきそうです。いや、季節外れの陽気のせいでやや熱いくらい。作品は約2時間弱、椅子がもう少し質が高いと良かったかもしれませんね。
 前口上、開演に当ってのコント、前回公演ではこれがとても楽しくて期待しておりましたら、やってくれました。スケッチブックいや、カンペを手にしての女優さん(坂田聖希子さんだと思いますが)の彼方を見やる視線になんとも味があって(誉めてます・爆)。でも”おまけ”の部分はやや字が読み辛かったですねー。いずれにしましてもこの瞬間に既に客席を掴んでいますね。上手い展開です。
 今回、缶バッジを作ってみたそうで、じっくり拝見したかったのですが終劇してのロビーは混雑で残念ながらそうはいきませんでした、残念。また、難しいことが多数あるかとは存じますが、昼割という制度は是非継続して戴きたいものです。

蛇足的付記:ふすまの建付けは大丈夫でしたでしょうか。ちょっと心配でしたが(これで関係者さんには何時のどの回を観たかがバレるかも)。



記述:2003-04-18
追記:2003-05-10
改定:2003-05-18