「これまで、アンデス楽器のクラスを持ち、教えていく中で、多くのフォルクローレ音楽愛好者と出会い、
豊かなラテンアメリカの文化についての基本的な情報の不足を痛感しました。
そこで少しずつでも楽器や音楽の意味や起源などについて情報発信していけたら、
そしてそれが少しでもフォルクローレファンの皆様のお役に立つことが出来れば大変うれしいと思っております。」
LUIS RIOS
ケーナとは
ケーナという神秘的な楽器は、インカ時代の人々の音楽を代表する楽器であり、
ペルーの共同体の精神世界を反映するものといえます。
ケーナは現在、ペルーや、ボリビア、エクアドル、チリ北部、アルゼンチン、
ベネズエラ、ガイアナだけではなく、世界中で演奏され、愛されている楽器です。
このすばらしい楽器は現在知られているうちでも最も古いものの一つであり、
はるか昔の笛の原型と思われるものが見つかっていますが、
それは筒状で、一方が開放、もう一方はふさいであるものです。
ふさいであるほうも歌口として役立つものではなく、演奏用ではないと思われます。
呼子(ホイッスル)、またはお守り、護符として作られたとされています。
古代のケーナ
古代のケーナは、竹や葦で作られることが多かったのですが、
リャマや、コンドル、ペリカン、鹿の脛骨、そして時には人間の脚の骨も用いられました。
また、金属、石、素焼き、変り種としてはひょうたんを細長く変形させたものや、
中空の木の枝など、様々なものが素材として用いられました。
古代のケーナの大きさは、7〜8センチのものから48〜50センチのものまであり、
前面に3〜7個、そして後ろ側には1個の指穴を持つものが多く、
また、8〜10個の穴が前面にあり、後ろには穴があいていないものもあります。
現代のケーナ
現代のケーナは、古代のケーナを引き継いでおり、
サイズや指穴、演奏法などに大きな変化はありません。
最も完成された、音響効果の高いケーナは指穴が7個のものです。
しかしながら、ケーナの製作技術が向上しても、残念なことに、
ケーナの鋳型のようなものは確立されていません。
音や音域を一定にするための筒の長さ、内径、
指穴どうしの距離などを決定する計算式はないのです。
しかしケーナの製作者は何か科学的な計算によってケーナを作るのではなく、
試行錯誤の積み重ね、経験の積み重ねが熟練したケーナの作り手を生み出すのです。
そしてケーナ奏者は(ネイティブでもネイティブでなくても)
この竹や葦の楽器から美しいメロディーを作り出すことが出来るのです。
語源
「ケーナ」という言葉はスペイン語ではありません。
インカ時代の公用語、ケチュア語で、ふたつの音から出来ています。
楽器から出る音を真似た“que”(け)、そして“najj”(な)は、
音を出すときの動作を表します。
つまり、ケーナという語は擬音語から来ているということなのです。
日本とアンデスの気候
日本で、尺八の奏者で製作者でもあり、
講師でもある一人の友人に出会えたことは、わたしにとって、
すばらしいことでした。
彼は私のケーナの生徒ですが、私と同じく、笛の演奏、
制作をしていると聞き、とても驚き、同時にうれしく思いました。
そして、竹の取り扱いや、天然素材で内部を仕上げ楽器の保護と
音質の向上を図る方法について、私が彼の生徒になることになったのです。
ケーナという楽器は、おかれる環境によって、手入れの仕方も変わります。
吹奏楽器ですから、唾液が内部に残り、しかるべきケアをしないと
微生物の温床になり、演奏者に害を与えかねません。
ケーナ発祥の地、アンデス地方では、たとえ毎日吹いても、
1年を通して気候が乾燥しているので、大きな問題はおきません。
問題は日本の梅雨時のような、湿度が100%にもなる気候です。
このような気候でケーナをちゃんと乾かさなければ、
内部に微生物が増殖したり、カビが生えたりしてしまいます。
そのまま使いつづけるとケーナが直接触れる唇に炎症がおこったり、
湿疹が出来たりしてしまいます。
ケーナの手入れ
吹いたあとは乾いた布で内部をしっかり拭きます。
そのあとは植物性のオイルをうすくぬります。
(楽器店で売られている、ヤマハの “BORE OIL”はケーナにも向いています。)
ケーナの内部が天然の塗料で膜が出来た状態であればなおよいと思います。
(ペルーでは亜麻仁油を塗ることもあります。)
かき渋や漆は尺八の内部に施されるものですが、
私はそれをケーナにも施すやり方を編み出しました。
(尺八とケーナとは、内部のヤスリ掛けなどの点で異なるので、
尺八と全く同じようにはできないのです。)
竹や葦は多孔質なので、空気を遮断するニスなどを外側に塗ることはお勧めできません。
それより、演奏のあと、汗をかいた手でケーナをこすっておくほうがずっといいのです。
(あまりきれいな感じはしませんが、皮脂によってケーナの表面を磨く、
ということです。ケーナの色も黄色っぽくなってきます。お試しあれ)
尺八奏者は、砕いた胡桃を布製の小袋に入れ、時々尺八の表面をこするのだそうです。