縦方向の釣り合う位置は、掌に弓をのせたとき、真ん中の図のように、毛束のほうに重みがかかり、毛束が下に下がり、弓本体が上の持ち上がるほうがよい。
弓の重心の位置が、重要であると考えます。重心は、上の図で横方向の釣り合う位置と、縦方向の釣り合う位置の、交わったところになります。 横方向の釣り合いの位置は、握りの親指と一指し指で支える始点より、必ず前にきます。弓の毛の張力を調節指(中指・薬指・小指)小指あたりが引き易いと思われます。それより、先端に、いくにしたがって、弓は重く感じ、調節指への負担が大きくなります。ただし、より、力強い表現を求めて、弦はの圧力をかける場合や、胡弓の低音弦を奏でる場合は、先端方向は、ずらした方がよい場合もあります。わたしも、小指より1〜2センチ程度ずらしています。ただし、弓全体の重量によっても、僅か数ミリの、釣り合い位置の移動が、とても重く感じます。弾き手の筋力や、演奏の持続力ともかかわります。実際に、弾いて確かめています。
縦方向の釣り合いの位置は、木や竹でできた弓の本体よりも毛束よりにきます。毛束の方が、重くなることによって、弦を弓が移動するときに、右手にほとんど、力を入れず、握る力も入れない状態で、弓が自然に、すべっていこときに、毛の部分のみが、弓と腕の圧力を自然にのせながら、弦を擦っていくようになります。伯さんの弓は、先端を僅かに、下にねじらせてあり、いっそう、この効果を発揮しています。
馬の毛、竹などの材料を揃え、竹を熱して、曲げて十数本の弓を製作し、ソロ演奏に使い易い弓を作りました。
弓の製作
現在、名古屋胡弓の名手澤田孝子(上の写真右)さんに師事しています。澤田さん所有の、横井みつゑさん使用の弓や、伝承されてきた駒を見せていただき、驚きました。それは、思っていたよりも、細い弓と、駒だったからです。弓は、伯育男さんの弓と同じく、竹を二枚張り合わせ、細く腰のある作りをしていました。駒も、同様に薄く削ってあり、さらにその薄い部分の中央を、抉ってあり、完成度の高いものでした。横井みつゑさんの数少ないレコード(日本フォノグラム刊「胡弓ー日本の擦弦楽器」)に収録された演奏で、聞くことのできる、高音の倍音を含んだ、美しい響きは、このような弓と駒を使っていたのですね。その美しい響きは、伯さんの胡弓、弓、駒から作り出される、音色と共通しています。(原一男さんの考案された五弦胡弓も、同様にすばらしい響きを持っていました。高音の3弦のみならず、低音の二本の弦もふくよかな、やわらかい響きを持つすばらしい胡弓でした。)
発見!名古屋胡弓の横井みつゑさん直伝の弓と駒と 伯育男さん制作の弓と駒の共通性
左の写真の駒と弓は、伯さんの制作されたものです。弓先端の曲がりの部分の直径が約4ミリ。しかし、腰があって、竹のばね絶妙なバランスで利いていて、、毛元を握る利いていた右手の指の握る力に反応して、繊細かつ力強く美しい表現ができる弓です。
「弓の先端が僅かに、左下にねじれている。」といわれていました。その意味は、実際に自分で、十本以上の弓を制作して、初めてわかりました。自分の作った弓で、引き易い弓は、左下にねじれていました。さらに、後で詳しく述べますが、弓の重心が、非常に大切となります。伯さんの弓は、重心のバランスも調和がとれています。また、極細でありながらも、腰のある曲がりの部分を、作り出すために、二本さらに3本の竹をまげて接合してあります。毛の本数や材質なども吟味してあり、非常に完成度の高い弓となっています。
越中おわら節の唄と胡弓の名手伯育男(左写真中央)さんは、美しい音色を奏でる胡弓を、長年、研究制作されてこられました。細く腰のある弓は、まるで、体の一部に同化して、息を吹きかけるように、楽器を奏でます。駒も薄く削られ、しかも、均一ではなく、薄い部分を作ってありました。「数百人のホールを、生音は響き渡ったよ。」といっておられました。風の盆の胡弓は、非常に洗練されており、本体・弓・駒は、野外の演奏に美しい音が通るように、仕上がっています。
風の盆の胡弓の美しい響きを追求めた伯育男さん
日本の伝統楽器の中でも、幾つもの種類がある胡弓は、可能性を秘めた楽器です。これらの、胡弓をソロ楽器として、ライブハウスや文化ホール、野外演奏などで、演奏してきました。劇場やコンサートホールでのオーケストラやピアノ、吹奏楽、ジャズ、フラメンコ、打楽器との共演でも、胡弓の音色の魅力がだせるように、楽器の研究を行ってきました。ここでは、その楽器製作に関連した内容や、玲琴について、弓の製作の延長で生み出した弓笛について、水琴窟との共演で取り組んだ、演奏用の水琴窟についても、述べたいと考えています。