■なぜ大手はR 2000住宅に取組めなかったか



 実際にやってみたら手間がかかりすぎ!!


 R 2000住宅は、確かに難しい。しかし、技術的に特別難解で、手がつけられないという程のものではない。
 事実、協会が行ったR 2000住宅の、経営、設計、施工の研修会には多数の人間が参加し、技術的に納得し、それぞれ資格をとった。
 そして、R 2000住宅に実際に取組んだ企業は30社以上あった。

 ところが、各社それなりに社内的に検討し、なんとか一戸にはトライしてみた。ところが、R 2000が求める気密性能がなかなか出ない。
 資格をとった監督が、マニアルを片手に、付っきりでやったが、大工さんをはじめ電気屋、ガス屋、水道屋、空調屋、内装屋が意味を十分に理解してくれていない。
 その結果、何度か手直しして、やっとぎりぎりR 2000住宅の求める0.9平方センチという隙間相当面積はクリアー出来た。
 しかし、手直しが多かったこともあって手間がかかりすぎ、ソロバンを弾いてみると、とても採算にのらない。

万が一性能が出なかった場合、誰が責任をとるの?

 手間がかかるのなら、その分高く売ればいいじゃないかということになるが、そうは問屋が卸さない。営業マンから
「何で東京で、そんな高気密性能が必要なの」
「そんなものに金をかけるより、システムキッチンに金をかけた方がはるかに売りやすいよ」
「もし、万が一R 2000の性能が出なかった場合、一体誰がどんな責任をとるの? そして、お客様にどんな形で弁償するの?」
「もし、気密がでず、施主からお金が取れない場合は、営業マンに一切責任がなく、歩合もカットしないことを約束して欲しい」

 このように突き上げられると、それでもやるべきだと言える設計士はほとんどいない。現場監督は、もしかしたら責任を取らされかねないので、逃げ腰になる。

 どの会社でも、発言力が強いのは営業。俺達が皆を食わせているというプライドを持ち、権限を与えられている。その営業に強く当たれるのは経営者しかいない。

技術系で責任をとれる経営者が少ない

 大手住宅メーカーの経営トップは、営業畑か財務畑の出身が圧倒的に多い。技術畑出身だと、せいぜい常務か専務止まり。その常務か専務が、トップを説得するだけの気迫と責任をとる決意と実力があれば、新事業を軌道に乗せられる。
 技術系の役員が音頭をとり、社内を根回ししない限り、R 2000住宅のようなリスキーな事業は、まず俎上に乗らない。営業とか財務出身の社長の方から、GOを出す訳がない。
 よく言われることだが、日本のサラリーマン重役は、60%から70%確実なものでないと取り上げない。20%から30%の可能性に賭ける風土は、ない。自分の首を賭ける技術系役員は、残念ながら少ない。
 これが、横並び現象を生む。
 他社がやるからやる。やらないから、やらない。 

 片手間では成果が上がってこない

 これに対して、中小企業には、技術に明るい社長が多い。
 あのソニー、ホンダ、京セラにしたところで、技術屋が始めた会社。優れた技術を持っていたし、トライする意欲があったから急成長した。
最近のI T関係で急成長している企業も、技術とアイデアを武器にしている。
 R 2000住宅に飛びついたのも、技術に明るい中小のビルダーが多かった。
 寒冷地ではカナダの技術がそのまま使えた。しかし、東京以西では、大変な技術開発が必要。コストもかかる。いろいろ試行錯誤の結果、これは当分手がつけられない。もう少し様子をみようと2/3の企業はサジを投げた。
 残りの1/3の7社のうち、4社も次第に手を引いてゆかざるをえなかった。その理由は、自社で扱っている商品のレパートリィの一つとしてR 2000住宅を取りあげた。
 ところが、R 2000住宅の技術レベルと一般のツーバィフォーとではあまりにも差がありすぎる。
 年に一度程度しかR 2000住宅の仕事がないとすぐ忘れてしまう。
そして、気密性能が出ない。
 つまり、片手間でR 2000住宅をやったのでは、設計も、監督も、大工も、下職も、その技術が身につかず、生産性が上がらず、いつまでたっても成果が上がらない。

 専業メーカーに踏み切れたのは、たった3社

 ということは、R 2000住宅専業メーカーに切替えるしかない。
 これは、口でいうほど簡単なことではない。第一営業が猛反対する。R 2000住宅は、その性能を担保しようとすると高額にならざるを得ない。そんな高いものだけを売っていて商売になるか。おれ達は食ってゆけなくなる。
「絶対に反対」
 この反対を押し切れたのが、当社とネギシホームとよねくらホームの3社しかなかったということ。
 R 2000住宅の性能が、世界のトップ性能を担保しているといっても、それだけで売れるほど、世の中甘くない。
 R 2000住宅専業メーカーになるということは、R 2000住宅が商品として完成していなければならず、高価な性能を売り切るノウハウが確立していなければならない。
 残念ながらよねくらホームは、拓銀倒産にともなう道内の不景気のあおりをまともに受けたが、ネギシホームと当社は、確実に実績をあげてきている。東京以西で、R 2000住宅専業メーカーとして存在出来ることを、証明した。

 社内ベンチャーを起す勇気と環境がなかった

 ツーバィフォー大手メーカーの部長クラスに、何回となく伝えた。
「R 2000は商売になる。ただし、別会社か別部隊にし、専門化すべきだ。ベンチャーを起すべきだ」と。
 これは正論であるが、大企業内で部長がそのような発言をすると「君が全責任をとってやる覚悟があるか」とトップから聞かれる。
 責任をとって辞めさせられるくらいなら、自分でスピンオフして、独立した方がはるかにいい。しかし、その自信とカネと信用がない。

 かくて、大手メーカーはR 2000住宅に取組めなかった。