| ■コンクリート建築の外断熱と現場発泡問題 (1) |
| 上石神井住宅展示場の出展メーカーが次第に減少し、半減したので展示場として成り立たなくなり。5月中旬で閉鎖に追い込まれた。出展していたR-2000住宅は評判もよく、大勢のお客様がついていたので、出来たらあと10年は継続させるつもりでした。それが5年で解体とは実にもったいない話。 解体に先立って、いつもの通り壁体内の結露状態の調査と、ダクト内の調査を綿密に行いました。 R-2000住宅の解体時調査は、これで5棟目。 最初の3棟は、ブローイングと呼ばれる断熱方式。綿状のグラスウールに、若干接着剤を混ぜて、防湿層を貼った壁の中へ吹込む。 これは、北海道で腕を鍛えてきた専門のプロチームに一括発注していたので、施工的に全く問題がなかった。 解体時、壁を剥がすと、中からピンクの断熱材と真っ白いスプルースの柱が、施工時のまま、何一つ変わらない状態で現われてくれた。もちろん、結露やカビの痕跡は一つもない。 私は、このブローイングという断熱方式は、今でも木造住宅の高い断熱・気密性能を確保するには、最高のシステムの一つであると信じて疑わない。 それなら、何故それにこだわり続けなかったのか? このブローイング方式の最大の欠点は、吹込むグラスウールの熱伝導率の低さにあった。実質的にはかなり高かったのだが、0.034Kcal としてしか認めてもらえない。このため、9cmの壁厚では、R-2000住宅が求める断熱性能がクリアー出来ない。どうしても14cm、つまり206のランバーを外壁に使用せざるを得ない。 地価が安い地方では、外壁の厚みが5cm広くなったところで、なんら設計上影響がない。ところが、地価が高く、ギリギリの敷地で計画させられている東京では、この外壁の5cmの厚さが障害になってくる。なんとか、壁厚9cmでR-2000住宅の断熱性能を確保したい。 そこで、いろいろ知恵を絞った。 最初に採用したのは「外内断熱工法」 合板を貼った外壁の外側に、燃えにくいアルミ箔を貼った1.5cm厚のイソシアヌレートの板状の断熱材を貼り、ジョイント部分は丁寧にテーピングをして、この外側の断熱で気密をとる。そして、不足する断熱性能は壁内へ入れる5cmの断熱材で補充する。 今はやりの外断熱を、8年も前に試作採用していた。 最初の小平展示場は、この断熱システムを採用した。 このシステムは、防火の類焼面で若干の問題はあるが、断熱性能そのものは、9cmの壁厚でR-2000住宅の要求を十分に満たしてくれる。しかし、外断熱方式だと、ボードのジョイント部分を如何に丁寧に施工したとしても、気密性能がなかなか上がってくれない。 相当隙間面積でいうならば、0.8cmがよいところ。R-2000住宅の基準である0.9cmはなんとかクリアーしているが、この程度の精度では安心出来ない。0.9cmという精度をコンスタントにクリアーするためには、アベレージで0.5cmないと駄目。 ほんのちょっとした施工ミスで0.9cmが確保出来ないと、R-2000住宅として失格してしまう。施工した後で、全面的に気密工事をやり変えることは不可能である。R-2000住宅を前面に出して商売してゆくには、外断熱ではうまくゆかない。 私どもが外断熱を選択肢から外したのは、R-2000住宅気という厳しい気密性能を最優先させたがためであった。 そして、次に検討の対象になったのがウレタンの現場発泡システム。 少しでも断熱のことを勉強した人であれば、現場発泡ウレタンの利点と欠点はすぐ分かる。 利点は、なんといっても断熱性能が最高に優れている点と、現場でくまなく吹付け施工出来るため、気密性能が格段に良いこと。 熱伝導率は0.021kcalで、グラスウールのブローイングに比べて1.75倍も優れている。6cmも吹き付ければ、軽くR-2000住宅の性能をクリアーしてくれる。 欠点としては、まず何しろ価格が高い。あの高いと言われたブローイングに比べても50%以上もアップする。 次はフロンの問題。オゾン層の破壊の懸念から代替フロンに変わってきていたが、施工途中で労働災害をもたらすことはないか。また、施工後も入居者の健康に悪い影響を及ぼすことはないか。また、解体時に、残留フロンが問題になるようなことはないか。 この検討は、徹底的に行い、ほぼ問題がないという確信をえた。 ご案内の通り、代替フロンはHCFC-141bで、若干だがフロン系統を使用しており、2004年からは使えなくなる。そして文字どおりノンフロンのHCFしか許されなくなる。 このHCFに変わった時、その熱伝導率が落ちるのではないかとか、価格が高くなるのではないかという懸念がある。メーカーに聞いてみると、すでに試作品は出来ており、断熱性能も価格もほとんど変わらないという。 それなら、あと1年半も待つのでなく、前倒しで出荷して欲しいと頼むのだが、まだ駄目だという。他社との競合関係とか在庫の問題などがあるのだろう。しかし、地球環境を考えると、2003年からなにがなんでも前倒しで出荷してもらいたい。それが、地球環境時代のメーカーの責任というものである。 そして、現場発泡ウレタンの採用に、最後まで躊躇させられたのは木材などとの肌別れが経年変化で起こるのではないかという杞憂。 木材は、湿度条件により夏と冬では伸び縮みする。その微妙な変化にウレタンがついてゆけず、木材との間に隙間が出来、経年変化で気密性能が落ちるのではないか。なにしろ、気密はウレタンのみに頼っているのだから、ここが生命線。 このため、いろいろ調べたし、実験を加えたり、先行各社の経験と実態を見て回った。その結果、防火性能のよいイソシアヌレートを多くすると肌別れが起こる可能性が高いということが分った。また、冬期の低温での施工時の亀裂を防ぐには、2液の配合比率を変えるとともに、6cm以上も厚く吹き付けるには、一般に建築用に使っている安いウレタンではなく冷凍冷蔵庫用のものを使用すればほとんど懸念がなくなることが分った。 かくて、ようやく現場発泡ウレタンの採用となった。 しかし、採用して最初は施工業者の技能の低さに泣かされた。なにしろ、鉄骨や鉄筋造では2〜3cmの厚みしか吹いたことがない。それが6cm以上となると3〜4回に分けて吹き付けなければならない。どうしても薄いところと厚いところの吹きムラが出てくる。薄いところは再度吹き直させなければならないし、厚すぎるところは削らないとボードが貼れない。 吹きムラは見た目が悪いだけではなく、工事中のゴミが多くなる。 しかし、3棟目当りから、職人の腕がメキメキ上がり、次第に吹きムラがなくなっただけではなく、気密のことを良く考えて、必要なところは必ず吹付けてくれるようになってきた。セットバックした天井面など、断熱の必要なところを見逃すこともなくなってきた。 監督が全戸気密テストして、どこの現場の性能はこうであったという数値を絶えず伝えたので、職人の意識が変わってくれたのである。職人を育てるという点でも、全戸気密テストを行うのは、非常に有効である。 私は、今でも工事中の全戸を見て回っているが、大工さんと断熱工の施工は、ほぼ安心して見ておれる。注意するのは、年に数回もない。 このように、ほぼ全面的に信頼していたのではあったが、壁や天井を剥がしてみるまでは、やはり心配だった。 「もしものことがあるかもしれない」 しかし、この心配は全くの杞憂にすぎなかった。 どの面の壁のボードを剥がしても、内部は建築時そのままの鮮度と美しさを保っており、結露とかカビの痕跡は皆無であった。ウレタンはやさしく柱や根太に密着していてくれ、隙間が一つも見当たらない。 変な臭いも一切ない。 このネガはハーティホームに渡してしまったが、その写真を見たいという方は、是非一報下さい。喜んで送付させていただきます。それほど自信のもてるものでした。 ついでに、セントラル空調換気システムのダクトの調査内容も付け加えておきます。 台所、浴室、便所などの排気ダクトはさすがに薄く汚れています。ダクトの中へ手を入れると、指が黒くなります。しかし、こうしたスス以外は、小さなゴミが一つもダクトの中にありません。結露した形跡も皆無。 これに対して給気ダクトは、機械側を見ても、各室の給気口側を見ても、新品同様で、ダクトの中に手を入れても黒く汚れるということはありません。加湿をしていると、ダクト内で結露を起こす心配があると、今年の春、某メーカーがお客に囁いていましたが、それは全くのウソであることを立証してくれました。これまた、証拠写真が欲しいという方には送付致します。申し出て下さい。 話が脱線しました。NHKが、かってのウレタン吹付けの解体時のフロンの残存量の問題を取り上げました。これはたしかに問題です。 しかし、今は残存を問題にするようなことは一切やっておりません。 フロンを排除するためにはアキレスの外断熱が良いと言うような放送は、事実を歪めかねません。また、コンクリートの内断熱は必ず結露するという乱暴な議論が横行していますが、これも事実とは違います。 そうしたことを議論する前に、R-2000住宅のウレタン現場発泡の美しい実態をまず知っていただきたいのです。 私はウレタンにこだわっていません。優れたものがあり、納得出来ればすぐにでも採用を奨めます。言いたいのは、優れた実態を知らずして、付和雷同的にウレタンを攻撃さえすれば、問題が解決するかのような浅はかな行動はやめてもらいたいということです。 次回からは、もうすこし詳しく検討してゆきたいと思います。 |