■くたばれ「外断熱・2重通気工法」 (4)
  構造用合板が木構造を根本から変えた

 合板というと、日本の特に在来関係の建築屋はすぐ「コンパネ」のことを想像する。そして「ありゃ駄目だ」とつぶやく。
 勉強不足の小説家や評論家には、合板とベニヤを混同した記述がやたら多い。  ベニヤは単板。
 単板の繊維方向を変えて3枚以上接着したものが合板。
 その合板は(1)普通合板 (2)コンクリート型枠(コンパネ) (3)構造用合板に大別される。
 普通合板は家具や建具などに使われる。コンパネは文字どおり鉄筋コンクリート造の型枠として使われる消耗品で、厚みはあるけど3枚重ねに過ぎず、強度や耐水性は不問。
 これに対して構造用合板は最低5プライで、特類と呼ばれる耐久性と、1級ないしは2級の接着強度性能をもったものを指す。

 米に例えれば、コンパネは古古米で、構造用合板は魚沼産こしひかりの新米。
 自動車に例えれば、コンパネは500ccの軽トラックで、構造用合板は3000ccの四輪駆動。

 在来で、自分の不勉強さを棚にあげ、消費者を誤魔化して安いコンパネで家を造ってきた古古米常食者が、「構造用合板はまずい」とほざいている。
 ツーバィフォーの分譲現場で、雨にぬれた床の写真を撮ってきて、コンパネ感覚で「これでは接着が剥がれてしまう」と馬鹿騒ぎ。
 構造用合板が雨と雪の中での工事用に開発されたものであることすら、知っていない。

 世界の木構造の歴史を調べれば、戦前まではほとんどが通し柱で建てられていたことが分かる。地震のないイギリスのハーフテンバーの主要構造材は通し柱。
 地震の多い北米西海岸では、隅柱と敷桁にはフォーバイシックスの9cmX14cmの角材を使い、間柱まで全てツーバィフォーと呼ばれる4cmX9cmの通し柱を使っていた。

 この通し柱方式(バルーンフレーミング工法という)は、多くの欠点を持っていた。
 最大の欠点は地震などの水平力に対抗出来るものが筋違いと斜に打付けた外壁下地の板材しかなかったこと。
 したがって「壁倍率」でいうならば、2倍程度。日本の柱二つ割り筋違いに木ずりという、戦後の平均的庶民住宅と同程度。

 壁倍率の詳細な説明は省く。地震国日本では壁倍率は最低3倍、出来れば4倍以上あるべきだと覚えておくべき。そして新築を考えている人は、Q値、K値、C値や、充填断熱、外断熱うんぬんよりも、まず初めに「貴社で建てられている住宅の壁倍率は何倍ですか」と必ず聞くべき。
 正確に答えられないような営業マンの会社とか工務店とは付合わない方がいい。

 地震のない北米東海岸の寒い地域ではこれでも十分。しがってニューヨーク以北の多くの都市のダウンタウンで、築100年以上の木造をやたら目撃出来る。
 だが、東海岸でもハリケーンが来襲する南部地域や西海岸では水平耐力が明らかに不足。阪神大震災で多くの在来木造が潰れたように、戦前の西海岸の住宅はよく地震で潰れた。そして、これらの旧市街には築100年以上の古い木造はほとんどない。

 こうした木構造を根本的に変えたのが構造用合板。
 まず、間柱を欠き込んで強度を弱める筋違いを不要にした。12mm厚の構造用合板は、それだけで3.5倍の壁倍率を持っており、黙っていて耐震性が8割アップ。内壁の石膏ボードと併せると壁倍率は5倍以上。

 それだけではない。この合板を2階の床や屋根に千鳥張りすると、床剛性が水平力を均等に全ての壁に伝え、全ての壁が水平力に総力を挙げて対抗する「ダイヤフラム」としての力学システムを持つ。
 つまり、プラスアルファの強度を持つことが分ってきた。これを加味すると壁倍率は6倍ぐらいと考えてよい。

 そして、それまでは通し柱が不可欠と考えられていた。ところが厚い構造用合板を千鳥張りした通し床があると、通し柱が不要だということも判明。
 いわゆる「プラットフォーム」(盤工法)の誕生。

 北米の建築コードは州によって異なる。
 地震で困っていた西海岸では、早速このプラットフォーム工法を建築コードに採用した。その成果を見届けて、ハリケーン地域でも採用し、やがて、あっという間にプラットフォーム工法は全米に普及した。
 
 北米では、木構造(ウッドフレームコンストラクション)として (1)プラットフォーム (2)バルーンフレーミング (3)ポスト&ビーム(柱、梁工法) (4)ヘビー・ウッド(体育館などの大型梁構造)が併存している。
 そして、声を大にして言いたいのは、いずれもが面剛性の利点を認めて、建築コードを実態に合わせて改訂してきていること。

 翻って日本。
 日本では建築基準が全国一律。
 北海道も沖縄も一つの法律。中央集権を代表的するサンプル。

 そして、情けないことには、日本の建築基準法の施行令の中には、木構造としていまだに在来木造しか掲載されていない。
 しかも、その内容たるや、耐力壁として「木ずり 0.5倍」「3cm厚で幅9cmの筋違い 1.5倍」「4cm厚の筋違い 2.0倍」「これらの筋違いを襷がけにいれたものは、その倍」「床・小屋組の隅部には火打ちが必要」という、古色蒼然とした記述のまま。
 新しいイノベーションを全然認めていない。

 そして「これと同等以上の性能があると認められたければ、建築センターの評定を受けなさい。天下り役人に金を払って認定を得なさい」となっている。
 そうではなく、諸外国のように建築コードの中に「構造用合板 3.5倍」と書き込み、誰でも自由に活用出来るようにすべき。

 新しい良い方法を建築コードで推賞すれば、国民は震災の被害から救われる。だが、国民の安全より天下り役人の食い扶持先確保しか考えていないのが日本の建築基準法体系。構造用合板の有効性を認め、建築コードを書き替えていたら、阪神大震災で大多数の人々は命を失わなくてよかったはず。

 建設省のお役人さん。大学の博士先生。木構造に携わる住宅や建材のメーカーの技術者の方々。皆さんは日本のこの建築基準法施行令を見て恥ずかしいと思い、責任を感じないのでしょうか?
 グローバル化が叫ばれている時、日本だけが時代遅れの前世紀的建築コードしか持っていないことが、私にはとても恥ずかしい。

 そして、木ずりを斜に張って、耐震力が格段に増したという本を平気で出版している三省堂に対して、近く来襲する東海大地震で被害を受けた人々が、損害賠償を求めて大訴訟を起こすことになろう。