■くたばれ「外断熱・2重通気工法」 (15)
  内部通気という考え方に対する疑問

 神社仏閣でも、古民家でも、構造材を腐らすことなく長持ちさせるために、徹底的に通気を図ってきました。これは、間違いの無い立派な考えで、誰もそのことは否定出来ません。

 しかし、隙間風を前提にし、室内外の温度差のない生活を前提にした、いわゆる「夏を旨とした」住宅は、省エネという面からも次第に多くの国民の支持を失ってきました。寒さを我慢し、脳卒中で倒れるような住宅を排除したい、との切望感がまさってきました。

 高気密・高断熱の発想は、寒い北欧や北米で生まれたもの。
 断熱の考えが北海道で生まれたのは45年前。冬期に壁、床、天井に結露を起こすなど、多様な失敗を重ねてきました。

 そして、断熱だけでは駄目で、気密と換気と空調を総合的に考えなくてはいけないと思想がスウェーデンから導入されたのは、たかだか20年前のこと。追いかけるように、カナダ政府からR2000住宅が紹介され、一気に科学的な裏付けを得て、高気密・高断熱住宅は、社会的に認知されました。

 15年前から、東京などの温暖地でも、高気密・高断熱住宅の研究が始まりました。
 当然問題になったのが、冬期の結露だけでなく、夏期の結露。
 夏期結露には、(1)梅雨時の床下の結露と(2)ベィバーバリアを施工した場合の外壁内結露、つまり逆転結露の2つがあります。

 学問的には、未だに決着がついていませんが、経験を積んだ業者にあっては、この2つの結露問題は実質的に解決済みと言って良いと思います。
 私や友人の経験に照らしても、きちんとした施工の、外部通気層を持った高気密・高断熱住宅の場合は、十数年経過した家の壁を剥がしてみると、結露の痕跡は一切なく、材木の含水率は十数%で安定しており、断熱材の劣化もほとんどありません。
 引渡し直後の鮮度を、厚い壁の中で保っていてくれます。

 私も、いい加減なツーバィフォー住宅で、結露からカビが生え、家が腐りはじめている住宅を何戸か目撃しています。しかし、これは何もツーバィフォーに限った話では無く、在来木造でも、鉄骨造でも多く目撃しているところ。
 つまり、結露の理論が分からず、いい加減に施工した住宅は、鉄筋コンクリート造を含めて結露が多発し、カビの巣になっています。これが有力なアレルゲンとして、国民の健康を脅かしているのは、まぎれもない事実。

 在来木造住宅で、こうした結露とか木材の腐れを防ぐことを目的に、壁の中へ空気を流すという考えが20年ぐらい前から生まれ、多彩な試みがなされてきました。ご存じのOMソーラーをはじめとして、枚挙にいとまがありません。

 高気密・高断熱が叫ばれる以前は、パッシブソーラーという考えが日本の住宅を支配していました。省エネ機構の認定を得ると、公庫の特別融資が得られたからです。壁内通気というシステムを持つほとんどが、このパッシブソーラー全盛時代に開発されたものであり、盲腸のように不必要な存在になった今でも、その名残をとどめています。
 
 木材が腐るのは、含水率が25%を突破するからです。
 結露と雨漏りがなければ、ベィバーバリアで被覆された木材の含水率は十数%で安定し、ことさら壁の中に空気を流してやる必要がありません。
 問題は、結露が起こりそうなシステムと精度の低い施工。これだと、壁の中を空気が流れていると、冬期に結露を起こしても、春先になると乾き、カビが生じても腐朽菌が付くのを防いでくれます。
 20年前までの、50mmのグラスウール入の在来木造住宅のほとんどが、この状態でした。

 しかし、高気密・高断熱の技術進歩で、結露がほぼ100%征服出来るようになり、壁内通気が無用の長物化してきています。しかし、OMソーラーなどは、これを否定すると、存在価値そのものが無くなります。このため、パッシブ系のメーカーでは、今でも内部通気の有効性を、延々と述べています。
 私は、それらに反論しようという気はありません。
 無駄なことに、力を割きたくないからです。
 ただ、多くの消費者の方々に、室内通気の問題点だけは把握しておいていただく必要があると思います。そして、室内通気のメリットとデメリットを比較、納得の上で、どちらを選ぶかは消費者の自由。絶対にこれでなくてはならないというものではありません。

 室内換気のデメリットの(1)は、基礎換気口。
 基礎換気口の下部隅部に亀裂が入ると、将来瑕疵物件として争われる可能性が出てきたことは、前回紹介しました。
 そして、東京では基礎断熱より基礎パッキングによる剛なる床の床断熱がこれからの主流になると私は確信しています。基礎換気口に依存するシステムは、過去のシステムだと思います。

 (2)外部の空気が壁の中を回るということは、土ほこり、花粉、排気ガスも室内を回っているということ。
 たしかに、換気口を閉じれば、こうしたほこりや花粉、排気ガスの侵入は阻止出来ます。オートマティックに開閉が可能なら問題はないでしょうが、都度開閉して回るというのは大変です。
 また。換気口にフィルターが付いており、花粉や土ほこり、排気ガスを捕獲してくれるなら、問題ありません。蚊などが入らない程度のステンレスのメッシュでは、東京では健康住宅と言うにははばかります。
 一方、田舎では、散布された農薬が侵入してきます。

 (3)木材の伸び縮みが大きく、隙間が拡大します。
 木材の利点であり欠点は、湿度を吸排して伸び縮みが大きくなること。ひと昔前に、明大の清水先生が「どんな名匠の造った数寄屋造でも、冬期に木材が乾燥して隙間が出来る。その隙間を集めると30cm平方の穴2つ分になる」と研究成果を発表しました。夏期に室内通気をすると木材は必要以上に膨らみます。そして冬期換気口を閉じたにしても、通気があると木材は乾燥します。
 それが、造作のトメの部分の口を開かせ、壁紙の入り隅部分に隙間を作ります。
 私が除加湿システムを採用して、一番有難かったのは、冬期のこうしたクレームが激減したことです。

 (4)そして、何よりも問題は火災です。
 エアサイクルのHPで、省エネ住協の田中理事長が「内壁空洞内に燃えやすいものがないので火災の心配はない」と断言しています。
 石膏ボードで覆ってあれば、ほとんどがボヤで済みます。問題は大きな地震の時。阪神大震災は、早朝だったので、火災の被害が最小限ですみました。しかし、ロス地震のように炊事時にきたらどうなるでしょうか。
 消防自動車が来ず、20分過ぎて火が石膏ボードを突き抜けたら、室内通気層を通ってあっという間に全館に火が走ります。
 このため、アメリカでは、一つの部屋が焼け落ちても、火が回らないように、部屋と部屋との間の根太にフアィヤーストッパーとしてのブロッキングを入れることを義務付けています。1階の壁の火が2階に移らないように、通し柱にも必ずブロッキングを入れます。日本の公庫の仕様書もこの哲学を採用しています。

 万が一の大震災の時、内部通気層があったら、20分しかもちません。その肝心のことが分からない大平住宅と大榮住宅が、ツーバィフォーメーカーのくせに室内通気を謳い文句にしました。
 そして、馬鹿なことをやった両社とも、姿を消しました。