■第6回日加住宅R&Dワークショップ (2)
   基礎断熱でカナダから学ぶべき点

「木造住宅外皮結露防止ガイドライン」には、日本の在来軸組工法の部位別の断熱・気密施工方法が詳しく図示されている。
 執筆したのは道立北方建築総研の鈴木大隆先生。

 何しろ、北海道は基礎断熱の発祥地。
 したがって、鈴木先生は基礎断熱こそこれからの基本だと力説。

 そして面白かったのは、岩手県で、地元の先生とタイアップして白蟻多発地にプラスチックの基礎外断熱を行い、白蟻の被害を調査したお話。

 ご存じのように、白蟻はスチレンやスタイロなどの断熱材を食い破る。
 したがって基礎断熱は白蟻の巣になり、次第に食い破られて断熱効果がなくなるのではないか。
 むしろ、白蟻駆除という面から考えると問題ではないか。

 こんな疑問が出されてきていた。

 しかし、鈴木先生の話によると、基礎断熱のプラスチックを剥がし、中を調べてみると、多くの白蟻がどんどん食い破っていっているが、プラスチックの毒に当ったせいか途中で息が絶えている。
 息絶えた白蟻はたしかに多い。
 しかし、だからといって、断熱性能が落ちるほどではない。
 このプスチックが白蟻の巣になるということはない。
 その毒性が白蟻のやたらな発生を防ぐ。

 従って、寒冷地だけではなく、白蟻多発地域でも基礎断熱が主流になってゆくであろうというのが、鈴木先生の論拠。

 鈴木先生は、北海道のことは詳しいが、関東地域などのことはそれほど詳しくない。

 北海道では、全館暖房が当たり前になってきている。
 したがって、床下も室内と同じ空間として暖房する。

 ところが、関東地域などでは床下を含めた全館セントラル暖房システムはほとんど皆無。

 このため、基礎断熱をした場合、1階の床が冷たいと言う苦情が多く出されている。

 これを防ぐもっともよい方法は、居間から床下へ空気を流す穴を設け、北側のダクトから吸い上げて第三種換気で排気するというシステムを採用すること。
 これだと、床下に空気の流れがあり、居間の暖気が常に床下に流入するので、床が冷たいということはない。これはもう8年前に試みて実証済。だが、多くの企業はまだ採用していない。
 その理由は、分からない。

 そして、床下暖房機等が開発されてきている。
 私は、これは床下換気ということを考えると、コンセプトとしてはナンセンスだと考える。  
 一方、カナダではどう考えているか。

 カナダの発表には、単にカナダの例だけでなく、アメリカ東南部の蒸暑地帯の実態調査報告も含まれていた。

 アメリカの東南部の床下は地盤から1メートルもあるものが多い。
 広い敷地。
 東京のように、北側斜線とか道路斜線の制約がない。
 したがって、基礎を高くしても、母屋下がりにする必要がない。
 
 そして、1メートルもの高さがある床下をダクトスペースとして活用している。もちろん、セントラル空調である。そして、床下も空調スペースとしているものは問題がない。
 床下を単に配ダクトスペースとして考え、十分な対策を問っていない床下には結露等が起きている。
 
 カナダの床下の考えも、アメリカとほぼ同じ。
 床下は、第3の室内空間。
 したがって、床下も空調換気を行う。

 カナダでは、日本のような第3種換気はほとんど使われていない。熱交換型の換気システムがどこまでも主流。
 北欧のように、冷房が不要な地域では、開口部の下部に温水または深夜電力利用のラジエーターの輻射暖房機を置いて、パッコンで窓上から給気しても、コールドドラフト現象が起こらない。

 それなのに、冷房が主流の東京で、輻射暖房をやらない住宅に第3種換気を売込んでいる業者は、私は消費者の敵だと思う。安い住宅は第3種換気でいいというものではない。

 カナダのトロントなどの内陸は、暖房だけでなく冷房が必要。
 つまり、熱交換機型でないと駄目。

 そこで問題になってくるのが床下の空気質。
 これが汚れていては、熱交換の時に全館に拡散してしまう。
 
 そこで、カナダが偉いと思うのは、床下全面に、地面から上がってくるラドンガスなどの有毒物質を抑えるため、10mm厚のポリエチレン、またはこれと同等の気密性の高いシートを敷く。そして、このシートと布基礎や断熱材との施工を厳しく指導している。

 ひるがえって日本を考えてみたい。
 15年ぐらい前に、パッシブソーラーということがやたらと騒がれた。
 そしてOMソーラーをはじめ、エアサイクル、ソーラーサーキットなど数多くの床下の空気を家の中に巡回させるシステムが開発された。それが未だに生き残っている。
 
 これらのメーカーは、ラドンガスなどの有害ガスが日本にはないと考えているらしい。床下の空気を吸っても、人体に影響がないと固く信じているらしい。

 これに対して、カナダや北欧は臆病。
 10mmのポリエチレンで密閉しない限り、床下の空気を室内に還流するということはやってはいけないと言っている。
 
 この大問題に、カナダは言及しているが、日本の研究者は1人も発言していない。
 なんでだろう。なんでかな。何が何でだろう?

 そういったこともあり、私は鈴木先生の基礎断熱万能説には組みしない。
 そして、先にも書いたが、室蘭工大の鎌田先生の在来軸組における新しい床構造を積極的に支持したい。
 厚い床下地用の構造用合板を土台、大引、胴差しに直接打ち付けるやり方。そして、基礎断熱ではなく床断熱。
 鈴木先生も構法の勉強をしていただき、在来軸組の現状に妥協するのではなく前向きな提案をいただきたい、とお願いしたい。

 基礎パッキングの開発で、床下の結露はほぼ解消された。関東では床断熱で十分にR2000住宅の断熱・気密性能が担保できる。
 
 1階床の冷たいのを我慢したり、ラドンガスをたっぷり吸込んでまで、基礎断熱にこだわる必要がどこにあろうか。