| ■国産の杉材で「家を建てよう運動」の新しい芽 |
| ご存じのとおり、日本の国土の2/3は山林です。 それなのに、日本で消費されている製材品、合板、パルプ、チップなど1億100万立方メートルの木材のうち、国産材の占める比率はたった19%にすぎません。80%以上が輸入材。 10年ぐらい前までは「国産材を伐採するとCO2の吸収が少なくなる。楊枝や割り箸などに木を使うのは犯罪行為である」かのような論調がまかり通っていました。 その誤りを、初めて系統的に指摘したのが東大の有馬孝礼先生。 先生の指摘は3つの点で注目されました。 1つは、森林は若い時は多くCO2を吸収するが、歳をとってくると吸収力が落ちる。したがって、人工林はある一定期間で伐採し、植林をした方がよい。伐採してはならない天然林は別にして、循環資源である人工林は、世代交代を進めねばならない。 2つは、木材は伐採されても燃さないかぎりはCO2がそのまま固定されている。したがって、木造住宅は街の中の森林と言って良い。その木造住宅の寿命が25年で解体され、燃されるのではなく75年もの長寿となれば、それだけ長くCO2が固定され続けるということであリ、地球環境の面からも望ましい。 3つは、日本の森林の年間成長量は全蓄積の3%強。年間伐採量は1%であり、日本の木材資源の蓄積は増えている。ただし、日本の人口の年令構成と同様に若年層が少なく、中高年層が増えてきている。このアンバランスが将来的に大問題。 また、カナダでは同じ大きさの住宅を造る場合に使用されるエネルギー使用量は、木造に対してコンクリート造は約1.5倍、鉄骨造だと2倍にもおよぶ。したがって、3階までの低層住宅は木造の方が好ましいという調査結果を7年前に発表しました。 つまり、やっと日本でもなるべく国産材を使って木造住宅を建てていった方がベターであるという認識が広まりました。これは、素晴らしい認識でしたが、しかし実際問題として国産材を使う住宅はほとんど増加していません。 たしかに「地場の杉で家を建てよう運動」が、地場のビルダーの一部から出てきています。しかし、これはお題目に終わっている例が多く、今一つ大きな動きになっていません。 国産材が普及しないのは、日本の林業家の木造住宅に対する勉強不足に最大の原因があります。 木には4つの欠点があります。 (1) 燃える。 この欠点を補うため、欧米では石膏ボードで耐火被覆しました。また、木材は表面が燃えても炭化して空気を通さず2.5センチ以上は燃えません。このため構造上現わしで使う場合は3センチ以上の厚い板として使うか、必要サイズより5センチ太い柱とか梁を用いてきています。 (2) 腐る。 これは、結露しない住宅を造るしかありません。壁体内結露を防ぐ様々な工夫がなされてきていますし、防蟻対策もかなりよくなってきています。 (3) 狂う。 木材は含水率が30%から15%になるときに、白い部分の結合水が消失して狂います。したがって、輸入木材はほとんどが含水率18%以下の人口乾燥材です。ところが、国産材は人口乾燥化が進んできていますが、未だに90%の製材品が含水率30%以上の未乾燥材です。 (4) 性能が一定でない。 天然資源ですから、強度が全部異なります。しかし、樹種毎や節などで性能を区分化して一定させる。一方では集成材化することで強度を50%アップしてきました。 このように、欧米の製材品は林業の業者が努力して使い易い形に変えてきています。 この努力が国産材に欠けていたのです。 しかし、ないものねだりしていてもしようがない。林野庁に頼っていてもことが運ばない。何とか国産材で家を建てられるようにシステムを変えてゆかなければならないと、国産材流通に的を絞った「ログウェル日本」というベンチャーが3年前に発足しました。 「日本の木で家を建てよう」(菅野知之著、春秋社)には、その経緯と問題点、そして何をやろうとしているかが詳しく述べられていてなかなか面白く、参考になります。 著者は元林野庁の職員で、トヨタ自動車のバイオ緑化事業室に勤務してトヨタの森造りで実績を残し、トヨタの支援も得てベンチャーを立ち上げました。 著者は、国産材のネックは製材段階での集約化が進んでいないため、加工・流通コストが削減されず、また規模が小さく1つの森林組合の生産量では年に5、6軒の家しか建たず、需要に対応する力がないことを挙げています。 林野庁は森林組合を補助金で援助をしてきました。しかし、製材業は通産省の分野であり、民間の業者を支援することは出来ません。構造改善事業として森林組合の連合事業で製材センターが設立されましたが、経営ノウハウがないのでほとんど成果が上がっていないとのが実情とのこと。 つまり、消費者とかビルダー、ハウスメーカーの求めているものが何かが分からない。 メーカーやビルダーは消費者から耐震性能、防火性能、耐久性能、省エネ性能、健康性能を求められています。そのため、乾燥材や集成材の使用が標準化してきています。それなのに、森林組合の製材センターは今までどおりの採材方法や背割材などの供給しかやっていません。 著者の提案で、具体的で面白いのは梢の部分、つまり末口径14センチの部分から彩材してゆくというもの。10センチ角の管柱が採れるし、ツーバィフォーのスタッド材をとって、これを流通させてゆきたいとしている点です。 国産材からツーバィフォー材を生産している先進例として北海道の関木材があります。「カナダで小径木からツーバィフォー材を採っているのに日本で出来ないことはない」という信念で成功させています。 つまり、小径木を前提に考えると、角材だけではなくツーバィフォー材の生産も併せて考えてゆく必要があるということです。 |