| ■バルーン(通し柱)構法の開口部には発想の転換が… |
| ツーバィフォー業界は大きな忘れ物をしてきた? 私は、揚げ足をとろうとか、文句を付けようとしているのではありません。私自身、反省をこめて、うっかりしてきたドジさに驚いているだけです。 アメリカやカナダの建築現場を見ると、50坪以上の住宅の場合はほとんど吹抜けか勾配天井を持っています。吹抜け大空間というのは、珍しいものでも何でもありません。あまりにもありふれた光景……日本の女学生が携帯電話を持っているのと同じ程度の光景だということを、アメリカの現場を見た全員が知っています。 時折、面白い現場に出会います。 勾配天井で、順次、斜に高くなってゆく壁。3メートルまでは2X4のスタッドが使われています。その次ぎは3X4という特殊なスタッドが使われ、その次が2X4材を2枚合わせ。そしてその次からが2X6のスタッドを使うという具合に…。座屈のことを考えると、実に合理的な対処方法で、感心させられます。 こういう現場をいくつも見ていましたから、最初に公庫の仕様書造りを手伝った時、この勾配天井の壁についても書き込もうと考えました。しかし、プラットフォームの中にバルーンフレーミングの考えを導入すると混乱が生じます。 そして何よりも、バルーンフレーミングに関して、日本には実験データーが一つもありません。プラットフォームの実験データーはホームビルダー協会では3つ持っていました。だが、バルーンは皆無。これではうかつなことは書けません。そこで、涙をのんで、とりあえずはプラットフォームだけの仕様書にしようということになったわけです。 しかし、バルーンの考えを全面排除したのではプラン面で大きな制約が出てきます。そこで、公庫の技術者の許しを得て次の文言と図だけを密かに付け加えました。 「2X4のスタッドで許される壁の高さは3.2mまで。それ以上は2X6のスタッドとしなければならない」と。 最初の公庫のピンク色の薄っぺらな仕様書にはこのように書かれていたのを、覚えておられる方も多いでしょう。しかし、何回目かの改訂で、この文言は公庫の仕様書から姿を消しました。 けれども、この文言があったので「3.2m以上の高い壁は2X6のスタッドを使えばやっていいのだ。2X6を使えば、バルーンが可能なのだ」と、賢明な人は理解し、積極的に2X6の通し柱の図面を提出しました。そして、この文言があったので、どの役所の窓口でも慣例的に吹抜けの確認申請が認められるようになりました。 実は、その次ぎの時点で、ホームビルダー協会からバトンを受け継いだツーバィフォー建築協会が、バルーンフレーミングの実大実験をやるべきでした。きちんと問題点を探り、対応策を用意し、設計マニアルを造るべきでした。 設計マニアルがなくても、なんとなくバルーン構法は認められていたので、緊急性に欠けていたのは事実です。そのままズルズルときてしまいました。死んだ子の年を数えることになるので、これ以上の発言はやめます。 問題は、プラットフォームの耐力壁などの約束事が、そのままバルーンの壁に使えるかどうかということ。 例えば、プラットフォームの場合には公庫の仕様書に代表される次の約束事を守っておれば、構造上安全とされています。 「耐力壁線に設ける開口部の幅は4m以内とし、その開口部幅の合計は耐力壁線の長さ3/4以下とする」 「耐力壁線の両端に耐力壁があることが望ましい。ただし、一方は耐力壁線に直行する耐力壁があれば許される」 「出隅及び入隅の両面開口は、双方の幅の合計が4m以内であれば各階毎に1カ所だけ、補強すれば設けてもよい」 「開口部の幅が2730mm以上のまぐさ受けは2枚合わせとする」 プラットフォームというのは、各階毎にある剛な床で水平力を支えます。これに対して、バルーンは2階の床がありません。したがって、プラットフォームの壁の約束事を、そのままバルーンに当てはめようというのは、どだい無理な相談です。 そこで、個別に構造計算しなさいというのでは、弱小のビルダー会員にとっては酷な話です。きちんと会費を払っているのですから、協会で実験を行い、基本マニアルを作成し、公庫に持ち込んで標準仕様書に付け加えてもらうというのが筋です。通達などでは世の中に伝わりません。仕様書に付け加えてもらえば、立体空間が簡単に出来ると言うので、ツーバイフォー工法は、今以上に消費者の支持を得て普及したと思います。 それなのに、バルーンに関しては個別に計算しなさいと言ったまま。これでは任務を放棄してきたと言えるのではないでしょうか。私の考えが間違っていたら、いつでも訂正します。 杉山先生の言われるとおり、建て起こす時に丈夫なバリーンの壁造りの条件として、次のことが言えるのではないかと思います。 (1)耐力壁線の両端には、必ず耐力壁を設け、ホールダン金物でとめる。したがって、当然のことながら入隅、出隅の2方向開口は認められない。 (2)開口部の合計幅は、当該耐力壁線の3/5ないしは1/2以下でなければならない。 (3)開口部の幅は3m以内とし、台風に耐えられるよう以下のような補強をしなければならない。(この以下が問題) (4)通し柱の数が出来るだけ多くなるように開口部の工夫をする。 この中で、私はとくに(4)が重要だと思います。 初期のアーリーアメリカンの住宅の開口部は、幅1m以内で、上下に長くなっています。80cmX1.6mの窓を上下に2つ重ねると、かなりの明るさです。そして、この窓を3尺毎に入れると十分な明るさです。いざと言う時には2連窓とか3連窓にすると通し柱が多く入ります。スタッドを2枚合わせにし、まぐさ受けを入れると大変丈夫な壁になります。 バルーンの開口部には、発想の転換が必要なのだと思います。それにしても実験データーがないというのは、何とも残念な話です。 |