| ■本格的な「田園革命」が、今日本で進行しています |
| 私は、いささか興奮しています。 岩澤信夫著「不耕起でよみがえる」(創森社)を夢中になって読み終え、言葉もないほど感動しています。 不耕起そのものについては、2002年6月4週の本欄「メダカが田んぼへ帰った日」(金子弘美著、Gakken)で紹介しています。そして、不耕起栽培については十分に分ったというつもり…厚かましくも、卒業したつもりでいました。 したがって昨年、この本を紀伊国屋で発見した時、2200円+税という価格から、買うのをやめました。「特別に新しいことが書かれているわけではあるまい…」と。 これは、とんでもない早とちり。 たしかに「メダカが田んぼへ帰った日」は、ジャーナリストとしてそれなりに不耕起を正しく紹介してくれています。だが、不耕起運動を進めるに到った動機、ポリシー、技術的な背景、そして遭遇した数々の試練、それを克服した苦労については、残念ながら表皮的にしか伝えてくれていません。 岩澤信夫氏自身の著作を読んで「この不耕起革命こそ、戦後の日本農業における最大の革命である」ということが初めて実感出来ました。大袈裟な……という声が聞こえます。しかし、決して大袈裟ではありません。この本は貴方の常識を根底から覆します。そして、これは単にコメづくりや農業の問題ではなく、国民の健康、日本国土の保全という大問題に対する回答が用意されていることを知り、貴方も腰が抜けるほど驚くはずです。 とりあえず、サワリだけを簡単に紹介します。 農耕民族という言葉があります。 英語の Agriculture も耕すという意味。 つまり、農業とは田や畑をマメに耕すことでした。日本の今までのコメづくりでは、秋起し、寒起し、春起し、荒代、本代かきと数回耕してきました。耕すことこそ農業の基本と考えられてきました。 ところが、秋にコンバインで稲刈りが行われ、裁断されたワラは田んぼに撒かれます。秋起しをせず切株のあるまま田に水を張ります。これを湛水といいます。一度水を減らして田んぼの凹凸をなくする補修作業を行いますが、田植えの時も耕さず、不耕起栽培用の田植機で五葉に育った丈夫な苗を植えてゆきます。 当然、近隣親戚の話題になります。 「気が狂ったのではないか。一度も耕しもせず、古株の中に苗を植えるなんて…」 両親が心配し、嫁さんとの夫婦喧嘩が始まります。 何しろ、耕された田んぼの苗はすくすく育ってゆくのに、不耕起の田んぼは堅い土に阻まれ、簡単に根が張れません。古株の影になってさっぱり成長していないように見えます。 夫婦喧嘩に加えて、親戚を巻き込んだ親子喧嘩も始まります。 ところが、この喧嘩は1ヶ月後には終わります。 苗は太い茎を何本も増やし、幅の広い葉が上へ上へと伸び、隣の田んぼよりも立派になるからです。 そして、田んぼが賑やかになってきます。ニホンアマガエルが増えてきたのです。カエルは何故増えるか。それは農薬を使っていないからです。そして、ニホンアマガエルの胃から取り出した餌動物を調べてみると、アブラムシ類、ウンカ、ハチ類成虫、イネアオムシ、ヤガ幼虫、クモ類幼虫など13種に及び、イネの害虫を食べてくれているのです。 ミジンコが大発生し、メダカを田んぼへ放すとこのミジンコを餌に毎日20個から30個の卵を生み、5月に放すと7月には田んぼがメダカだらけになります。 このメダカはドジョウ、ヤゴ、シギ、サギの餌になりますが、メダカの繁殖力は捕獲者の食欲を上回るようです。 そして、田んぼには今まで見たこともない藻が湧いてきます。これは切株やワラから発生してくるサヤミドロで、田んぼ全体がジュウタンのように覆われます。 このサヤミドロは光合成で炭素を吸収し、酸素を多く出してくれます。そして、水を綺麗にし、最後には自然堆肥となり土に還るとともに、イネの栄養となります。 藻の下では、赤とんぼのヤゴが無数に育ち、ドジョウが限りなく増えてゆきます。 また、イネのあちこちに無数のクモが巣を張り、これまた害虫を捕獲してくれます。 野生化したイネはそもそも害虫や低温に対する抵抗力が強く、しかもカエル、ヤゴ、クモなどが害虫を処理してくれるので、農薬を必要としません。日本の水田面積は世界の0.02%なのに、使われている農薬は世界水田用の55%も及んでいるのです。 また、微生物のエサにならない化学肥料や問題のある畜糞堆肥を使いません。畜産飼料の98%は輸入。穀物にはポストハーベスト農薬が使われており、農林省は濃厚飼料に122種の添加物(防カビ剤、抗酸化剤、ホルモン剤、抗生物質、抗菌剤など)の使用を認めています。これでは畜糞堆肥の安全性は保証されていません。 不耕起栽培で用いるのはコメヌカ、くず豆、ぼかし肥や天然のミネラル土など本当の有機肥料だけです。 このため、土の中では信じられない変化が起きています。10アール(300坪)当たりなんとイトミミズが220万匹、アカムシが120万匹も生息し、とくにイトミミズは田んぼを耕し、リン酸を含む糞が表土に積もり、コナギなどの雑草の種を埋めて発芽を抑制するという離れ技を演じているのです。これがおコメを美味しくします。 そして、秋になると穂はふさふさで、大粒の実が実ります。水を落とすとタニシが沢山とれます。赤とんぼが湧いてきます。 やがて、湛水した田んぼには冬になると白鳥やベジタリアンの真雁がやってきます。シギやカモもやってきます。鳥たちは、健康な田んぼを見分けることが出来るのです。本当の自然が蘇り、農薬まみれの日本の国土が蘇生されてゆきます。トキのために佐渡では不耕起栽培が始まりました。 それだけではありません。不耕起の田んぼは浄水場としての役目も果たします。琵琶湖では耕田のため水が黄色く汚れました。これを防ぐため、琵琶湖周辺では不耕起栽培が盛んに推奨されてきています。 不耕起の田んぼが琵琶湖の汚染を少なくしてくれるでしょう。 ほんのサワリしか紹介出来ませんでした。この本だけは、絶対に読まれることをお薦め致します。住宅人にとって必読の書です。 |