■いよいよ減築の時代が始まった・・・(2)

 先日、道を歩いていたら後ろから声をかけられた。
  振り向いたら姿が見えない。おかしいと思ったら声をかけていたのは建物の中から。
  昔、外装工事をやっていた会社の社長。
  会社は奥まった住宅地の中の一階を改造したもので、こんな大通り沿いではなかった。

 「今、こんなことをしています」
  名詞には、リフォーム会社の社長と印刷されていた。

 今の世の中、外装屋がリフォーム会社を始めようが、喫茶店主が住宅会社を始めようが自由。
 「いつから・・・」
 「もう、三年になります」
 「へぇー、そうだったの・・・」とは言ったが、「それはおめでとう」とは言えなかった。
 外装工事屋の時代、こすっからい性格で、少しでも隙があれば工事費を水増し請求するということを何人かの現場監督から聞いていた。したがって、消費者を相手にリフォーム業を始めたとしたら、そのこすっからさが顔を出しているのではないかと心配になった。したがって、お世辞にも「おめでとう」とは言えない。

昨日、新宿の紀伊国屋へ行ってきた。
あいも変わらず、住宅のコーナーには読みたい本がない。
 
  トヨタ自動車の「カイゼン」方式を考案したかっての大野耐一副社長のことをもっと知りたいと思い、自著を含めて三冊の本をまとめて買った。よく見たらなんとトヨタのことを書いた本が20冊も店頭に並んでいる。そのうち読んだのは1/3。かなり読んでいる方だが、後から後から出版されるので追いつかない。

 これに匹敵するほど並んでいたのがリフォーム関係の本。20冊近くも並んでいた。
  先週「住宅リフォーム商売の始め方、儲け方」(藤本義紀著、ばる出版)と「暮らしのバリアリフォーム」(安楽玲子著、岩波新書)を読んでいささか食傷気味だったこともあり、リフォームの本を手にする気力はなかった。

 新築住宅が頭打ちを見せているので、猫も杓子もリフォームはやり。決して水を差すつもりはないが、各社のやり方を見ていると危なっかしくてしょうがない。
  藤本氏のような「リフォームは儲かるからどんどんやりなさい」という本が出てくるし、リフォーム住宅協議会などが「これからはリフォーム産業の時代」などと叫ぶものだから、大変な宝がひそんでいると勘違いしている者が多い。

 かつて「不動産は絶対に値上がりするから、今のうちに買っておくべきだ」という声に踊らされ、一億総不動産屋になったのと、ほとんど変わらない現象。

   そして、テレビチャンピオンで「リフォーム王選手権」なるものが企画され、古い家があっという間に美しい家に変身する。木をふんだんに使い、収納や照明に細かい配慮がなされており、素晴らしく見える。そんなテレビを見てリフォームにあこがれる人が出たとしたら、業界としては商売になり、それこそ有難い企画。

 今、リフォームの主力は年寄りのためのバリアフリーを中心とした浴室、便所、洗面、台所などの水周りが圧倒的に多い。住宅機器メーカーが中心になっている。
  このことを否定し、批判しようというのではない。手すりのついた浴室は安全だし、ウォッシュレット付きの便器は、誰もが快適と感じる。敷居を外して広くすると車椅子でも出入りできるようになる。

 だが、機能や見栄えが優先して、構造強度や性能がおざなりになっているものがあまりにも多い。

 とくにテレビチャンピオンなどは、構造壁であった押入れを外し、なんら構造的な補強をやらずにワンルーム化したりしている。
見ていてドキッとするのは私だけではないはず。
  また、石膏ボードの下地を施工せず、いきなり薄い板を貼り付けて「自然素材を活かした」などとわけの分からぬ能書きを述べている。火事になり、一家が焼き死にしたら、どのような責任を業者は取るつもりなのだろうか。

 つまり、建築の構造とか防火ということが良く分かっていない素人が、プロのような顔をしてリフォームに参入し、いい加減な仕事をしてはいまいか。
  私の知っている外装屋さんのような人が、儲かりそうだということで、物知り顔で「商売」をやっているのではなかろうか。

 水周りのリフォームだと、それなりの専門的な知識があればなんとかなる。
  しかし、これから問われる「減築」の場合は、建築の知識と資格と、高気密住宅の設計施工に実績のない者に取り組ませてはならない。

 大きな家を解体し、小さな家を建てるのは改築。
  減築というのは、大きな家を解体せず、大きな家を断熱・気密層で必要な大きさに仕切る。
そして仕切った部分の省エネ性を高め、温熱面でバリアフリーにする。床のバリアフリーも大切だが、空気の温度差をなくするというバリアフリーこそがもっとも大切。その上で機能面でも使い勝手のいいものに改造してゆく。外観は変わらないが、入居者にとっては画期的なカイゼンがなされる。
これがこれから求められている減築。

これは、実際にタッチしてみると、ことのほか難しい。
とくに階段室の扱いに悩ませられる。
配線とか、配管がからんでくる。
そして、入居者が一時的に転居してくれない。その中での工事となってくる。

 正直言って、高気密高断熱住宅新築の二倍の苦労がかかり、都度最善の知恵が求められる。相当隙間面積を1cm2以下にするのは容易なことではない。
それほど儲かる仕事ではないが、挑戦するだけの面白さは十二分にある。高気密住宅で経験をつんだ建築家の貴方、是非トライしてみませんか。
(終)