■「脳内出血」から 帰還した社長のバリアフリー

「脳内出血」から 帰還した社長のバリアフリー


 一般書店では売っていない。
  たまたま、その存在を知り、無理を言って譲ってもらった本。

 5年前に町田ジャーナルから出版されていた志水勇祐著「負けてたまるか」
 
  著者は1939年長野県出身。東京で10年ばかり住宅会社で働いたあと1978年に三和住建を町田市に設立している。二人の子供はまだ修行に出している最中で、一切の営業から契約、設計管理にも立ち会う状態の完全なワンマン経営者。

 受注は全部自分の付き合いの範囲と紹介。となると、毎晩のように宴会が続く。バブルの最盛期で、外車を乗り回し、ゴルフにも励み、夜の巷の徘徊も続いた。その頃の住宅を含めた不動産関係者の行動は派手だった。ワンマン会社は、50棟以上こなしていたというから、その羽振りは想像にあまりある。

 その結果、1993年、ロータリークラブの例会中に倒れた。

 幸い、会員には医者が二人もいたのですすぐ北里大学病院へ運ばれたが脳内出血で左半身が不随に。

 それから長いリハビリ生活を終えてなんとか社会復帰を果たすのだが、その実話が実に面白い。

 病人の苦労談を面白がるのはけしからんと怒られるかもしれないが、実は半身不随からの生還ということを書いた本がほとんどない。最近は、ガンからの帰還ものが数多く出されている。私のホームページの関根さんなどがいい例。

 ところが、長島監督をはじめとして、脳卒中とか脳内出血で半身不随の人を多く見ているが、その半身不随がどれほど生活上不便であるかを誰も語っていない。
  したがって、そうした病人の苦痛をわれわれは実感することが出来ない。

 化学物質過敏症にしたところでそうだ。
山内稚恵さんの「ある日化学物質過敏症」という本を読まなかったら、私は一生化学物質過敏症の苦しみを理解することがなかったであろう。単に言葉として知っていたにしても。

 その知識があったから、2003年11月2週号で電磁波過敏症のTさんのことを取り上げることが出来た。

 私のホームページで、今年から「高気密住宅のプロの建築家」ということで、徐々に何人かを紹介してゆくことにしている。トップに紹介した宮崎君。
屋根から落ちて、下半身の神経が切れた。

 入院中に話をきいてびっくりしたことがあった。
 それは、下半身が不随だと寝返りがうてないこと。
私どもは、知らぬ間に簡単に寝返りをうっている。それは、足が先に動き、それに胴が着いていって寝返りとなっている。

 半身不随だと、足が動かない。
 胴だけ寝返りしたつもりでも、それは身体の捩れでしかない。
したがって、すぐ身体が痛くなる。
寝返りするためには、一時間ごとに看護婦さんを呼んで、動かない足を交互に返してもらわないと安眠出来ない。

 それと同じような話が、この「負けてたまるか」の中にいくつも出てくる。

 一番笑ったのは・・・笑うというのは大変に失礼な話だが、思わず笑ってしまった。
それは、半身不随の左手がどこへいったのかわからなくなってしまうことが何度もあるという話し。

 神経がないから、左手が曲がっていようが、潰されていようが気にならない。痛くもかゆくもない。
このため、「あれ。左手はどこへいったのだろう」と探すことがたびたび。腕の付け根のところから探して、やっと身体の裏側にあったのをひっぱり出して寝巻きを脱ぐということ。

 こうした、病人の発信は非常に大切なことだと思う。

 われわれ住宅人というのは、看護住宅を簡単なことのように考えてしまう。マニアル基づいてバリアをフリーにし、手すりをつければ事足りると考えている。

 ところが、この本を読んでみると、同じ風呂へ入るにしても手すりが二つ必要だという。
 一つは浴槽へ入るとき。もう一つは浴槽からに出るとき。

 つまり、一方の手しか使えない。となれば、入る時の手すりは出る時には使えない。

 手すりというのは、その人の背丈、病状、障害の具合によって全て異なる。同じ脳内出血と言っても、その出血の場所のわずかの違いによって、必要な手すりの位置や形が異なってくる。

早速、先週、この社長が建てたバリアフリー住宅を拝見させていただいた。
正直言って、私は今まで何戸かのバリアフリー住宅を建ててきた。また、大手メーカーのバリアフリーのモデルハウスも見てきた。そして、通になったつもりでいた。

 その高慢ちきな鼻をへし折られた 。

 高気密住宅は、思いつきの中気密、中断熱では絶対に出来ない。命がけの努力で初めて顧客に満足を提供できる。パッシブソーラーでごまかせるものではない。

 同じことで、本当のバリアフリーというのは、障害者の立場で観察し、徹底的に追及しないと絶対に得られない。
 そういう意味で非常に参考になった。
 もう在庫がないかも知れないが、一応町田ジャーナル社の電話番号を記しておきます。 042-726-8447