■「床下が危ない」は大変におもしろい
  最近、住宅関係で面白い本にぶつからないと、私は嘆いてばかりいます。
  例の「外断熱が危ない」シリーズ。
  外断熱は面白かった。しかし、「釘」「建て売り住宅」はたいしたことはなく「床下」は見過ごしていました。

 この「床下」とはシロアリのこととは、気がつかなかったのです。このため昨年暮れに出版されていたのですが、半年間も見過ごしてしまいました。

 著者の神谷忠弘氏は岡崎シロアリ技研の代表で、私も時折ホームページを開いていました。しかし、月に一度程度の寸評がなかなか面白いという以上の感想は持っていません。

 シロアリに対して、住宅業者も消費者も「絶対的な対策」を求めてきました。
今から30年前、ディルドリンやアルドリンなどの有機塩素剤が使われていました。これは一旦使用すると、木造住宅の耐用年数をはるかに超える期間、薬効が変化しないので「永久保証書」を出すシロアリ業者がいたほどでした。

  ところが、このドリン剤の使用が禁止となり、クロルデンの時代となりました。永久保証はなくなったが、最低10年は保証出来るというので「10年保証」の時代となりました。

  10年間シロアリが出ないということは、よっぽどのことがないかぎり問題が起こらないということでした。したがって、シロアリ屋に10年保証書を出させることでビルダーはシロアリの被害から一切免れることが出来ました。

  そして、昨年からはクロルピリホスの使用も禁止になり、シロアリに対する絶対的な保証がなくなったといえます。たとえ、シロアリ業者が五年保証してくれていても、とんずらされたらただの紙切れにすぎません。責任がビルダーにかかってきます。

  おまけに、高気密住宅では基礎断熱が主流になりつつあります。
北海道や寒冷地など、ヤマトシロアリの被害が少ない地域だと基礎断熱がかなり有効です。

  しかし、千葉以西の暖かい地域で、イエシロアリの被害地で基礎断熱を採用することは、大変にリスキーな話です。しかも、床下暖房が普及してくると、床下はシロアリにとって最適地となってきます。

  つまり、基礎断熱をやって、しかも床下暖房をやって、それで10年保証をしてくれるシロアリ屋が実際にはいないのです。そういった特殊な工法を採用する以上、いざという時はビルダーが自ら保証する必要が生じてきているのです。

  著者の神谷氏はこのことをはっきり言ってはいませんが、文章をよく読むとそうとしかとれません。

  そして、言っているのは、シロアリとの共存です。

  シロアリというのは、枯れた木を処理する自然界の貴重な掃除役で、不可欠の存在です。
  今までのように、薬品で土壌処理をしないかぎり、ベタ基礎の下で生きていると考えねばなりません。しかも、床下が暖められている場合は、シロアリを呼んでいるのと変わりません。

  そして、なんでもかでもシロアリを駆逐しようという考えは間違っていると書いています。

  シロアリは、アリ道を使って移動します。
  アリ道さえ発見すれば、それを駆逐するだけで被害がほとんど防げるというのです。

  つまり、アリをどこかで露呈させればいいというわけです。基礎断熱をやってもいいが、アリを必ず露呈させろというのです。話はよくわかりますが、露呈することにより、当然のことながら断熱性能が落ちます。そのことを我慢してまで基礎断熱にこだわるべきかどうか、ということになってきます。

  必ずアリ道がわかるような構造にしておき、定期点検さえやれば被害は防げるといいます。

  その定期点検を誰がやるかということです。

  シロアリ屋に頼めば、当然費用がかかります。いや、誰が点検しても、費用そのものはかかります。しかし、ビルダーは定期点検をうたい文句にしています。
  どうせ点検をするのなら、床下のアリ道の点検を義務化し、項目に加えればいいだけのことです。
  しかし、その意義の大きさをどれだけ理解しているかということが問題になってきます。

  そして、アリ道が発見されたら、その時に本当のプロに頼むべきだといいます。

  10年前から、忌避性をなくし、伝達性を高めた本格的な駆逐剤が登場してきていると言います。
  一つはフェノブカルブの高精度マイクロカプセル剤であり、もう一つはイミダクロプリドのフロアブル剤だといいます。

  もちろん、これ以外にもいろんな脱有機塩素系の薬剤が開発されてきている。それらを多用して、近隣からシロアリを駆除すると考えるのではなく、最小の薬剤で被害を最小に抑えてゆこうというのですから、非常に話がよくわかる。ただし、炭とかヒバ油などの効果は薄いとか。

  しかし、ビルダーとして、また消費者として、これは意識改革を伴う提案で、頭で理解出来ても態勢ができない以上は簡単に受け入れることは出来ません。

  ではありますが、大変に考えさせられる出色の本であることは間違いありません。