■東海大地震は決して「予知」されない!!

 今まで、何回かテレビでこんな場面を見てきた。  いろんなデーターから、近日中に東海大地震が起きる可能性が大きくなってきたと地震学者達は確信した。
  そこで総理大臣を中心とした東海大地震予知連絡会が開かれ、「警戒宣言」が出された。

 新幹線は運転を停止した。
  高速道路も全面ストップとなった。
  病院も銀行も学校も閉鎖状態。
  工場もほとんどが操業を停止している。もちろん、津波の怖れがあるので漁に出る馬鹿はおらず、漁船は港に固くワイヤで縛られている。そして、コンビニやスーパーへ買い物客が殺到するので、やむをえずこうした小売店も閉店に。
  動いているのは銀行の自動支払機とコインスタンド。

 今から40年前に新潟地震が起こった。
  液状化現象で県営住宅のコンクリートがいくつも横倒しになり、死者も26人に及んだ。

 その惨状を見て、なんとか地震は予知出来ないかということで、翌1965年に「地震予知研究計画」に多額の予算が付けられた。

 この当時は、地震はいろんな前兆があり、それらを定期的に観測すれば、地震は予知出来るようになるだろうとの甘い期待があった。

 当時、地震予知の先進国はソ連だったという。
  たとえばカザフスタンで1958年にマグニチュード4.8の地震が起こる3時間前から土地の傾斜が始まり、地核変動の観測が地震の前兆を捉えたと発表された。

 また、1964年に起こったマグニチュード8.4というとてつもないアラスカ大地震。震源地から7000キロの観測所で一ヶ月前から地面の変動が伸びから縮みに転じ、これまた地核変動の前兆を捉えたとアメリカが発表した。

 そして、一番有名になったのは1975年の中国の海城地震。
  地震予知警報を出して人々を避難させた時に地震がおこったのである。つまり「いろんな前兆を科学的に追求し、観測を続けてゆけば地震は予知出来る」という神話が日本で生まれ、それが私のような素人に未だに信じられてきているのである。

 北海道大学地震火山観測センターの島村英紀著「公認『地震予知』を疑う」(柏書房)は、こうした神話に対して真っ向からメスを入れた読み応えのある好著。

 まず、氏が指摘している点は、地震に対する研究機関が日本では一本化されておらず、各省庁で同じような機関が設けられ、それぞれ国家予算を食いつぶしていること。

 私は、地震というと当然気象庁の担当だと考えていた。
  ところが、気象庁のほか同じ運輸省の海上保安庁、建設省国土地理院、通産省工技院地質調査所、郵政省電波研究所、科学技術庁と、7つもの省庁が一斉に地震予知の予算獲得競争に突っ走り、それぞれが成果の上がらない研究に金をつぎ込んできた。

 それら各省庁が作った委員会の数は限りなく、一番被害を受けたのは三宅島だったという。
  2000年初夏の三宅島の群発地震が起きた時、滑稽なことに三つの地震委員会と一つの火山噴火予知連絡会は別々のコメントを発表し、混乱に輪をかけるようになったという。

 まず、火山噴火予知連が一時終息宣言を出した。ところがこのあと三宅島は大噴火し、全島民が避難することになった。そして、その後もこの四つの委員会はそれぞれの「省益」を代表して勝手な発言を続けているという。

 次に問題になるのは東海大地震問題。
  今から28年前の1976年に、東大理学部の石橋教授が東海大地震説を唱えた。
  予算獲得に走る役人にとって、これはまたとない援軍となった。そして、もしかしたら地震は予知出来るかもしれない。
  ジャーナリストが提灯持ちをした。

 そして、二年後の1978年に「大規模地震対策特別措置法」という世界に例を見ない有事立法が成立した。

 この有事立法は、マグニチュード8という大規模な地震だと、事前に予知出来るという前提に作られている。そして、この法律が、私のような素人に東海大地震は必ず予知され、いつの日か「警戒宣言が出される」というふうに盲信させてしまった。

 法律が出来て26年。
  政府は、東海大地震が近いと言い続けてきた。
  日本政府は『オオカミ少年』であった。

 26年間東海大地震がなかったのは、不幸中の幸いであって、予知態勢が進んだから、心配なく安心して過ごせておれるのだと考えていた。オオカミ少年に感謝してきた。

 ところが、その後の世界の研究で、地震の前兆があったのに地震が起こらなかったり、小さな前兆で見逃すことが相次いだ。
  また、前兆がないのに地震が起きたりした。
 
  つまり、この26年間、1800億円もの糸目をつけないカネを注ぎ込みながら、日本では未だに一つも地震を予知出来ていないのである。日本だけでなく、世界でも一つもの予知の成功例がないという。

 地震が起こる深い場所に観測機があるわけではない。
  地震予知はガンの薬の発見に似ている。
  ガンの発生メカニズム、その成長過程などが全て分からないと治療方法や有効薬が分からない。
  地震の準備から発生にいたるメカニズムがほとんど分かっていない。それなのに、特効薬を探すことをやってきたのが地震予知であったという。きちんとした基礎データーがないのだという。したがって、今日ではどの大学でも「地震予知」を教える講義はなくなった。

 阪神大震災で、何一つ予知らしいことを出来なかったので、国はいち早く「地震予知」という看板を外してしまった。どの省庁も「地震予知」から「地震調査」に衣替えをした。それで、役人は事が足りるのである。立派な無責任さで今でも予算を食いつぶしているのである。

 私たちビルダーは、役人や東大や京大の地震学者に頼ることなく、直下型の地震に耐える住宅を、ともかく地道に造ってゆくしかない。