■中小ビルダーの売り物は“社長” である! (1)

 先にネットフォーラムで「行列のできるスーパー工務店の秘密(平秀信著、日本実業出版社)に対する感想を求められました。
  著者は長野の中小ゼネコンの部長をしていたが倒産。2000年に独立してエルハウスを設立、ローコストを武器にコンスタントに年間50数棟を受注している実績を、高らかにうたいあげているもの。

 この中の半分は、いかにしてローコストを達成したかという話。
  この話には、新しいものは一つもありません。
  いままで、アイフルホームとかミサワホームなどが開発した手段を並べているだけ。

 例えば、メーターモジュールを採用するだけで7%の見かけ上で削減になるとか、玄関ポーチ、吹き抜け、バルコニーなどを施工床面積に算入することで8〜10%の見かけ上のコストダウンになるとか、規格化して納まりや矩計、資材を絞りこむこと・・・等々で30%コストダウン出来ると恥ずかしくもなく書いています。

 ローコスト住宅には、こうした詐欺まがいの手法がとられているということがよく分かるという点では、評価すべきでしょう。しかし、そこには何一つ技術革新がありません。手垢のついた手法の踏襲のみ。

 しかし、この本の後半部分は、どのようにして会社を地場の人々に知ってもらうか、その広告やレター作戦などで、なかなか参考になるものがあります。

 まず、一般的に言えることは中小のビルダーは消費者に対してほとんど情報を発信していません。
  情報というのは、新製品を開発したとか、新しいシステムを採用したとか、あるいは大幅な価格改定をしたとか・・・そんなことが情報だというふうに考えがちです。

 つまり、業界紙が取り上げてくれることが情報だと勘違いしているビルダーが多いのです。そんなふうに考えるから、わが社には発信するだけの情報がない。したがって、ホームページも作らないということになってしまいます。

 実際のところ、中小ビルダーのホームページは、立派なくせにつまらないものが多いのです。
  専門家に金を払ってホームページを立ち上げることは誰にでも出来ます。金さえかければ、立派なものが出来ます。
  しかし、それがどんなに立派なものであっても、内容が改訂されず、いつ開いても内容が変わっていなければ、もう二度とアクセスしてはくれません。最低でも週に一回、あるいは月に2、3回は改訂されないと、黙殺されてしまいます。見かけよりも内容です。

 それだけではありません。なまじホームページを開いて、何ヶ月も改訂を行わないと、その会社はホームページすら維持出来ない会社ではないかとか、あるいは何かあったのではなかろうかと勘ぐられます。

 つまり、情報というのは発信し続けないと意味がありません。

 「そんなこと言ったって、毎週とか月に2、3回も発信する情報がないよ。完成現場見学会だって二月に一度がせいぜい。大企業のホームページだってそんなに変わっていないじゃないか・・・」という声が聞こえてきます。

 たしかにそうです。ですから大手住宅会社のホームページも、それほど読まれていないのです。半年に一度開いて見るだけでことが足りるのです。如何にきれいで、動きがあり、カッコ良くても・・・

 さて、ここで地場の中小ビルダーの売り物は何かと考えてみましょう。

 大手に比べて、地場のビルダーは一般に社会的な信用力が低く、技術力や商品力で特筆するほどのものはありません。最近では高気密高断熱というのはどこでも取り上げていますし、エコとか自然素材も当たり前のことになってきました。商品の差別化をしようとしても、なかなか差別化出来ません。

 しかし、それでなぜ仕事がとれているのか。
  いくつかの現場を見て、入居者の声を聞いて「この会社の社長なら間違いない」とお客が感じたからです。

 つまり、商品よりもお客は中小ビルダーの経営者を見て差別化している場合が圧倒的に多いのです。部長でも常務でもありません。中小ビルダーの場合は、社長が消費者から選ばれます。社長自身が理念を語り、そのポリシーがきちんと実行されているかどうかを確かめて、社長に賭けているのです。

 大手の場合、失敗したものは転勤させられます。
「あの男は責任を取らせて転勤させました」と言われれば、文句の付けようがありません。
  また、優秀な人材は出世をして、これまた数年で転勤します。

 大手の住宅会社の場合は、地場で骨を埋めるという考えがありません。
いずれも腰掛け。だから支店長に惚れて契約しましたという物件はありません。これに対して、地場ビルダーは「東京が駄目なら大阪があるさ」というわけにはゆきません。
  一生地場で働き続けます。
  とすると、いいかげんなことは出来ません。
  手抜きをしたのでは、あとあとのメンテナンスが大変です。
  中小ビルダーの社長は、常にその一挙一投足が見られています。口先でごまかすことは出来ません。全責任をもって顧客と対峙することが求められています。

 サラリーマン社長と違い、全責任とリスクを負っているのが中小ビルダーの社長です。したがって、中小ビルダーを選ぶということは、社長を選別するということにほかなりません。

 だとするならば、中小ビルダーはもっともっと「社長を売る」ことが必要です。大手や他社と「社長で差別化」してゆくことが経営戦略の根幹になければなりません。

 逆に言うならば、差別化出来ない社長であったなら、その会社は長くもちません。社員は転身を考えるべきでしょうし、消費者はそんなビルダーを選んではなりません。

  いいですか、「社長を売る」ということでホームページを考えてみましょう。
  月に2、3回、社長が感じたことを随筆的に書くことだって、立派な情報になります。おいしいそばやの裏話、顧客にきいた商売の秘訣、想像もしていなかったクレームの発生での苦労話、社員の奥さんに言われた耳の痛い話・・・

 親しみのもてる情報は、いくらでも発信できるのです。