| ■中小ビルダーの売り物は“社長” である! (4) |
| 全国に中小ビルダーの数は何万とあります。 しかし、そのほとんどは家業として個人的に行っている工務店であって、会社といっても社会的な存在とは言えないかもしれません。 大手メーカーや分譲業者の下請けの工事店だと、たとえ倒産したとしても下職には迷惑をかけることがあっても、消費者に直接金銭的な面で迷惑を及ぼすことはありません。どうしてもうまくゆかなくなったら、会社を畳んで運転手になるという現象が今までもよく見られました。 しかし、地場ビルダーとして直接消費者から仕事を請け負っていると簡単に会社を潰すことは出来ません。会社を潰さずに永く存在することが、消費者に対する社会的な責任の第一歩です。 とは言え、私もあまり威張った口はきけません。間接的に会社を潰し、顧客に迷惑をかけたことがあるからです。 最初は雇われマダムで注文住宅業界始めました。4人のお客さんを獲得した時点でスポンサーの資金がなくなり支援を打ち切られました。このため別の会社へモデルハウスとともに身売りをして、なんとか4人のお客さんの家は責任を持って完成させました。最初の2年間は正月元旦以外は一日も休めないハードなものでした。移った会社も注文住宅を始めたばかりの中小企業。技術も商品も会社の管理体制も滅茶苦茶。その会社の立ち上げに狂奔させられました。 年商8億円程度の根の生えていない、吹けば飛ぶような会社。 それでも社長は私の言うことはよく聞いてくれました。若い優秀な技術屋を徹底的に教育し、商品開発を進めたら7年間で年間工事高100億円を突破することが出来ました。 その時点で、私は社員持ち株制度の導入と店頭市場への上場を強く社長に働きかけました。企業が社会的な存在になり、顧客のことを考えるとそれ以外に選択肢がなかったからです。社長は私の意見を聞き、証券会社の人間を呼んで上場の準備を始めている風に見えました。 ところが、富士銀行から専務と副社長を迎えてからおかしくなってきました。 銀行から来た専務は、社長の歓心を買うことと銀行のカネを使わせることに血道をあげました。まず800坪の土地を16億円で買い、2億円の豪邸を建てて社長一家を住まわせ、その家の建築費と維持費は会社のモデルハウスとして、光熱費などの一切を会社で払うようにしました。公私混同の見本を堂々と富士銀行の名でやって見せ、社員のモラルと意欲を見事に削ぎ落としました。 そして、4億円で小金井カントリーの会員権を買わせました。小金井カントリーは木下工務店の木下元社長も会員になれなかったように、成り上がりの不動産関係者を会員にしない内規を持っています。このため4億円はパー。また新宿のノーパンしゃぶしゃぶに関係者を連れ込むなど、銀行屋は折角育てた会社をズタズタにしてしまいました。バブル時代の銀行屋も悪いが、会社を自分のものと考えた社長が一番の悪です。そんな社長の本性を見抜けなかった私も、共犯で責任があります。 注文住宅の経営者に必要な資質は、消費者のことを第一義に考えるか、それとも自分の欲を第一義に考えるかです。 どんなに口で立派なことを言っても、お客を儲けのための手段としてしか考えていない会社は、早かれ遅かれ傾きます。 私が仕えた社長は、会社が成長する過程では私の言う「顧客志向」ということを守り、私の打つ手に積極的に賛成してくれました。私は社長が変身してくれたのだと思い違いをしていました。そして、社員持ち株制にも賛成してくれるものと考えていました。ところが、あとで分かったのですが、1億円の資本金を独り占めしていた社長は、身内の経理を使ってなんと4割配当をして私財を増やしていたのです。奥さんと娘さんを含めて6千万円の年収と4千万円の配当。それを銀行の茶坊主が後押しすると、歯止めが効かなくなります。私欲が限りなく膨らんで、結局は会社を潰しました。その半分以上の責任が富士銀行にあります。 世の中の中小企業の社長には、このような食わせ者が多くいます。 私は、このような社長のために働くべきではなかったのです。5年早く、会社の売上げが20億円までゆかない前に身を引くべきだったのです。その方が、顧客に与える迷惑が少なくて済んだのです。 行列が出来る工務店の著者は、私は基本的に顧客のことを考える社長ではなく、自分の利益と名誉欲を第一義に考え、顧客を単なる手段としてしか考えていない部類だと思います。 したがって、書かれていることはテクニックだけ。そのテクニックにはっとするものがありますが、メッキは早晩禿げてしまいます。一番大切なのは顧客を大切にするポリシー。 いささか宣伝めきますが、そういった点では私が著した「顧客が絶対満足する家づくり」の山口社長と、このほど上梓した「豪雪地魚沼のベンチャー・高気密住宅ものがたり」の桐生社長は、消費者のことをどこまでも第一義に考えている素晴らしい社長です。 間違いなく本物です。 こういった社長に巡り会えた消費者こそ本当に幸せ者。お客のところを取材していると楽しくなってきます。企業というのは潰してはならないのですから、儲けることも大切です。しかし、同じ価値観を共有していつまでも仲間として付き合ってゆける「輪」こそが…。 たしかに工法とかシステムとかも大切。 しかし、私は最近こうした素晴らしい社長を発見し、それを地場の消費者に紹介してゆくという地道な仕事こそ、私がやらねばならない仕事だと考えるようになってきました。 社長以外にも、私は信頼出来る多くの設計士や現場監督を知っています。しかし、そうした個人は、いかに立派であろうとも、トップが変わり、経営方針が変わると、必ずしもその良さを発揮することが出来ません。会社は時には人を殺します。そして、場合によっては会社を辞めることになりかねません。個人的に顧客と一生つきあっても、会社として保証してくれないということになりかねません。 現に前の会社の私がそうでした。 このままでは会社が駄目になると分かったら、変わりになる会社を見つけて地固めし、顧客に出来るだけのサービスをしてゆく義務があります。しかし、個人としては、それ以上のことはできません。 したがって、しっかりしたトップのいるビルダーでなければ駄目なのです。どうしてもトップなのです。 私の目で間違いのない社長を発見して、それを正しく皆さんに伝えてゆく。テクニックよりも人の発見。 一人で出来る範囲は自ずと限られますが、なんとか皆さんの協力を得て一つ一つ積み上げてゆきたいもの。 そして、むずかしいのはこのトップの交替劇。 次回は、その問題を考えてみたいと思います。 |