■中小ビルダーの売り物は“社長” である! (5)

 会社の寿命は30年と言われます。
  革新的なことをやり、新規事業を軌道に乗せ、やれやれと安心していると30年。会社は金属疲労とか組織疲労で破壊を起こします。

 ツーバィフォー業界はちょうど30年。
  ほとんどのビルダーは、当時はバリバリの革新軍団でした。
  一騎当千のやり手が揃っていました。中には名誉欲とか権威欲の固まりのような食わせ者もいましたが、住宅産業の新しい旗手たらんとほとんどのビルダーは意欲にあふれていました。

 公社や公団もツーバィフォーを採用し、フリーなデザインと輸入住宅ブームが後押ししてくれました。阪神淡路大震災でもその耐震強度が見事に立証されフォローの風が吹きました。

 それなのに、会社もツーバィフォー協会も更なる革新を追わず、安住し、組織と意識の金属疲労が進み、昨今の木軸剛金物に完全に追われる身に転落しています。30年目の転落が始まっています。

 R2000住宅こそが、他の工法に対して差別化出来る、そして体質改善を図れる絶好のチャンスであり、最強の武器だったのです。厳しい基準と精度を完全にこなせるように脱皮しておれば、今どきあたふたする必要は一つもなかったのです。顧客の支援を得て攻めの仕事に徹することができたのです。しかし、安直な道を選び、一部の大手メーカーの心ない技術屋のミスリードで、業界の沈没が始まっています。

 今はまだ床下浸水に過ぎませんが、間もなく床上まで浸水してくるでしょう。避難の準備を急がねばなりません。

 この数年の間に、地方の代表的なビルダー仲間の多くが倒産してしまいました。倒産しないまでも、かつての勢い、馬力、覇気を失った者が多くいます。元気印は数えるほどになりました。

 その原因はいろいろあります。
  しかし、基本的な原因は (1) 顧客第一主義を貫徹させなかったことと (2) 常にイノベーションを追い続けなかったこと、に尽きます。

 地場ビルダーというのは、その一挙一投足が、地場の顧客から24時間、365日監視されています。少しでも手と気持ちを抜いたりすると、ましてまやかしがあっては許してもらえません。悪い口コミはボディブローのように効いてきます。社長が本気で顧客のことを考え、最前線に立って努力を続けていないと、口コミ客は起こってきません。少しばかりの業績に有頂天になって遊びが多くなり、名士然たる動きが出てくると、地場の顧客は警戒してそのビルダーを避けます。

  また、イノベーションは一時も休んではなりません。
 小手先の外断熱とか防犯などというものに流されてはなりません。
CO2を削減するということが、これからの住宅の基本命題です。ハイブリッドで快適な家づくりという難しくて、楽しい課題から一時も目をそらしてはなりません。

  それを、輸入住宅とかなんとか目先のテクニックで誤魔化そうとしたのが業界の実態だったではないでしょうか。危ないプレカット化、パネル化もありました。これは、明らかにイノベーションに逆行しています。そのことすら忘れていたということではなかったでしょうか。

  かつての革命児達は、いま金属疲労をした会社の社長から去る時期を迎えています。
バトンタッチの季節です。

  昔の商売の場合だと、会社を引き継ぐということは財産を引き継ぐということでした。財産の分配が問題でした。そのために心配ごとは法人税や相続税のことが中心的な問題になっていました。ぼんくらな息子ではなく、娘に婿をとっても、甲斐性のあるものに継ぐことだけを真剣に考えれば良かったのです。

  それが現在のビルダーの場合は、後をつぐということは大きなリスクを継ぐということにほかならないのです。金属疲労を起こしている会社です。いつつぶれてもおかしくない環境にあります。いい気になって社長になったがために、破産の当事者として夜逃げをしなくてはならなくなる怖れが大きいのです。

  少子化と耐久性の向上から、住宅の需要はますます少なくなってゆきます。競争はますます激化します。ものすごく商売がむずかしくなってきています。息子だから、親のあとを継ぐという安易な気持ちでは誰もついてはきてくれないでしょう。やる気と人望のない息子に会社を継がせて、早晩お手上げになるくらいなら社長の代で始末をつけるべきかもしれません。だれにも迷惑がかからないように、綺麗に去るというのが一つの選択肢です。

  そして、今多くの地場のフアンを持っている社長の場合は、自分が抜けたあと最低10年から15年は第一線で身を張って頑張れる者を今選ばねばなりません。

  大手の不動産系の住宅会社の場合は、社長の任期はせいぜい五年くらいのものです。親会社から順番に派遣されます。したがいまして、社長は常に親会社の方を見て仕事をしています。顧客の方を向いて仕事をするという発想がありません。あったにしても、親会社が許してくれません。このため、任期中に問題が発覚しないように、臭いものに蓋をして誤魔化すようになります。三菱自動車と基本的に変わりません。したがって、大手系のほとんどは本心から信頼出来ないということになります。

  ビルダーの新しい社長が、社員からも、下職からも、顧客からも信頼されるようになるまでには、最低三年から五年はかかります。そしてそれからの10年間が、脂の乗った仕事の出来る季節です。
今までのビルダーのトップはほとんどが創業者でした。したがって試行錯誤を含めて30年近い寿命がありました。
ところがこれからの二代目のビルダーは、その寿命は15年と考えるべきだと思います。15年で精魂が尽きるほど厳しい環境です。

  新しい社長が継がなければならないものは 
(1) 顧客第一主義で、どこまでも顧客の方を向いて仕事をする
(2) 常にイノベーションを忘れず、新しい技術に対してトライを続ける
(3) 会社とか組織は、そして意識は常に保守化する。ともかく社長が最前列で保守化と戦う勇気を持ち続ける
(4) 社員の創意工夫を汲み続ける

  社長というのは「表紙」です。
 全員が納得出来、顧客に安心を与えられる表紙を早急に選び、準備させねばなりません。

 今まで、一番問題を起こしているのが兄弟で親父の会社に入っている場合です。骨肉の争いが会社をおかしくした例は枚挙にいといません。内紛を避けさすことこそ、引退する社長の最後にして最大の仕事と言えるようです。
(了)