■設計の「提案力を高める」という大きなテーマ

 8月6日、恒例のナイスフェアと日本経済新聞の「からだ博」が同時に開催されていたので行ってきました。

 日経のからだ博はセミナーが充実しており、大変期待していたのですが、展示は思ったより狭い会場でたいしてめぼしい展示もなく、がっかりさせられました。
  坂本健先生のユビキタス社会の医療システムについては、それなりのおもしろさはありました。しかし、特別新しい発見がありませんでした。トヨタホームが来年の愛知博にあわせてユビキタスの住宅を展示するといっていますが、どこまで期待していいものか…。

 ナイスフェアについては、最近2、3の会社から「設計の提案力の時代。如何にして提案力をつけさせるか」という同じ課題を聞かされていたので、今年は「ナイスフェアが設計の提案力にどれだけ貢献するか」という視点で見てきました。

 今までは、どんな新しい商品とか資材が開発されているか、中で使える面白いものがないか、ということで探し回っていました。この2、3年はノン・ホルムアルデヒドとか、自然素材とか、換気とか、防犯とか、それなりに社会的なテーマがあり、いいとか悪いとかは別に世の中の流れを感じさせてくれました。

 しかし、今年はそうした社会的なテーマが不在。

 耐震は古くて新しいテーマですが、展示方法が古すぎて参考になりません。最近、住宅業者で1、2面白い仕掛けを見ていたので、残念ながら勉強が足りないと思いました。

 また、集成材によるラーメン構造とか、ツーバィフォーの防火性能認定とかというタイムリーな話題があるのに、それが企画に全然反映されておらず、いささかがっかりさせられました。
  木材界のリーダーなのですから、そこらあたりを強烈に参加者に伝えて欲しいとお願いします。

 さて、私が課題としていた提案力を増すためのヒントが転がっていたでしょうか。

 例えば、最近私が訪れた各社の新居に、なんと多くイヌとかネコを飼っている 家庭の多いこと。
  感じでは2軒に1軒はペットがいると考えていいのではないでしょうか。それほど多くなってきています。
  それに対して、個々の設計はいろいろ苦心してそれなりに面白い提案をしています。

  なんといっても問題になるのは床と腰壁。
  赤ん坊のイヌやネコだとおもらしします。
  人間の赤ちゃんのようにおむつを当てることは出来ません。このため、おもらししてもいい床材、簡単に洗える床材の選択が大事になっています。

 しかも、イヌやネコが滑るものだったり、カタカタと音が響くものであってはなりません。

  玄関のタイルから上がり框まで、今までの常識が通用しません。
  それに対して適切なアドバイスをお客は求めています。設計は大変に苦労しています。このため何かいいものはないかと各社の展示を探し回っていたと思います。
  具体的なヒントが1つでも2つでもあれば、どんなにか助かったことでしょう。

  日経に積水ハウスの庭木のことが書かれていました。
  野鳥が飛んでくる庭のためには、どんな木を植えたらいいか。
  今までの苗木ではだめだそうです。小鳥が喜ぶ木を、季節ごとに絶えず訪れてくれる木を選んで植えないと、どんなにエサ場をつくり、水飲み場をつくっても小鳥はやってこないそうです。
  そこで、小鳥のくる庭造りを積水ハウスがはじめました。

  ということで、設計は植木のことまで勉強しなくてはならなくなりました。そのことを教えてくれる展示があったらいいなと思っていた設計も多かったと思います。

 つまり、動物とか植物とか、そういった生き物を相手に設計をしなければならなくなってきているのです。単に無垢の木を使えばいいという時代ではないのです。自然素材の中に、動物や植物が入りこんできているのです。今までの常識の延長線上でお客さんの要望を考えてはいけないのです。エコロジーというのは、私どもの経験で御することはできない世界です。

  つまり、もう間取りの時代ではないのです。
  プレハブの箱のような家でも、中に入れば驚くほどの提案が一杯あります。
  なるほど、ここまでやっているからあんな無味乾燥と思える鉄骨プレハブが売れているのだと感心させられました。私はプレハブの設計の人々を少し馬鹿にしていました。決められたことしかやらせてもらっていないかわいそうな人々だとたかをくくっていました。これはとんでもない間違いでした。

  木造は、フリープランです。
  お客の間取りの要求は、構造的に問題がない限りかなえることは出来ます。そのことに安住して、顧客の心をくすぐる提案をあまり熱心にやっていません。

 あるいはその性能の良さにおんぶして、お客の細かい要望に耳を傾けるのを忘れていたと思います。

 設計の提案力というのは、いくら頭で考え、本を読んで勉強してもつきません。実際の、面白い提案を、より多く見て歩くことです。最初は物真似でいいのです。真似ることで自分の身につきます。そして強調したいのは、フリープランでない工法ほど提案が多くあるという事実です。そうでないと売れないから必死に頑張っています。

  間違わないで下さい。
  私は鉄骨プレハブがいいとは言っているのではありません。絶対にあんな住宅は嫌だと思っています。
  しかし、その住宅を顧客のニーズに合うように賢明の提案を続けている設計士がいることを忘れてはなりません。

 彼ら以上に、木造の、フリープランの設計士は勉強しなければなりません。そして、その設計士の提案力に具体的に答える展示を出展している各メーカーさんに求めたいと思います。

 来年のフェアは、1つでも2つでもいいから是非このことを考えてみてください。