■18号台風下の北海道紀行(1) あまりにも醜い札幌の住宅


 7日から9日まで北海道へ。目的は各種の工場視察。
 8日朝の9時、台風はちょうど札幌の周辺。時速60キロ程度で北上中。幸い雨はなく強風のみ。
  その台風と一緒に北上して旭川へ。
  高速道路が閉鎖しているので、一般道を時速50キロ程度で台風と道連れ。

 ところが、瞬間最大風速30キロ程度の風が吹き荒れているので、運転はハンドルが取られそう。

 岩見沢、美唄、滝川、深川と行くに連れてビニールハウスのビニールが吹き飛ばされているのが目に付き出した。

 そして、屋根のトタンが一部剥がれているのが目立ちだした。
 古い家で、野地板として使っているのが小幅板。
 そして、断熱材は見えない。

 やがて、あちこちで立木が根こそぎ倒れたり、地上1メートルくらいでポキンと折れているのが目立つようになってきた。

 根こそぎ倒れている木を見ると根が浅い。
 北海道はめったに台風がやってこない。
 台風銀座の沖縄や九州の木は鍛えられている。いつも台風がやってくるので、根が深くまで張っている。そして、幹はしなやかに曲がって、ひっくり返ったり折れたりはしない。
 ところが、台風が温帯低気圧に変わってしまうので、ボンボンの北海道の木は根が浅い。すぐひっくり返ってしまう。

  そして、驚くような風景が目に飛び込んできた。
一面の里山の1000本ぐらいある木の、半分近くが折れたり抜けたりして倒れている。

  いまから35年も前のこと。
 台風で青函連絡船が転覆し、大きな被害が出た時があった。
 その年、東京の建具屋とか家具屋は北海道の風倒木を買うために我先きと北海道へ来た。当時は、道材は貴重な資源であった。
 ナラ、セン、タモなど、優れた広葉樹が多かった。
  テレビとか新聞は、街路樹の風倒ばかりを問題にしている。札幌の街路樹の2500本が倒れたとか…。

  しかし、街路樹の何十倍か何百倍かの樹が、山林で倒れているはずだ。ところが、誰一人としてそのことを問題としていない。話題にならない。それほど日本の国産材は、その存在価値を失ってきている。台風で荒れる北海道の山々を見て、つくづく時代の流れを痛感させられた。

  そのうち、路肩にコロリと横倒しになった大型のトラックが2台もあった。空荷の背の大きなトラックがまともに横風を受けたのだろう。

  そして、次第に屋根のトタンの剥がれている家が多くなってきた。多いところでは3軒に1軒は剥がれている。そして、ほとんどが長尺ものの長いトタン。
 女のワンピースか何かのように、裾からめくれてあっという間に剥がれている。そして、剥がれたトタンは風で運ばれ、電話線
や電灯線に絡み、停電を引き起こしている。

 次第に、信号機が消えているところが多くなった。

 そして、車窓の外にはトタンが吹き飛んだだけではなく、たるきごと飛んだ家や折れた樹木、乱舞するビニールハウスのビニールというすさまじい風景が連続する。

 入居している人には悪いが、ほとんどが10年保証の対象外の古い家である。さすがに、10年保証が義務付けられた最近の住宅の屋根はほとんど被害を受けていない。10年保証が付いていると、業者が無償で直してくれる。しかし、古い住宅の場合は、果たして業者が保証してくれるのはどれくらいあるのだろうか。1割にも満たないのではないだろうか。

 とすれば、消費者は保険に入っていない場合は、自分の負担と責任で直さねばならない。
  根こそぎトタンが剥ぎ取られているので、家財道具は雨で全部やられる。
  そして、板金屋はてんてこ舞いで、おいそれとは来てくれない。来てくれても、ブルーシートをかけて、当面の応急処置をとるのが関の山であろう。

 今から15年前に千葉の茂原地震の時、木軸の農家住宅の全ての棟瓦がズレ落ちて、半年間も棟にブルーシートが掛けられたままになっていた。それと同じ現象が、石狩平野でこれから雪が降るまでの季節、目撃しつづけることになろう。
  台風に無防備な北海道の住宅は、今回の台風で大変な試練を受けた。そして、多くの消費者が泣かされている。

 3日間、札幌から旭川、千歳へと高速道路ではなく下の道を走り回った。そして、次第に怒りが募ってきた。
  3日間で、これはという美しい住宅に出会ったのはたったの五軒。新築住宅は屋根のトタンが飛んでおらず、入居者に雨漏りの同情はする必要はなかった。しかし、あまりにもデザインの醜さに、よく我慢させられていると心から同情するとともに、情けなくなってきた。
 旅行者よ。貴方は北海道へきたら、住宅街を見てはならない。ヘドが出るほど醜く、描いていた北海道の牧歌的なイメージを滅茶苦茶に破壊され、情緒がガサガサに荒らされてしまうから…。

  敷地が狭くなって、フラット屋根の無落雪住宅のオンパレードとなってきた。
 今プレハブ住宅ではシンプル・モダンという名で陸屋根が大流行。
 北海道は10年前からこの無落雪というシンプル・モダンブーム。多くの家の中で1戸とか2戸の時はシンプルがモダンに見えた。ところが新開発団地のほとんどがシンプル・モダンになってしまったら、その醜いこと、醜いこと。

  こんな醜い住宅が、これから50年も70年も建ち続けているのかと考えたら、もう二度と北海道へは来たくなくなってきた。

  カナダの古い町。100年も200年も昔の情緒あふれる美しい家が残っている。美しい家が風景を引き立てる。だから何度でもカナダを訪ねたくなる。

  それに比べて札幌の最近の住宅ときたら…。
 住宅業者はカネ勘定だけで、都市の美観を全く忘れてしまっている。多くのビルダーは環境の破壊者になっている。
 何故、融雪などの技術開発を急ぎ、札幌という観光都市を守ろうとしないのか。観光こそ最大の売り物ではないのか。
 木の城たいせつをはじめ、多くのビルダーは心から反省して欲しい。札幌を醜くしたのはあなた達なのですぞ!!!
 私が大好きだった札幌は無くなっていた。
 あるのはシンプル・モダンではなく、シンプル・無センスでありシンプル・無ムードだった。

  皆さん。札幌の住宅は間違いなく日本で一番醜く「世界で一番住みたくない家」のスプロールとなっています。 北海道へ行くなら札幌を避けて旅程を組むことを心から提唱します。

  台風18号は古い美しい家を残して、こうした醜い家を根こそぎ吹き飛ばしてくれれば良かったのに………。