■18号台風下の北海道紀行(3) 「地産地消」の難しさ


 最近「地産地消」ということが叫ばれています。
 地場の木で住宅を造ろうという運動です。
 吉野檜とか木曾檜の産地の場合は、もともと軸組の柱の生産を前提に造られた林業ですから、地産地消ということは檜で在来軸組の家を建てようという運動になります。

  しかし、間伐材や地杉の場合は、地産地消イコール在来木軸では展望が開けません。
 とくに北海道の場合は、人工林の52%がトドマツで、31%がカラマツだといいますから、集成材とかTJIに加工して、ツーバィフォーを含めた木構造に使えるようにすることこそが地産地消の近道です。

  道材でツーバィフォーをという動きが、10年くらい前から道林試をはじめ、関木材、久保木工などで開始されてきました。その紹介はビルダー経営研で数年前にされているので下記URLを参照して下さい。
http://www.builder-net.com/special_interview/009/special_9_1.html

  旭川といえば、最近では動物を迫力のある動きの中で見せるという旭川動物園が大ブレーク。わざわざ内地から訪れる人を含めて年間120万人の入園者が見込まれるとか。上野動物園を上回るというから立派。

  こちらは、商売柄関心があるのは「林産物園」。
旭川空港のすぐ南西の国道237号沿いに「ウッディ王国」があります。
  広い敷地の中に久保木工の美しい工場群が並んでいます。

  木工場というと、薄暗い、ノコ屑の散乱した、天井の低いうらさびしい工場を連想しがちです。
  そうでなければ、古い木工団地によく見かける鉄筋造りで、木毛セメント板などがむき出しになった味もそっけもない冷たい工場。

  ところが、久保木工は大きな工場棟が6つ。事務所や倉庫などの棟が5つありますが、いずれも天井が三階建てよりも高く、全てヘビーテンバーないしは集成材による木造。
外観がなかなかおしゃれで、札幌の住宅よりもはるかに美しく、気分が慰められます。

  (閑話休題  先々週札幌の住宅が醜いと書いたら、北海道の何人かのビルダーの方が文句を言っていたそうです。ところが、東京で札幌のことを良く知っている消費者の方3人から「全く言われるとおり。札幌でスウェーデンハウスなどを見るとほっとする」というご意見をいただきました。素人だと馬鹿にしていると、皆さんの方が見抜いていますよ ! )

  ただ、この大型木構造。面白いには面白いのですが、防火という面から金物などに難点があります。木構造として話題性はありますが、カナダのきちんとした構造物に比べモデル性に欠けているのが残念。それでも面白い。

 旭川というと日本でも代表的な寒冷地。凍結深度は1メートルを軽く突破。そんなところで、抜けるように高い天井の工場だから、冬期の暖房が気になります。手がかじかんで仕事にならないのではないか、と。

 ところが、窓は木製サッシでペアガラス。しかも床暖房。
緑色の床がなんとも清潔です。
「ノコ屑などでは足りなく、重油を焚いている」と久保社長。
  いずれにしても、おとぎ話に出てくるような楽しい木工場。こんな工場が日本にあったのですね。
  何としてでも、この工場は発展してもらいたい。この工場が駄目になるようでは、それこそ日本の木構造と「地産地消」が駄目になってしまいます。

 さて、この工場でどのようなものを生産しているのでしょうか。それは下記のホームページを開いてもらった方がよくわかります。
  http://www.kubo-mokko.co.jp

 サクラ材やコーク材(キハダ)を使ったサッシや建具のことは省略します。

 問題にしたいのは2000年から生産を開始したIビーム。
Iビームというのは、トドマツをフランジ材としてウェブに道産カラマツ合板を使い、210ないしは212のセイの根太またはタルキとして使おうというもの。
 というのは、トドマツの間伐材などからは、せいぜい204材か206材しかとれません。これだけでは住宅は建てられません。どうしても210とか212材が必要になります。それを
Iビームでこなしてゆこうという考えです。

 素晴らしい発想です。
 ところが原木の仕入れと価格が問題になってきました。
  トドマツからツーバィフォー材をと考えて先行したのが富良野の南東にある新得町の関木材。ロッキー山脈を越えるとカナダはSPFの小径木から204材を曳いています。道材のエゾ、トドマツとなんら変わりません。そこで、スタッド・ミル工場の製材からプレーナーなどをオペレーター付で導入しました。

 ツーバィフォーランバー価格が5万円台の時はなんとかなった。ところが4万円台になってきたら、日本のビルダーは輸入木材に走ります。また、道有林は木材の太いのも細いのも混ぜて買うように強要します。このため25センチ程度の径を前提にした関木材では処理出来ません。

 山で太い下から一番コロ、二番コロ、三番コロといいますが、二番と三番コロだけを道の役人は売ってくれない。このため原木が入手出来なくなってきているといいます。原木が売れないといいながら、売る努力をしていないということです。原木の入手難と価格が、道材のツーバィフォーをトーンダウンさせてきています。

  同じことで、輸入のヘラヘラするIビームに価格だけでビルダーが走り、道材のIビームが育ちません。もうちょっとのところで、足踏みしています。
 北海道は大きな赤字を抱えているから、道材を使った住宅に特別融資をするとか補助をするという手段をとることは出来ません。

  同行したマイスターハウスの山口社長は「これだけの工場と資材が群馬にあるならば、全面的に活用する。本当にもったいない」とつくづく言いました。
 私も全く同感。
 道材をうまく活用すれば、たとえ部分的に単価は高くても、総合的に吸収して、競争力のある面白い商品が開発出来ます。簡単に集成材を造るとも出来るのですから。

  やはり、志を同じくするビルダーが3、4社集まり、月10
棟程度の需要をまとめることさえ出来れば、面白い地産地消が可能になります。

 北海道のような条件の揃ったところで地産地消が出来ないと、日本ではどこでも地産地消は不可能でしょう。日本の山林という財産が死滅することになります。なんとか北海道のビルダーの仲間に頑張って欲しいと、心から切望した旅でした。

(了)