震度6を3つの場で体験した貴重な証言  新潟中越地震(3)


  それにしても、二度と起こり得ないという珍しい体験談を聞くことが出来ました。


  トピアホームで営業をやっている小林さん。

 もともとは大工さんで、セイガイ建築という民家建築の技能を体得しています。しかし、今はトピアのSWの営業に徹している好奇心とバイタリティあふれる中堅。


  23日の一回目の震度6弱の揺れを、SWのOBさんの家で経験。

 そのあと、在来木軸の家で二回目の震度6に遭遇。
 そして、三回目は帰る自動車の中で体験。

 一日に、震度6の地震を、それぞれ違う構造物と自動車の中で体験したという例は、今まで聞いたことがありません。それだけにその体験談が生々しく、迫力と説得力を持っています。

  SWといっても、その仕様は全国一律ではありません。
 トピアのSWの仕様は次のようになっています。
 基本的な構造は剛金物木軸工法。
 集成材の4寸柱を使っています。そして、柱と柱の間に構造用面材の断熱パネルをはめ込んでゆきます。
 床は3尺間隔に床梁を入れ、29mmの根太レス合板を張り、剛な床を形成します。

  木軸工法で二階床をいたずらに剛にすると、逆に地震に弱くなるとされています。なぜなら、通し柱に胴差しの溝が掘られています。床が剛だと胴差しの部分に水平力が集中して、細い通し柱が簡単に折れてしまうから。
 したがって、通し柱に負担のかからない剛金物を用いないかぎり、二階の床を剛、つまりプラットフォームにしてはならないと言われています。

  このように、最近では木軸でありながら、外壁に構造用面材を用い、床をプラットフォームにした新しい剛金物による木構造が出現してきています。
 木軸でありながら、ラーメンに近い剛接合。しかもツーバィフォーのメリットもちゃっかり借用しています。これは、北米のポスト&ビーム工法よりも金物が木部の中に隠れている分だけ優れています。

  SWとかUWとかというこうした剛金物木軸を、プラットフォーム構法の一つとしてカウントしたいと思います。
 そのSWのOBの家で一回目の震度6弱を小林さんは体験したわけです。
 その時は、こんなに大地震に遭遇するのは初めてで、ただおろおろしていたそうです。比較するものが何もないから、震度6弱の揺れとはこんなにも激しいものだと感じただけでした。

  そして次はこれから着工する施主の在来木軸の家へゆき、そこで二回目の震度6に合いました。そしたら、先のSWの家の揺れと全く違っていたと言うのです。

  「体験すれば違いが直ぐ分かるのですが、口で説明するのは大変に難しい」といいながら、なんとか小林さんが話してくれたのは次のようなものです。

  SWの家の揺れはゆったりしています。
  こう動いて戻ってくるということが分かります。
  粘り強くて、地面の揺れにすぐに反応しない。 
  したがって、地面の揺れが直に伝わってこない。

 これに対して、在来の家は揺れにすぐに反応する。
 その反応が小刻みで、バラバラ。全部の揺れを拾います。
  私の家も在来軸組。商売柄補強金物は密に入れ、かなり丈夫にしています。しかし、揺れ方そのものはお客さんの家で感じた震度6と変わりません。今朝も朝方、震度4の余震がありました。地面の揺れにビンビン反応していました。

  たとえて言うならば、少しデコボコした道を大型の乗用車で走る時と軽自動車で走る時の差です。
軽自動車だと小さいデコボコを全部拾って激しく小刻みに揺れます。これに対して大型の乗用車だと小刻みな揺れはほとんどなく、揺れがゆったりしています。

  車の場合は誰しも経験していることで、常識です。
 しかし、住宅の場合は軽自動車と大型乗用車の両方を同時に経験することがないので、在来軸組とSWの揺れの大きな違いが立証出来なかったと思います。
 そういう意味では、実に貴重な経験をしました。

  三回目の自動車の場合は、時速50キロ程度で走っていて突然タイヤが外れたのではないか思うほどの横揺れ。危うく対向車にぶつかるところでした。全部の車が急ブレーキをかけて停車しました。

  自動車の中の揺れは、船に乗っているような感じ。タイヤとバネのクッションで安心感があります。全然怖さが違います。
 何と言っても、音がしないということ。
 住宅の場合は木材がきしむ音、サッシがバタバタ走り動く音、瀬戸物が割れたり、物が落ちる音がします。この音が恐怖心を煽ります。罹災された人々が、建物の中よりも車の方を選んだというのは、こうした音の問題が大きかったと思います。

  小林さんの体験談で、プラットフォームで外壁に面材を用いた住宅の揺れは、今までの木造とは全く異質のものであるということを証明してくれていると思います。
 このことはすでに何百万人という人々が、ツーバィフォーなどのプラットフォームの住宅に住んで見て、体験済みのこと。特別に珍しいことではありません。

  そのプラットフォームの耐震性は実験などで立証されていますが、実際的な体感耐震度については学問的に明らかにされていません。プラットフォームは揺れを感じ難いと分かっていても、在来軸組とどれほどの差があるかを誰も調べていません。
 これは、地震直後に最低2000人規模の面談調査をやらないと、はっきりした結論は出せないと思います。そんなフィールドワークをやろうなどという学者も機関もありません。

  そこで、今度の新潟中越地震で、30人程度という限られた人々に聞いた範囲と室内状況から、下表の気象庁の震度階級関連解説表に基づいて次のように想定してみました。


震度 室内状況
室内の多数が揺れを感じ恐怖を覚える人も。 棚の食器が音をたてることも。
かなりの恐怖感。身の安全を図ろうとする。 棚の食器類は音をたて、座の悪い置物が倒れる。
5弱 多くが身の安全を図ろうとする。行動支障も。 食器や本が落ちる事も。家具が移動することも。
5強 非常な恐怖を感じる。行動に支障が。 食器や本の多くが落ちる。テレビが落ちることも。
6弱 立っていることが困難。 固定していない重い家具などが移動転倒。
6強 立っていることができない。 固定していない家具などほとんどが移動転倒。戸が外れ。
自分の意思で行動不可 ほとんどが大きく移動


 震度5弱の群馬で3から4程度の感じと屋内状況。震度5強の六日町で5弱から4程度。震度6弱、6強の十日町でそれぞれワンランク下の感じと屋内状況。
  プラットフォームは間違いなくこの程度の効果はあるようです。しかし、震度6以上でワンランクの差は非常に大きいと思います。