■どこまでがビルダーの責任なのか?  新潟中越地震(7)


  震度7の直下型地震被害について、まだまだ書かなければならないことがあります。しかし、今週は急遽予定を変更して「震災被害とビルダーの責任」についていろいろ考えさせられることがあったので、記したいと思います。
どなたか、正解の分かる方は教えて下さい。

 先週、北海道と群馬のビルダー仲間と新潟を訪ねました。初日は長岡、小千谷を訪ね、2日目に川口町に入りました。地元の方に迷惑をかけてはいけないと自分たちだけで視察をしましたが、渡部建築さんには特別に2時間余時間を割いていただき貴重な視察と交流を果たすことが出来ました。

 それぞれの地場で、住宅の耐震、気密、断熱性能に関してトップの実績を上げ、性能を保証しているメンバーです。震度6までの地震に関しては100%性能を保証する絶対的な自信を持っています。どこかのプレハブメーカーのように「全半壊はありませんでした」ということをPRしている業者とは違います。

 ところが、震度7の激震地に入ったら、つまり田麦山地域では90%が、武道窪の一部では99.4%が倒壊している地域。そこでも「わが社の住宅は倒壊しない」という自信を深めましたが、渡部建築の住宅が受けたような「予想外の被害は避けることは出来なかったろう」というのが共通の認識。それは、やはり想像以上のものでした。

  考えさせられた(1)は、建築基準法はどの程度の地震を想定しているのかということです。
  阪神大震災の震度7を想定し、800ガルまでを想定しているのか?

 川口町は地震発生から一週間後に震度7で、ガルは阪神の三倍の2515ガルであったと発表されました。このガルは町役場あたりの数値で、烈震地では4000ガルを突破していたのではないかとさえ推測されます。

 ということは、川口町の激震地の地震は建築基準法が想定していなかったもので、建築基準法を守っていた住宅も倒壊した可能性が高かったと言えるのではないでしょうか。それが90%以上の倒壊になった。倒壊しなかったのは、安全率を高くみていた住宅だけだったのではなかったのか?

 したがって(2)倒壊した住宅でもビルダーの責任とは言えないもの、つまり建築基準法の瑕疵だと言えるものが多くあったのではなかったか?

  さて、品確法で3等級をパスしていた住宅があったとします。
阪神大震災に耐え、88条3項の1.5倍に倒壊しない住宅です。
  今度の中越地震は震度6から5の余震がいくつもありました。このため、新築の時は耐震性能が3等級であったものが、余震によりボードなどのクギの効きが甘くなったりして次第に2等級から1等級に性能が劣化していることも考えられます。

 (3)その場合、品確法の耐震性能を3等級から1等級に変更する必要があるのかどうか?

  つまり、施主にしてみれば耐震性能が3等級だから契約したのであって、長く続いた余震で等級が1に劣化したのなら、再び3等級にして欲しいと言いたくなります。その時、ビルダーは復元する義務があるのかどうか? 

  法廷で争われた場合ビルダーが敗訴となるのか、地震という天災のためにやむを得ないと認められるのかどうか?

 次は設備機器の被害。(4)川口町の烈震でも住宅は倒壊しなかった。つまり1/60ラジアン以上の構造上の変異はなかった。したがってビルダーは基本的な耐震責任は免れたとします。しかし、想定外のガルでサッシや設備機器の破損などで施主は大きな損害を受けた。設備機器はいずれも保証期限が切れていた時、ビルダーや施主はどのような対応が可能なのか?

 例えば、蓄暖が倒れて火事になった場合にメーカーや施工業者に責任をとらせられるのか? 地震で火災保険が効かないように救済策はないのか?
  倒れたエコキュートのために受けた損害、墜落したクーラーで壊された家電製品などの損害に対して、メーカーや施工業者に損害賠償と機器の取り替えを求めることが出来るのかどうか?
 
  次は気密性能。
  先週書きましたように、直下型の震度7、2515ガルという烈震は、内部引き違い建具を瞬時に全部倒し、引き違いの外部サッシのペアガラス窓の一部を内外に転落させるという想定外の被害をもたらしました。
  高気密住宅が受けた初めての経験です。
  この貴重な経験に基づいて、製品改良が始まるだろうし、既存のものにも落下防止策がとられることになるでしょう。それこそ「災い転じて…」です。

  しかし、今度のサッシの落下現場では、単にペアガラス窓を取り替えれば良いというものではありません。枠そのものもかなり損傷を受けています。
  したがって、いくら調整しても相当隙間面積が0.5平方センチだったものが、1平方センチ内に収まるということは期待出来ないという気がします。
  出来れば、枠を含めてそっくり取り替えたい。
  ということになると、全体のサイデングそのものを張り替えるという大工事になりかねません。

 たとえばR-2000住宅の認定住宅があったとします。
 大臣認定で相当隙間面積を0.9cm2以下として認定してきました。これが今度の川口町が受けたような阪神大震災以上の烈震を受け、サッシだけでなく複合的な原因で相当隙間面積が仮に2cm2になったとします。  (5)その場合、施主はビルダーに対して0.9cm2以下にして欲しいと要求する権利があるのでしょうか? 想定外の烈震で気密性能が落ちた場合、それはビルダーの瑕疵となるのでしょうか。それとも不可抗力と判定されるのでしょうか。

 渡部建築をはじめとして地場の良心的なビルダーは、出来るだけ施主のために頑張っています。この際ですから、かなりの無理も聞き入れています。

 しかし、烈震地では次から次へとあまりにも多くの問題が発生してきます。
  どこまでがビルダーの責任なのか。
  その境界がはっきりしません。

 施主にしても、これは有料なのか、無料なのかが分かりません。「烈震災害時の判例集」か何かがあれば、お互いに納得づくで解決が図れます。
  ないので、毎日が手探り状態です。
  きちんとサポート出来るノウハウが、見あたりません。

 今度の川口町の烈震地域にあっても、倒壊しない住宅を造ることは技術的に難しいことではありません。地場ビルダーで十分に可能です。
  しかし、倒壊しないだけでは駄目なのです。
  ほぼ、無傷状態で、すぐ生活が再開出来る住宅造りが求められています。
  これは、小手先の耐震技術や高気密高断熱住宅技術だけでは駄目。ある程度工法を絞り、開口部を制限したり、仕様変更してゆかないと達成出来ません。

  「川口町は新しい課題を突きつけてくれている」
  ビルダー達は腹の底からそれを実感しました。