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10年前の阪神淡路大震災。 6000人にも及んだ死者のうち2/3は瞬時に倒壊した木造住宅の下敷きになり圧死。 地震がないと言われていたので神戸の木造住宅はひどいものでした。とくに新耐震基準以前の住宅は、布基礎が無筋で、三寸角の細い柱で、金物がほとんど使われていないというものが多く、倒れて当然といえる代物でした。 そして新しい住宅でも、大手メーカーのものでも基礎までプレハブ化した住宅の基礎が横転したり、ツーバィフォーでは倒壊は免れたけど1/50ラジアン以上の傾きで実質倒壊のものがあったり、鉄骨系でパネルを何枚も取り替えなければならなかったもの、あるいは新築したばかりや新築中の在来木軸の柱が折れたり、土台が抜けたものなどを目撃しました。 「当社の住宅には全半壊はなかった!」という各社の発言に、不信感を覚えもしました。 しかし、阪神淡路大震災の教訓を活かして、全面的に採用されだしたホールダン金物のほかに、在来木軸は集成材と乾燥材で剛金物工法を開発しました。また、筋違い・きずりに変えて構造用面材の採用も一般化してきました。 とくに先進的なツーバィフォー業者は、外壁の構造用面材を9mmから12mmに変え、二階の床剛性を高めるために212のTJIや厚い構造用床下地の採用、外壁スタットを206にするなどの抜本的な仕様変更を行いました。 この結果「阪神淡路大震災がきても、地滑りがない限り当社の住宅は絶対に倒壊しません。安心して家の中にいて下さい」と多くのビルダーが断言出来るようになりました。 つまり、震度7の直下型であっても、加速度が600から800ガルの地震であれば、十分に耐えられるという木構造が出現してきたのです。 これは画期的な、素晴らしいことでした。 これで、日本における木造住宅の耐震問題は解決出来たと多くのビルダーは考えました。私もその一人で、新潟中越地震で最初に十日町市の被害状況を見て回った時も「阪神淡路地震以上の新しい問題提起はない」と早とちりの結論を出してしまいました。 ところが、20日後に川口町の烈震地域を訪れて考えが変わりました。 今までの仕様では「川口町の直下型地震にも耐えられます!」と断言することが出来なかったからです。 阪神淡路大震災で徹底的にしごかれたので、恥ずかしながら「地震の問題はお陰で卒業できた」という気持ちになっていました。そして、それ以降はほとんど勉強らしい勉強をしていません。 川口町の加速度が阪神淡路の3倍の2515ガルだという報道を聞いてあわてました。ガルに対する正しい知識と理解力が喪失していたからです。 急いで地震に関する本をまとめて買ってきて、片っ端から読みました。 建築物の固有周期とか応答スペクトル、あるいは減衰定数など、10年前にはあまり見かけなかった単語が出てきたからです。 そして、何冊読んでも単語の持つ意味が理解出来ず、錆び付いた頭の中にスーっと入ってきてくれません。 ところが20年前に書かれた「地震と建築」(大崎順彦著、岩波新書)を読んだら、霧が晴れるようによく理解出来ました。住宅に関係する仕事をしていながら、この本に今まで接する機会がなかったのは不勉強というよりも不幸なことでした。 地震と建築の関係について、これほど明解で分かり易い入門書はありません。もし、皆様方の中で不幸にしてこの本に未接触の方がありましたら、今すぐに一読をお奨め致します。 なにしろ20年前に書かれた著書ですから、いくつかそぐわない点があります。 例えば「地盤の特性からマグネチュード8.6以上はあり得ないと言われています」という記述などがそれ。 このほどのスマトラ島沖地震はマグネチュード9.0と訂正されました。データーが乏しかった20年前には考えられなかったことが起こっています。 加速度のガルもそうです。 20年前までは1000以上のガルの記録を持つ地震は地球上に一つしかありませんでした。 したがいまして、きわめて強い地震であっても、せいぜい300から400ガルというのが相場だと考えられていました。 坂本功先生は「新耐震基準は、きわめて強い地震動に対しても倒壊だけはしないことを目標にしています。このきわめて強い地震動とは300から400ガルのものという共通理解があります。そのような地震動に対して倒壊しなければいいというわけです」と書いています。 つまり、建築基準法では震度7で、300から400ガルで「倒壊さえしなければ良し」としているのです。 棟瓦がズリ落ちようが、ガラスが割れサッシが飛び出そうが、サイデングが剥がれようが、建具が折れようが、流し前のタイルが剥離しようが、倒壊しないかぎりはそうした些細な障害は問題にしないという立場だということ。 したがって、ビルダーは倒壊さえしなければ、責任をとる必要がないということでした。 しかし、品確法によって「阪神淡路地震と同じの一等級か、1.25倍の2等級、1.5倍の地震に耐える三等級の家です」と謳うようになりました。 この場合も、基本的には倒壊さえしなければいいということのようですが、品確法によらなくても、最低10年保証が義務づけられてきました。そして、各社は自社保証を含めてそれぞれの保証制度に加盟しています。 それぞれの保証制度により保証期間や基準、個別の免責事項が異なります。 しかし、地場ビルダーの中には、設備機器までも含めて無条件で一切の10年間の保証をしているところがあります。地場で仕事をやっている以上、責任逃れは出来ない。徹底的に責任を取りますという見事な姿勢。 この場合、今まで想定していたのは阪神淡路地震でした。震度7でせいぜい600から800ガルの加速度まで。それに耐えうる住宅を丁寧に手造りしてきました。 ところが、川口町役場の震度計のガルは2515。 今までの想像を絶するものでした。 そして、町役場の周辺の被害はそれほどでもなかったのですが、地盤の悪い激震地の被害は2〜3倍です。恐らく激震地のガルは3000を越えていたのではないかと推定されます。 これに加えて、今度の新潟中越地震では3週間以内に震度5以上の地震が18回も起こっています。 その間に、構造体は少しずつ緩み、固有周期はどうしても延びてゆかざるを得ません。例えば最初は0.1秒とすごく剛であった構造体でも、0.2〜0.3秒になった可能性が高いのです。 つまり、阪神淡路地震程度だと保証出来たものが、川口町の直下型で余震の多い激震地では保証出来かねるという大きな問題を今度の新潟中越地震は提起しています。 となると、消費者に対して「阪神淡路までは保証しますが、川口町の激震地並に対しては堪忍して下さい」と最初から頭を下げるか、それとも「川口町の激震にも耐えるものを造ります」と断言するか。 建築学会と国土交通省は、何一つ指針を出してくれていません。 |