■川口町の烈震に耐えられる木造とは  新潟中越地震(12)


  川口町役場の地震計は震度7で2515ガル。
 この川口町役場から半径1000m以内の全壊率は20〜40%と推定されます。豪雪地なので神戸に比べ柱が1寸から2寸(3〜6cm)は太くて丈夫。このため全壊率は震度7にしては予想以上の少なさ。この範囲内に渡部建築の高気密住宅SWが8棟建てられています。

  それらは、断熱サッシの転落、内壁筋違いの撓みによる石膏ボードの剥落、クーラーの墜落などという軽微な被害はありますが、構造的な被害は皆無。入居者も大変に喜んでおり、がっちりとしたコンクリートの床スラブを持った高床住宅は、お世辞抜きで「ご立派」と褒められます。

 ところが、全壊率90%の田麦山、武道窪に建てられている渡部建築の同じ仕様のSWは、かなり痛めつけられています。といっても一階の高床のコンクリート部分は毛ほどの被害もありません。また、木造部分の水平、垂直が一分も狂ってはいません。
 しかし、ホールダン金物が千切れたり、エコキュートが転倒したり、壁や床の内部仕上げ材がかなりやられていて建物全体の粘りがなくなっていたり、気密性が悪くなったりという明らかな劣化が見られます。

 こうした90%という全壊率とSWの被害状況から、田麦山、武道窪の超烈震地のガルは3000〜4000に達していたというのが私の推測。先週見た品確法耐震性能3の2倍以上の加速度が襲ったという仮説はそれほど間違っていないはず。
 したがって「よくぞ倒れなかった」と渡部建築を褒め称えるべきでしょう。
 しかし、もう少し工夫をし、細心の注意を払って設計施工をしていたら、こうした超烈震地にあっても「倒壊無し」ではなく「損傷無し」の住宅が可能ではなかったか。その可能性を追求することこそ地場ビルダーの使命ではないだろうか。

 私は、大手住宅メーカーは大学病院だと考えています。
マンションもやれば分譲もやる。鉄骨もやれば木造もやる。賃貸住宅や倉庫、商店建築にも手を出す。外科、内科、精神科、眼科、婦人科、小児科など一切を網羅した総合病院。

 そして、よっぽどの名士か教授先生と特別な関係がないかぎり「2時間待ちで3分診療」という待遇か、あるいは入院しても研修医のモルモット。
 ちょっと極論にすぎますが、大手住宅メーカーは施主を単なる目下のユーザーと考え、人格を尊重してくれません。責任の所在があいまいで、全身で施主を受け止めてくれる者が居ません。絶えず転勤があり、対応が事務的で人間的な繋がりがなかなか出来ません。やっと出来たと思ったら定年とかリストラで退職。したがって自分の命を預ける気が起こりません。

 これに対して、地場ビルダーはかかりつけの医者であり、施主にとって一生の主治医。
そのためには常に勉強して最新の情報と技術を身につけ、責任を持って患者の命を守ることが必要。最新の情報と技術を体得するためにいろんなグループに参加し、絶えず新しいトライを続けねばなりません。成功事例よりも失敗事例を多く集めることが肝要。

 そして、地場で頑張ってゆく以上、転勤することも退職して責任を回避することも出来ません。
 施主とは一生の親戚付き合い。それだけに地場ビルダーは一生付き合える人を施主に選んでゆく必要があります。そして、死ぬまで責任が付いて回ります。
 「1500ガルを越えた地震だから、俺は責任を負えないよ」とは言えないのです。「3000ガルだったから勘弁してよ」とも言えないのです。何しろ親戚の不幸。出来る限りのことをやらねばなりません。
 それをやりぬくからこそ地場ビルダーの価値があるのです。

 どんなに立派なことを言っていても、震度7、1500ガルで倒壊は免れたけれども大きな損傷が多発し、その損傷に対して責任をとらない、とれない地場ビルダーは、間違いなく地場から抹消されます。
 そして、3000ガルに対して責任がとれる地場ビルダーがこれから脚光と信頼を集めてゆきます。

 「当社は、直下型の川口町の震度7、3000ガルの超烈震に対しても、一切の損傷を保証します!! もちろん気密性能も0.9cm2 以下を命に代えても保証します!!」  

 これを高らかに宣言するには、いくつかの条件と技術開発が必要。とくに技術開発では詳細な検討が欠かせません。
  とりあえず、思いつくままいくつかのポイントを列記します。

(1) ツーバィフォー工法の良さを再確認すること
 正直言いまして、いい加減なパネル化ツーバィフォーの氾濫で最近のツーバィフォーに幻滅を感じていました。しかし、新潟中越地震では間違いなくツーバィフォー工法は倒壊がないだけでなく、木軸の剛床・壁パネル工法に比べても損傷が少ない工法だということが立証されました。
 木軸とツーバィフォーの損傷の差は、間柱の差と言っていいと思います。木軸は文字通り柱工法。間柱は単なるボード受け材。この弱いボード受け材が、震度5強の揺れからクロスの割れを引き起こしています。
 これに対してツーバィフォーは3.8cm厚の間柱が、水平力がある部材に偏重するのを避け、その結果損傷がいたって微少。また、ツーバィフォーは石膏ボード張りが耐力壁として加算出来るので、使用クギの性能、ピッチなどが標準化されています。そして、木軸のように内壁に筋違いを入れる必要がないために、震度7で筋違いの面外座屈による損傷もない。
 木軸は、これから2X4材を間柱に採用し耐力壁にすることを真剣に検討する必要があります。

(2) ツーバィフォーの外壁は2X6に切り替える
 セキスイハイムの「2X6=0」という広告。
 ツーバイシックスの外壁と太陽光発電で光熱費がゼロという見事な謳い文句。トステムも昨年北海道で売りだした2X6のSWパネルが好評で、今年から内地でも売りだすとのこと。
 地場ビルダーの何社かは外壁を2X6に切り替えてきています。これは断熱性能の向上が動機になっていますが、3000ガルを前提に考えると耐震面からも積極的に切り替えたいもの。

(3) 木軸の外壁は最低4寸の集成材で剛金物工法へ
 木軸の精度と気密性能をきちんと確保するということを考えると、外壁は剛金物工法で、最低4寸の集成材でないと3000ガルを達成出来ません。
 そして、将来の省エネ性能を考えると14cm角の集成材の開発が必要ではなかろうか。14cm角だと十分に断熱性能が担保出来るし、間柱として2X6材が有効に使えます。そのことによって木軸の欠陥である震度5強でのクロスの割れがなくなる。これは突飛なようだが、積極的な意義が。

(4) 2階は、バルコニー以外は引き違いを廃止
 引き違いサッシが改良されるまでは出来るだけ使用を避けてゆきたい。とくに2階は、バルコニーがあれば心配ないがそれ以外では絶対に使用を避けたい。重いペァーガラスの建具が落下して人身事故を起こす可能性が高いから。
 そして、開口部は幅(W)よりも高さ(H)の活用を図りたい。
 とくに吹き抜けの場合は、幅は1m以内に抑え、上下をFixと縦辷り出しなどで長く使い、これを3連結させるなどして構造強度を高めることが不可欠。
 つまり、2X6の通し柱がより多く使われていないと、3000ガル対応のバルーン工法壁にはなりません。

(5) 天井からつり下げる照明は一切排除
  天井からつり下げる照明は排除してゆく。シャンデリアなどはとんでもない。和室や食堂などの照明にも細心の配慮が必要になってきます。

(6) 壁に固定出来ない家具は絶対に採用しない。
アイランドキッチンなど、壁に固定出来ない家具類は一切採用しない。 etc.

 書き出せばきりがありません。とりあえず新潟中越地震は今回でひとまず終了と致します。