■商売人の住宅、もの造りの住宅……コンスタントこそ(6)



 トヨタホームの工場を見て強く感じた点が二つ。

 一つは、受注のバラツキによる工場の稼働率。
何しろ少ない月と多い月では生産量に二倍以上の差がある。このため自動車工場へ応援を頼んだり、暇な時は自動車工場へ働きに行かねばならない。
 これは何もトヨタに限ったことではない。他の住宅メーカーも同じ悩みを抱えている。トヨタの場合は働きに行く先があるからいいが、専業メーカーだと簡単ではない。

 もう一つは、工場では毎年10%ずつ合理化してコストを下げるというすさまじい努力をしている。しかしプレハブ住宅の価格は相対的に安くはない。
このため、分譲住宅にプレハブが本格的に採用されることは少ない。木軸かツーバィフォーかスチールハウスということになる。
 つまり、モデルハウスの維持をはじめとした間接経費や建築現場経費の比率が高く、工場での10%程度のコストダウンでは焼け石に水。顧客の要望に追いつかない。
 
 そこで問題になってくるのがコンスタントな受注と建築現場の生産性。
 これは全ての注文住宅業者に共通する課題。

 注文住宅で、コストを安くするには「量をまとめるしかない」という信仰が根強い。今、中部以西で価格旋風を巻き起こしながら東上しているタマハウス。同社はホームページで「量がまとまったから大幅なコストダウンが可能になりました」と強調している。

 たしかに年間10棟のビルダーと年間100棟のビルダー、あるいは1000棟、1万棟のメーカーとは資材の仕入れ価格が大きく異なる。20%以上違うこともある。しかし、資材価格が20%安くなったからといって、住宅の販売価格が20%安くなるわけではない。せいぜい3%から5%がいいところ。
 どの産業を見ても、価格を飛躍的に下げるには、仕様書発注をし、一切のリスクを発注者が負うしかない。ユニクロの手法以外にあり得ないということは、マーチャンダイジングを齧ったことのある者だと誰でも知っている。

 観念的に書いてもなかなか理解してもらえない。
 具体的な名を出して話を進めることにします。s

 私の知っている範囲で、注文住宅で生産性を最大限に高めた会社は、川口市のナカジマハウス。5年前の同社はすさまじかった。

 まず、需要を高気密高断熱のエコロジーハウスに限定した。需要を特化しない限り性能と精度が担保出来ないし、コンピューターによるシステム管理が出来ない。中小ビルダーの生産性向上は隙間産業に徹することから始まる。

 そして、施工範囲を本社から1時間以内に限定した。
 どんなにおいしい仕事でも、片道2時間もかかるようでは営業、設計、監督、全職人の生産性を考えると割に合わない。エリアを徹底的に絞った。

 そして、年間の受注戸数を50棟に限定した。
 この50棟というのは、正月とお盆の職人の休暇を考えると毎週1棟ずつ着工するというペース。
  つまり、お客の希望に100%合わせるのではなく、原則としてビルダーと全体の顧客の工程に合わせていただく。
「8月だとこの週とこの週が開いています。9月だとこの週だけです。どちらかを選んで下さい」

 いわゆる「行列の出来るビルダー」
 歯医者や美容院の予約制度と同じで、納得の上で予約し、契約していただく。

 このように、エリアを限定し、商品を限定し、スケジュールを不動のものにしたので、同社の生産性は目覚ましいものがあった。
  監督は毎晩遅くまで残業する必要がない。
  それでいて、工事は順調に進んでゆく。
  そして、お値打ち価格で会社の利益は驚くほど出る。

 純益で10数パーセント。
 粗利ではありませんぞ……。

 若き松岡社長のビルダー経営に、私は目を覚まさせられました。

 それまで、私も需要を特化していた。R-2000住宅以外は手がけさせなかった。
  エリアも限定し、広く浅くではなく徹底した深耕作戦を展開した。
  顧客を追いかけるのではなく、出かけてもらうようにもした。
  監督の担当棟数を低く抑えることによってクレーム発生という後ろ向きの仕事を極力減らした。そうすることによって相対的な生産性を高めた。

 しかし、かつて年間数百戸こなした経験が災いして、戸数が最低100棟以上ないと価格競争力が出ないというドグマと不安に犯されていた。
  ある一定量さえ確保出来れば、必要なのは戸数ではなくてコンスタントさにある。
  そのことを証明してくれたのがナカジマホーム。

 このコンスタントということが、ことのほか難しい。
 まず、顧客が「少しぐらい待ってもいい」と納得して貰える商品であり、安心していただける施工システムでなければならない。弱いお願い営業では「コンスタントな着工」は絶対にあり得ない。

 トップのポリシーに共感し、会社と商品、工事に対する信頼感がないと行列をしてまで待っては貰えない。
 単なる営業力ではダメ。
 ものを言うのはビルダーが発信する熱い意欲であり、社員とOBが発する熱気につつまれた満足感溢れたムード。

 このビルダー経営の極意が分かったので、私はいたずらに戸数を追うことはやめた。
 そしたら、60棟でも十分に利益が出てきた。支払いを現金払いにしても、現金が面白いように余り出してきた。

 注文住宅は、戸数だけが物をいう世界ではない。
 それぞれの地場において、適切な戸数が担保出来、コンスタントに仕事があれば、社員も下職も黙ってついてくる。
 下職や資材業者にとってはコンスタントに受注が見込めれば、計画が立てられる。

 下職にとって最も困るのは、一度に仕事がドカンと出て、後が続かないこと。これでは計画が立たないし、余分な人手の手配で利益が吹っ飛ぶ。

 大手住宅メーカーというのは、全体で大きな受注を誇っている。しかし、個々の支店単位で考えると、コンスタントに着工出来ているところはどれだけあることか。
  つまり、もの造りとしてどこまで正しく機能していると言えるのだろうか。下職泣かせに終始してはいまいか。

 私が言いたいのは、年間12棟でも24棟でも、コンスタントに地場需要を確保しているビルダーこそが、本当のもの造りが出来ているということ。

 昨日、4年ぶりに川口市へ松岡社長を訪ねました。
 ビルダーとして今年は40棟しかやらないと社長は断言。そして、とてつもない面白い計画を話してくれました。
 その話は、近いうちに改めて取り上げることにします。