■商売人の住宅、もの造りの住宅……コストの前に性能(7)


 住宅を坪単価だけで比較するのは馬鹿げている。
 自動車の場合、走行中に火を吹いたり、タイヤが脱輪するというのは例外中の例外。
 どのメーカーの車でも、命を守る基本性能はそれほど変わらない。

 ところが、住宅の場合は、例えば「耐震性能」一つとってみても大きな差がある。

  「建築基準法でいう震度7で、1000ガル以上だったので倒壊したのは不可抗力の天災でした。ご愁想さま」
 「エコキュートが倒れたのは想定外の揺れであり、メーカーとしては保証出来かねます」
 「400ガル以上での損傷ですから、保証機構の対象になりません。やはり地震保険に入っていてもらわないと…」
 ということで、大手の逃げ道はちゃんと用意されている。

 つまり、倒壊さえしなければ「耐震性がある」と宣伝しても、過剰広告だと公正取引委員会や消費者団体から追求される心配はない。大手は法廷闘争で争える。

 しかし、地場ビルダーはそうはゆかない。
 倒壊しなかっただけで許してはもらえない。
 住宅の被害は軽微であった。しかし、蓄暖が倒れた。
 幸い火事には至らなかった。
 しかし、電力メーカーの子会社は、止め金具の不備から倒壊したのに「想定外のガルのため、保証出来かねます」と逃げた。結局は、施主のことを考えて地場ビルダーが負担して新しいものに取り替えざるを得なかった。

 保証機構の対象外とされたため、多くの地場ビルダーは筋違いの面外座屈によるボードの剥がれやクロスの割れという損傷の手当に翻弄された。
 倒れなかっただけでは施主は許してくれない。
 地場ビルダーには「かかりつけのホームドクター」として、損傷の手当を求められる。
 川口町の烈震地、それは震度7で、3000ガル以上だったと想定される。
 それと同じ規模の直下型の地震に見舞われたとしたら……。単に倒壊しないだけでなく、損傷を最低に抑えるためにはどうしたらいいだろうか? 本当に直下型の地震に強い住宅とはどんなものなのであろうか……。

 私の結論はおおよそ以下。

・ 基礎は厚さ200mmのベタ基礎。

・外壁には壁倍率3倍以上の面材を必ず用いる。そして、1階の外壁は5倍以上の面材を用いたい。例えば12mmの構造用合板でCN50クギを外周80mmピッチ。内壁には12.5mmの石膏ボード。

・内壁も筋違いは一切やめ、面材で耐震性を確保。

・免震装置は直下型に有効性が乏しいと考えられるので、建物を出来るだけ剛にして建物の固有周期を限りなく0.1秒に近づける。

・ホールダン金物そのものを再点検する。そして、木軸の場合は、柱が土台から離れないように固定する。

・外断熱は出来るだけ避ける。

・サッシは原則として引き違いを使わない。気密性の担保を考えて上下、外開きなどに限定する。

・床にきちんと固定した壁に支えられないアイランドキッチンは絶対に採用しない。

・蓄暖は絶対に転倒しないという保証付か、転倒した場合の一切の責任を取れる業者しか使わない。

・エコキュートは、転倒保証をしてくれるメーカーのものしか使わない。

・壁掛けクーラーは、絶対に剥落しないという保証付のものでないと採用しない。

・天井から吊り下げる照明を一切排除してゆく。

 このほかに、家具や仏壇の固定や、食器棚のガラス破損対策などビルダーとしてやらねばならない顧客の指導や教育などが多い。  

 施主が、本当に安心出来る耐震性……つまり、震度7の烈震がきても、外へ飛び出すよりはわが家の中にいた方が間違いなく身が安全であり、揺れや危害が少ないと実感してもらえるには、最低上記の項目を満たす必要がある。

 そして、上記の項目を満たすためにどれだけ建築費が余分にかかるか。やりかたによっては、坪3万円程度の出資で十分に可能である。

 つまり、どこまでの耐震性能を求めるのか。
 倒壊だけはせず、命からがら逃げ出せればいいのか。
 それとも、ほとんど損傷のない住宅を求めるのか。
 その求める耐震性能を満たすために、どの工法を、どんな条件で採用し、プラン的にどのようにまとめたらコストが一番安くあがるか。 と逆算してゆく。

 木構造の技術開発が進んできて、建物の固有周期を限りなく0.1秒に近づけることは可能になってきている。
  固有周期0.2秒で「耐震性が高い」と叫んでいるメーカーと同一に考えてはいけない。まして固有周期0.5秒という柔構造こそ在来木造の最大の特徴なとどとわけのわからない能書きに耳を貸してはならない。

 耐震性一つとってみても、これだけの差がある。

 まして、省エネ性能ということになってくると、格段の差が出てくる。
  次世代省エネ基準というのは最低の基準。
  それなのに、それでこと足れりとする住宅メーカー。
  あるいは、中気密中断熱のパッシブ系のグループ。

  そして、造作材に無垢材を使い、クレームを極力少なくしているビルダーと、数年以内にクレームの巣になる業者。
そのコストを単純に比較しても意味がない。

  まず、消費者は自分の求める性能と精度を明確に熟知しなければならない。
  性能は全て数値で表現出来る。
  震度7、3000ガルで損傷のない家。
  Q値が1.2W。C値が0.5cm2
  換気回数 0.3回。 など。

 また、精度も数値で表現出来る。
 建物の駆体の水平垂直精度は1/1000を求めるとしよう。つまり、柱とか壁は天井面と床面とでは下げ振りで2.4mmの差しかない家。かなり厳しい工事となる。
  これが3/1000でOKということだと7.2mm倒れていても文句が言えない。

 そうした性能や精度の数値が先であって、その数値にコストが見合っているかどうかを問題にするのが本質。