住宅設備・家電が危ない」の中の『危ない間違い』


 久しぶりに気密や換気に関するまともな本に接した。
 1つは足立博著の「住宅設備・家電が危ない」(エクスナレッジ刊)でもう1つが岡本康男著「体にいちばん快適な家づくり」(講談社α刊)。

 岡本氏の本はハイブリッド床暖房をPRするための本だが、気密や換気に対する記述はしっかりしていて好感が持てる。
 なかで最も面白かったのは、夏床下地面の低い温度を利用して冷房効果を上げるために、家の北側に給気口を設け、地中を通して室内に給気した。 しかし、それほど給気温度は低くならず、湿度とか結露などに問題があり、この試みは失敗だったという記述。
 机上の空論でその可能性を強調している学者がいるが、果敢に挑戦し見事に失敗した話に納得させられ、思わず拍手。

 さて、本題の足立氏の本。
 足立氏があまりにもFPの家ばかりを一方的にヨイショするものだから、最初から色眼鏡をかけて同氏の本に手をだそうとしない仲間が多い。
 そうした氏の立地位置は変わらないが、今回の本は「危ない」シリーズの中でも外断熱、クギなどとともに評価出来る。

 中でも高く評価したいのは (1)全熱交換機は匂いやウィルスまでも還流させるので良くない (2)ロスナイはショートサーキットしているだけでほとんど効果がない (3)第3種換気は気密性能が低いとこれまた効果がない (4)冷房は28℃以下で運転させることと除湿機能こそがポイント (5)床暖房は体温36℃以下のものでないと低温やけどをする怖れがあり、またコントロールやメンテナンスのことを考えるとけっして薦められるものではない。

 これらは、すべに10年前から分かっていたことであり、私なども何度となく強調してきた。しかし、臆することなく堂々と主張している点に敬意を表したい。

 足立氏の記述に関して、部分的にいくつかの点で必ずしも賛同出来ない点があるが、それほど目くじらを立てるほどのことはない。
 ただ、以下の2点については、記述内容に大疑問があるということは明言しておきたい。

 1つは電気式パネルヒーターに対する高い評価。
 安井至先生の「市民のための環境学ガイド」の中の「個人的二酸化炭素削減術」の中で「ひと頃流行った電気式オイルヒーターはCO2削減という面から考えると最悪」との記述がある。
http://www.yasuienv.net/ReduceCO2Personal.htm

 もう1つはダクト工事と空調換気システム、加湿システムに関する実証性の乏しい記述。あまりにも実態を知っておらず、観念的な反対論に終始している。

 新潟で生活し、SOHOで生計を立てている筆者は、ダクト工事がなくても、セントラル空調換気システムがなくても何一つ困ることはない。ダクト工事と空調換気システムの欠陥をあげつらうことでことが足りるかもしれない。

 しかし、東京以西で生活している70%の日本人は職場を含めてダクトのない世界で生きてゆくことは出来ない。
 どのようなダクト工事なら安心なのか。そうした安心と安全を確保するために、多くの設計と工事関係者がどれだけ頑張っているかという肝心の記述がすっぽり抜けている。
 私の知っている空調換気工事業者はこの本を読んで「自称物理学者気取りの机上の空論にすぎず悪質な営業妨害である」と憤慨していたが、その気持は察して欲しい。

 筆者が書いているとおり、世の中にはかなりいいかげんなダクト工事があり、首を傾げるセントラル空調換気システムが跋扈していることも事実。そのことを認めるにやぶさかではない。
 しかし、いくら欠陥ばかり列挙しても正しい改善策とはならない。紙面が限られているので、優れた事例だけを紹介してゆくことにする。

 まず、カナダを含めて北米で圧倒的シェアを占めているのがダクトによるセントラル空調換気システム。
 あの緯度の高い寒いカナダで、何故ダクトによる空調換気システムかと疑問になる。パネルラジエーターによる輻射暖房の方がはるかにいいではないか?

 ところが、大陸性の気候で夏がやたらと暑い。クーラーなしでは生活出来ない。したがって五大湖周辺ばかりではなく、ケベック州あたりの住宅の半地下室にも顕熱交換機と大きな空調機械が据え付けられ、ダクトで全館暖冷房がなされている。

 そして、北米の住宅でセントラル空調換気システムが普及したのは、ツーバィフォー工法による木造が圧倒的に多いということと不可欠の関係にある。
RC造や石造、レンガ造が主流のヨーロッパでは、構造体の中に簡単にダクトを配するわけにはゆかない。鉄骨造以外ではダクト工事はおおごとになる。

 これに対して木造の比率が95%以上の北米では、簡単にダクトを配することが出来る。とくにトラスを用いた温暖地の小屋裏は、ダクト工事のためにあると言っても過言ではない。


  それだけではない。写真のように最近では二階の床はダクトが自在に配せるように「平行弦トラス」を使う例が増えてきている。これを見て、日本で最初に平行弦トラスの採用に踏み切ったのが7年前。
 ただ、日本のツーバィフォー住宅メーカーでは、物真似が好きなくせに未だにこの平行弦トラスを本格採用しているところが少ない。つまり、全館冷暖房の本格的な高気密高断熱住宅の比率が低く、情けなくも採用出来ないでいる。

 さて、次に問題になるのはセントラル空調換気システムの給気ダクトの汚れ。足立氏はことのほかに心配している。
 たしかに、排気ダクトの中は汚れる。10年もたてば0.5mmくらいの薄い層がダクトの中に付着する。しかし、熱交換する時にフィルターを通すので、実害はない。心配だったら空気清浄機能を付加すればいい。しかし、経験的にその必要性は認められていない。


  写真は、築8年たった住宅を解体したときのフレキシブル給気ダクトの内側。わかりにくいだろうが、手で触っても1つの汚れもない。
 これは、二重にフィルターがついているせいではあるが、単に暖冷房時だけでなく24時間換気で空気が流れ続けていてホコリが滞留したり付着することがないためだと考えられる。つまり24時間連続換気のメリットの顕著な証拠。

 そして、各室の吹き出し口からは、所定の換気量が確保されているかを全てチェックして引き渡している。足立氏が心配するようないいかげんなことはやっていない。

 また、足立氏は透湿膜方式という画期的な加湿装置が8年前からダイキンで、続いて三菱重工で開発されてきているという事実を知っていない。紙数が尽きた。加湿についてはフォーラムで確かめていただきたい。