■竹というガンに犯され荒廃している日本の里山 (上)


 3月に宮崎から鹿児島を二度にわたり、延べ一週間訪れました。
 早春で広葉樹はまだ枯れ枝のまま。
 山の緑は針葉樹と竹林だけ。

 その密生した細い針葉樹が間伐されておらず、昨年の台風で倒木したまま放置。
 それだけだったら、まだ許される風景。
 びっくりしたのは竹林の異常なまでの繁殖。
 
南九州を訪れたのは実に20数年ぶり。
 たしかに、昔も竹林は見かけました。
 しかし、それは里山の下の部分。つまり、田圃があり、それより一段高いところに農家がある。その農家の周辺を竹林がつつましく囲っている。
 竹林は里山のヘリに派生する植物だという固定観念を持っていました。

 ところが、どうしたことでしょう。
 間伐されず、手が加えられなくなった針葉樹は生命力を失ってきつつあるということなのでしょう。
 竹林が針葉樹林とか広葉樹林を浸食し、里山のヘリだけではなく、50m, 100m あるいは高いところでは300mのところにまで繁っています。時には里山の頂上を征服しています。
 ひどいところでは、見渡す風景の半分が竹林に覆われています。

 たしかに、何冊かの本で、竹林の異常な発生と侵略の記述を読みました。しかし、これほどまでにひどいとは……。

 最初の日はショックで胸が痛みました。
 2日たち、3日経つにしたがって、車窓の外を見るのが嫌になってきました。
 行けども行けども、悲しい風景が続きます。
 早春の南九州。
 その旅は、楽しいはずのものでした。
 日頃のストレスが発散し、心を和ませてくれるはずだのものでした。

 ところが、南九州の里山は病んでいました。
 ガン細胞のような竹林の根が、かつての豊かな緑の里山を犯しているのです。
 早春の淡い竹林の緑は、黄疸病のようなむくんだ緑だったのです。
 不健康の証だったのです。

 それを知ったら、風景を愛でるという気が完全に失せてしまいました。
 美しいはずの田園風景が、なんとも痛ましく、悲しい風景に一変したのです。車窓の外へ目をやればやるほど、激しく心が痛むのです。
 ストレスが解消されるどころか、ストレスが激しく募ってくるのです。
 こうなれば、南九州の旅は苦痛以外の何ものでもありません。  

 南九州には、かつての“兎追いしあの山……”という情緒ある里山は喪失していました。
 そうです。
 日本人の心の故郷は、もう歌詞としてしか存在していないのです。里山はガンの末期症状を迎えようとしていたのです。  

 みなさんは、この大変な事実をご存じでしたか。

 それ以来、私は地方を訪れる度に、あるいは新幹線に乗る度に、里山を見るくせが出来てしまいました。  

 北海道では笹が繁茂しているところはあっても、竹林がカラマツやトドマツ、シラカバを追放しているという風景を見ません。したがって安心して車窓の風景を楽しむことが出来ます。旅情に浸れます。  

 ところが、東海道新幹線の外を見て下さい。
 枯れ木に若芽がついてきたので、竹林の存在がそれほど際だっては見えません。しかし、なんと竹林の多いこと。
 
 三重の四日市を訪ねた時も、悲しくなってきました。
 ここでも、かつての里山が失われていたからです。
 そして、名古屋でも神奈川でも……。  

 愛・地球博の日本政府館は、鉄筋鉄骨造の建築物の表面を、竹をザルのように編んで被せて陰をつくり、省エネ効果と日本の伝統美を表現している優れものともてはやしています。
 そして、日本政府館の前にはあえて小さな竹林まで作っています。この竹ザルの需要で、長野の佐久の業者が一儲けしたという噂も流れてきています。  

 この万博会場を見ると、竹林は日本美そのものであり、竹林が日本を救う救世主であるかのような錯覚に陥る人が多いのではないでしょうか。
 竹林こそが、日本の里山の最大の敵になってきており、北朝鮮や中国以上に怖い存在、つまり日本の主権と人権を脅かす存在です。日本政府館はその事実を忘却させてしまう役割を果たしているのではないでしょうか。
 何が愛であり、何が地球博であるか!!!
 そのように感じた私が間違っているのでしょうか。

 2週間前の木曜日、NHKの夜9:15からの「ご近所の底力」で「いかにして竹林の被害から地域を守ってゆくか」という番組をやっていました。
 このご近所の底力はなかなかすぐれた番組。  

 竹は一日に1mも伸びる襲撃力を持っています。
 そして、根をはりめぐらせているので、昔から「地震がきたら竹林に逃げろ」という格言があります。根が絡んでいるので地割れの心配がないということ。
 しかし、その根はいたって浅く、せいぜい30cmから50cm程度。
 このため、集中豪雨などに見舞われると竹林がいち早く地滑りをおこし、崩れ落ちます。  

 竹の地下径は枝別れしながら年に5mは伸び、地下の栄養を吸い取ります。このため、他の針葉樹や広葉樹が犯されるのです。
 そして、竹林は20年で2倍以上の面積にひろがってゆきます。
 20数年ぶりに訪れた南九州の竹林が、私の記憶の3倍から4倍になっていたのは、こうしたメカニズムによります。これをあと20年放置しておいたら、日本の里山のほとんどが竹林によって占拠されることになってしまいます。  

 竹林の領土拡大、侵略意図を防ぐには、私達が自分の手で日本の国土を防衛するという意識をまず持つ必要があります。
 そして、人間の手で竹林を間引いてゆく以外にはないのです。

 日本の国土と環境を守る。
 その手始めは竹林との戦いであるということ。
 これはマジな話。

 信じて貰えるでしょうか。